食事と起立性調節障害の関係

起立性調節障害で苦しんでいる方にとって、日々の食事は単なる栄養補給以上の意味を持ちます。私が常若整骨院で10年以上にわたり多くの患者様を診てきた経験から、食事が起立性調節障害の症状に大きく影響することを実感しています。今回は、東洋医学の視点を交えながら、食事と起立性調節障害の深い関係についてお伝えします。

現代の食生活が起立性調節障害を悪化させる理由

多くの方が気づいていないことですが、現代の一般的な食生活は、知らず知らずのうちに起立性調節障害の症状を悪化させています。その主な理由を見ていきましょう。

体を冷やす食べ物の増加

東洋医学では「冷えは万病の元」と言われますが、現代の食生活は体を冷やす食品で溢れています。冷たい飲み物、アイスクリーム、生野菜のサラダ、冷たいデザート…これらは一時的に美味しく感じますが、体の内側から冷やしてしまうのです。

体が冷えると血行が悪くなり、エネルギー代謝も低下します。特に起立性調節障害の方は、立ち上がったときに脳へ血液を送るポンプ機能が弱いため、体が冷えるとさらにその機能が低下し、立ちくらみやめまいが増加するのです。

加工食品と添加物の影響

コンビニ食や市販の加工食品には、様々な添加物が含まれています。保存料、着色料、香料、甘味料…これらは自然界に存在しない化学物質であり、体にとっては「異物」となります。

起立性調節障害の方は、身体の解毒機能が弱っていることが多く、これらの添加物を処理する負担が大きくなります。肝臓や腎臓への負荷が増え、疲労感や倦怠感が増す原因となるのです。

糖質過多の食事パターン

朝食はパンやシリアル、昼食はパスタやうどん、おやつに甘いものを食べる…こんな食事パターンが一般的になっています。これらの食事は血糖値を急激に上昇させ、その後急激に下降させます。

血糖値の急激な変動は自律神経のバランスを崩し、起立性調節障害の症状を悪化させます。特に午前中の倦怠感や集中力低下は、血糖値の乱高下と密接な関係があるのです。

栄養素の偏り

ファストフードや加工食品中心の食生活では、タンパク質、脂質、炭水化物のバランスが崩れがちです。特にミネラルやビタミンB群が不足しやすく、これらは自律神経の正常な機能に欠かせない栄養素です。

例えば、マグネシウムは筋肉の緊張を緩和し、血管を拡張する働きがあります。この不足は血流の悪化を招き、起立性調節障害の症状につながるのです。

東洋医学から見た食事と起立性調節障害

東洋医学では、食べ物には「気・血・津液」を補う効果があると考えます。適切な食事選択が、起立性調節障害の根本的な改善につながるのです。

五臓と食物の関係

五臓(肝・心・脾・肺・腎)はそれぞれ特定の食物と関連しており、その臓の機能を高める効果があります。

脾(消化器系): 起立性調節障害の方は、特に「脾」の機能が弱っていることが多いです。脾は食物から栄養を吸収し、「気」を生成する役割があります。脾を強化する食べ物としては、黄色い食材(かぼちゃ、さつまいも、人参など)、もち米、山芋などがあります。

腎(生命エネルギーの源): 腎は「先天の気」を蓄える臓器で、慢性疲労や回復力の低下に関わります。腎を補う食材としては、黒い食べ物(黒豆、黒ごま、きくらげなど)、栗、くるみ、羊肉などがあります。

肝(気の流れを整える): 肝は気の流れをスムーズにする役割があり、ストレスを受けると機能が低下します。肝を整える食材としては、緑の野菜(春菊、青梗菜、ブロッコリーなど)、酸味のある食品(レモン、梅干し)などがあります。

陰陽のバランスを考えた食事

東洋医学では、食べ物も「陰」と「陽」に分類されます。起立性調節障害の方は、体が「陰」に傾いていることが多いため、適度に「陽」の食べ物を取り入れることが大切です。

陽の食べ物: 温性・熱性の食材で、体を温め、エネルギーを高めます。生姜、ニンニク、ねぎ、シナモン、唐辛子、羊肉、鶏肉などが該当します。

陰の食べ物: 寒性・涼性の食材で、体を冷やす作用があります。バナナ、スイカ、キュウリ、トマト、緑茶、ビールなどが該当します。

起立性調節障害の方は、特に朝食と冬場は「陽」の食べ物を意識的に摂ることで、体を内側から温め、活力を高めることができます。

起立性調節障害を改善する食事プラン

10年以上の臨床経験から、起立性調節障害の方に特に効果的だった食事プランをご紹介します。

朝食の重要性

起立性調節障害の方にとって、朝食は最も重要な食事です。朝起きられない、午前中のめまいや頭痛といった症状の多くは、適切な朝食で改善することがあります。

理想的な朝食の例:

  • 温かいお粥や雑穀ごはん(脾を強化)
  • 味噌汁(発酵食品で腸内環境を整え、温める効果も)
  • 焼き魚や卵料理(良質なタンパク質を補給)
  • 温かい飲み物(白湯や生姜湯)

冷たいシリアルやヨーグルト、果物ジュースといった一般的な「健康的」朝食は、実は起立性調節障害の方には適していないことが多いのです。

陽気を補う食事療法

起立性調節障害の方は、体内の「陽気」が不足していることが多いです。以下のような食材を積極的に取り入れることで、陽気を補い、症状の改善を図ります。

陽気を補う食材:

  • 生姜: 体を温め、気の流れを促進します。毎日の食事に少量の生姜を加えるだけでも効果があります。
  • 桂皮(シナモン): 腎陽を温め、全身の気の巡りを良くします。温かい飲み物に少量加えると良いでしょう。
  • 羊肉: 強い陽性の食材で、特に冬場に効果的です。シチューやスープにして食べると、体が芯から温まります。
  • 黒胡椒: 脾胃を温め、消化機能を高めます。適量を料理に加えましょう。
  • にんにく: 強い陽性で、気血を巡らせる効果があります。料理に加えるか、熟成黒にんにくとして摂取するのも良いでしょう。

避けるべき食べ物

逆に、起立性調節障害の方が避けるべき食べ物もあります。以下の食品は症状を悪化させる可能性があるため、できるだけ控えることをおすすめします。

控えるべき食材:

  • 冷たい飲食物: アイスクリーム、冷たい飲み物、冷蔵庫から出したままの果物などは体を冷やします。
  • 生の野菜やフルーツの過剰摂取: 特に体の弱っている時は、生野菜よりも温野菜、生の果物よりも蒸した果物の方が良いでしょう。
  • 乳製品: 牛乳やチーズは「痰湿」を生じやすく、消化器系に負担をかけます。特に朝食での摂取は避けましょう。
  • 精製糖: 白砂糖を多く含むお菓子や飲料は、血糖値を乱高下させ、エネルギー代謝を悪化させます。
  • カフェイン: 一時的に気分が高揚しますが、その後の反動で疲労感が増す可能性があります。特に午後以降は避けましょう。
  • 小麦粉製品の過剰摂取: パン、パスタ、ケーキなどの小麦粉製品は、多くの方の体に「湿」を生じさせ、だるさの原因となります。

食べ方も重要

何を食べるかだけでなく、どのように食べるかも重要です。以下のポイントに注意しましょう。

  1. ゆっくりよく噛んで食べる: 消化の第一段階は口の中から始まります。よく噛むことで消化器系への負担が減り、栄養の吸収率も上がります。
  2. 規則正しい時間に食事をとる: 体内時計を整え、自律神経のリズムを安定させます。
  3. 食事中は集中して食べる: スマホやテレビを見ながらの食事は避け、食べることに意識を向けましょう。
  4. 適量を心がける: 食べ過ぎは消化器系に負担をかけ、エネルギーの消耗につながります。

具体的な食事改善例と患者様の声

実際に当院で食事改善を行い、起立性調節障害が良くなった方々の例をご紹介します。

中学3年生・女子の例

改善前の食事: 朝食: 菓子パンとヨーグルト、オレンジジュース 昼食: 学校給食 間食: チョコレートやスナック菓子 夕食: 家族と同じおかずだが、量は少なめ

症状: 朝起きられない、めまい、頭痛、午前中の授業に集中できない

改善後の食事: 朝食: おかゆか玄米ごはん、味噌汁、納豆、焼き魚 昼食: 学校給食(温かいおかずを中心に) 間食: ドライフルーツとナッツ 夕食: 温かい汁物、蒸し野菜、良質なタンパク質

3ヶ月後の変化: 朝のめまいが減少し、起床時間が30分早まった。学校の欠席がほぼなくなり、午前中の集中力も向上。「体が温かくなった感じがします。朝も起きやすくなりました」と喜びの声をいただきました。

※効果には個人差があり、回復を保証するものではありません

26歳男性会社員の例

改善前の食事: 朝食: コーヒーのみ、または菓子パン 昼食: コンビニ弁当や牛丼チェーン 間食: エナジードリンク、チョコレート 夕食: 外食か冷凍食品

症状: 慢性的な疲労感、立ちくらみ、集中力低下、胃腸の不調

改善後の食事: 朝食: 玄米おにぎりと味噌汁、ゆで卵 昼食: 自家製弁当(温かいおかずを中心に) 間食: 黒豆茶と小豆バー 夕食: 鍋料理や煮物中心の食事

2ヶ月後の変化: 立ちくらみの頻度が減少し、午後の眠気も改善。胃腸の調子が良くなり、エネルギーレベルが上がった。「食事を変えただけでこんなに変わるとは思いませんでした。特に朝食をしっかり食べるようになってから、午前中の仕事の効率が上がりました」とのこと。

※効果には個人差があり、回復を保証するものではありません

季節に合わせた食事調整

東洋医学では、季節の変化に合わせて食事を調整することも重要視します。起立性調節障害の方は、特に季節の変わり目に症状が悪化しやすいため、以下のような調整が効果的です。

春(肝の季節)

春は「肝」の季節。肝の機能を高め、気の流れをスムーズにする食材がおすすめです。

春におすすめの食材: 春菊、よもぎ、セロリ、レモン、梅干し、緑茶 調理法: 軽く炒める、蒸す 注意点: 春は「風邪」が流行る季節なので、風を防ぐ温かい食事を心がける

夏(心の季節)

夏は「心」の季節。暑さで消耗した気を補い、心の機能を安定させる食材を選びましょう。

夏におすすめの食材: 苦瓜、トマト、スイカ、キュウリ、緑豆、ハト麦茶 調理法: さっと茹でる、冷やし過ぎない温度で 注意点: 冷たすぎる食べ物は避け、常温か少し冷やす程度に

秋(肺の季節)

秋は「肺」の季節。乾燥から肺を守り、気を潤す食材がおすすめです。

秋におすすめの食材: 梨、リンゴ、白きくらげ、はちみつ、白ごま、銀杏 調理法: 煮る、蒸す 注意点: 適度な湿気を与える食材を選び、体の乾燥を防ぐ

冬(腎の季節)

冬は「腎」の季節。腎の機能を高め、陽気を補う温かい食材が効果的です。

冬におすすめの食材: 黒豆、くるみ、栗、羊肉、鶏肉、根菜類、生姜、シナモン 調理法: じっくり煮込む、温める 注意点: 体を冷やす食べ物は特に避け、内側から温める食事を意識する

起立性調節障害に効果的な食事療法レシピ

実際に当院の患者様に好評だった、起立性調節障害改善のためのレシピをいくつかご紹介します。

朝のエネルギーチャージ粥

材料 (1人分):

  • もち米 1/4カップ
  • 白米 1/4カップ
  • 水 2カップ
  • 生姜 小さじ1/2(みじん切り)
  • 塩 少々
  • トッピング: 刻みねぎ、ごま、梅干し、納豆など

作り方:

  1. もち米と白米を洗い、30分ほど水に浸しておく
  2. 鍋に米と水、生姜を入れて火にかける
  3. 沸騰したら弱火にし、15〜20分煮る
  4. 米が柔らかくなったら塩で味を調え、好みのトッピングを加える

効果: もち米は「脾」を強化し、生姜は体を温め、気の流れを促進します。朝起きるのが辛い方に特におすすめです。

気血補充スープ

材料 (2人分):

  • 鶏もも肉 1枚
  • 人参 1/2本
  • 大根 5cm
  • 干し椎茸 3枚
  • 生姜 1かけ
  • ねぎ 1本
  • 水 800ml
  • 塩、醤油 適量

作り方:

  1. 干し椎茸は水で戻しておく
  2. 鶏肉は一口大に切り、野菜は食べやすい大きさに切る
  3. 鍋に水を入れ、生姜、鶏肉を入れて中火で10分煮る
  4. アクを取り、野菜、戻した椎茸を加えて弱火で15分煮る
  5. 最後に刻みねぎを加え、塩、醤油で味を調える

効果: 鶏肉と干し椎茸は気血を補い、根菜類は脾胃の機能を高めます。疲労回復や立ちくらみの改善に効果的です。

腎を温める温活ドリンク

材料 (1人分):

  • 黒豆茶 1袋(または黒豆 大さじ1)
  • 生姜 1かけ(薄切り)
  • シナモンスティック 1/2本
  • 水 300ml
  • はちみつ 適量(お好みで)

作り方:

  1. 鍋に水、生姜、シナモンスティックを入れて火にかける
  2. 沸騰したら弱火にし、黒豆茶(または黒豆)を加えて5分煮る
  3. 火を止め、5分ほど蒸らす
  4. カップに注ぎ、お好みではちみつを加える

効果: 黒豆は腎を補い、生姜とシナモンは体を温めます。冷え症のある起立性調節障害の方におすすめです。

食事改善の始め方

食事を一度に全て変えるのは難しいものです。以下のステップで徐々に改善していくことをおすすめします。

Step 1: まずは朝食から

朝食は起立性調節障害の方にとって最も重要な食事です。まずは朝食を温かいものに変え、タンパク質を含むものにしましょう。パンからおかゆや雑穀ごはんへ、冷たい牛乳から温かい豆乳や味噌汁へ変えるだけでも効果があります。

Step 2: 冷たいものを減らす

次に、日常的に摂取している冷たい食べ物や飲み物を減らしましょう。冷蔵庫から出したままの飲み物は常温に戻してから飲む、アイスクリームの代わりに温かいデザート(蒸しケーキや温かいフルーツコンポートなど)を選ぶといった工夫をしてみてください。

Step 3: 加工食品を減らし、手作りを増やす

可能な範囲で、コンビニ食や市販の加工食品を減らし、手作りの食事を増やしましょう。すべての食事を手作りにするのが難しければ、週末に作り置きをするなどの工夫もおすすめです。

Step 4: 陽性の食材を意識的に取り入れる

最後に、生姜、にんにく、ねぎ、シナモンなどの陽性食材を積極的に取り入れましょう。料理に少量加えるだけでも、体を温め、気の流れを良くする効果があります。

おわりに

食事は日々の習慣であり、その積み重ねが体を作ります。起立性調節障害の症状改善には、薬や施術だけでなく、日常の食事を見直すことが非常に重要です。

東洋医学の知恵を活かした食事療法と、現代の栄養学を組み合わせることで、より効果的に症状を改善することができます。一人ひとりの体質や症状に合わせた食事プランを作ることが、真の健康への近道なのです。

もちろん、食事改善だけで全ての症状が解消するわけではありません。当院では、東洋医学的な診断に基づいた整体や気功施術と併せて、食事指導も行っています。総合的なアプローチで、根本から体質改善を目指しましょう。

自分で色々と試してみたけれど良くならない方、薬に頼らず自然な方法で改善したい方、根本から体質を変えたい方は、ぜひ一度当院にご相談ください。一人ひとりに合った食事プランと施術で、起立性調節障害からの解放をサポートいたします。


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