東洋医学における「気」と起立性調節障害の関係
東洋医学の世界では、人間の体は「気・血・水」という3つの要素で成り立っているとされています。特に「気」は生命エネルギーそのものであり、あらゆる生命活動の源となる重要な概念です。今日は、この「気」の視点から起立性調節障害を読み解き、なぜ東洋医学的アプローチが効果的なのかをお伝えしたいと思います。
「気」とは何か ー 東洋医学の生命エネルギー
「気」という言葉は日常でもよく使われます。「元気」「やる気」「気力」「気分」…これらはすべて「気」を含む言葉です。東洋医学では、この「気」は目に見えない生命エネルギーであり、体内のすべての活動を支える根源的な力だと考えられています。
気の5つの働き
東洋医学では、気には主に以下の5つの働きがあるとされています。
- 推動作用(すいどうさよう):体内のあらゆる動きを推進する力
- 温煦作用(おんくさよう):体を温め、適切な体温を維持する力
- 防御作用(ぼうぎょさよう):外部からの邪気から体を守る力
- 固摂作用(こせつさよう):血液や体液が漏れ出すのを防ぐ力
- 気化作用(きかさよう):水分や栄養素を変化させ、吸収・排泄する力
この中で、起立性調節障害と特に関連が深いのが「推動作用」です。立ち上がるときに血液を脳に送り上げるのも、朝起きるときに体を活動モードに切り替えるのも、すべてこの推動作用によるものです。
気が不足したり、流れが滞ったりすると、これらの働きがうまく機能せず、様々な症状が現れます。起立性調節障害の症状は、まさにこの「気」の働きの低下を示しているのです。
起立性調節障害の東洋医学的解釈
現代医学では、起立性調節障害は「自律神経の調節機能の障害」と説明されます。では、東洋医学ではどのように解釈するのでしょうか。
気虚(ききょ)- 気の不足
起立性調節障害の方の多くは「気虚」の状態にあります。気虚とは、体内の気が全体的に不足している状態のこと。慢性的な疲労感、倦怠感、息切れ、声が小さい、汗をかきやすいといった症状が特徴です。
特に朝起きられない症状は、気が不足しているため、夜間の寝ている状態(陰の状態)から朝の活動状態(陽の状態)へと切り替える力が弱まっていることを示しています。気虚の状態では、体を動かすための基本的なエネルギーが足りないため、朝のエネルギー消費の多い時間帯に体が対応できないのです。
気滞(きたい)- 気の滞り
気虚と並んで多いのが「気滞」です。気滞とは、気の流れが滞っている状態を指します。イライラ、憂うつ、胸やお腹の張り、ため息が多いなどの症状が現れます。
ストレスや感情の抑圧が長く続くと、気の流れが滞りやすくなります。特に「肝」は気の流れをスムーズにする役割があるため、ストレスが肝の働きを低下させ、全身の気の流れを悪くするのです。起立性調節障害の方は、しばしばこの「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼ばれる状態に陥っています。
気逆(きぎゃく)- 気の逆流
もう一つ重要な病態が「気逆」です。本来、気は上半身では下に、下半身では上に流れるのがバランスの取れた状態です。しかし、気逆では気が上方に逆流し、頭部に集まりすぎてしまいます。
めまい、頭痛、顔のほてり、イライラ、不眠などの症状が現れます。起立性調節障害で立ちくらみやめまいが起きるのは、立ち上がった際に気と血のバランスが崩れ、一時的に脳への血流が不足するためです。気逆の状態では、この調整機能がうまく働かないのです。
陽気虚(ようききょ)- 陽の気の不足
東洋医学では、気は「陰」と「陽」に分かれます。「陽気」は温める作用を持ち、体を活動的な状態に保つ働きがあります。起立性調節障害の方は、この「陽気」が不足している場合が多いです。
手足の冷え、寒がり、顔色が青白い、活力の低下などの症状が見られます。体が冷えると、気と血の流れも滞りやすくなり、全身の機能が低下します。特に現代の若い方に多いのが、この「陽気虚」の状態です。
気の乱れを引き起こす6つの要因
東洋医学では、気の乱れを引き起こす原因として「六淫(りくいん)」と「七情(しちじょう)」があると考えられています。これらが起立性調節障害とどう関係するのか見ていきましょう。
六淫(りくいん)- 外的要因
六淫とは、外部から体に侵入する6つの邪気のことで、風、寒、暑、湿、燥、火があります。現代生活に当てはめると、以下のようなものが当たります。
- 風(ふう): 急な温度変化、エアコンの風、季節の変わり目
- 寒(かん): 冷房の効きすぎ、冷たい飲食物、薄着
- 暑(しょ): 暑すぎる環境、辛すぎる食事
- 湿(しつ): 高湿度の環境、湿気の多い場所での生活
- 燥(そう): 乾燥した環境、水分不足
- 火(か): 過度のストレス、怒り、夜更かし
特に起立性調節障害と関係が深いのは「寒」と「火」です。体の冷えは気と血の流れを妨げ、エネルギー代謝を低下させます。また、精神的ストレスや夜更かしは心の火を過剰にし、陰陽のバランスを崩します。
七情(しちじょう)- 内的要因
七情とは、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚という7つの感情のこと。これらの感情が過度に高まったり、長期間抑圧されたりすると、気の流れが乱れ、様々な不調が生じます。
特に重要なのは以下の3つです。
- 怒(いかり): 怒りを抑圧すると肝の気が鬱滞し、全身の気の流れが悪くなります。
- 思(おもい): 考えすぎると脾の気が滞り、消化機能が低下し、気の生成が妨げられます。
- 恐(おそれ): 恐れや不安は腎の気を損ない、体の根本的なエネルギーを弱めます。
起立性調節障害の方は、しばしばこれらの感情の影響を強く受けています。特に真面目で責任感が強く、感受性が豊かな方は、知らず知らずのうちに感情によって気のバランスを崩しやすいのです。
五臓六腑と気の関係
東洋医学では、体内の気は「五臓六腑」という内臓系統を通じて循環していると考えます。五臓とは、肝・心・脾・肺・腎のことで、それぞれが特定の気を生成し、管理しています。
肝(かん)- 疏泄機能
肝は気の流れをスムーズにする「疏泄(そせつ)」機能を持ちます。ストレスを受けると、この肝の機能が低下し、気が全身にスムーズに行き渡らなくなります。起立性調節障害の方は、しばしば「肝気鬱結」の状態にあり、苛立ちや不安、胸の張りなどを感じます。
心(しん)- 神志を司る
心は血と気を全身に巡らせるポンプの役割と同時に、精神活動「神志(しんし)」を司ります。過度のストレスや感情の起伏は心の気のバランスを崩し、不眠や動悸、精神不安などを引き起こします。起立性調節障害で見られる不安感や集中力低下は、心の気の乱れが関係しています。
脾(ひ)- 後天の気の源
脾は食物から栄養を吸収し、「後天の気」を生成する役割を持ちます。食生活の乱れや考えすぎは脾の機能を低下させ、気の生成が不十分になります。起立性調節障害の方は、しばしば消化不良や食欲不振を伴い、それがさらに気の不足を悪化させる悪循環に陥っています。
肺(はい)- 呼吸と気の管理
肺は呼吸を通じて「宗気(そうき)」を取り込み、全身に送り出す働きをします。浅い呼吸や姿勢の悪さは、この機能を低下させます。深呼吸が心身をリラックスさせるのは、肺の働きを通じて全身の気の流れが改善されるためです。
腎(じん)- 先天の気の源
腎は生まれながらの生命エネルギー「先天の気」を蓄える臓器です。過労や睡眠不足、恐れや不安は腎の気を消耗させます。起立性調節障害で見られる慢性疲労や回復力の低下は、この腎の気の不足が大きく関わっています。
気の調整による起立性調節障害の改善法
東洋医学では、気のバランスを整えることで起立性調節障害の改善を図ります。常若整骨院での具体的な施術方法をご紹介します。
気の流れを整える鍼灸治療
鍼灸は、経絡(けいらく)と呼ばれる気の通り道に働きかけ、滞った気の流れを改善する治療法です。起立性調節障害の方には、主に以下のツボを使用します。
- 百会(ひゃくえ): 頭頂部にあるツボで、陽気を上昇させ、めまいや頭痛を改善します。
- 足三里(あしさんり): 膝の下外側にあるツボで、全身の気を補い、消化機能を高めます。
- 三陰交(さんいんこう): 内くるぶしの上にあるツボで、肝・脾・腎の三陰経が交わる重要なポイント。気と血を調整します。
- 太谿(たいけい): 外くるぶしとアキレス腱の間にあるツボで、腎の気を補います。
鍼は非常に細く、ほとんど痛みを感じないよう丁寧に施術します。灸は熱刺激を与えることで、陽気を補い、冷えを改善する効果があります。
気功による気のエネルギー調整
気功は、呼吸と意識的な動きを組み合わせて、気のエネルギーを調整する伝統的な健康法です。当院では、10年以上の修練を積んだ気功の技術を用いて、患者様のエネルギー状態を調整します。
特に以下の3つの段階で施術を行います。
- 気の診断: 手のひらのセンサーを使って、体のどこに気の滞りや不足があるかを感じ取ります。
- 気の浄化: 滞った気や濁った気を取り除き、エネルギーフィールドを清浄にします。
- 気の補充: 不足している部位に、気のエネルギーを送り込みます。
多くの患者様が「体が温かくなった」「頭がスッキリした」「体が軽くなった」と感じられます。これは気の流れが改善され、エネルギーバランスが整ったサインです。
東洋医学的な整体
東洋医学の視点を取り入れた整体も、気の流れを改善するのに効果的です。特に以下の点を重視しています。
- 背骨の調整: 背骨には「督脈(とくみゃく)」という重要な経絡が通っており、ここを整えることで全身の陽気を活性化します。
- 骨盤の調整: 骨盤は「丹田(たんでん)」と呼ばれるエネルギーセンターがある場所。ここの歪みを整えることで、気の生成と蓄積を促進します。
- 内臓の調整: 優しい手技で内臓の位置を整え、五臓六腑の機能を高めます。
これらの施術は、強い力を使わず、体に負担をかけない優しい手技で行います。痛みを伴わない施術でも、気の流れは大きく改善します。
日常生活での気の養生法
施術と並んで重要なのが、日常生活での「養生(ようじょう)」です。以下に、起立性調節障害の方におすすめの養生法をご紹介します。
気を補う食事療法
東洋医学では「医食同源」といって、食事も治療の一部と考えます。気を補うためには、以下のような食材がおすすめです。
- 気を補う食材: もち米、山芋、人参、大根、かぼちゃ、はちみつ、なつめ、松の実
- 陽気を高める食材: ショウガ、ニンニク、ネギ、シナモン、八角、クローブ
- 気の流れを改善する食材: 柑橘類、ミント、春菊、セロリ、バジル
逆に、気を消耗させる食べ物は控えめにしましょう。冷たい飲食物、生野菜のみの食事、精製糖、過度な刺激物などです。毎日の食事を見直すだけでも、気のエネルギーは大きく変わります。
気を巡らせる呼吸法
呼吸は気を取り込み、巡らせる直接的な方法です。特に「腹式呼吸」は、丹田に気を集め、全身に巡らせるのに効果的です。
腹式呼吸の方法:
- 楽な姿勢で座り、片方の手をおへその下(丹田)に置きます
- 鼻から息を吸いながら、おなかを膨らませます
- 口から息を吐きながら、おなかをへこませます
- これを1日に数回、5〜10分間続けます
呼吸を整えると、自律神経のバランスも整い、気の流れが改善します。朝起きたとき、食事の前、寝る前など、日常生活の中で習慣にするとより効果的です。
気の巡りを促す適度な運動
過度な運動は気を消耗しますが、適度な運動は気の巡りを促進します。特に以下のような運動がおすすめです。
- 太極拳(たいきょくけん): ゆっくりとした動きで気の流れを整えます
- 気功体操: 特定の動きと呼吸を組み合わせて、気のエネルギーを高めます
- ウォーキング: 自然の中を歩くことで、清らかな気を取り込めます
- ヨガ: 呼吸と姿勢を整え、気の流れをスムーズにします
運動は無理せず、「心地よい」と感じる程度にとどめることが大切です。疲労感が残るような激しい運動は、かえって気を消耗させます。
気を傷つけない生活習慣
気のエネルギーを守るために、以下の点に注意しましょう。
- 早寝早起き: 23時〜3時は気が最も再生される時間帯。この時間に質の良い睡眠をとることで、気が充実します。
- 感情のバランス: 怒り、不安、悲しみなどの感情を溜め込まず、適切に表現することで、気の滞りを防ぎます。
- 自然との調和: 四季の変化に合わせた生活をし、自然の気を取り入れることで、体内の気も調和します。
- 過度な疲労を避ける: 「疲れたら休む」という当たり前のことが、実は気を守る最大の秘訣です。
現代社会では、常に活動的であることが美徳とされがちですが、東洋医学では「動」と「静」のバランスが健康の鍵だと考えます。
五行体質から見る起立性調節障害の傾向
東洋医学には「五行説」という考え方があり、人の体質を木・火・土・金・水の5つに分類します。それぞれの体質によって、起立性調節障害の現れ方や対処法が異なります。
木の体質
木の体質の方は、ストレスに敏感で、イライラしやすい傾向があります。起立性調節障害になると、頭痛やめまい、筋肉の緊張、情緒不安定などの症状が顕著です。
改善法: 適度な運動、深呼吸、柑橘系の香り、緑の自然に触れることが効果的です。
火の体質
火の体質の方は、感情が高ぶりやすく、熱しやすい性質があります。起立性調節障害になると、動悸、不眠、顔のほてり、焦燥感などの症状が目立ちます。
改善法: 冷静さを保つ瞑想、適度な水分摂取、冷たすぎない程度の涼、薄紫色の環境が落ち着きをもたらします。
土の体質
土の体質の方は、考えすぎる傾向があり、消化器系が弱いです。起立性調節障害になると、食欲不振、倦怠感、腹部膨満感、心配事が増えるなどの症状が見られます。
改善法: 規則正しい食事、腹部を温める、黄色の明るい環境、歌を歌うことがおすすめです。
金の体質
金の体質の方は、繊細で几帳面、呼吸器系が弱い傾向があります。起立性調節障害になると、呼吸が浅くなる、肌の乾燥、気力低下、悲しみが強まるなどの症状が出ます。
改善法: 深呼吸、適度な湿度維持、白色や金色の清潔な環境、香りの良いものに触れることが効果的です。
水の体質
水の体質の方は、恐れや不安を感じやすく、腎や膀胱系が弱いです。起立性調節障害になると、冷え、疲労回復の遅れ、耳鳴り、恐怖感の増大などが見られます。
改善法: 腰と下半身を温める、適度な塩分摂取、青や黒の落ち着いた環境、静かな音楽を聴くことがおすすめです。
あなたがどの体質なのかを知ることで、より効果的な改善法を見つけることができます。常若整骨院では、初診時に五行体質診断を行い、一人ひとりに合ったアプローチを提案しています。
実際の改善例と患者様の声
東洋医学の「気」の考え方を取り入れた施術で、多くの患者様が起立性調節障害から回復されています。実際の例をご紹介します。
16歳女子高生の例
中学3年生から朝起きられなくなり、高校では不登校気味になっていました。東洋医学的診断では「気虚」と「気滞」が見られ、特に「肝」と「脾」の機能低下が顕著でした。
施術では、気の流れを整える鍼灸と気功を中心に行い、食事療法として温かい朝食と気を補う食材の摂取をアドバイスしました。
3ヶ月後、朝のめまいや頭痛が減少し、学校にも通えるようになりました。「体が温かくなり、頭もスッキリしました。朝起きるのが楽になりました」と喜びの声をいただきました。
※効果には個人差があり、回復を保証するものではありません
28歳男性会社員の例
仕事のストレスから自律神経のバランスを崩し、朝起きられない、めまい、倦怠感などの症状が出ていました。東洋医学的には「肝気鬱結」の状態で、気の流れが全体的に滞っていました。
気の流れを改善する施術と併せて、呼吸法や適度な運動、感情の適切な表現方法などをアドバイスしました。
2ヶ月後、「朝のだるさが軽減し、仕事にも集中できるようになりました。呼吸を意識するだけで、イライラも減りました」との感想をいただきました。
※効果には個人差があり、回復を保証するものではありません
まとめ:東洋医学的アプローチの強み
起立性調節障害に対する東洋医学的アプローチの強みは、以下の3点に集約されます。
1. 全人的視点
東洋医学では、体・心・気が一体となった全人的な視点で人を診ます。起立性調節障害も単なる身体症状ではなく、気のバランス、感情、生活習慣など、様々な要素が絡み合った結果として捉えます。
2. 未病治(みびょうち)
東洋医学には「未病を治す」という考え方があります。これは、病気が顕在化する前の微細な変化を捉え、早期に対処するという意味です。起立性調節障害も、気のバランスが崩れ始めた「未病」の段階から対処することで、より効果的に改善できます。
3. 個別対応
東洋医学では、同じ起立性調節障害でも、その人の体質や生活環境、気の状態に合わせて個別の対応をします。マニュアル通りの画一的な治療ではなく、一人ひとりに最適なアプローチを見つけることが、真の回復につながります。
当院からのメッセージ
起立性調節障害でお悩みの方へ。あなたの症状は「気」の乱れからきているかもしれません。東洋医学の知恵と現代の技術を融合させた当院のアプローチで、根本からの改善を目指しませんか?
自分で色々試してみたけれど良くならない方ほど、当院の施術の価値を感じていただけると思います。なぜなら、今までとは全く違う「気」という視点からアプローチするからです。
私たちは、あなたの体に眠る自然治癒力を最大限に引き出し、本来の健康な状態を取り戻すお手伝いをします。まずは一度、ご相談ください。新しい視点からの施術が、きっとあなたの人生を変えるきっかけになるはずです。
常若整骨院のご案内
住所: 福岡市早良区祖原4-3
TEL: 092-836-6810
URL: https://tocowaca.com/
アクセス:
- 福岡市営地下鉄空港線「西新駅」から徒歩7分
- 西鉄バス「祖原」バス停すぐ
- お車でお越しの方:近隣のコインパーキングをご利用ください(駐車料金は当院が負担いたします)
診療時間:
平日・土曜: 12:00~20:00
休診日: 日曜・祝日
完全予約制・完全実費となっております。どうぞお気軽にお電話でご相談ください。