アトピー性皮膚炎とステロイド離脱|東洋医学で整える体の土台と、安全な減量への道筋
長年の臨床経験の中で、本当に多くの方々の心身の不調と向き合ってきましたが、近年、特に深く、そして複雑なお悩みを抱える方が増えていると感じます。それが、アトピー性皮膚炎、そしてステロイド外用薬への依存と、その離脱・減量という問題です。
「ステロイドを塗らないと、すぐに悪化してしまう」「減らそうとすると、リバウンドが怖くて踏み出せない」「一生、この薬に頼り続けるしかないのか」「子どもにステロイドを使い続けることに、罪悪感を感じてしまう」……。そんな切実な声を聞くたびに、その方々の葛藤と、計り知れない苦しみに、私自身の心が締め付けられる思いです。
現代医学では、アトピー性皮膚炎は免疫機能の異常やバリア機能の低下、遺伝的要因として捉えられ、ステロイド外用薬による炎症のコントロールが標準的な治療とされていますね。もちろん、専門的な医療は非常に大切ですし、適切な診断と治療を受けていらっしゃる方も多いでしょう。ステロイドは、急性期の炎症を抑えるという点では、確かに有効な薬です。
しかし、東洋医学のプロフェッショナルとして、私は声を大にしてお伝えしたい。アトピー性皮膚炎は、単なる皮膚だけの問題ではありません。あなたの体の中の「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスが深く乱れ、五臓六腑の機能が低下しているSOSサインなのです。そして、ステロイドの長期使用は、その根本原因を覆い隠し、場合によっては体の本来持つ回復力を弱めてしまう可能性があります。
今日は、そんなアトピー性皮膚炎とステロイドの関係を東洋医学でどう捉え、そして私が長年実践してきた気功の知見を交えながら、皆さまが安全にステロイドを減量・離脱し、体の土台を立て直し、内なる健やかさと穏やかな肌を取り戻すための一助となれば幸いです。
アトピー性皮膚炎の東洋医学的な理解:皮膚は内臓の鏡である
まず、アトピー性皮膚炎について、東洋医学の基本的な考え方からお話ししましょう。現代医学では、アレルギー反応や免疫の過剰反応、皮膚のバリア機能低下とされていますが、東洋医学では、もっと深く、体全体のバランスの乱れとして捉えます。
東洋医学には「皮膚は内臓の鏡」という言葉があります。皮膚に現れる症状は、体の内側で何かが乱れているサインなのです。アトピー性皮膚炎のような慢性的な皮膚疾患を、主に以下の臓腑の機能失調と気血水の異常な動きから捉えます。
1. 肺(はい)と大腸の機能失調:皮膚のバリアと排泄の乱れ
東洋医学において、肺は呼吸だけでなく、「皮毛(ひもう)を主る」とされ、皮膚や毛穴の健康、そして体表のバリア機能を司ります。肺の気が弱ると、皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激(風邪、寒邪、湿邪、熱邪)に弱くなります。
また、肺と表裏の関係にある大腸は、体内の不要なものを排泄する役割を担います。大腸の機能が低下すると、体内に老廃物や毒素がこもり、それが皮膚から排出されようとして、炎症や痒みとして現れます。
アトピーの方の多くは、便秘気味だったり、呼吸が浅かったり、風邪を引きやすかったりするのは、この肺と大腸の機能低下が背景にあることが非常に多いのです。
2. 脾(ひ)と胃の機能失調:湿熱の生成と栄養の不足
脾は、消化吸収を司り、飲食物から全身のエネルギーである「気」と「血」を生み出す最も重要な臓腑です。脾胃の機能が弱ると、食べたものをうまく消化できず、体内に「湿(しつ)」という不要な水分や「痰(たん)」という老廃物がこもりやすくなります。
この湿に熱が加わると「湿熱(しつねつ)」という状態になり、これが皮膚に現れると、ジュクジュクとした浸出液を伴う炎症や、強い痒み、赤みを引き起こします。特に、肘の内側や膝の裏側、首周りといった、汗がたまりやすく、湿気がこもりやすい部位に症状が出やすいのが特徴です。
また、脾が弱ると、気血の生成が滞り、皮膚に十分な栄養が行き渡らなくなります。これにより、皮膚が乾燥したり、薄く弱くなったり、治りにくくなったりします。
3. 肝(かん)の気の滞りと血の不足:痒みの増強と皮膚の乾燥
肝は、全身の気の流れをスムーズにする役割を担っています。ストレスや感情の抑圧が続くと、肝の気の巡りが滞り、「肝鬱(かんうつ)」という状態になります。この気の滞りは、イライラや焦燥感を引き起こすだけでなく、熱に変化しやすく(肝鬱化火)、この熱が皮膚に現れると、痒みが非常に強くなります。
夜になると痒みが増す、ストレスがかかると症状が悪化する、というのは、まさにこの肝の気の滞りと熱が原因です。
また、肝は「血を蔵る」とも言われ、血の貯蔵と全身の血流調整を担います。肝の血が不足すると、皮膚に十分な栄養と潤いが届かず、乾燥や亀裂、色素沈着といった症状が現れます。
4. 腎(じん)の虚弱:生命力の低下と皮膚の再生力不足
腎は、生命力の源であり、成長、生殖、老化を司る重要な臓腑です。また、体を温める陽気や、体を潤す陰液を蓄える場所でもあります。
腎が弱ると、体の根本的なエネルギーが不足し、皮膚の再生力や回復力が著しく低下します。これにより、傷が治りにくい、症状が慢性化する、冷えやすい、疲れやすいといった状態に陥ります。
特に、子どもの頃からアトピーがある方や、ステロイドを長期間使用してきた方の中には、この腎の虚弱が根底にあるケースが非常に多いのです。
5. 血瘀(けつお)と血熱(けっねつ):慢性化と色素沈着
長期間にわたる炎症や、掻き壊しによって、皮膚の血流が悪くなり、「血瘀(けつお)」という血の滞りが生じます。血瘀があると、皮膚がゴワゴワと硬くなったり、黒ずんだり(色素沈着)、治りが遅くなったりします。
また、炎症が続くと、血に熱がこもり「血熱(けっねつ)」という状態になります。血熱があると、皮膚が赤く、熱感があり、痒みが非常に強くなります。
このように、アトピー性皮膚炎という症状は、単なる皮膚のアレルギー反応だけでなく、東洋医学的な視点からは、肺、脾、肝、腎といった複数の臓腑の機能失調と、それに伴う気血水の異常な巡り、湿熱、血瘀といった邪気の停滞が複雑に絡み合って生じていると考えることができます。
ステロイドの東洋医学的な捉え方:対症療法の限界と体への負担
ステロイド外用薬は、確かに炎症を速やかに抑えるという点では即効性があります。しかし、東洋医学の視点から見ると、ステロイドは「表面の火を消す」ことはできても、「火種(根本原因)」を取り除くことはできません。
むしろ、長期間使用することで、以下のような問題が生じる可能性があります。
1. 体の陽気(ようき)を抑制し、自己回復力を弱める
ステロイドは、体の免疫反応や炎症反応を抑える薬です。これを東洋医学的に表現すると、体の「陽気(ようき)」、つまり、体を温め、活動させ、外敵と戦う力を抑制していることになります。
短期間であれば問題ありませんが、長期間にわたって陽気を抑え続けると、体は本来持っている自己回復力や免疫力を失い、薬がなければ炎症をコントロールできない状態、つまり「依存」に陥ります。
2. 皮膚の「気」の巡りを停滞させ、バリア機能を低下させる
ステロイドを塗り続けることで、皮膚表面の「気」の巡りが停滞し、皮膚が薄く、弱くなることがあります(ステロイド皮膚萎縮)。これは、まさに肺が主る「皮毛」の機能が、さらに低下している状態です。
皮膚が薄くなると、バリア機能が低下し、外からの刺激に対してますます敏感になり、ちょっとしたことで炎症が再発するという悪循環に陥ります。
3. 体内の「熱」や「湿」を解決せず、内攻させる
ステロイドは、皮膚表面の炎症を抑えますが、体の中に潜んでいる「湿熱」や「血熱」といった邪気を取り除くわけではありません。表面を抑え込むことで、これらの邪気が体の奥深くに潜り込み(内攻)、後に、より強い症状として噴き出してくることがあります。これが、いわゆる「リバウンド」の正体です。
4. 脾腎の機能をさらに弱める
ステロイドは、体内のホルモンバランスに影響を与えます。長期使用により、脾胃の消化吸収機能や、腎の生命力を生み出す機能が低下することがあります。これにより、気血の生成が滞り、体全体のエネルギー不足に陥り、慢性的な疲労感、だるさ、冷え、免疫力の低下といった症状が現れます。
つまり、ステロイドは「今、目の前の炎症を抑える」という点では有用ですが、体の根本的なバランスを整え、自己回復力を高めるという観点からは、むしろ逆行する可能性があるのです。
だからこそ、ステロイドの減量・離脱を目指すのであれば、同時に、体の内側から根本的に立て直していくことが絶対に必要なのです。
ステロイドの安全な減量・離脱のために、東洋医学が重視する「土台作り」
ステロイドを減らしたい、できれば使わない生活を取り戻したい。その気持ちは痛いほどわかります。しかし、急激な減量や中止は、体に大きな負担をかけ、激しいリバウンドを引き起こす危険性があります。
私がこの20年間、多くのアトピーの患者さんと向き合ってきた中で、確信を持って言えることがあります。それは、「ステロイドを減らす前に、まず体の土台を整えることが何よりも大切」ということです。
土台が整っていない状態でステロイドを減らすのは、まるで基礎工事が終わっていない土地に家を建てようとするようなものです。すぐに崩れてしまいます。
では、東洋医学が重視する「土台作り」とは何でしょうか。
1. 脾胃の機能を回復し、気血を十分に生成する
脾胃は、体のエネルギー工場です。ここがしっかり機能していないと、どんなに良い治療をしても、効果が出にくいのです。
消化に良い食事を摂り、暴飲暴食を避け、冷たいもの、脂っこいもの、甘いものを控える。規則正しい食事のリズムを作る。これだけでも、脾胃の負担は大きく減ります。
脾胃が元気になれば、気血が十分に生成され、皮膚に栄養が行き渡り、回復力が高まります。
2. 腎の陽気と陰液を補い、生命力の根源を強化する
腎は、体の根っこです。ここが弱っていると、どんなに治療をしても、すぐに元に戻ってしまいます。
十分な休息と睡眠を確保し、過労を避ける。体を冷やさないようにし、腎を補う食材(黒豆、黒ごま、山芋、海藻類など)を積極的に摂る。これにより、腎の陽気と陰液が満たされ、体の底力が上がります。
3. 肝の気の巡りをスムーズにし、ストレスを適切に管理する
ストレスは、アトピー悪化の最大の引き金です。肝の気が滞ると、痒みが増し、炎症が悪化します。
趣味の時間を持つ、適度な運動をする、感情を適切に表現する。これらの習慣が、肝の気をスムーズにし、ストレスによる症状悪化を防ぎます。
4. 肺の機能を高め、皮膚のバリア機能を回復する
肺が弱っていると、皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激に弱くなります。
深い呼吸を意識する、適度な運動で肺活量を高める、辛いものや刺激物を避ける。これにより、肺の気が充実し、皮膚のバリア機能が回復します。
5. 体内の湿熱と血瘀を解消し、皮膚環境をクリーンにする
体内に湿熱や血瘀がこもっている限り、炎症は繰り返します。
利水作用のある食材(ハトムギ、冬瓜、小豆など)を摂り、気の巡りを良くする運動や気功を行う。これにより、体内の邪気が排出され、皮膚環境がクリーンになります。
これらの土台がしっかり整った状態であれば、ステロイドを減らしても、体は自分の力で炎症をコントロールできるようになります。逆に、土台が整っていない状態で減らそうとすると、必ずリバウンドが起こります。
気功が導く、体の土台作りと自己回復力の覚醒
私が長年、多くの患者さんに指導し、その効果を実感してきたのが気功です。気功は、呼吸、姿勢、そして意識を合わせることで、私たちの中に流れる気を整え、心身のバランスを取り戻す養生法です。薬のように即効性があるわけではありませんが、継続することで、根本的な体質改善へと導いてくれます。手技は一切使いませんが、その効果は多くの患者さんが証明しています。
アトピー性皮膚炎でお悩みの方、そしてステロイドの減量・離脱を目指す方にとって、気功はまさに心強い味方となり得るでしょう。その理由は、気功が東洋医学的な根本原因に直接アプローチし、体の土台を整え、自己回復力を引き出すことに特化しているからです。
1. 脾胃の機能を高め、気血の生成を促進する
気功のゆったりとした動きと深い腹式呼吸は、脾胃の機能を高め、消化吸収を助ける効果が期待できます。特に、丹田(おへその下)を意識した呼吸は、脾胃のエリアを温め、活性化させます。
脾胃が元気になれば、気血が十分に生成され、皮膚に栄養が行き渡り、回復力が高まります。
2. 腎の陽気と陰液を補い、生命力を強化する
気功の中でも、特に立禅(りつぜん)や站桩功(たんとうこう)といった静止した姿勢で行う功法は、腎の気を養うことに非常に効果的です。
地に足をしっかりとつけ、意識を足の裏(湧泉)や丹田に集中させることで、腎の陽気と陰液が満たされ、体の底力が上がります。これにより、疲れにくくなり、冷えが改善され、皮�膚の再生力が高まります。
3. 肝の気の滞りを解消し、ストレスによる痒みを軽減する
気功の伸び伸びとした動きや、側面を伸ばす動きは、肝の気の滞りを解消するのに非常に効果的です。
気がスムーズに巡れば、イライラや焦燥感が和らぎ、ストレスによる痒みの増強が軽減されます。夜間の痒みが落ち着くという報告も多くいただいています。
4. 肺の機能を高め、皮膚のバリア機能を回復する
気功の深い呼吸法は、肺の機能を直接高めます。鼻からゆっくり吸い、口から長く吐く。この呼吸を繰り返すことで、肺の気が充実し、皮膚のバリア機能が回復します。
風邪を引きにくくなった、皮膚が外からの刺激に強くなったという声も多く聞きます。
5. 全身の気血の巡りを改善し、湿熱と血瘀を排出する
気功の動きは、全身の気血の巡りを改善します。気が巡れば、血も巡り、水も巡ります。
体内に停滞していた湿熱や血瘀が排出され、皮膚環境がクリーンになります。ジュクジュクした浸出液が減った、皮膚の色が明るくなったという変化を実感される方が多いです。
6. 自律神経のバランスを整え、心身の過緊張を解く
アトピーの方の多くは、常に心身が緊張状態にあり、交感神経が優位になっています。これにより、痒みに対して過敏になり、掻き壊しが悪化します。
気功の深い腹式呼吸や、ゆったりとした動作は、副交感神経を優位に導き、心身を深いリラックス状態へと誘います。これにより、自律神経の乱れが整い、心身の過緊張が和らぎ、痒みへの過敏性が軽減されます。
継続的な気功の実践は、その方の体質そのものを良い方向へと導きます。良い土壌ができれば、自然と良い作物が育つように、体質が改善すれば、ステロイドに頼らなくても、体は自分の力で炎症をコントロールできるようになるのです。
日常でできる養生と気功のヒント:ステロイド減量への具体的なステップ
アトピー性皮膚炎を改善し、ステロイドの安全な減量・離脱を実現するために、日常生活でできる養生と、手軽にできる気功のヒントをお伝えします。これは、ご自身で実践できる「セルフケア」の柱となるものです。
食養生で心身の土台を作る:脾胃と腎を労り、湿熱を冷ます食事
食事は、私たちの体を作り、気を生み出す源です。特に脾胃を助け、腎を補い、湿熱を減らし、血を養う食事を心がけましょう。
脾胃を健やかにし、湿熱を減らす食材:
- 米、もち米、山芋、蓮根、かぼちゃ、キャベツ、白菜、大根
- ハトムギ(ヨクイニン)、小豆、冬瓜、きゅうり、緑豆
- これらは消化に良く、脾胃の機能を高め、体内の余分な湿熱を排出する助けになります。特に、ハトムギはアトピーの方に非常におすすめです。毎日、ハトムギ茶を飲む、ご飯に混ぜて炊くなど、習慣にしてみてください。
腎を補い、生命力を高める食材:
- 黒ごま、黒豆、くるみ、山芋、海藻類(昆布、わかめ、ひじき)
- エビ、豚肉、羊肉、すっぽん、牡蠣
- これらは腎精を補い、体の根源的なエネルギーを高め、皮膚の再生力を強化します。
肺を潤し、皮膚のバリア機能を高める食材:
- 白キクラゲ、梨、大根、蓮根、百合根、白ごま、はちみつ
- これらは肺を潤し、皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を高めます。
血を養い、皮膚に栄養を届ける食材:
- ほうれん草、小松菜、人参、レバー、赤身肉、プルーン、なつめ、竜眼肉
- これらは血を補い、皮膚に栄養を届け、乾燥や色素沈着を改善します。
気の巡りを良くする食材:
- ミカンや柚子などの柑橘類、セロリ、春菊、シソ、三つ葉
- 香り高い野菜や果物は、気の滞りを解消し、ストレスによる症状悪化を防ぎます。
絶対に避けるべき食材:
- 辛いもの(唐辛子、胡椒、カレーなど):体に熱を生み出し、炎症を悪化させます
- 脂っこいもの、揚げ物:脾胃に負担をかけ、湿熱を生み出します
- 甘いもの(特に白砂糖を使ったもの):湿を生み出し、炎症を悪化させます
- アルコール、コーヒー、チョコレート:熱を生み出し、肝火を助長します
- 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト):体質によっては湿痰を生み出しやすいです
- 刺激の強い香辛料、添加物の多い加工食品
食べ方のポイント:
- 毎日決まった時間に食事を摂る
- よく噛んで、ゆっくり食べる
- 腹八分目を心がける
- 寝る前3時間は食べない
- 冷たいものは避け、温かいものを摂る
心身のリラックスを促す習慣:自律神経と心の安定を
アトピーの苦しみを改善し、ステロイドの減量を成功させるためには、心身がリラックスできる環境を整え、ストレスを適切に管理することが絶対に必要です。
質の良い睡眠を確保: 睡眠は、気血を回復し、皮膚を再生する最も重要な時間です。毎日、同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。最低でも7時間は確保しましょう。寝室は静かで暗く、適度な温度に保ちます。スマートフォンやパソコンのブルーライトは、脳を興奮させ、睡眠の質を低下させるため、寝る2時間前からは使用を控えるのが理想です。
ストレス管理: ストレスは、肝の気を滞らせ、痒みを増強させる最大の引き金です。趣味の時間を持つ、好きな音楽を聴く、友人との会話を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、こまめに実践しましょう。完璧主義を手放し、「ほどほどで良い」という意識を持つことも大切です。
適度な運動: ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、軽い運動は気の巡りを良くし、心身のリラックス効果を高めます。特に、自然の中で行うウォーキングは、気の巡りを改善し、心を落ち着かせるのに役立ちます。ただし、激しい運動や、汗をかきすぎる運動は、症状を悪化させることがあるので、無理のない範囲で行いましょう。
入浴習慣: 就寝の1時間前くらいに、38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。湯船に浸かることで副交感神経が優位になり、リラックス効果が高まります。ただし、熱すぎるお湯は皮膚を刺激し、痒みを増すことがあるので注意してください。入浴後は、すぐに保湿をしましょう。
皮膚への直接的なケア:
- 綿100%の柔らかい衣類を着る(化学繊維は避ける)
- 洗剤は低刺激のものを使い、よくすすぐ
- 爪は短く切り、掻き壊しを防ぐ
- 保湿は、ステロイドを塗る前にしっかり行う
- 掻きたくなったら、冷やしたタオルで冷やす、軽く叩くなど、代替行動を取る
気功で気を巡らせ、心を穏やかに、体の土台を強化:ご自身でできる実践法
ここでは、ご自宅で簡単にできる気功のヒントをいくつかご紹介します。難しい型を覚える必要はありません。大切なのは、呼吸と意識を集中させることです。無理のない範囲で、短い時間から始めてみてください。
丹田呼吸(脾胃と腎を養う):
仰向けに寝るか、椅子に楽な姿勢で座り、片手を丹田(おへその下約9cm)に置きます。
息を吸う時にお腹が大きく膨らみ、丹田に温かい空気が満ちるのを感じます。同時に、脾胃と腎が温かく活性化されるイメージを持ちましょう。
息を吐く時にお腹がゆっくりとへこみ、体内の湿熱や邪気、そして皮膚の炎症や痒みが、体外へ排出されていくイメージを持ちます。
吐く息を長く、ゆっくりと行うことがポイントです。吸うのに3秒かけたら、吐くのに6秒から9秒かける、といった具合です。
これを毎日、朝晩10分ずつ行いましょう。脾胃と腎が強化され、体の土台が整います。
立禅(腎を養い、生命力を強化する):
足を肩幅に開いて立ち、軽く膝を緩めます。
腕を胸の前で丸く抱えるような姿勢をとります(大きな木の幹を抱いているイメージ)。
意識を足の裏全体、特に腎経の始まりである湧泉(足の裏の中央より少し上、指を曲げた時にできるくぼみ)に集中し、大地に深く根を張るイメージを持ちます。
頭のてっぺんから糸で吊るされているような意識を持ちながら、全身の力を抜き、深い腹式呼吸を続けます。
最初は5分から始め、慣れてきたら10分、15分と延ばしていきましょう。この功法を継続することで、腎の気が強化され、生命力が高まり、皮膚の再生力が向上します。
伸び伸び運動(肝の気を流す):
立位で、両腕を頭上に持ち上げ、指を組み、手のひらを天井に向けます。
息を吸いながら、体をゆっくりと左右に傾け、脇腹から腕、指先までを気持ちよく伸ばしましょう。この時、体内に停滞していた気や湿熱が、体の側面から解放されていくイメージを持ちます。
息を吐きながら、元の姿勢に戻ります。これを左右それぞれ5回から10回繰り返してください。
肝の気の滞りが解消され、イライラや焦燥感が和らぎ、ストレスによる痒みが軽減されます。
吐納法(体内の邪気を排出する):
楽な姿勢で座るか、立ちます。
鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹を軽く膨らませます。
口をすぼめ、「フーッ」と細く長く息を吐き出します。息を吐き出す時に、体の中の湿熱、血瘀、炎症、痒み、そして心の不安やストレスなどが、全部濁った空気のように出ていくイメージで行います。
これを10回から20回繰り返します。特に、痒みが強い時や、ストレスを感じた時に行うと、リラックス効果が高まり、体内の邪気が排出されやすくなります。
皮膚への気の流れを促す軽擦法(けいさつほう):
手のひらを温めてから、患部(炎症がひどい部分は避ける)を優しく、ゆっくりと撫でます。
この時、手のひらから温かい気が皮膚に流れ込み、炎症や痒みが和らいでいくイメージを持ちます。
決して掻かず、優しく撫でることで、皮膚の気血の巡りが改善され、痒みが軽減されます。
ステロイドの減量・離脱の具体的なステップ:焦らず、段階的に
ここまで、体の土台を整えることの重要性をお伝えしてきました。では、実際にステロイドを減らしていく際の具体的なステップをお伝えします。
ただし、これはあくまで一般的な指針です。必ず、主治医と相談しながら進めてください。自己判断での急激な中止は絶対に避けてください。
ステップ1:まず3ヶ月、体の土台を徹底的に整える
ステロイドを減らす前に、まず3ヶ月間、食養生、気功、生活習慣の改善に徹底的に取り組みます。この期間は、ステロイドの量は変えず、今まで通り使用します。
この3ヶ月で、脾胃の機能が回復し、腎の気が強化され、肝の気の巡りが良くなり、肺の機能が高まります。体の土台がしっかり整ってきたことを実感できるはずです。
目安としては、以下の変化が現れたら、次のステップに進む準備ができています。
- 疲れにくくなった
- 食欲が安定し、消化が良くなった
- 睡眠の質が向上した
- ストレスに対して過敏に反応しなくなった
- 痒みの頻度や強さが、以前より落ち着いている
- 皮膚の乾燥が改善され、色艶が良くなってきた
ステップ2:ステロイドの強さを1段階下げる(または塗る回数を減らす)
主治医と相談の上、ステロイドの強さを1段階下げるか、塗る回数を減らします(例:1日2回→1日1回)。
この段階では、まだ完全には止めません。体が慣れるまで、最低でも1ヶ月から2ヶ月は様子を見ます。
この期間も、食養生、気功、生活習慣の改善は継続します。
もし、この段階で症状が悪化するようであれば、まだ体の土台が整っていない証拠です。無理に進めず、いったん元の強さに戻し、さらに土台作りに時間をかけます。焦りは禁物です。
ステップ3:さらにステロイドの強さを下げる、または塗る範囲を減らす
ステップ2が安定したら、さらにステロイドの強さを下げるか、塗る範囲を減らしていきます。
例えば、顔には弱いステロイド、体には保湿剤のみ、といった具合に、部位によって使い分けるのも一つの方法です。
この段階も、最低1ヶ月から2ヶ月は様子を見ます。
ステップ4:ステロイドを完全に止め、保湿剤のみにする
ステップ3が安定し、症状がほとんど気にならなくなったら、ステロイドを完全に止め、保湿剤のみにします。
ただし、この段階でも、急に全部止めるのではなく、まず1週間に1回、その次は2週間に1回、というように、間隔を徐々に空けていく方法もあります。
ステップ5:保湿剤も徐々に減らし、最終的には何も使わない状態を目指す
保湿剤のみの状態が安定したら、保湿剤も徐々に減らしていきます。
最終的には、何も使わなくても、皮膚が自分の力で潤いを保てる状態を目指します。
この段階に到達するまでには、通常、1年から数年かかります。焦らず、じっくりと取り組むことが大切です。
重要な注意点:
- リバウンドが起きた場合は、無理に我慢せず、いったんステロイドの強さや量を戻す
- 主治医との連携は絶対に欠かさない
- 自己判断での急激な中止は、激しいリバウンドを引き起こすため、絶対に避ける
- 体の声に耳を傾け、無理をしない
私の経験から思うこと:あなたは一人じゃない
20年間、整体師として多くの方の心身と向き合ってきましたが、アトピー性皮膚炎、特にステロイドへの依存と離脱に悩む方の多くが、その根底に深い不安や自己否定、そして心身の深い消耗を抱えていることを目の当たりにしてきました。
「この肌のせいで、人前に出るのが怖い」「いつまでこの薬に頼り続けなければならないのか」「子どもの将来が不安で仕方ない」……。そんな声を聞くたびに、私の心も痛みます。
でも、決して諦める必要はありません。体には、必ず回復する力が備わっています。その力を引き出すための鍵が、東洋医学と気功の知恵なのです。
以前、ある30代の女性の方が、幼少期からのアトピーで、顔や首、手足に激しい炎症があり、10年以上、強いステロイドを使い続けていました。彼女は「もうステロイドなしでは生きていけない」と絶望していました。
私は彼女に、まず3ヶ月間、食養生と気功、生活習慣の改善に徹底的に取り組むことを提案しました。最初は半信半疑でしたが、毎日、丹田呼吸と立禅を続け、食事も見直し、十分な睡眠を確保するよう心がけました。
3ヶ月後、彼女の顔色が明るくなり、体のだるさが軽減され、何より「気持ちが前向きになった」と話してくれました。そこから、主治医と相談しながら、少しずつステロイドの強さを下げていきました。
減量の過程で、何度か軽いリバウンドもありましたが、その都度、気功を丁寧に行い、食養生を徹底することで乗り越えていきました。
そして、2年後。彼女は、ステロイドを完全に止め、保湿剤のみで生活できるようになりました。皮膚は以前とは見違えるほど健康的になり、何より、彼女の表情が本当に明るく、自信に満ちていました。
「先生、私、できました。もう薬に縛られない生活が送れます」
その言葉を聞いた時、私も心の中で「本当に良かった」とつぶやきました。東洋医学と気功の奥深さを、改めて実感した瞬間でした。
あなたの心は、ステロイドへの依存から解放され、健やかな肌を取り戻したいと願っていますか?
アトピー性皮膚炎とステロイドへの依存は、単なる皮膚の問題ではありません。東洋医学の視点から見ると、肺、脾、肝、腎といった五臓のバランスが乱れ、生命エネルギーが消耗したり滞ったりしているという、体の根本的なサインと捉えることができます。
しかし、適切なアプローチでこのバランスを取り戻し、体の土台をしっかりと立て直すことで、ステロイドに頼らなくても、体は自分の力で炎症をコントロールできるようになります。そして、本来の健やかで美しい肌を取り戻すことは、決して夢ではありません。
東洋医学と気功の知恵は、この長く苦しい道のりを、あなたと共に歩み、必ずゴールへと導いてくれます。今日お伝えしたシンプルなアプローチを、ぜひご自身のペースで試してみてください。
焦らず、じっくりと。体の声に耳を傾けながら。
あなたの心と体が、本来の輝きを取り戻す日を、私は心から信じています。
さて、今日からあなたの心と体に寄り添い、ステロイドへの依存から解放され、健やかな肌を取り戻すために、具体的にどのようなことから始めてみたいと思いますか?











