ステロイドで治らないアトピーへ|腸内環境を整える東洋医学的アプローチ

アトピーの根本原因は腸にある?東洋医学の視点から

治療院を開業して20年、アトピーの患者さんを多くの方を診てきましたが、最近確信していることがあります。重度のアトピーの方ほど、腸の状態が悪いということです。便秘、下痢、お腹の張り…腸のトラブルとアトピーは、まさに表裏一体の関係なんですね。

東洋医学における腸の位置づけ

西洋医学では腸は単なる消化器官ですが、東洋医学では「脾胃」として、生命活動の根幹を支える重要な臓器とされています。特に「脾」は、食べ物から気血を作り出す「後天の本」と呼ばれる存在です。

この脾胃の働きが低下すると、体内に「湿邪」や「痰濁」といった病理産物が蓄積します。これらが皮膚から排出されようとして起こるのが、アトピーの炎症反応なんです。

ある30代の女性患者さんは、毎朝コーヒー4杯とパン2個を急いで食べる習慣がありました(忙しい現代人の典型的なパターンですね)。慢性的な便秘と顔のアトピーで悩んでおられましたが、明らかに脾胃の機能低下が原因でした。

腸内環境とアトピーの深い関係

気功の観点から見ると、腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、全身の気血の巡りに影響を与えます。腸内環境が乱れると、そのシグナルが経絡を通じて皮膚に伝わり、炎症として現れるんです。

実際に診察していると(これまで数千回は確認していますが)、便秘がひどい時期とアトピーが悪化する時期が見事に一致している患者さんが本当に多いんです。

特に注目すべきは「腸漏れ症候群(リーキーガット)」です。腸壁のバリア機能が低下すると、本来なら体内に入らない毒素や未消化の食物が血液中に入り込み、それが全身の炎症を引き起こします。

脾虚湿盛によるアトピー悪化

東洋医学の病理で最も重要なのが「脾虚湿盛」という状態です。脾の働きが弱くなると、体内の水分代謝が乱れ、湿邪が蓄積してしまいます。

この湿邪がアトピーの大きな原因となります。ジュクジュクした湿疹、なかなか治らない炎症、季節の変わり目の悪化…これらはすべて湿邪の仕業なんですね。

湿邪は特に梅雨時期に悪化しやすく、この時期にアトピーが悪化する患者さんを毎年200人以上診ています。体内の湿度と外的環境の湿度が呼応しているのを、日々実感しています。

食養生による腸内環境改善

腸内環境を整えるための食養生について、具体的にお話ししましょう。

まず避けたいのは「湿邪を助長する食材」です。冷たいもの、甘いもの、油っこいもの、生もの…これらは脾胃に負担をかけ、湿邪を増やしてしまいます。

特に注意したいのが白砂糖です。1日25グラム以上の摂取は腸内の悪玉菌を増やし、炎症を悪化させます。清涼飲料水1本で30-40グラムの糖分が含まれているので、要注意です。

逆に積極的に摂りたいのは「健脾利湿」の食材です。山芋、ハト麦、小豆、冬瓜…これらは脾の働きを助け、体内の余分な湿気を排出してくれます。

発酵食品による善玉菌増加

腸内環境改善の要は、善玉菌を増やすことです。日本古来の発酵食品は、この点で非常に優秀なんです。

味噌は毎日欠かさず摂ってほしい食品です。1日1杯の味噌汁で、腸内の善玉菌が劇的に増加します。ただし、市販の出汁の素ではなく、昆布や鰹節から取った天然の出汁を使ってください。

納豆も素晴らしい発酵食品で、1パック50グラムに約1000億個もの納豆菌が含まれています。毎朝1パックの納豆で、腸内環境が明らかに改善した患者さんを何人も見てきました。

漬物も良いのですが、市販品の多くは添加物が多いので、できれば手作りをおすすめします。キャベツを塩もみして3日間発酵させるだけで、立派な乳酸菌食品になります。

食物繊維による腸内清掃

食物繊維は腸内の掃除屋さんです。善玉菌のエサにもなり、悪玉菌を減らす効果もあります。

水溶性食物繊維(りんご、バナナ、海藻類など)は腸内で善玉菌を増やし、不溶性食物繊維(根菜類、きのこ類など)は腸の蠕動運動を促進して便通を改善します。

1日の理想的な摂取量は25-30グラムですが、現代人の平均は15グラム程度しかありません。意識的に野菜や海藻類を増やす必要があります。

腸の冷えとアトピーの関係

東洋医学では「脾は燥を喜び湿を悪む」と言われます。腸が冷えると機能が低下し、湿邪が蓄積しやすくなります。

冷たい飲み物、生野菜サラダ、アイスクリーム…これらは腸を冷やし、アトピーを悪化させる大きな要因です。特に朝一番の冷たい飲み物は、1日中脾胃の働きを低下させてしまいます。

逆に、温かい食べ物や飲み物は腸の働きを活性化してくれます。朝起きたらまず白湯を1杯飲む習慣をつけてください。これだけでも腸の調子が格段に良くなります。

ストレスと腸脳相関

「腸は第二の脳」と呼ばれるほど、脳と腸は密接につながっています。ストレスは直接腸の働きに影響し、それがアトピーの悪化につながるんです。

慢性的なストレスは交感神経を優位にし、腸の蠕動運動を抑制します。その結果、便秘や腸内環境の悪化を招き、アトピーが悪化する悪循環に陥ってしまいます。

深呼吸や瞑想は、副交感神経を活性化し、腸の働きを改善してくれます。1日10分でも良いので、心を静める時間を作ってみてください。

腸の蠕動運動を促進する気功法

気功には腸の働きを改善する効果的な方法があります。簡単にできるものをご紹介しますね。

「腹部マッサージ」:仰向けに寝て、両手を重ねてお腹に置きます。時計回りに36回、ゆっくりと円を描くようにマッサージしてください。朝晩の習慣にすると、便通が驚くほど改善します。

「丹田呼吸」:お腹に意識を集中して、深くゆっくりとした腹式呼吸を行います。吸う時にお腹を膨らませ、吐く時にへこませる。これを15回繰り返すと、腸の気の流れが良くなります。

食事のタイミングと腸の働き

いつ食べるかも、腸の健康には重要です。東洋医学では、臓器にもそれぞれ活動時間があると考えられています。

胃の時間は午前7-9時、脾の時間は午前9-11時です。この時間帯にしっかりとした朝食を摂ることで、1日の消化機能が活性化されます。

逆に、夜21時以降の食事は脾胃に大きな負担をかけます。夕食は19時までに済ませるのが理想的です。どうしても遅くなる場合は、消化の良いものを少量だけにしてください。

水分摂取と腸の潤い

適切な水分摂取は腸の健康に欠かせません。でも、ただ大量に飲めば良いというものではありません。

1日1.5-2リットルの水分を、少しずつ分けて摂取するのが理想的です。一度に大量に飲むと、脾胃に負担をかけてしまいます。

朝起きたら白湯を1杯、食前30分に常温の水をコップ半分、食後2時間経ってから少量の水分…このようなリズムで摂取してください。

睡眠と腸の修復機能

質の良い睡眠は、腸の修復に欠かせません。特に夜の11時から午前3時は、腸の再生が最も活発に行われる時間帯です。

この時間に深く眠ることで、腸内環境が改善され、アトピーの症状も和らいできます。夜更かしは腸にとって最悪の習慣と言えるでしょう。

寝る前のスマートフォンやテレビは、睡眠の質を低下させ、間接的に腸の働きを悪くします。寝室は暗くし、リラックスできる環境を整えてください。

運動による腸の活性化

適度な運動は腸の蠕動運動を促進し、便通を改善してくれます。特に効果的なのが散歩です。

1日30分の散歩で、腸の働きが明らかに改善します。歩くリズムが腸の蠕動運動を刺激し、自然な排便リズムを作ってくれるんです。

ヨガも素晴らしい運動です。特に「ねじりのポーズ」は腸を刺激し、消化機能を改善してくれます。ただし、食後すぐの運動は避けてください。

季節と腸の関係

季節によって腸の状態も変わります。これを理解して適切に対応することが、アトピー改善の鍵になります。

春は「肝」の季節で、ストレスで腸の働きが乱れやすくなります。この時期は酸味のある食材(梅干し、酢の物など)で肝気を落ち着かせましょう。

夏は「心」の季節で、冷たいものを摂りすぎて脾胃を傷めがちです。温かい食べ物を心がけ、冷房で体を冷やしすぎないよう注意してください。

秋は「肺」の季節で、乾燥により腸も乾きやすくなります。潤いのある食材(白きくらげ、梨、蜂蜜など)を積極的に摂りましょう。

冬は「腎」の季節で、全体的に機能が低下しがちです。温性の食材(生姜、シナモン、羊肉など)で体を温めることが大切です。

腸内細菌の多様性

最近の研究で、腸内細菌の多様性がアトピーと深く関わっていることが分かってきました。多様な菌種が存在することで、免疫バランスが保たれるんです。

抗生物質の乱用は腸内細菌の多様性を破壊し、アトピーを悪化させる可能性があります。本当に必要な場合以外は、できるだけ避けた方が良いでしょう。

プロバイオティクス(生きた善玉菌)とプレバイオティクス(善玉菌のエサ)の両方を摂取することで、腸内環境を効果的に改善できます。

腸のデトックス法

現代人の腸には、様々な毒素が蓄積しています。これらを定期的にデトックスすることが、アトピー改善には必要です。

週に1回のプチ断食(18時間の絶食)は、腸に休息を与え、修復機能を高めてくれます。ただし、体調の悪い時や持病のある方は、必ず医師に相談してください。

ファイトケミカル豊富な食材(ブロッコリー、ケール、ビーツなど)は、腸内の毒素を中和し、排出を促進してくれます。週に3-4回は摂取したいですね。

薬草による腸のケア

東洋医学には、腸の働きを改善する優秀な薬草があります。

ハト麦は健脾利湿の代表的な薬草で、1日30グラムを煮出して飲むと、腸内環境が劇的に改善します。3か月続けた患者さんの多くが、アトピーの改善を実感されています。

甘草は腸の炎症を抑え、粘膜を保護してくれます。ただし、長期間の大量摂取は避け、専門家の指導のもとで使用してください。

腸年齢とアトピーの関係

腸にも年齢があります。不適切な生活習慣により、実年齢よりも腸が老化している方が多いんです(これは本当に深刻な問題だと感じています)。

腸年齢が若い人ほど、アトピーの症状も軽く、治療に対する反応も良好です。生活習慣を見直すことで、腸年齢を若返らせることは十分可能です。

継続的なケアの重要性

腸内環境の改善は、一朝一夕にはいきません。でも正しい方法を継続すれば、必ず良い結果が得られます。

私が診てきた患者さんの中で、劇的に改善された方々には共通点があります。それは「腸を大切にする生活を続けたこと」です。3か月で変化を感じ、6か月で明らかな改善を実感し、1年後には見違えるような状態になっている…そんなケースを数百例見てきました。

心と腸の調和

東洋医学の真髄は「心身一如」です。心の状態は直接腸に影響し、腸の状態は心にも影響します。

感謝の気持ちを持つこと、人との良い関係を築くこと、自然と触れ合うこと…これらすべてが腸の健康を促進し、結果的にアトピーの改善につながるんです。

治療院で「先生、腸を意識するようになってから、体も心も軽くなりました!」と笑顔で報告してくださる患者さんを見ていると、この仕事をしていて本当に良かったなと思います。

アトピーと腸の関係は、まだまだ解明されていない部分も多いです。でも確実に言えることは、腸を大切にすることで、アトピーは必ず改善するということです。

あなたの腸は今、どんな状態だと思いますか?😊