不安症を卒業する人が実践している生活習慣とマインドセット
今回は、不安症を乗り越え、より健やかな状態へと向かう方々が持つ「共通点」について、私の20年間の経験からじっくりお話ししていきましょう。気功の指導者として、また東洋医学のプロとして、本当に多くのクライアントさんの心と体に向き合ってきました。不安という感情は、誰にとってもつらいものですが、そこから抜け出し、人生を好転させていく方々には、いくつかの明確な共通の姿勢や習慣があるんです。今日は、その「共通点」を具体的に紐解き、皆さんが不安症を克服するためのヒントを見つけるお手伝いができれば幸いです。
不安症の克服は「気づき」から始まる
不安症を乗り越える方々に共通して言えること。それは、まず「自分の不安に気づき、それを受け入れる」というプロセスを踏んでいる点です。多くの方が、不安を感じると「こんな感情は嫌だ」「早くなくしたい」と否定しようとします。しかし、否定すればするほど、不安は心の奥底に根を張り、かえって大きくなってしまうものなんです。
東洋医学では、感情は気の流れと密接に関わると考えます。感情を抑圧すると、気の流れが滞り、心身の不調を引き起こします。不安症を克服する人は、まずこの「感情の滞り」に気づき、それを「感じてもいいんだ」と自分に許可を与えます。これは、自分の内なる声に耳を傾けるという、非常に大切な第一歩です。
たとえば、漠然とした不安を感じた時に、「ああ、今、私は不安を感じているんだな」と、客観的に自分を観察する視点を持つことです。感情に飲み込まれるのではなく、一歩引いてその感情を見つめる。この「気づき」が、変化の扉を開く鍵となるでしょう。
好転する人に共通する具体的な行動と習慣
では、具体的に不安症が好転していく方々は、どんな行動や習慣を取り入れているのでしょうか。私の治療経験から、いくつかの共通点を挙げられます。
1. 自分の「体」と向き合う時間を作る
不安症の方々は、頭の中の思考にばかり囚われがちです。しかし、好転していく方は、意識的に自分の「体」に目を向け、ケアする時間を作ります。これは、東洋医学でいう「心身一如(しんしんいちにょ)」、つまり心と体は一体であるという考え方を自然と実践していることになります。
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呼吸を意識する習慣: 深い腹式呼吸は、自律神経のバランスを整え、心身をリラックスさせる最も基本的な方法です。不安症を乗り越える人は、忙しい中でも、毎日意識的に深呼吸をする時間を作ります。例えば、朝起きた時や、寝る前、あるいは仕事の合間に、数回でも良いのでゆっくりと息を吸い、お腹を膨らませ、そして時間をかけて息を吐き出す練習をしています。この呼吸が、上部に偏りがちな「気」を足元に下ろし、心を落ち着かせる大切な土台となるんです。
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体を温めることを徹底する: 冷えは、気の滞りや血行不良を招き、不安を増幅させる大きな要因です。冷え性のある方もない方も、不安症を乗り越える方々は、体を温めることを日常的に意識しています。具体的には、毎日湯船に浸かる、足湯をする、腹巻きをする、温かい飲み物や食事を摂る、などが挙げられます。例えば、冬場でも冷たいものを飲む代わりに、温かい白湯を1日に12杯飲む、といった具体的な工夫をする人もいますね。
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適度な運動を継続する: 激しい運動でなくても構いません。ウォーキング、軽いストレッチ、あるいは気功のゆったりとした動きなど、毎日無理なく続けられる運動を習慣にしています。体を動かすことで、全身の血行が促進され、気の巡りがスムーズになり、ストレスが発散されます。これにより、心身の緊張がほぐれ、不安感が軽減されるんです。
2. 「思考の癖」に気づき、手放す練習をする
不安症の方は、ネガティブな思考パターンに陥りやすい傾向があります。「もしも…だったらどうしよう」「きっとうまくいかないだろう」といった思考が頭の中を支配し、不安を増幅させてしまいます。好転する人たちは、この「思考の癖」に気づき、それを手放す練習をしています。
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感情や思考を「客観視」する: 感情や思考を自分自身と同一視せず、「ああ、今、私はこんなことを考えているな」と、一歩引いて観察する練習をします。これは、気功の瞑想的なアプローチにも通じます。思考の渦に巻き込まれるのではなく、ただ流れていく雲を見るように眺める感覚です。
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ジャーナリング(書き出し)で感情を吐き出す: 頭の中をぐるぐる巡る不安な思考や感情を、ノートに書き出す習慣を持つ人が多いですね。誰に見せるわけでもないので、どんなにまとまらない文章でも構いません。書き出すことで、感情や思考が「見える化」され、客観的に捉えられるようになり、心が整理されます。書き終わったら、その紙を破って捨てることで、感情を手放す象徴的な行為とする方もいます。
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ポジティブなアファメーションを取り入れる: 自分の体に良い言葉をかける習慣を持つ人もいます。「私は安全で守られている」「私はありのままで大丈夫」といった肯定的な言葉を、毎日心の中で唱えたり、声に出して言ったりすることで、潜在意識に働きかけ、思考のパターンをポジティブな方向へと変えていきます。
3. 「完璧主義」を手放し、「適当さ」を受け入れる
不安症を抱える方の多くは、真面目で責任感が強く、何事も完璧にこなそうとする傾向があります。しかし、この完璧主義が、常に自分を追い込み、過剰なストレスと不安を生み出してしまうんです。好転していく方々は、この「完璧主義」の鎖を緩め、「適当さ」を受け入れることを学びます。
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「〜でなければならない」を手放す: 「〜すべき」「〜でなければならない」という思考は、私たちを縛りつけ、不安を生み出す大きな要因です。これを「〜でもいい」「〜でも大丈夫」という柔軟な思考に変えていく練習をします。
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自分を「許す」練習: 失敗しても、完璧でなくても、自分を許すことの大切さを理解しています。「今日はできなかったけど、明日はできるかもしれない」「これで十分だ」と自分に優しく語りかけることで、自己肯定感が高まり、不安感が軽減されます。
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「人に頼る」ことを覚える: 一人で抱え込みがちな完璧主義の方は、人に頼ることが苦手な傾向があります。しかし、好転する人たちは、時には周りの人に助けを求めたり、弱音を吐いたりすることの重要性を知っています。人に頼ることで、心の負担が軽くなり、新たな視点や解決策が見つかることもあります。
4. 自然とのつながりを意識し、五感を活用する
東洋医学では、自然界のエネルギーと私たちの体は密接につながっていると考えます。不安症を克服していく方々は、意識的に自然と触れ合う時間を作り、五感を活用することで、心身のバランスを整えています。
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自然の中で過ごす時間: 公園を散歩する、木々を眺める、海岸で波の音を聞く、裸足で土の上に立つなど、自然の中で過ごすことは、私たちのエネルギーフィールドを浄化し、心を穏やかにしてくれます。特に、朝日を浴びることは、セロトニン(幸福ホルモン)の分泌を促し、心の安定に役立ちます。
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五感を意識した体験: 食事の際に食べ物の味、香り、食感を意識する。お風呂で温かいお湯が体に触れる感覚に集中する。好きな音楽を聴く。アロマオイルで心地よい香りを楽しむなど、五感を研ぎ澄ますことで、頭の中の思考から離れ、今この瞬間に意識を集中できます。これは、不安な思考が優位になりがちな心を「今、ここ」に戻すための有効な方法です。
私の経験から思うこと:変化は小さな一歩から
20年間、整体師として多くの不安を抱える方々と向き合ってきましたが、好転していく方々に共通するのは、何も特別なことをしているわけではない、ということです。もちろん、気功や東洋医学的なアプローチは効果的ですが、それ以上に大切なのは、「自分の心と体に対する意識を変え、日々の生活に小さな工夫を継続して取り入れること」だと感じています。
以前、ある若い女性のクライアントさんが、仕事のストレスからくる強い不安と不眠に悩まされていました。彼女は完璧主義で、全てを一人で抱え込むタイプ。私は彼女に、まず「毎日、寝る前に5分間、ゆっくりと深呼吸をして、自分の今日の頑張りをねぎらう時間を作る」ことを提案しました。最初は「たったそれだけで変わるの?」と半信半疑だったようですが、1ヶ月ほど経った頃、「最初は忘れてしまうこともあったけど、続けてみたら、少しずつ心が落ち着くようになった」、「自分を許す感覚が少しわかってきた」と、笑顔で報告してくれました。
その時、私も心の中で「素晴らしい変化だ!」と深く感じましたね。大きな変化は、必ず小さな一歩から始まる。そして、その小さな一歩を「継続する力」こそが、不安症を乗り越えるための最も大切な共通点だと改めて実感した瞬間でした。焦らなくていいんです。完璧を目指さなくていいんです。今日からできることを一つだけ、試してみてほしいと心から願っています。
さて、ここまで不安症を乗り越える人の共通点についてお話ししてきましたが、今日からあなたの心と体を穏やかに導くために、具体的にどのようなことから始めてみたいと思いますか?