アトピー性皮膚炎に悩むすべての人へ。20年の臨床で見えた“改善する人の特徴”
長年の臨床経験の中で、本当に多くの方々の心身の不調と向き合ってきましたが、その中でも特に根深く、患者さんを苦しめるのがアトピー性皮膚炎です。多くの方が、赤み、かゆみ、乾燥、ジュクジュクとした浸出液、そしてそれらからくる不眠や精神的な落ち込みに苦しんでいらっしゃいます。中には、「もう何を試してもダメだ」「一生このままなのか」と絶望の淵に立たされる方もいらっしゃいます。その方々の苦しみに触れるたび、私自身の心が締め付けられる思いです。
しかし、その一方で、長年アトピー性皮膚炎に苦しみながらも、最終的に症状が大きく改善し、穏やかな日常を取り戻された方もたくさんいらっしゃいます。彼らの回復の裏には、実は共通するいくつかの「鍵」があるんです。今日は、東洋医学の視点から、アトピー性皮膚炎が改善した方々に共通する「7つの特徴」を、私が長年実践してきた気功の知見を交えながら、皆さまが心のざわつきを鎮め、内なる安心感と健やかさを取り戻すための一助となれば幸いです。
アトピー性皮膚炎の東洋医学的な理解:内なる「熱」と「湿」、そして「風」の現れ
まず、アトピー性皮膚炎について、東洋医学の基本的な考え方からお話ししましょう。現代医学では、皮膚のバリア機能の低下やアレルギー反応などが主な原因とされていますが、東洋医学では、体内の「熱(ねつ)」と「湿(しつ)」、そして「風(ふう)」といった邪気(病気の原因となるもの)が複雑に絡み合って皮膚に現れたものと捉えます。
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熱邪:体内にこもった過剰な熱が皮膚に現れると、赤み、炎症、熱感、かゆみといった症状を引き起こします。体の中から熱が湧き上がってくるようなものです。
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湿邪:体内の水分代謝の異常によって生じる粘り気のある邪気です。ジュクジュクした浸出液、水疱、皮膚のただれ、かゆみが強く出るなどの症状に関わります。体が余分な水分をうまく排出できていない状態です。
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風邪:風邪は、病変を移動させたり、かゆみのように症状が急に現れたり消えたりする性質を持っています。アトピー性皮膚炎の強いかゆみや、病変が広がる様子に関わります。
これらの邪気が、体の内側から発生し、あるいは外から侵入し、皮膚の表面に現れることで、アトピー性皮膚炎の様々な症状を引き起こすのです。
アトピーが改善した人に共通する7つの特徴(東洋医学的視点から)
さて、ここからが本題です。長年アトピー性皮膚炎に苦しみながらも、最終的に症状が大きく改善した方々には、いくつかの共通点が見られます。これらは、単に「薬が効いた」というだけでは説明できない、東洋医学的な心身の深い変化と、日々の地道な努力の賜物だと私は考えています。
1. 自分の「証(体質)」を理解し、受け入れた
アトピー性皮膚炎の改善に成功した方々は、まずご自身の体質、つまり東洋医学でいう「証」を深く理解しようと努めています。熱がこもりやすいのか、湿が溜まりやすいのか、体が乾燥しやすいのか、ストレスで気が滞りやすいのか。これを理解することで、闇雲に治療法を試すのではなく、自分に本当に合った養生法や治療法を見つけることができるのです。
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例:ある患者さんは、長年、肌の乾燥と強いかゆみに悩んでいました。病院の薬も漢方も今ひとつ効果が感じられず、いつも「自分には合わない」と思っていました。しかし、東洋医学的な診断で「血虚生風(血の不足と乾燥による風のかゆみ)」の証であると理解し、単に熱を冷ますだけでなく、血を補い、体を潤す食養生と気功を続けたところ、劇的に改善しました。彼らは、自分の体質を知ることで、何をすれば良いのか、何が自分に合っているのか、という明確な指針を得ていたのです。
2. 食生活を根本から見直した
これは、私がこれまで見てきたアトピー改善者の中で、最も共通する特徴かもしれません。彼らは、ジャンクフード、加工食品、甘いもの(特に白砂糖)、脂っこいもの、冷たい飲み物といった、東洋医学でいう「湿熱」や「痰湿」を生み出す食べ物を意識的に控えるようになりました。
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具体的な変化:例えば、以前は毎日コンビニ弁当で、夜中にアイスを12杯食べることもあった方が、手作りの和食中心に切り替え、温かい飲み物を摂るようになった、などです。
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東洋医学的理由:脾胃は、消化吸収を司るだけでなく、気血を生成し、体内の水分代謝を調整する重要な臓腑です。食生活が乱れると脾胃に負担がかかり、湿熱や痰湿が体内に停滞し、それがアトピーの炎症、かゆみ、ジュクジュクといった症状の直接的な原因となります。改善した人々は、この「内なる火元」を食事で鎮める努力を継続していました。
3. 睡眠の質を徹底的に改善した
アトピー症状が改善した方々は、例外なく睡眠の質を重視していました。夜間のかゆみで眠れない、という症状を抱えている方が多い中で、彼らは寝室環境の整備、就寝前のルーティン、規則正しい睡眠時間など、眠りの質を高めるための工夫を地道に実践していました。
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東洋医学的理由:睡眠は、東洋医学でいう「陰」の時間を養い、消耗した気血や精を回復させる最も重要な時間です。特に、夜間は肝が血を貯蔵し、心神が安らかに休む時間でもあります。質の良い睡眠が取れていれば、体内の熱が冷まされ、血が十分に回復し、心神が安定します。逆に、睡眠不足は心火や肝火を亢進させ、血を消耗させ、肌のかゆみや炎症を悪化させる大きな要因となります。彼らは、睡眠を「肌を治す時間」と捉えていたのです。
4. ストレスとの付き合い方を見直した
現代社会でストレスを完全にゼロにするのは難しいですが、改善した方々は、ストレスを「溜め込まない」工夫や、「ストレスに振り回されない」心の持ち方を身につけていました。
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具体的な変化:完璧主義を手放し、「8割でOK」と自分を許すようになった、言いたいことを溜め込まず、信頼できる人に話すようになった、趣味の時間を持つようになった、などです。
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東洋医学的理由:ストレスや感情の抑圧は、肝の気の巡りを滞らせ、「肝鬱」を引き起こします。肝鬱が長期化すると、熱に変化し(肝鬱化火)、血を焦がし(血熱)、皮膚の炎症や強いかゆみとして現れます。彼らは、この「内なるイライラや怒り」が肌に現れることを理解し、気の流れをスムーズにするための様々な方法(運動、呼吸法、趣味など)を実践していました。
5. 「掻く」行為から距離を置く努力を継続した
アトピー患者にとって、かゆい時に掻かないのは至難の業です。しかし、改善した方々は、掻きむしりによる悪循環を断ち切るために、並々ならぬ努力を継続していました。
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具体的な工夫:爪を短く切る、綿の手袋をする、かゆい時に冷やす、保湿剤を塗る、気をそらす、そして最も重要なのが、気功の実践です。
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東洋医学的理由:掻く行為は、皮膚のバリア機能を破壊し、炎症を悪化させ、さらに熱や風を生み出す悪循環を招きます。また、掻く衝動は、体内の熱や風が過剰になっているサインでもあります。気功による呼吸法や瞑想は、この内なる熱や風を鎮め、心身の過敏性を和らげる効果があります。これにより、掻く衝動そのものが軽減され、掻く回数を減らすことができるのです。
6. 適度な運動と自然との触れ合いを習慣にした
激しい運動ではありません。ウォーキングやストレッチ、気功など、継続できる範囲で体を動かすことを習慣にしている方が多かったです。そして、可能であれば、自然の中で過ごす時間を大切にしていました。
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東洋医学的理由:適度な運動は、全身の気の巡りをスムーズにし、鬱滞した気を解放します。汗をかくことで、体内の余分な湿や熱を排出する助けにもなります。また、自然の空気や光、土に触れることは、心身を癒し、自律神経のバランスを整える効果があります。これは、心身を「グラウンディング」させ、内なる安定感を取り戻すために非常に重要です。
7. 「治る」ことを諦めず、希望を持ち続けた
これは、最も抽象的でありながら、最も重要な共通点かもしれません。アトピーは長期化しやすく、心が折れそうになることも多々あります。しかし、改善した方々は、たとえ症状が悪化しても、「これは一時的なものだ」「必ず良くなる」と信じ、希望を持ち続けていました。
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東洋医学的理由:東洋医学では、精神の状態が病気の回復に大きな影響を与えるとされています。「心」は五臓の君主であり、心の状態が安定していれば、他の臓腑の働きもスムーズになります。希望を持つことは、正気を高め、治癒力を引き出す強力な力となります。彼らは、心の力を信じ、諦めずに治療や養生を継続していました。私も長年、多くの患者さんが、この「治る」という希望の光を見つけ、地道に努力を続けることで、驚くほどの回復を遂げる姿を目の当たりにしてきました。その回復力は、本当に素晴らしいものがあります。
気功が導く、心身の調和と思考の鎮静、そして肌の穏やかさ回復
私が長年、多くの患者さんに指導し、その効果を実感してきたのが気功です。気功は、呼吸、姿勢、そして意識を合わせることで、私たちの中に流れる気を整え、心身のバランスを取り戻す養生法です。薬のように即効性があるわけではありませんが、継続することで、根本的な体質改善へと導いてくれます。手技は一切使いませんが、その効果は、アトピーが改善した方々に共通する上記の7つの特徴すべてに、間接的あるいは直接的にアプローチできる点にあると考えています。
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気の巡りを整え、内なる熱と湿、風を鎮める: 気功のゆったりとした動きや深い呼吸法は、全身の気の巡りをスムーズにし、停滞した気を流し、体内の余分な熱や湿を排出する助けとなります。これにより、アトピーの炎症、かゆみ、ジュクジュクといった症状の根本原因にアプローチします。
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自律神経のバランスを調整し、心身の過緊張を解く: ストレスや不安はアトピーを悪化させます。気功は副交感神経を優位に導き、心身を深いリラックス状態へと誘います。これにより、炎症反応やかゆみが軽減され、質の良い睡眠が取れるようになります。これは、夜寝る前に12杯のコーヒーを飲んでも眠れなかった人が、穏やかに眠りにつけるようになるようなものです。
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心脾を養い、気血を充実させる: 疲弊した心脾の機能を回復させ、気血を充実させることで、肌の再生に必要な栄養とエネルギーを供給します。また、心が安定し、思考が穏やかになることで、ストレスを溜め込みにくくなります。
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腎精を補い、生命力を回復させる: 気功は腎の機能を高め、腎精を養うことにもつながります。これにより、体の根源的な回復力が高まり、病気への抵抗力、ストレス耐性も向上します。
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心の状態を整え、「治る」という希望を育む: 気功は単なる体操ではなく、瞑想的な要素も持ち合わせています。意識を集中させることで、雑念を払い、心を落ち着かせ、内なる平和を取り戻すことができます。心が穏やかであれば、「治る」という希望を持ち続けやすくなります。
継続的な気功の実践は、その方の体質そのものを良い方向へと導きます。良い土壌ができれば、自然と良い作物が育つように、体質が改善すれば、アトピー症状全体が軽減され、より穏やかで自信に満ちた日常を送れるようになるのです。
日常でできる養生と気功のヒント:改善への道を歩むために
アトピー性皮膚炎の改善を目指し、心の穏やかさを取り戻すために、日常生活でできる養生と、手軽にできる気功のヒントをお伝えします。これは、アトピーが改善した方々が実践している共通の「鍵」でもあります。
食養生で心身の土台を作る
食事は、私たちの体を作り、気を生み出す源です。特に体内の熱と湿を減らし、血を補い、陰を養い、脾胃を助け、肝の気をスムーズにする食事を心がけましょう。
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体内の熱を冷ます食材:きゅうり、冬瓜、トマト、なす、緑豆、豆腐、こんにゃく、苦瓜(ゴーヤ)など。
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体内の湿気を排出する食材:ハトムギ、緑豆、冬瓜、大根、とうもろこし、枝豆、小豆など。
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血を補い、陰を養う食材:梨、百合根、白きくらげ、杏仁、豚肉、鴨肉、卵、プルーン、ほうれん草、人参、なつめ、竜眼肉など。
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脾胃を助ける食材:山芋、蓮根、米、大豆製品、かぼちゃ、キャベツなど。
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刺激物を避ける:辛いもの、脂っこいもの、揚げ物、コーヒー、アルコール、チョコレート、乳製品、甘いもの(特に白砂糖を使ったもの)、香辛料は控えめに。
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規則正しい食事:毎日決まった時間に食事を摂り、寝る2~3時間前までには済ませましょう。軽い消化の良いものを意識してください。
心身のリラックスを促す習慣:肌と心の環境を整える
心の穏やかさを取り戻すためには、心身がリラックスできる環境を整え、ストレスを適切に管理することが不可欠です。
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ストレス管理:ストレスはアトピーの症状悪化の大きな引き金となります。趣味の時間を持つ、好きな音楽を聴く、軽い運動をする、友人との会話を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、こまめに実践しましょう。
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質の良い睡眠環境:睡眠は肌の再生と心身の回復に最も重要です。十分な睡眠時間を確保し、規則正しい睡眠リズムを心がけましょう。寝室は静かで暗く、適度な温度に保ちます。夜間に掻きむしるのを防ぐために、寝る前に爪を短く切る、綿の手袋を着用するなどの工夫も有効です。
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肌への刺激を避ける:お風呂の温度はぬるめにし、体を洗う際は低刺激の石鹸を使用し、優しく洗いましょう。タオルでゴシゴシ拭かず、優しく押さえるように水分を拭き取ります。保湿を徹底し、通気性の良い綿素材の衣類を着用しましょう。
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規則正しい生活:毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。これはシンプルですが、体内時計を整える上で非常に重要です。
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軽い運動と自然との触れ合い:ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、軽い運動は気の巡りを良くし、心身のリラックス効果を高めます。自然の中で過ごす時間を意識的に増やしましょう。
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入浴習慣:就寝の1時間前くらいに、38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。湯船に浸かることで副交感神経が優位になり、リラックス効果が高まります。
気功で気を巡らせ、心を穏やかに、活力を回復:ご自身でできる実践法
ここでは、ご自宅で簡単にできる気功のヒントをいくつかご紹介します。難しい型を覚える必要はありません。大切なのは、呼吸と意識を集中させることです。無理のない範囲で、短い時間から始めてみてください。
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静坐瞑想:
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椅子に座るか、床にあぐらをかいて座ります。背筋を軽く伸ばし、肩の力を抜いてリラックスします。
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軽く目を閉じ、意識を呼吸に集中させます。鼻から息を吸い込み、口からゆっくりと吐き出す。
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呼吸のたびに、体が緩んでいくのを感じ、心の中のざわつきが次第に収まっていくのをイメージします。
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5分から始めて、慣れてきたら15分程度行ってみましょう。
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抱球式の簡易版:
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軽く膝を緩めて立ちます。両腕を胸の前で軽く曲げ、まるで大きなボールを抱えているような形を作ります。
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肩の力を抜き、腕の間に空間があるのを意識します。
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呼吸は自然に任せ、体の中心に意識を集中します。
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数分間、この姿勢を保つだけでも、気の巡りが良くなり、心身が安定するのを感じられるでしょう。
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吐納法:
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楽な姿勢で座るか、立ちます。
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鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹を軽く膨らませます。
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口をすぼめ、「フーッ」と細く長く息を吐き出します。息を吐き出す時に、体の中の不要なもの、ストレス、不安、胸の苦しさ、そして体内の熱やイライラ、かゆみなどが全部出ていくイメージで行います。
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これを10回程度繰り返します。
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足底への意識集中:
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椅子に座るか、立った状態で、足の裏全体が地面にしっかりついているのを感じます。
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呼吸をするたびに、頭のてっぺんから新鮮な気が入り、足の裏から余分な気が抜けていくイメージを持ちます。
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特に、体がほてってかゆみが強い時や、不安感で足が地に付かないような感覚がある時に有効です。
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アトピー性皮膚炎の改善は、単なる皮膚の問題だけでなく、心身全体の気の巡りや臓腑のバランス、そして日々の生活習慣が深く関わっています。東洋医学の深い知恵と気功の実践を通して、ご自身の内なる力を引き出し、本来の健やかさと心の平和、そして穏やかで美しい肌を取り戻すことができると信じています。アトピーが改善した人々の共通点を参考に、ご自身の生活にこれらの養生法や気功を取り入れてみてはいかがでしょうか?
私もこの20年、多くの患者さんが、ご自身の体と心の声に耳を傾け、地道な努力を続けることで、アトピー症状が和らぎ、笑顔が増え、充実した日常を取り戻していく姿を目の当たりにしてきました。その回復力は、本当に素晴らしいものがあります。
あなたも、ご自身の心と体に寄り添い、真の平穏への扉を開いてみませんか?