アトピーと東洋医学、そしてストレスの深い関係について

アトピー性皮膚炎で悩んでいる患者さんを20年以上診てきて、いつも感じることがある。西洋医学だけでは見えてこない「何か」が、そこにはあると感じます。

東洋医学から見たアトピーの正体

東洋医学では、アトピーを単なる皮膚の病気とは考えない。むしろ「体の中のバランスが崩れているサイン」として捉えています。

特に重要なのが「気血水」のバランス。この3つが滞ったり不足したりすると、皮膚に症状が現れやすくなる。簡単に言うと、体の中の流れが悪くなっているということです。

実際の症例を見てみよう。30代の女性、田中さん(仮名)のケース。彼女は子供の頃からアトピーがあったけど、社会人になってから急激に悪化。

話を聞くと、残業が月80時間、人間関係のストレスも相当なもの。「もう限界です」って涙を流しながら話してくれた時は、正直こちらも胸が痛みました。

ストレスがアトピーに与える本当の影響

東洋医学的に診ると、田中さんは典型的な「肝気鬱結」の状態だった。簡単に言えば、ストレスで気の流れが滞っている状態。

肝は感情をコントロールする臓器とされていて、ここが詰まると皮膚トラブルにも直結する。興味深いことに、怒りっぽくなったり、イライラが増えたりするのも同じ原因。

ストレスがアトピーに与える影響は、想像以上に大きい。

現代医学的には… ストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されると、免疫系のバランスが崩れる。すると、本来なら無害な物質にも過敏に反応してしまう。

東洋医学的には… 「心火上炎」という表現を使う。心の火が燃え上がって、皮膚に熱症状として現れるという考え方だ。

気功から見たアトピーの特徴

気功の視点から見ると、アトピーの人は共通して「気の流れ」に問題を抱えている。特に手足の末端まで気が行き渡らず、滞りやすい。

だから治療では、まず全身の気の巡りを良くすることから始める。最初は半信半疑だった田中さんも、数回の施術後に「なんか体がポカポカして、久しぶりにぐっすり眠れました」と言ってくれた。

食事で体質を変える東洋医学のアプローチ

食事の面でも東洋医学的なアプローチは有効だ。

積極的に摂りたい「清熱食材」

  • 緑豆
  • はと麦
  • キュウリ
  • トマト
  • 白菜
  • 大根

避けたい「温熱性」の食材

  • 唐辛子
  • 生姜
  • ニンニク
  • 羊肉
  • えび

これらは体に熱を生み出して、炎症を悪化させる可能性がある。

田中さんには、毎朝コップ1杯の緑豆茶を飲んでもらった。「最初は青臭くて正直微妙でした」と苦笑いしていたけど、2週間続けたら肌の赤みが明らかに引いてきた。

睡眠の質を上げる「子午流注」の考え方

睡眠の質も重要なポイント。東洋医学では「子午流注」という考え方があって、夜11時から午前1時の間は「胆経」の時間。

この時間にしっかり眠ることで、デトックス機能が高まる。田中さんには、どんなに忙しくても11時半には布団に入るよう指導した。

最初は「そんな早く寝られません」と困った顔をしていたが、1週間続けただけで肌の調子が変わってきた。

毎日できる簡単ツボ療法

ツボ療法も効果的。特に3つのツボは、アトピーに対する特効穴として知られている。

曲池(きょくち) 肘の外側にあるツボ。熱を取り除く効果がある。

血海(けっかい) 膝の内側にあるツボ。血行を良くして、皮膚の新陳代謝を促進する。

三陰交(さんいんこう) 足首の内側にあるツボ。女性のホルモンバランスを整える。

毎日5分ずつ、指圧してもらうだけでも違う。田中さんは「通勤電車の中でこっそりやってます」と報告してくれた。

ストレスに効く呼吸法の実践

呼吸法も取り入れている。「腹式呼吸」を1日10分続けるだけで、副交感神経が活性化されて、ストレス軽減につながる。

やり方は簡単

  1. 鼻から4秒で吸う
  2. 8秒で口から吐く
  3. このリズムを繰り返す

田中さんは最初、「数を数えるのに必死で、逆に疲れます」と笑っていたけど、慣れてくると自然にできるようになった。

若い人に多い「血熱」タイプの症例

もう一つの症例を紹介しよう。高校生の佐藤くん(仮名)。受験ストレスでアトピーが悪化し、顔全体が真っ赤になってしまった。

「友達に会うのが恥ずかしい」と言って、不登校気味になっていた。お母さんと一緒に来院した時は、正直かなり深刻な状態だった。

佐藤くんの場合は「血熱」タイプ。若い人に多いパターンで、体に熱がこもりやすい体質だった。治療方針として、まず体の熱を取り除くことを優先した。

食事では冷たいものを適度に取り入れ、運動は軽めのウォーキング程度に抑えてもらった。3ヶ月の治療で、佐藤くんの症状は大幅に改善した。

「先生のおかげで学校に行けるようになりました」と言ってくれた時は、この仕事をやっていて良かったと心から思った。

五行理論でストレスをコントロール

ストレス管理の方法として、私がよく勧めるのは「五行理論」に基づいたアプローチ。木・火・土・金・水の5つの要素それぞれに対応した感情がある。

  • 怒りは木
  • 喜びは火
  • 思考は土
  • 悲しみは金
  • 恐れは水

バランスを取るために、足りない感情を補い、過剰な感情を抑える。

例えば、怒りが強い人(木の過剰)には、金の要素である「深呼吸」や「瞑想」を勧める。逆に、悲しみが強い人(金の過剰)には、木の要素である「軽い運動」や「創作活動」が効果的だ。

完璧主義がアトピーを悪化させる

アトピーの人によく見られるのが「完璧主義」の傾向。これは土の要素が過剰になっている状態。思考が回りすぎて、ストレスを溜め込みやすくなる。

こういう人には、水の要素である「リラックス」や「自然との触れ合い」を意識してもらう。

日常でできる簡単な気功法

日常生活でできる簡単な気功法も教えている。「立禅」という立った状態での瞑想法。

足を肩幅に開いて、膝を軽く曲げ、両手を胸の前で輪を作るように構える。この姿勢で10分間静かに立っているだけ。最初はきついけど、続けると体の芯から温まってくる。

入浴で気の巡りを良くする

入浴法も重要。アトピーの人は熱いお湯を避けがちだけど、38度程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、血行が良くなり気の巡りも改善される。

入浴剤として、はと麦や緑茶を使うのもおすすめ。天然の抗炎症作用が期待できる。

季節に合わせた体調管理

季節との関係も見逃せない。

春は肝の季節 – 気の巡りが活発になる。この時期にアトピーが悪化しやすい人は、肝の機能を整える必要がある。

夏は心の季節 – 熱症状が出やすい。冷房で体を冷やしすぎないよう注意。

秋は肺の季節 – 乾燥による症状が増える。保湿を心がけよう。

冬は腎の季節 – 免疫力の低下に注意が必要だ。

現実的な目標設定が大切

最後に伝えたいのは、東洋医学的なアプローチは即効性は期待できないということ。でも、根本的な体質改善を目指すという点で、西洋医学とは違った価値がある。

大切なのは、両方の良い部分を取り入れながら、自分に合った方法を見つけること。

現代社会はストレス社会。完全にストレスを避けることは不可能だけど、上手に付き合っていく方法はある。アトピーも同じ。完治を目指すのではなく、症状をコントロールしながら、質の高い生活を送ることが現実的な目標だと思う。

あなたも、もしアトピーで悩んでいるなら、一度東洋医学的なアプローチを試してみてはどうだろうか?😊