アトピーの裏にある冷え性体質とは?東洋医学で整える根本治療のすすめ

アトピーと冷え性の深い関係を東洋医学で紐解く

治療院を開いて20年、アトピーの患者さんを診ていて気づいたことがあります。8割以上の方が同時に冷え性も抱えているんです。これは偶然ではありません。東洋医学の視点から見ると、両者には深いつながりがあるんですね。

陽気不足が招く皮膚トラブル

東洋医学では、私たちの体を温める力を「陽気」と呼びます。この陽気が不足すると、体の表面である皮膚まで十分な温かさが届かなくなります。

冷えた皮膚は血液循環が悪くなり、栄養や酸素の供給が滞ってしまいます。その結果、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に過敏に反応するようになる…これがアトピーの一因なんです。

ある30代の女性患者さんは、夏でも手足が冷たく、冬場になると決まってアトピーが悪化していました。「先生、なんで寒くなると痒くなるんでしょう?」と困った顔で相談されたことを、今でもよく覚えています。

脾腎陽虚とアトピーの関係

東洋医学の体質論で言うと、冷え性の多くは「脾腎陽虚」という状態です。簡単に言えば、消化器系(脾)と生殖泌尿器系(腎)の温める力が弱くなっている状態ですね。

脾の陽気が不足すると、食べ物を消化吸収する力が低下します。栄養が十分に吸収されないと、皮膚の材料となるタンパク質やビタミンが不足してしまいます。

腎の陽気が不足すると、全身を温める根本的な力が弱くなります。特に手足の末端や皮膚表面への血流が悪くなり、アトピーが慢性化しやすくなるんです。

気血の巡りから見た治療法

気功の観点から言うと、冷え性もアトピーも根本的には「気血の巡りの悪さ」が原因です。気が滞れば血も滞る、血が滞れば気も滞る…まさに悪循環なんですね。

治療のポイントは、まず「気」の流れを良くすることです。気が動けば、自然と血液循環も改善されます。そして温かい血液が皮膚まで届くようになれば、アトピーの症状も和らいでくる(これまで何度も確認してきた現象です)。

食養生による体質改善

冷え性とアトピーを同時に改善するには、食事の見直しが欠かせません。

まず避けたいのは「体を冷やす食材」です。生野菜サラダ、冷たい飲み物、南国のフルーツ(バナナ、パイナップル、マンゴーなど)、白砂糖を使った甘いもの…これらは陽気を消耗させてしまいます。

逆に積極的に摂りたいのは「体を温める食材」です。生姜、シナモン、黒豆、くるみ、羊肉、鶏肉…これらは腎陽を補い、全身を温めてくれます。

特に生姜は優秀で、毎朝コップ1杯の生姜湯を飲む習慣をつけるだけで、3か月後には手足の冷えが明らかに改善します。ただし、生の生姜は体の表面を温めますが、乾燥生姜(乾姜)の方が体の深部を温める効果が高いんです。

季節に応じた養生法

冷え性の方にとって、冬は特に辛い季節です。でも東洋医学では「冬は蔵の季節」と言って、エネルギーを蓄える大切な時期でもあります。

冬場の養生のポイントは「早寝遅起き」です。夜は9時には布団に入り、朝は日が昇ってから起きる。これで腎の陽気を最大限に温存できます。

春になったら「肝気」を発散させる季節です。酸味のある食材(梅干し、酢の物など)で肝の働きを助け、滞った気血を動かしていきます。

夏は「心火」の季節。一見すると冷え性には関係なさそうですが、実は夏の過ごし方が冬の冷えを決めるんです。エアコンの効きすぎた部屋にいると、秋冬の冷えが深刻になってしまいます。

入浴法による温熱療法

入浴は冷え性改善の最も手軽で効果的な方法です。でも、ただ熱いお湯に入れば良いというものではありません。

理想的な入浴法は「温冷交代浴」です。まず40度のお湯に3分間浸かり、その後25度の水で30秒間足を冷やす。これを3回繰り返すと、血管の収縮拡張が促進され、血液循環が劇的に改善します。

薬草風呂もおすすめです。よもぎ、しょうが、みかんの皮…これらを煮出した液を湯船に入れると、体の芯から温まります。特によもぎは「医草の王」と呼ばれ、冷えによるアトピーには絶大な効果があります。

呼吸法による陽気の増強

気功の基本である腹式呼吸は、体内の陽気を増やす最も確実な方法です。正しい呼吸法を身につけることで、薬に頼らずに体質改善ができるんです。

具体的なやり方:

  1. 仰向けに寝て、両手を下腹部に置く
  2. 鼻から6秒かけてゆっくり息を吸い、下腹部を膨らませる
  3. 2秒息を止める
  4. 口から10秒かけて息を吐き、下腹部を凹ませる

これを毎日朝晩各15回続けると、1か月程度で手足の冷えが改善し始めます。同時にアトピーの症状も和らいでくることが多いんです。

ツボ刺激による血行促進

冷え性とアトピーに効果的なツボをいくつかご紹介します。毎日の習慣にしてみてください。

「関元(かんげん)」:おへそから指4本分下にあります。ここは「元気の関所」と呼ばれ、全身の陽気を補う重要なツボです。手のひらで時計回りに108回マッサージしてください。

「三陰交(さんいんこう)」:内くるぶしから指4本分上の位置です。脾・肝・腎の経絡が交わる場所で、血行促進と体質改善に効果的です。

「湧泉(ゆうせん)」:足の裏の土踏まずのやや上、足指を曲げた時にできるくぼみです。腎の経絡の始まりの点で、生命力を高めてくれます。

各ツボを1日3回、1回につき30秒間刺激しましょう。続けることで確実に効果を実感できるはずです。

運動による気血活性化

冷え性の改善には適度な運動が欠かせません。でも激しい運動は陽気を消耗させてしまうので、ゆっくりとした動きが理想的です。

太極拳は最高の運動です。ゆっくりとした円運動で全身の気血を巡らせ、同時に呼吸も整えます。1日15分の太極拳で、3か月後には明らかに冷えが改善します。

散歩も良いですね。特に朝の散歩は陽気を取り入れる効果があります。ただし、冬場は日が昇ってから出かけるようにしてください。暗いうちの外出は、かえって陽気を消耗してしまいます。

睡眠環境の調整

質の良い睡眠は、陽気の回復に欠かせません。冷え性の方は特に、寝室の環境に気を使ってください。

室温は18-20度が理想的です。暖房で部屋を暖めすぎると、かえって陽気が発散されて翌朝の冷えがひどくなることがあります。

湯たんぽの活用もおすすめです。電気毛布と違って、じんわりとした温かさが陽気を補ってくれます。お腹や腰に当てて眠ると、翌朝の目覚めが全然違います(これは多くの患者さんが実感されています)。

感情と冷えの関係

意外に思われるかもしれませんが、感情の状態と冷え性には深い関係があります。不安や恐れは「腎気」を消耗させ、冷えを悪化させるんです。

逆に、明るく前向きな気持ちは陽気を増やしてくれます。笑うことで全身の気血が活性化され、体温も上昇します。1日1回は心から笑える時間を作ってみてください。

ストレス解消も重要です。ストレスは気の流れを滞らせ、結果として血行不良を引き起こします。好きな音楽を聴いたり、好きな香りを楽しんだり…小さなことでも良いので、心がほっとする時間を大切にしてください。

漢方薬による体質改善

冷え性とアトピーには、いくつかの代表的な漢方薬があります。ただし、体質に合わないものを服用すると逆効果になることもあるので、必ず専門家に相談してください。

「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」は、手足の冷えが強い方によく使われます。血行を促進し、同時に皮膚の炎症も抑えてくれます。

「真武湯」は、全身の陽気が不足している方に適しています。特に腎陽虚による冷えとアトピーには効果的です。

「十全大補湯」は、体力が著しく低下している方におすすめです。気血両方を補い、免疫力も高めてくれます。

生活習慣の見直し

冷え性とアトピーの根本改善には、生活習慣全体の見直しが必要です。

まず、服装から変えてみましょう。首、手首、足首の「三つの首」を温めることで、効率よく全身を温められます。特に首元のマフラーは、わずか1枚で体感温度が3-4度も上がります。

靴下の重ね履きも効果的です。シルクの5本指ソックスの上に、綿やウールの靴下を重ねる。この方法で足先の冷えが劇的に改善した患者さんを何人も見てきました。

腸内環境と免疫力

最近の研究で、腸内環境と免疫力の関係が注目されています。冷え性の方は消化機能が弱いことが多く、それがアトピーの悪化にもつながっているんです。

発酵食品を積極的に摂りましょう。味噌、醤油、納豆、漬物…これらは腸内の善玉菌を増やし、消化機能を改善してくれます。

特に味噌は優秀で、毎日1杯の味噌汁を飲む習慣をつけるだけで、冷えもアトピーも改善することが多いんです。ただし、市販の出汁の素ではなく、昆布や鰹節から取った天然の出汁を使ってくださいね。

環境因子への対策

現代の住環境は、冷え性にとって厳しいものがあります。コンクリートの建物、エアコンの効きすぎた室内、化学物質…これらすべてが陽気を奪っていくんです。

できるだけ自然素材に囲まれた生活を心がけてください。木造の家、天然繊維の衣類、無添加の食品…小さな変化の積み重ねが、大きな改善につながります。

観葉植物を置くのも良いですね。植物は室内の空気を浄化し、同時に自然のエネルギーを発してくれます。特にサンスベリアやポトスは、アトピーの方にも優しい植物です。

継続の大切さ

冷え性もアトピーも、一朝一夕には改善しません。でも正しい方法を継続すれば、必ず良くなります。

私が診てきた患者さんの中で、劇的に改善された方々には共通点があります。それは「諦めずに続けたこと」です。3か月で変化を感じ、6か月で明らかな改善を実感し、1年後には別人のようになっている…そんなケースをたくさん見てきました。

心身の調和を目指して

東洋医学の真髄は「心身一如」です。体の冷えと心の冷えは表裏一体。温かい心を持つことで、体も自然と温まってくるんです。

家族や友人との温かい関係、好きなことに打ち込む時間、自然の美しさに感動する心…これらすべてが、あなたの陽気を高めてくれます。

治療院で「先生、体も心も温かくなりました!」と笑顔で報告してくださる患者さんを見ていると、この仕事をしていて本当に良かったなと思います(少し感動してしまいました)。

冷え性とアトピーは確かに辛い症状です。でも同時に、より健康的な生活を送るためのサインでもあります。体の声に耳を傾け、自然の法則に従った生活を心がけることで、必ず改善の道筋が見えてくるはずです。

あなたは今日から、どんな温活を始めてみたいと思いますか?😊