東洋医学における気と頭痛の関係
東洋医学では、「気」は体内を巡る生命エネルギーであり、その流れの乱れが様々な症状を引き起こすと考えられています。頭痛についても、気の流れの異常が主要な原因の一つとされています。ここでは、気と頭痛の関係について詳しく解説します。
気の基本概念と頭痛との関連性
東洋医学では「不通則痛(ふつうそくつう)」「不栄則痛(ふえいそくつう)」という原則があります。これは「通じないと痛み」「栄養が行き渡らないと痛み」という意味で、頭痛の根本的な原因を説明しています。気の乱れが頭痛を引き起こす主な経路は以下のとおりです:
- 気の滞り(気滞) – ストレスや緊張により気の流れが停滞すると痛みが生じます
- 気の不足(気虚) – 疲労や過労により気が不足し、頭部に十分なエネルギーが届かないと痛みが起こります
- 気の上逆 – 肝の気が上昇するなど、気が異常に上方へ移動することで頭痛が生じます
頭痛の東洋医学的分類
東洋医学では頭痛を大きく「外感頭痛」と「内傷頭痛」に分類します。
1. 外感頭痛(外部の邪気による頭痛)
外部から侵入した「邪気」によって引き起こされる頭痛です。風、寒、暑、湿、燥、火といった六つの邪気が体内の気の流れを阻害して頭痛を引き起こします。
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風寒頭痛: 寒は凝縮して滞る性質があるため、気血の巡りを停滞させ痛みを引き起こします。頭の真ん中のラインで痛みが生じることが多く、首や背中の緊張を伴います。
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風熱頭痛: 熱は上昇する性質があり、風熱の邪気が頭部に上がることで熱感を伴う頭痛が起こります。発熱や口渇などの症状を伴うことが特徴です。
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風湿頭痛: 湿は粘性が強く、それが頭部に侵入すると頭が重く締め付けられるような痛みを引き起こします。湿度の高い季節に悪化することが多いです。
2. 内傷頭痛(内部の不調による頭痛)
内臓機能の低下や気血の乱れなど、体内の不調によって引き起こされる頭痛です。
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肝火頭痛: ストレスやイライラにより「肝」の気が滞ると、やがてそれが「肝火」となって上昇し、頭痛を引き起こします。怒りやイライラで痛くなる頭痛がこれに当たります。コメカミ付近の偏頭痛として現れることが多く、顔の紅潮や目の充血を伴います。
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気虚頭痛: 過労や睡眠不足などにより気が不足し、頭部に十分なエネルギーが届かないために起こる頭痛です。頭痛は疲労時に悪化し、息切れや倦怠感、食欲不振などを伴います。
「生まれつき身体が虚弱な方・疲労・慢性疾患・加齢などにより、気が巡らず、頭にエネルギーが届かないために生じる頭痛です。頻繁に発症する頭痛で、疲労を感じると痛みが増します。」
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血虚頭痛: 「血」の不足により頭部が十分に栄養されないことで起こる頭痛です。めまいや立ちくらみ、顔色の悪さなどを伴います。
「出血・出産・夜更かし・栄養不足などにより、血の損失や、血の生成不足が原因で、脳への栄養が足りないために起こる頭痛です。」
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湿痰頭痛(風淡頭痛): 体内に湿や水が過剰に溜まることで起こる頭痛です。気圧の変化や天候に左右されることが多く、頭重感やめまいを伴います。
「漢方薬で頭痛を治療する場合、痛みが天候に左右されるというのは治療上の大切なポイントになります。身体に余分な水が貯まることで起こると解釈され…」
気のバランスを整える治療法
東洋医学では、気の流れを正常化することを主な治療目標とし、頭痛のタイプに応じた以下のようなアプローチを行います:
1. 漢方薬による治療
頭痛のタイプに合わせた漢方薬が処方されます:
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血行不良タイプ(気滞血瘀): 加味逍遙散、桂枝茯苓丸、釣藤散など – 気血を巡らせて痛みを解消する効果があります。
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疲労タイプ(気血両虚): 当帰芍薬散、十全大補湯、補中益気湯など – 気血を補う効果があります。
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水たまりタイプ(水毒): 苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、五苓散など – 胃腸の調子を整え、水の巡りを良くする効果があります。
2. 鍼灸治療
鍼灸は気の流れを整える効果があり、頭痛の根本的な改善に役立ちます。特に「体質から変えるためには、鍼灸や漢方薬がオススメです!」と専門家は述べています。
3. 生活養生(日常生活での調整)
東洋医学では、日常生活での養生も重要視されています:
- 気の巡りを良くする養生: 軽い運動やストレッチ、深呼吸などで気の流れを促進します。
- 気を補う養生: 十分な睡眠と休息、気を補う食材(穀類やイモ類など)の摂取が勧められます。
- 水の巡りを良くする養生: 生ものや冷たい飲食物を控え、温かいものを少量ずつ摂ることが推奨されます。
まとめ
東洋医学における頭痛は「気」の流れの異常が根本的な原因とされています。気の滞り、気の不足、気の上昇、さらには気の乱れから生じる血や水の巡りの異常が様々なタイプの頭痛を引き起こすと考えられています。
重要なのは、頭痛は単なる症状ではなく、体からのSOS信号として捉え、痛み止め薬で一時的に症状を抑えるだけでなく、気のバランスを整えることで体質から改善することが東洋医学のアプローチです。
「頭痛薬で一時的に痛みを緩和することを繰り返している方が多くいらっしゃいます。ツラい痛みを頭痛薬で抑える事は、否定しませんが、やっぱり根本から変えていかないと、頭痛の悩みからは解放されません!」
東洋医学では、頭痛という症状を通して体全体のバランスを見直し、心身の調和を取り戻すことを目標としています。これにより、単に痛みを取り除くだけでなく、健康な状態を維持する力を高め、頭痛の再発を防ぐことを目指しています。