東洋医学から見るアトピーと皮膚の火照り:気功の視点

皆さん、こんにちは。気功の専門家であり、東洋医学に長年携わっている整体師の冨高です。治療歴は20年になります。今日は、アトピー性皮膚炎、特に「皮膚が火照る」という症状に焦点を当てて、東洋医学、特に気功の観点から深く掘り下げていきたいと思います。東洋医学の世界は奥深く、西洋医学とは異なる視点から身体を捉えます。アトピーで悩んでいらっしゃる方、皮膚の火照りに困っている方に、何かヒントになれば幸いです。

アトピー性皮膚炎の多様な様相

アトピー性皮膚炎と一言で言っても、その症状は本当に多岐にわたります。乾燥してカサカサになるタイプもあれば、ジュクジュクと浸出液が出るタイプ、そして今回特に注目する「皮膚が火照る」タイプ。この火照り感、本当に辛いですよね。夜も眠れない、集中できない、イライラが募る……私の患者さんからも、この火照りに関する訴えは非常に多いです。

西洋医学では、アトピーは皮膚のバリア機能の低下や免疫の過剰反応として捉えられます。もちろん、それは非常に重要な視点です。しかし、東洋医学では、もう少し俯瞰的に、身体全体のバランスとしてアトピーを捉えます。皮膚は内臓の鏡とも言われますが、まさにその通りなんです。

東洋医学における「火照り」の解釈

では、東洋医学ではこの「火照り」をどのように解釈するのでしょうか?東洋医学には「陰陽(いんよう)」という基本的な考え方があります。ざっくり言うと、陰は「冷やす」「潤す」「静」の性質を持ち、陽は「温める」「乾燥させる」「動」の性質を持ちます。この陰と陽のバランスが崩れると、体に不調が生じると考えます。

皮膚の火照りは、多くの場合、この「陽(熱)が過剰になっている状態」と捉えられます。身体の中に余分な熱がこもっている、あるいは潤いが不足して熱がこもりやすくなっている、そんなイメージです。具体的には、「血熱(けつねつ)」や「陰虚火旺(いんきょかおう)」といった状態が考えられます。

血熱というのは、文字通り血液に熱がこもっている状態です。アトピーで皮膚が赤く、痒みが強く、熱を持っているような状態は、まさにこの血熱が関与していることが多いですね。例えば、辛いものを食べすぎたり、精神的なストレスが続いたりすると、血熱が生じやすくなります。

一方、陰虚火旺というのは、身体を潤す「陰液(いんえき)」が不足して、相対的に熱が上がってしまう状態を指します。例えるなら、鍋に入った水が少なくなって、すぐに沸騰してしまうようなものです。睡眠不足や過労、慢性的な消耗などが原因で陰液が不足し、火照りや口の渇き、夜間の発汗などの症状が出ることがあります。特に女性は、生理や更年期などで陰液が消耗しやすい傾向にあります。

気と血、水の巡り

東洋医学では、身体を構成する基本的な要素として「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の三つが重要視されます。

  • :生命活動のエネルギー。目に見えないが、身体を動かし、温め、守る力。
  • :血液そのものだけでなく、身体を栄養し潤す物質。
  • :津液(しんえき)とも呼ばれ、体内のすべての水分。潤滑油のような役割を果たす。

これら気・血・水がバランス良く巡っている状態が健康であり、どこかに滞りや不足、過剰が生じると不調が現れます。皮膚の火照りの場合、気と血の巡りが滞って熱がこもったり、水が不足して相対的に熱が上がったりしていると考えられます。

思わず、以前担当した患者さんの顔が浮かびます。その方は、とにかく皮膚の火照りがひどく、夜中に何度も起きてしまうほどでした。食生活を詳しく伺うと、揚げ物や辛いものを好んで食べ、毎日、アイスクリームを1つは必ず口にすると言っていました。睡眠時間もバラバラで、いつも寝不足気味。典型的な血熱と陰虚が混在しているパターンでしたね。

現代社会における「火照り」の原因

現代社会は、アトピー性皮膚炎が悪化しやすい要因がたくさんあります。特に「火照り」に関しては、以下の点が挙げられます。

  1. ストレス過多:精神的なストレスは、気の巡りを悪くし、熱をこもらせる大きな原因となります。イライラすると顔が赤くなる、というのはまさに気の滞りからくる熱の現れです。
  2. 睡眠不足:睡眠は、身体の陰液を補い、クールダウンさせる大切な時間です。睡眠が不足すると陰液が消耗し、熱がこもりやすくなります。夜更かしは要注意ですよ。
  3. 食生活の乱れ:脂っこいもの、辛いもの、甘いものの過剰摂取は、身体に余分な熱や湿(しつ:余分な水分や老廃物)を生み出し、火照りを悪化させることがあります。冷たい飲食物も、一時的には体を冷やすように感じますが、消化器に負担をかけ、長期的に見ると気の巡りを悪くして熱をこもらせることもあります。
  4. 環境要因:暑い気候や乾燥した環境も、身体に負担をかけ、熱をこもらせる要因となり得ます。

気功によるアプローチ

気功は、まさにこの気・血・水の巡りを整え、身体のバランスを取り戻すための有効な手段です。手技の話は控えますが、気功では、呼吸法やゆったりとした動きを通じて、体内の気の流れを調整します。

例えば、火照りの症状が強い方には、熱を冷まし、陰液を補うような気功法をお伝えすることが多いです。呼吸を深く、ゆっくりと行うことで、体内の熱をクールダウンさせ、リラックスを促します。また、ゆったりとした動きは、滞った気の流れをスムーズにし、体内の老廃物を排出する手助けもします。

気功は即効性のある治療ではありませんが、継続することで体質そのものを改善していくことを目指します。私自身、日々の気功の実践を通じて、身体の変化を実感しています。焦らず、ご自身のペースで取り組むことが大切です。

東洋医学的な生活養生のアドバイス

私が患者さんにお伝えする生活養生のアドバイスも、基本的には気・血・水のバランスを整えることに主眼を置いています。

  • 食事:身体の熱を冷ます食材、例えば冬瓜やキュウリ、トマト、緑豆、ハトムギなどを積極的に摂ることをお勧めします。味付けは薄味を心がけ、調理法も蒸す、煮るなどが良いでしょう。刺激物や脂っこいものは控えめに。冷蔵庫から出したばかりのキンキンに冷えた飲み物より、常温のものをゆっくり飲むのが理想的です。
  • 睡眠:質の良い睡眠を確保することが、身体の陰液を養う上で非常に重要です。遅くとも夜11時には就寝し、7時間以上の睡眠を目標にしましょう。
  • ストレスケア:ストレスは気の巡りを滞らせ、熱を生みます。趣味の時間を持つ、好きな音楽を聴く、森林浴をするなど、自分なりのリラックス法を見つけることが大切です。気功もその一つですね。
  • 適度な運動:激しい運動は、かえって熱を生むことがあります。ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、身体に負担の少ない、ゆったりとした運動がおすすめです。これは、気の巡りを良くし、身体全体のバランスを整えます。

これらの生活養生は、決して特別なことではありません。日々の小さな心がけの積み重ねが、大きな変化をもたらします。

最後に

アトピー性皮膚炎、特に皮膚の火照りは、本当に辛い症状です。しかし、東洋医学の視点から見ると、それは身体が発しているSOSサインでもあります。なぜ熱がこもるのか、何が原因で火照りが生じているのか、身体の声に耳を傾けることが大切です。

気功や東洋医学の養生は、決して西洋医学を否定するものではありません。むしろ、両者の良いところを取り入れ、ご自身に合った方法を見つけることが、アトピーとの付き合い方、そして完治への近道だと私は考えています。

もし、今、皮膚の火照りに悩んでいらっしゃる方がいれば、今日の話が少しでもあなたのヒントになれば幸いです。

あなたはご自身の身体の声に、きちんと耳を傾けていますか?