産後に自律神経が乱れやすいのはなぜですか
結論から言うと、出産を境に女性ホルモンが急激に落ち込み、そのホルモン分泌の指令を出す脳の部位のすぐそばに自律神経の中枢があるため、ホルモンの乱高下がそのまま自律神経の乱れとして伝わってしまうからです。そこに睡眠不足と気血の消耗が重なり、乱れが長引きます。
原因は何か。ホルモンの急降下・睡眠不足・出産による気血の消耗という三つの負荷が同時にかかることです。整体でできることは何か。身体の緊張をゆるめ、自律神経の働きが整いやすい土台をつくるサポートです。この記事は誰向けか。産後に動悸や不眠、イライラ、ほてりなどが出て「これは自律神経のせいなのか」と気になっている方向けです。
自律神経とは、そもそも何ですか
結論として、自律神経とは、内臓や体温、血管の動きを自動で調整している、体のアクセルとブレーキのような仕組みです。
活動時に働く交感神経がアクセル、休息時に働く副交感神経がブレーキにあたります。本来この二つは状況に応じて滑らかに切り替わりますが、産後はこの切り替えがうまくいかず、片方に偏ったまま戻りにくくなる方が多く見られます。
なぜ産後は自律神経の切り替えがうまくいかなくなるのですか
結論として、ホルモンの急降下・睡眠不足・気血の消耗という三つの負荷が、産後は同時に重なるためです。
まずホルモンです。妊娠中に高い水準を保っていたエストロゲンは、出産を境にほぼゼロに近いところまで急落します。ホルモン分泌の指令を出す脳の視床下部は、自律神経の働きを調整する部位のすぐ隣にあるため、ホルモンを出そうとする過剰な指令が、そのまま隣の自律神経を刺激してしまいます。体温調節がうまくいかずほてりや発汗が出たり、血管の収縮と拡張が乱れて動悸やめまいが出たりするのは、この巻き添えによるものです。
次に睡眠不足です。自律神経は、まとまった深い睡眠のあいだに一日の乱れをリセットしています。授乳やお世話で睡眠が数時間おきに分断される状態が数ヶ月続くと、リセットする時間そのものが足りなくなり、乱れが積み重なっていきます。
そして出産による消耗です。出産では大量の出血と体力を使うため、回復力の土台そのものが一時的に目減りします。土台が弱った状態に、ホルモンの乱高下と睡眠不足が重なることで、自律神経は普段よりずっと乱れやすい状態になるのです。
東洋医学では、産後の自律神経の乱れをどう考えますか
結論として、東洋医学では、自律神経に近い働きを「心(しん)」と「肝(かん)」の二つの臓が担っていると考え、産後はこの二つが出産の消耗によって弱りやすいと見ます。
心は精神活動と血のめぐりを、肝は気の巡りと感情の調整を担う臓です。産後はここに、生まれ持った回復力の貯金にあたる「腎(じん)」の消耗も重なります。当院で25,000人を施術してきた経験から、産後に自律神経の乱れを訴える方には、大きく三つの証タイプが見られます。
一つ目は心脾両虚型(しんぴりょうきょ)です。動悸や胸のざわつき、寝つきの悪さ、考えごとが止まらない状態が重なりやすく、夜間授乳で睡眠が細切れになっている方に多く出ます。二つ目は肝鬱化火型(かんうつかか)です。些細なことへのイライラ、のぼせ、目の充血が重なりやすく、一人で育児を抱え込んでいる方に見られやすい傾向です。三つ目は腎陰虚型(じんいんきょ)です。ほてりや寝汗、耳鳴り、のどの渇きが重なりやすく、高齢出産の方や出産回数が多い方に出やすい状態です。
ツボで言うと、心脾両虚型には神門(しんもん)、手首の内側、小指側のくぼみにあるツボが目安です。肝鬱化火型には太衝(たいしょう)、足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ、腎陰虚型には太渓(たいけい)、内くるぶしの真後ろのくぼみが目安になります。いずれも強く押さず、指の腹で軽く触れて温める程度で十分です。
整体は、産後の自律神経の乱れにどこまでできますか
結論として、整体はホルモンそのものを調整するものではありませんが、身体の緊張をゆるめ、自律神経の働きが整いやすい土台をつくるサポートはできます。
具体的には、授乳や抱っこの姿勢で固まった首・肩・背中の緊張をゆるめること、浅くなりがちな呼吸を深くすること、骨盤まわりの緊張をゆるめて内臓の働きが整いやすい状態をつくることです。呼吸が浅いままだと、自律神経のブレーキ役である副交感神経が働きにくく、緊張が抜けないまま一日が終わってしまいます。まず呼吸を深くできる身体に戻すことが、遠回りのようで最も効くと感じています。
一方で、ホルモンの数値や産後うつの診断、薬の判断は医療の領域です。整体はそこを担うものではなく、産婦人科や心療内科での経過観察と並行して活用していただくケアとして位置づけています。
常若整骨院では、産後の自律神経の乱れをどう見ていますか
結論として、当院ではカウンセリングで出産からの経過と生活リズムを丁寧に聞き取り、触診で身体の緊張の偏りを確認したうえで、施術とセルフケアをセットで進めています。
問診では、出産からの週数、授乳の頻度、まとまって眠れている時間、家族のサポートの有無を聞きます。触診では、呼吸の深さ、みぞおちの硬さ、首や肩の緊張の左右差を確認します。見立ての基本として、右側の張りは仕事や外向きの緊張、左側の張りは家庭や身近な人間関係の緊張と関連して出やすい傾向があります。産後の相談では、授乳側の腕や抱っこの姿勢のクセによって左右どちらかに強い張りが偏っていることが多く、その偏りを見つけることが回復の近道になります。
産後に自律神経の乱れを訴える方に多いのはどんなケースですか
結論として、休みたくても休めない状態が数ヶ月続き、自分のことを後回しにし続けているケースが多く見られます。
一人目は、育児と並行して仕事の復帰準備を進めていた30代女性の方です。復帰の予定が近づくにつれて夜中に何度も目が覚めるようになり、日中も些細なことでイライラが抑えられなくなっていました。身体の緊張をゆるめる施術とあわせて、呼吸を深くするセルフケアを続けたところ、夜中に目が覚める回数が少しずつ減り、日中の気持ちの波も落ち着きやすくなったとのことでした。効果には個人差があり、回復を保証するものではありません。
二人目は、実家のサポートが受けられず一人で育児を担っていた30代女性の方です。誰にも頼れない状態が続き、動悸やのぼせを感じる日が増えていました。話を聞くところから始め、身体の緊張をゆるめる施術を重ねる中で、少しずつ人に頼ることへの抵抗感も和らぎ、動悸を感じる頻度が減っていったといいます。効果には個人差があり、回復を保証するものではありません。
三人目は、産後1年以上不調が続き、いくつかの医療機関を回っても「異常なし」と言われ続けていた40代女性の方です。検査で異常が出ないことにかえって不安を募らせていましたが、東洋医学の見立てで腎陰虚型の傾向が強いことを伝え、生活の中でできることを一つずつ絞って提案したところ、ほてりや寝汗が落ち着く日が増えていったとのことでした。効果には個人差があり、回復を保証するものではありません。
産後の自律神経の乱れは、自宅でどうケアすればいいですか
結論として、次の三つのうち、どれか一つからで十分です。
一つ目は、授乳や抱っこの合間に、鼻からゆっくり息を吸って口から長く吐く深呼吸を三回だけ行うことです。二つ目は、湯船に浸かって身体の内側から温めることです。三つ目は、赤ちゃんが眠っているあいだの数分間だけ、目を閉じて何もしない時間をつくることです。
できない日があって当然です。育児中は、自分の身体を後回しにせざるを得ない日が続きます。そのたびに「今日もできなかった」と自分を責めてしまうと、その自責そのものが緊張を生み、かえって自律神経を乱します。真面目に向き合っている証拠であって、真面目さが悪いのではなく、向け先を「完璧にやること」から「今日できた一つを見つけること」に変えるだけで、身体は少しずつ緩んでいきます。
病院と整体、どちらを優先すべきか迷ったらどうすればいいですか
結論として、産後特有の危険なサインがある場合は必ず医療機関を優先し、整体は日常の緊張をゆるめるケアとして並行して活用してください。
具体的には、強い動悸や胸の痛み、息苦しさが続く場合、気分の落ち込みや涙もろさが2週間以上続く場合、赤ちゃんに気持ちが向かない、強い不安が続く場合は、産後うつや甲状腺の異常が隠れていることもあるため、早めに産婦人科や心療内科、自治体の産後ケア窓口に相談してください。整体は医療行為ではなく、診断や薬の判断を行う立場にはありません。
自律神経の乱れそのものの仕組みについては、こちらの記事でも詳しく取り上げています。自律神経失調症についての記事もあわせてご覧ください。産後の不調がいつまで続くのかという時間軸については、別の記事で扱っています。
よくあるご質問
産後の自律神経の乱れは、いつまで続きますか?
ホルモンバランスが落ち着く産後3〜6ヶ月ごろから軽くなる方が多いですが、睡眠不足や育児の負担が続く限り、それ以上長引くこともあります。
産後の自律神経の乱れは、何科を受診すればいいですか?
まずは出産した産婦人科への相談が基本です。気分の落ち込みが強い場合は心療内科、動悸や発汗が強い場合は内科での甲状腺の検査も選択肢になります。
マタニティブルーと産後の自律神経の乱れは同じものですか?
同じではありません。マタニティブルーは産後数日から10日ほどで自然に落ち着く一時的な心の変化を指し、自律神経の乱れはそれより長く続くことがあります。
二人目以降の出産では、自律神経が乱れやすくなりますか?
そう感じる方は多くいます。上の子のお世話と両立するぶん、まとまった休息が取りにくくなることが背景にあります。
授乳をやめると自律神経は落ち着きますか?
一概には言えません。断乳でホルモンが再び変化するため、落ち着く方もいれば、一時的に別の揺れが出る方もいます。
自律神経の乱れは、整体だけで良くなりますか?
整体だけで完結するものではありません。睡眠や食事、周囲のサポートとあわせて、身体の緊張をゆるめることが土台になります。
産後うつと自律神経の乱れは、どう見分ければいいですか?
気分の落ち込みや涙もろさが2週間以上続き、日常生活に支障が出ている場合は産後うつの可能性があるため、自己判断せず医療機関にご相談ください。
イライラが抑えられないのは、自分の性格のせいですか?
性格のせいではありません。肝の気の巡りが乱れやすい状態が背景にあることが多く、身体の緊張がゆるむとともに落ち着く方を多く見てきました。
里帰り出産が終わって一人になってから症状が増えました。関係がありますか?
関係している可能性があります。サポートが減ることで休息時間が減り、自律神経の乱れが抜けにくくなるためです。
セルフケアは毎日続けなければ意味がありませんか?
いいえ。どれか一つを、できるときにできる範囲で続けるだけで十分です。
まとめ
福岡市で、産後に動悸やイライラ、不眠、ほてりが続き「これは自律神経のせいなのか」と気になっている方へ。ホルモンの急降下と睡眠不足、出産の消耗が重なることで、自律神経は普段よりずっと乱れやすくなります。一人で抱え込まず、まずは身体の緊張をゆるめることから始めてみてください。カウンセリング・施術・セルフケアを通じて、回復しやすい身体づくりをサポートいたします。
外部の参考情報として、産後のホルモン変化と自律神経の関係については、厚生労働省研究班監修の情報サイトの解説も参考になります。女性の健康推進室ヘルスケアラボ「産後のトラブル」もご参照ください。
院長プロフィール
冨高誠治(とみたか せいじ)。柔道整復師・鍼灸師。施術歴20年、これまでに25,000人の患者さんを施術。福岡市早良区・西新駅から徒歩圏の常若整骨院院長。整体・東洋医学・気功を軸に、カウンセリング・施術・セルフケアをセットにした身体づくりのサポートを行う。
季節ごとの体の整え方を、メールでお届けしています。よければ、どうぞ。
▼ 常若だより 登録はこちら
https://my919p.com/p/r/dqRWbTcm









