フォーカルジストニアを“全身”から解く。整体×東洋医学で“動き”を取り戻す7つのステップ
第1章:「指だけが問題じゃない」──フォーカルジストニアの正体を全身から見直す
フォーカルジストニアは“脳”だけの問題じゃない
フォーカルジストニアという言葉を初めて耳にしたとき、きっと多くの人が「神経系のトラブルなんだろうな」と思ったはず。たしかに、医学的な定義では「脳が誤った指令を出し、筋肉が異常に動いてしまう」神経疾患とされています。
けれども、実際にこの症状に悩んでいる人たち──特にミュージシャンや書家、職人など繊細な動作を極限まで磨いてきた人たち──が語る実感は、もっと複雑でリアルです。
「演奏中、突然うまく動かなくなった」
「力を抜こうとすると、かえって力が入ってしまう」
「心では“動け”と言っているのに、体が言うことを聞かない」
こうした体験は、脳というより“全身のズレ”のようにも聞こえませんか?
事実、整体や東洋医学の視点で見ると、ジストニアは「神経のエラー」というより、「体のつながりの崩壊」として現れている場合も多いのです。
繊細な動きが崩れる本当の理由
フォーカルジストニアの怖さは、痛みがないことです。痛みがあれば、体が「ここに問題があるよ」と教えてくれます。でもジストニアは、まるで“気配”のように忍び寄り、ある日ふと「動かない」という結果だけが残される。
その原因を探ろうと、つい“指”や“手”といった動かない部分に注目しがちですが、そこだけを見ても本質はつかめません。むしろ、その動きを支えている全身──肩の可動域、首の緊張、骨盤の傾き、呼吸の浅さ──こうした要素が静かに連動し、結果的に“指が動かなくなる”という表現を取っている場合があるのです。
症状にとらわれすぎると回復が遠のく理由
整体の現場でよく聞くのが、「何とかして指だけを治したい」「指の筋肉を鍛え直したい」という声。もちろん、その気持ちは痛いほどわかります。ですが、ジストニアにおいて“局所集中型”のアプローチは、逆効果になることさえあります。
たとえば、無理やり指を動かそうとして他の部位に力が入り、さらに不自然な動きの癖が強化される。結果として、症状が長引いたり、違う部分にまで悪影響が広がってしまうこともあるのです。
この症状に立ち向かうには、「指は結果、全身は原因かもしれない」という視点の切り替えがカギになります。
全身のバランスが“動作の正確さ”を決めている
整体的な視点では、「動き」とは筋肉や骨格の協調によって生まれる“チームプレイ”です。どこか一箇所の歯車が狂えば、他のパーツが無理してバランスを取りにいく。そして最終的に、もっとも繊細な場所──指先──が“限界です”と悲鳴を上げるのです。
この章の締めとして、ぜひ覚えておいてほしいのは「フォーカルジストニアは指先で起きているが、指先だけで起きているわけではない」ということ。だからこそ、回復の道もまた、指からだけではなく、体全体を見つめ直すことから始まるのです。
第2章:「骨格のねじれは心のねじれ?」整体が明かす“動きの詰まり”の正体
姿勢の崩れが動作に与える影響
鏡の前で、まっすぐ立ってみてください。肩の高さは揃っていますか? 頭の位置は、少し前に出ていませんか? 背骨はS字に、きれいなカーブを描いていますか?
…たぶん、多くの人が「うーん、そう言われると自信ないな」と思ったはず。
実はその“わずかなズレ”が、動作に大きな影響を与えているんです。
整体の観点では、姿勢はただの“見た目”ではありません。全身の筋肉や関節が協調して動くための土台です。この土台が歪んでいれば、どんなに練習を積み重ねても、肝心の動きに“ノイズ”が走ってしまいます。
そしてジストニアのような症状は、そのノイズに脳が過剰反応し、「動かさないほうが安全」と判断することで、動作そのものを止めてしまう――というケースがあるのです。
「使いすぎ」より「使い方のクセ」が根深い
「使いすぎが原因ですか?」という質問は、ジストニアで悩む人からよく出ます。でも整体的な見解では、「使いすぎ」よりも「偏った使い方」が原因になっている場合が圧倒的に多いんです。
たとえば、右手ばかりで細かい作業をしている人の身体をチェックすると、右の肩が内巻きになっていて、右の肋骨が締まり、右腰が上がり気味になっている…そんな“全体の歪み”が見えてくることがよくあります。
つまり、指の動きが狂ってきたときには、すでにその前段階として「身体全体のアンバランス」がじわじわ進行していた可能性が高いのです。
骨格と筋肉の連動性が崩れるとどうなるか
本来、人間の動きは“連動”でできています。足で地面を踏み、骨盤が連動し、背骨を通って肩や腕、そして最終的に指先へと力が伝わる──これが理想的な動作の流れです。
でも、たとえば骨盤が後ろに倒れていたら? 背骨がS字でなくC字になっていたら?
そうすると、肩や腕は力の伝達のために無理な角度を取り、筋肉は局所的に緊張し、結果として「指だけがおかしい」という現象が起きるのです。
これは、バケツリレーの途中で一人だけバテて水をこぼしてしまうようなもの。指が“こぼした役”になっているだけで、本当の原因はもっと前の段階にあるわけです。
施術現場で見られる“ジストニア体質”の共通点
整体師として、数多くのジストニア相談を受けてきた人たちに共通する身体の特徴があります。たとえば:
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肩甲骨の動きが固い
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頸椎(首の骨)がまっすぐで可動域が狭い
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骨盤が前後どちらかに極端に傾いている
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呼吸が浅く、肋骨がほとんど動かない
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無意識に片足重心になっている
…こうした体の“クセ”は、毎日の姿勢や動作パターンによって徐々に染みついたものです。そして、それらが知らないうちに「脳の誤作動」を引き起こす土台を作っていたとしたら…?
ジストニアの回復には、このような土台の“整え直し”が欠かせないのです。
心と身体、どちらが先か
「骨格のねじれは心のねじれ」とタイトルに書いたのは、少し極端に聞こえるかもしれません。でも実際、ストレスやプレッシャーが続いた人の身体は、見事なまでに内にこもり、縮こまるような姿勢になっています。
気持ちが塞げば、胸は閉じ、呼吸は浅くなり、肩は上がり、首は硬直する。
それが指先の動きにまで影響しないわけがないんです。
逆に言えば、体を開き、骨格を整え、呼吸を深めていけば、心にも変化が訪れます。そしてその変化が、ジストニアを“治す”のではなく“解いていく”ような感覚につながっていくのです。
第3章:東洋医学の視点で見る「気の滞り」とジストニアの意外な関係
「気」が流れないと動きも止まる
西洋医学では、ジストニアは神経系の“誤作動”として捉えられます。一方、東洋医学では、「気(き)」という概念を使って、人の身体や心の不調を説明します。
「気が滞る」と聞くと、なんとなくスピリチュアルっぽく感じるかもしれませんが、東洋医学ではごくまじめな、れっきとした理論です。
気とは、ざっくり言えば「体と心を巡るエネルギーの流れ」。これがスムーズに巡っている状態が健康であり、どこかで滞ると、痛み・コリ・重だるさ・不調として現れる。
そしてこの“気の滞り”が長引くと、指先のような末端部分に微細な動きのエラーとして出てくることがあるのです。つまり、フォーカルジストニア=「動かない」という現象も、気の流れから見れば、“流れが止まった場所に症状が出ている”という考え方ができます。
ストレス・怒り・悲しみが指先に現れる?
東洋医学のすごいところは、身体の不調を単なる肉体の問題として見ない点です。感情や性格までもが、身体の動きと深く関わっていると考えるんですね。
たとえば──
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怒りは「肝(かん)」の気を乱す
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悲しみは「肺」の気を弱らせる
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思い悩むと「脾(ひ)」の動きが鈍る
こうした感情と内臓との関係が、結果的に“気の流れ”を変えてしまい、筋肉の動きや身体の反応に影響してくるんです。
ジストニアの発症に「大事な演奏会が迫っていた」「練習を詰め込みすぎた」「なぜか焦りと不安が続いていた」といった“精神的な背景”がある人が多いのも納得ですね。
ジストニア=“気”の病として捉えてみる
実際に東洋医学の臨床では、ジストニアを「気が閉じこもった状態」として捉えるケースがあります。
この“閉じこもり”という表現がけっこう的を射ていて、患者さん自身も「内側に何かが詰まっている感じがする」と表現することがあるんです。
気は本来、上下左右に巡り、内と外を循環しています。でも、強いストレスや過労、偏った姿勢や習慣によって、その流れがせき止められると、内圧だけが高まって「ブレーカーが落ちる」ように身体が反応を止めてしまう。
つまり、ジストニアとは“動きを止めることで自己を守ろうとする防衛反応”でもあるわけです。
これ、実は身体からのSOSなんですね。
陰陽のバランスと自律神経の密接な関係
もう少し深堀りすると、東洋医学では「陰陽(いんよう)」のバランスも重視されます。
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陰:休息・冷・内側・沈静
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陽:活動・熱・外側・興奮
この陰と陽がうまくバランスしていると、人は自然なリズムで動けます。ところが、ストレスや環境の変化で陽ばかりが強まると、交感神経が優位になり、緊張が抜けない状態に。
結果、筋肉が常に張り詰め、力を抜くことができなくなる…
まさに、ジストニアの典型的な状態です。
東洋医学では、このバランスを整えるために、呼吸法・経絡・食事・睡眠など、多方面からアプローチしていきます。それはまるで、“流れを整える”ことで自然に回復する力を取り戻すような方法です。
「見えないもの」を信じるのではなく、感じてみる
「気の流れ」や「陰陽のバランス」と聞くと、「なんだか抽象的だな…」と思うかもしれません。でも重要なのは、信じることではなく、感じることです。
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深く息を吐いたときに、肩の力がふっと抜ける感覚
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手を温めたときに、腕全体がゆるむ感覚
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頭で考えすぎたときに、身体が硬直していると気づく感覚
こうした“身体からのサイン”を感じることこそが、東洋医学的アプローチの第一歩なのです。
そしてそれは、決してオカルトでも迷信でもなく、あなた自身の「生きている感覚」を取り戻すことに直結しています。
第4章:“ツボ”は点じゃなく流れで見る──動作の回復を促す経絡アプローチ
経絡とは“神経”とは違う情報伝達ルート
「ツボを押せば治る」「経絡を刺激すると効果がある」──そんな話を聞いたことがある方も多いかもしれません。
でも実際のところ、「経絡」って何なのか、しっかり理解している人は少ないのではないでしょうか?
東洋医学における経絡とは、体内をめぐる“気”と“血”の通り道。
西洋医学でいう神経や血管とは異なる、もっと微細で感覚的な「流れ」のことを指します。
たとえば、足のツボを押したのに肩が軽くなったり、手首の経絡をなぞるだけで目の奥がスッとするような感覚がある。これは「経絡」が全身をつなぐ“見えないネットワーク”だからこそ起きる現象です。
つまり、指の動きに不調がある場合でも、直接その部位に触れずとも、遠く離れた経絡を通じてアプローチすることが可能だということなんです。
手先の不調が“足”のツボで改善することも?
一見、指のトラブルと足の関係なんてなさそうに思えますよね?
でも東洋医学の経絡理論では、指先につながる経絡の多くは「脚のほう」からスタートしているんです。
たとえば──
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大腸経は、人差し指から始まり、腕・肩・顔へと流れていく
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肝経は、足の親指の内側からスタートし、股関節を通って体幹へ
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腎経は、足の裏から上がって、胸を経由して舌にまで到達する
こうした“上下”の流れが、全身を一つのユニットとして機能させているのです。
つまり、指がうまく動かない場合、足元の流れが詰まっていると考える視点も必要。実際、ジストニアの症例で足の冷え・むくみ・だるさを訴える人は少なくありません。
足の裏を温めるだけで、手の動きが少し楽になる。そんな“体験的納得”が、ここでは何よりも大切です。
実際に効果が見られた経絡とツボの事例
ジストニアの方に有効だった、実際の施術例やセルフケアの一部をご紹介します。
● 合谷(ごうこく)
手の甲、人差し指と親指の骨が交わる部分のツボ。気の流れを整える“万能ツボ”とも呼ばれ、首・肩・顔・手の不調にも対応。
→ 軽く押してゆっくり深呼吸をすると、手のこわばりが少しずつほどける感覚が出ることがあります。
● 太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の間の凹み。肝経の主要ポイントで、ストレスや怒りが溜まりやすいときに効果的。
→ 足のツボなのに、肩の緊張がふっと抜けることも。特に夜寝る前に押すと、手先の余分な力が抜けやすくなります。
● 労宮(ろうきゅう)
手のひらの中央部分。自律神経の調整や、感情のクールダウンにも効果があるとされるツボ。
→ 緊張しすぎて手が汗ばんでしまうようなときにおすすめ。軽く押しながら呼吸を整えると、全体の緊張感が静まっていきます。
「流れを通す」ことで回復の土台を整える
ここまで読んで「ツボ=魔法のスイッチ」と思ってしまう人がいるかもしれません。でも実際は、ツボは“単独で効く”のではなく、あくまで経絡という“流れ”の中で活きるポイントなんです。
だからこそ、経絡に沿って「なぞる」「温める」「揺らす」ようなアプローチが、全身の滞りをゆるやかに解いてくれるんですね。
この“流れを整える”というアプローチは、ジストニアのような「原因がハッキリしない症状」に対して非常に相性が良いとされています。
また、ツボや経絡は“やってすぐ効く”ものではありません。
大切なのは「毎日、少しずつ」「自分の体と会話するように」という姿勢。これが“無理なく続けられる回復習慣”を作る第一歩です。
第5章:呼吸と内臓が“指の動き”に関係するって知ってた?
呼吸が浅いと筋肉は固まる
「呼吸が浅いですね」と言われたことはありませんか?
整体や東洋医学の世界では、呼吸は“身体の調律”のカギとされています。特にフォーカルジストニアのように、力の加減がうまくできない症状には、呼吸の質が深く関わっているんです。
なぜかというと──呼吸が浅くなると、体の中心部である「横隔膜」がうまく動かなくなり、肩・首・背中といった周辺の筋肉が“代わりにがんばろう”として硬直するから。
つまり、呼吸が浅い=体幹の動きが制限される=末端(手や指)にも余計な力が入る、という図式です。
呼吸は“生命活動”の中心。ここが乱れると、どんなに細かい動きのトレーニングを積んでも、土台が安定しません。
一見、無関係に思えるかもしれないけれど、ジストニア回復のために「呼吸を見直す」ことは、実はとても本質的な第一歩なんです。
東洋医学で見る「肺」と「大腸」の関係
東洋医学では、肺と大腸は“表裏一体の臓器”とされています。これはつまり、呼吸と排泄、どちらも「出す」機能を担っているということ。
この「出す力」が弱くなると、身体に余分なものが溜まり、流れが滞ります。具体的には──
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息が浅くなる
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姿勢が内に縮こまる
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肩が内巻きになりやすい
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呼吸と連動して手の可動域が狭まる
こうした状態では、“動かしたい”と思っても、身体が無意識にブレーキをかけてしまいます。
また、肺は「悲しみ」の感情とも深く関係しており、長くストレスを抱えていると、呼吸そのものが“怖がる”ように浅くなることも。
フォーカルジストニアで「息が詰まるような感覚」「力が入る一方で、抜けない」という症状がある場合、肺=呼吸の状態を整えることが、思いのほか早く変化を起こすキーポイントになるかもしれません。
“指の不調”が内臓反射で起きる理由
「指が動かないのに、内臓が関係あるの?」と思うかもしれません。でも、東洋医学では体を部分ではなく“全体のつながり”として見ます。
たとえば、肝臓や腎臓が疲れていると、肩や腕の動きに影響が出ることが知られています。これは“内臓体性反射”と呼ばれる現象で、内臓の不調が筋肉や関節に現れるという仕組み。
実際、こんなケースもあります:
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食生活の乱れ→肝臓が硬くなる→右肩が上がらない→右手の指がうまく動かない
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胃腸の冷え→腹筋が常に緊張→腕の可動が狭まる→微細な動きがしづらい
つまり、指の不調は“見えない連鎖の最終地点”として表れている可能性があるんですね。
整体でも、まずお腹をゆるめることで肩が下がり、結果的に指の動きがスムーズになったという例は少なくありません。
意識すべきは「深く吐くこと」だった
呼吸を整える、と聞くと「吸い方」に意識が向きがちですが、実は一番重要なのは「吐くこと」。
浅い呼吸の人は、息を吐ききれていない場合がとても多い。
これでは、肺に古い空気が溜まり、新鮮な酸素が入ってこれない。結果として、筋肉への酸素供給も中途半端になり、動きの質が落ちてしまいます。
おすすめは、「2:8呼吸」。これは、吸う:吐く=2:8の割合で呼吸を行う方法です。
例えば──
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2秒かけてゆっくり吸う
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8秒かけて細く長く吐く(ろうそくの火を消さないくらいの強さで)
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これを1日5セットから
この呼吸法は、自律神経を整えるだけでなく、筋肉の緊張をやわらげ、内臓もゆるめる作用があります。とくにジストニアのように“抜けない力”に苦しんでいる人には非常に相性が良いんです。
呼吸・内臓・指──すべては“動き”でつながっている
ジストニアは「指が勝手に動いてしまう」あるいは「指が思った通りに動かない」という現象として現れます。でも、その根っこには、呼吸の浅さ・内臓の疲れ・姿勢の崩れといった“静かな原因”が眠っていることも多い。
大切なのは、指だけをなんとかしようとしないこと。
むしろ、指を助けるために、体の中心、呼吸や内臓をケアする視点を持つことで、「動きそのものの質」が大きく変わっていくのです。
焦らず、でも少しずつ、自分の呼吸と身体に目を向けてみましょう。
あなたの“動き”は、外から加えるものでなく、内から整えていくものだから。
第6章:整体×東洋医学のセルフケア:今日から始める3分ルーティン
つい頑張りすぎてしまうあなたへ──まず“力を抜く練習”を
フォーカルジストニアで悩む人の多くは、とても真面目で、頑張り屋さんです。
練習熱心で、繊細な感覚を持っていて、だからこそ身体の不調にも早く気づきます。
でも──その“がんばり”が、無意識に体を固め、気の流れを滞らせ、呼吸を浅くし、結果として“動かなくなる”サイクルにハマってしまうこともあるんです。
だからこそ、まず必要なのは、「がんばる練習」ではなく、「力を抜く練習」。
この章では、整体と東洋医学の視点を組み合わせた、1日3分でできるセルフケアをお届けします。道具もいりません。身体ひとつでOKです。
朝起きてすぐできる「肩甲骨ゆるめ」体操
指の動きと密接に関わっているのが“肩甲骨”です。
肩甲骨が固まると、腕の動きが制限され、それが指先の細かい動きに影響してきます。
● 方法(約1分)
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両肩を軽くすくめて、ストンと落とす(これを3回)
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手を腰に当て、肩甲骨を寄せるようにして胸を開く
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息を吸いながら、肩甲骨を“斜め下に落とす”イメージで下げる
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吐く息で力を抜く。これを5セットほど繰り返す
ポイント:「動かす」というより「ゆるめる」意識で。力を入れすぎないこと。
経絡を意識した“なぞるだけ”のセルフ刺激法
ツボを押すのもいいですが、もっとやさしく効果的なのが「経絡をなぞる」という方法です。手のひらや足の甲を“線”でなぞるだけで、気の流れを整える効果があります。
● 方法(左右両方で各30秒ずつ)
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手: 親指の付け根から手首へ向かって、やさしくさすり下ろす
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腕: 手首からひじ、ひじから肩に向かって“川をなぞる”ように流す
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足: 足の甲の中心から指に向かってなぞる。つま先までやさしく指でなぞって終える
ポイント: オイルやクリームを使うとよりスムーズに。呼吸と一緒にやるとさらに効果UP。
呼吸を整える「2:8」法のコツ(改めて)
前章でも紹介した「2:8呼吸法」。ここではもう少し実践的なコツをお伝えします。
● 方法(1分以内でOK)
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鼻からゆっくり2秒かけて吸う
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吐くときは口を軽くすぼめて、ろうそくの火を消さない程度の強さで
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8秒かけて細く長く、最後まで吐ききる
コツ: 途中で苦しくなったら、無理に8秒吐こうとせず、6秒・7秒でもOK。
目安: 1日3回、朝昼晩で取り入れると習慣になりやすい。
自分の“気の流れ”を感じる3つのポイント
セルフケアの効果を感じるには、「今、自分の体にどんな流れがあるか」を感じ取る力を育てることが大切です。以下の3つは、その“気の流れのヒント”になる感覚です。
1. 体が温かくなる感覚
なぞった場所や動かしたところがぽかぽかしてきたら、それは“流れ始めた証拠”。
2. 呼吸が深くなったことに気づく
「ふと息が深くなってるな」と感じたら、身体が緩んできた証です。
3. 意識が“今ここ”に戻ってくる
頭の中の考えごとがスッと止まって、「あ、今、気持ちいいな」と思える瞬間。それが“気の流れが整ってきた状態”。
忙しい日々に、立ち止まる“3分”を
毎日、何かをがんばっているあなたにとって、3分のセルフケアは“ただの時間”ではなく、“自分に還る儀式”のようなものかもしれません。
ジストニアは「何かを足す」より、「余計なものを引いていく」ことで回復していくケースがとても多い。
だからこそ、この“ゆるめる3分間”を習慣にすることが、動きの回復を後押ししてくれます。
繊細な動きは、繊細な心と体から生まれるもの。
それを取り戻すには、まず“自分自身とつながる時間”をつくることから、始めてみませんか?
第7章:“再び弾く・描く・創る”ために。ジストニアとの付き合い方再構築
治すより“戻す”という発想へ
「治す」という言葉には、どこか“ゼロに戻す”ような響きがあります。
けれど、フォーカルジストニアという症状と向き合う中で、多くの人が気づくのは、「完全に元通りになる」ことが目的ではないということ。
むしろ、「本来の自分の動き」「身体が自然に動く感覚」を取り戻すことこそが、本質的なゴールです。
ジストニアは、どこか“体が自分じゃなくなったような感覚”を伴います。自分の身体なのに、意図しない動きが出る。まるで、内部の何かが自分に抵抗しているような…
だからこそ、「戦う」のではなく、「再びつながる」姿勢が大切なんです。
一進一退を繰り返すリハビリの心構え
ジストニアの回復には、劇的な変化よりも「じわじわと戻っていくプロセス」が伴います。
・昨日は少し動けたのに、今日は全然だめ
・良くなってきたと思ったら、また悪化した気がする
・周りはどんどん先に進んでいるのに、自分だけ止まっている
…こんな気持ちになることも、きっとあるでしょう。だけど、それこそが“治っていく過程”の一部でもあるのです。
整体的にも、身体は螺旋階段を上がるように変化していきます。
真っ直ぐではなく、回り道のようで、でも確実に上へと向かっている。
だから、今日調子が悪くても、昨日できたことが意味を失うわけではありません。
大事なのは「結果」ではなく、「感覚を取り戻し続けている自分」を信じること。
小さな「できた」を積み重ねる感覚の育て方
ジストニアの回復で重要なのは、「大きな改善」を追わないこと。
むしろ、以下のような“小さな違い”に気づけるかどうかが回復のカギになります。
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昨日は肩に力が入っていたけど、今日は少しだけ抜けた
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指の突っ張りが、ほんの一瞬だけ和らいだ気がする
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呼吸が深くなったら、動きが柔らかくなった気がする
これらは“気のせい”ではなく、まぎれもなく“身体からの反応”です。
その小さなサインを見逃さず、「あ、今ちょっとよかったな」と思えること。
その積み重ねが、“もう一度、自然に動ける身体”を育てていくんです。
あなたの“動き”は、あなたしか創れない
フォーカルジストニアを経験した人は、ある意味で「自分自身の身体と、徹底的に向き合った人」と言えます。
そして、そこから動きを取り戻した人は、単に“元に戻った”のではなく、以前よりもっと“本質的な動き”を手に入れていることが多い。
なぜなら、それは単なるテクニックや反射ではなく、
呼吸・姿勢・心・筋肉・骨・感情──
すべてがつながった、“本来のあなたの動き”だから。
誰かと比べる必要はありません。
「もう一度、弾く」「もう一度、描く」「もう一度、創る」その時、あなたの手は、前よりもっと深く、繊細に、あなた自身を表現してくれるはずです。
最後に──“今できること”が、未来を動かす
ここまで読んでくださってありがとうございます。
もしあなたが今、思うように動かない自分の身体に戸惑っていたり、不安でいっぱいだったりするなら、まずこう言わせてください。
大丈夫。ちゃんと戻れます。
でもそれは、「元のあなた」ではなく、「もっとあなたらしい、自然な身体」に。
整体と東洋医学のアプローチは、あくまでその“道しるべ”です。
気の流れを整え、姿勢を見直し、呼吸を深めていくことで、動かない“指先”ではなく、“あなた全体”が変わっていく。
まずは、深く息を吐いてみましょう。
そして、自分の身体に「よくがんばってるね」と声をかけてあげてください。
その優しさから、回復は始まります。