福岡市早良区 起立調節障害の予後改善

起立調節障害の予後改善には学校との連携が不可欠

通常人間は起立すると重力により血液が下半身に貯まって、その結果として血圧が低下してしまいます。
ただ健康な人なら、この状態を防ぐために自律神経系のひとつである交感神経が働いて、下半身の血管を収縮させて血圧を維持するのです。
また、その一方で副交感神経の活動を低下させて心臓の拍動が増加し心拍出量を上げることで、血圧を正常な状態に維持するように働きます。
しかし、起立性調節障害を発症している人は、この代償機構が破綻してしまうために血圧は低下しますし、脳血流や全身への血行が維持されなくなってしまうのです。
その為、立ちくらみやふらつきなどといった諸症状が起こってきますし、血液による酸素や栄養の供給が悪くなるので、すぐに疲れたり疲労からの回復が遅れたりします。
また脳血流が悪いために思考力が低下してしまいますし、集中力もなくなってしまうのです。

発症する原因は約80%が家族素因が認められますが、自律神経機能・生活習慣・心理社会的ストレスも大きく影響します。
好発年齢は10~16歳の思春期にみられ男女比は1:1.5~2で、有病率は小学生の約5%、中学生の約10%と言われていて、心身医学的な取組みが必要となる疾患です。
ちなみに半分に不登校を合併しますし、逆に不登校の3~4割の原因になっているのが本症になります。
また代表的なサブタイプとして、起立直後性低血圧と体位性頻脈症候群があって、それぞれ動脈系と静脈系に自律神経系の異常が現れていると考えられています。
この起立性調節障害の診断にはどのような検査が必要なのかというと、日本小児心身医学会から診断・治療ガイドラインというのが出されているのです。
それによると、発症を疑う諸症状がある場合に、基礎疾患を除外した上で質問項目でチェックし診断基準を満たした時には、シェロング起立試験に起立後血圧回復時間測定が加わった新起立試験を実施して診断されます。

起立性調節障害は身体疾患なので、まず身体面での治療を進めますが、すぐには改善することは少ないので焦らず取り組むことが肝要となるのです。
治療は身体的重症度と心理社会的関与の有無などによってバリエーションがあります。
非薬物療法のひとつとして水分摂取があって、それについては最低1日1.5リットル必要ですし、塩分は1日約10~12g程度の摂取が必要です。
また、いきなり立ち上がらない、歩き始めは頭位を前屈させる、起立の必要がある時は足踏みしたり足をクロスに交差したりするなどといった指導や日常生活リズムの改善なとも優先して行います。
中等症以上の治療としては薬物療法も併用しながら、1~2週間ごとの診察が望まれて効果判定を実施するのです。
それから本疾患の予後改善には学校との連携が不可欠で、担任教師や養護教諭にも保護者同様に病態生理につい説明をして、十分に理解いただくことが治療開始のタイミングで必要です。
ちなみに、成人でみられる起立性低血圧・神経循環虚弱症・心臓神経症などが同じものかについては、心身医学・心療内科の分野で現在検討されています。