歯ぎしりと食いしばりは同じものですか?
結論から言うと、歯ぎしりと食いしばりは同じ現象の別の顔です。どちらも「ブラキシズム」という医学用語でまとめられる無意識の癖ですが、歯の動かし方と体への負担のかかり方が違います。歯ぎしりは歯を横にこすり合わせて音が出るタイプ、食いしばりは音を立てずに強く噛みしめるタイプで、根っこにある原因は共通しています。
- 原因は何か:どちらも自律神経の過緊張が土台にあり、歯の動かし方が違うだけの同じ根から出ている癖であること
- 整体でできることは何か:顎や首、肩の緊張をゆるめ、癖の発生源になりやすい自律神経の状態が整いやすい身体づくりをサポートすること
- この記事は誰向けか:歯科で「歯ぎしりですね」「食いしばりですね」と別々に言われて混乱した方、自分がどちらに当てはまるのか知りたい方
歯ぎしりと食いしばりはどう違うのですか
結論として、歯ぎしりは歯を横や斜めにこすり合わせる動きで、食いしばりは歯を一点で強く噛みしめる動きです。医学的には両方とも「ブラキシズム」という一つの言葉でくくられており、動きの種類によって三つに分けられます。
一つ目はグラインディング。上下の歯をギリギリとこすり合わせる動きで、いわゆる「歯ぎしり」はこれにあたります。音が出るため、同居している家族や隣で眠っているパートナーに指摘されて気づく方が多いタイプです。二つ目はクレンチング。上下の歯を一定の位置で強く噛みしめる動きで、音は出ません。「食いしばり」と呼ばれるのはこちらで、本人も周りも気づきにくいのが特徴です。三つ目はタッピング。上下の歯をカチカチと軽く接触させる動きで、頻度としては少ないものの、歯が欠けたりすり減ったりする原因になります。
当院で25,000人の患者さんを施術してきた中でも、「歯ぎしりはないから食いしばりも大丈夫」と思い込んでいる方に多く出会ってきました。音が出ないぶん本人の自覚が薄く、朝起きたときの顎のだるさや、奥歯の違和感で初めて気づくケースが少なくありません。
なぜこの二つを分けて考える必要があるのですか
結論として、体への負担のかかり方が違うため、放置したときに起こることも変わってくるからです。
歯ぎしりは歯を横に動かす力がかかるため、歯のかみ合わせの面がすり減りやすく、詰め物や被せ物が欠ける原因になります。一方の食いしばりは、垂直方向に強い力が持続的にかかるため、顎の関節や、噛むときに使う咬筋・側頭筋への負担が大きくなります。睡眠中の食いしばりでは、食事のときの3倍以上の力が歯と顎にかかると言われており、この負荷が毎晩繰り返されることで、朝起きたときの顎の疲労感や、こめかみの重さにつながっていきます。
さらに、いつ起こるかという時間帯でも分類が変わります。眠っている間に起こるものを「睡眠時ブラキシズム」、起きている間に無意識に歯を合わせてしまうものを「覚醒時ブラキシズム」と呼びます。睡眠時は浅いノンレム睡眠のタイミングで、交感神経の働きが強まり、心拍数が上がるのと同時に顎の筋肉が動き出すことが分かっています。覚醒時は、パソコン作業や家事に集中しているときなど、本人が気づかないまま歯と歯を接触させ続けている状態で、専門的にはTCH(歯列接触癖)とも呼ばれます。
ストレスや自律神経とはどう関わっていますか
結論として、歯ぎしりも食いしばりも、交感神経が優位になり続けている状態から生まれる点は共通しています。
自律神経とは、体のアクセルとブレーキのような働きをする神経です。緊張や不安を感じると交感神経というアクセルが踏まれ、全身の筋肉が瞬間的にこわばります。本来なら危険が去れば副交感神経というブレーキが働いて緊張がほどけますが、慢性的なストレスがあるとこのブレーキが利きにくくなり、顎の筋肉が緊張したままになります。日中の緊張を発散しきれないまま眠りにつくと、体が無意識のうちに歯を噛みしめることで、ため込んだ緊張を逃がそうとしているとも捉えられます。
歯ぎしりと食いしばりのどちらが強く出るかは、その方の緊張の抜け方の癖によって変わってきます。横に動かして発散するタイプの方は歯ぎしりが強く出やすく、じっと一点に力をため込むタイプの方は食いしばりが強く出やすい、という傾向を臨床の中で見てきました。どちらが優れている・劣っているという話ではなく、その方が緊張をどう体で処理しているかの表れです。
東洋医学では歯ぎしりと食いしばりをどう考えますか
東洋医学では、歯は「腎」という臓腑の働きと深く結びついていると考えます。腎とは、生命力や回復力の貯金のような働きを指す言葉で、恐怖や不安といった感情と対応しています。噛みしめる、歯をこすり合わせるという行為は、体が無意識に不安を抑え込もうとする防衛反応として読み解くことができます。
あわせて、筋肉の過緊張は「肝」の詰まりとも関係しています。肝は怒りや苛立ちをコントロールする働きで、言いたいことを飲み込んだり、我慢を重ねたりする癖がある方ほど、顎や奥歯にその緊張が集まりやすい傾向があります。歯ぎしりのように動きを伴うタイプは肝の詰まりが強く出ているケース、食いしばりのようにじっと固めるタイプは腎の消耗が進んでいるケースとして見立てることが多く、どちらも根本には「こうあらねばならない」という強い想いが隠れていることが少なくありません。
ツボでは、翳風(えいふう)が顎周りの緊張をゆるめる目安になります。耳たぶの後ろのくぼみにあるツボで、指の腹で優しく押すと耳の奥からあごにかけて響くような感覚があれば、緊張がたまっているサインです。合谷(ごうこく)は手の甲、親指と人差し指の骨が交わる少し手前のくぼみにあり、顔全体の緊張をゆるめる働きがあるとされています。
歯ぎしり・食いしばりがある方にはどんな特徴がありますか
当院にいらっしゃる方の傾向として、次のような特徴が重なっているケースが多くあります。
- 責任感が強く、人に頼るより先に自分で抱え込んでしまう
- 家族から歯ぎしりの音を指摘されたことがある、または朝起きると顎がだるい
- デスクワークや細かい作業に集中すると、無意識に歯を合わせている
- 肩こりや頭痛、こめかみの張りなど、顎以外の慢性的な不調も併せ持っている
これらはどれか一つだけが原因というより、日々の緊張の積み重ねが歯や顎という一点に出やすい方の共通点として見てきたものです。当てはまるからといって深刻に捉える必要はありませんが、歯ぎしりと食いしばりを別のものとして個別に対処しようとしても、根本のところは変わりにくい、ということの裏付けにはなります。
実際に歯ぎしり・食いしばりが楽になった方はどんな経過でしたか
40代・会社員の女性は、家族から「毎晩歯ぎしりの音がする」と指摘され続けていましたが、本人は自覚がなく、どう対処していいか分からないまま数年が経っていました。カウンセリングで、日中も仕事の締め切り前は無意識に奥歯を噛みしめる癖があることが分かり、食いしばりと歯ぎしりの両方が重なっていた状態でした。首から肩、咬筋にかけての緊張をゆるめる施術と、呼吸を深くするセルフケアを続けたところ、数か月かけて家族から指摘される頻度が減っていったと話されています。効果には個人差があり、回復を保証するものではありません。
30代・育児中の女性は、子どもの夜泣きで睡眠が浅くなってから、朝起きたときの顎の疲労感を強く感じるようになったとのことでした。歯ぎしりの音は無いものの、日中も歯を合わせている感覚があり、食いしばりが中心のタイプでした。家庭の中で気を張り続けている状態が続いていたため、施術と合わせて、頑張りすぎる場面を少しずつ手放す話をしながらセルフケアを提案しました。緊張が抜けやすい身体づくりを続ける中で、顎の違和感を意識する頻度が徐々に減っていったと話されています。効果には個人差があり、回復を保証するものではありません。
50代・長年肩こりに悩んできた男性は、歯科で「歯ぎしりも食いしばりも両方ありますね」と言われ、マウスピースを作っても根本的な違和感が続いていたケースでした。触診では咬筋と側頭筋の張りが左右非対称に強く、噛み合わせの癖が長期間続いていたことがうかがえました。身体全体の緊張をゆるめる施術を重ねる中で、肩こりとあわせて顎の開けづらさも軽減していったと感じられています。効果には個人差があり、回復を保証するものではありません。
歯ぎしり・食いしばりは自宅でどうケアすればいいですか
自宅でできることとして、次の3つをお伝えしています。
- 上下の歯を離すことを意識する(唇を閉じて歯だけ離す「安静空隙」を作る)
- 顎の力を抜いて深呼吸を3回、気づいたときに繰り返す
- 就寝前にホットタオルで顎とこめかみを温める
ただし、どれか1つからで十分です。3つ全部を完璧にやろうとする必要はありません。むしろ、まじめな方ほど「今日もできなかった」と自分を責めてしまい、その自責感がまた新たな緊張を生んでしまいます。できない日があって当然です。真面目さが悪いのではなく、真面目さの向け先が、今は少しだけずれているだけだと捉えてください。
病院と整体、どちらに行くべきか迷ったらどうすればいいですか
強い開口障害(口が指2本分も開かない)、顎の激しい痛み、しびれ、噛み合わせが急に変わった、歯が欠けた、外傷のあとに痛みが出た、といった場合は、まず歯科口腔外科や顎関節症の専門外来を受診してください。整体は医療行為ではなく、医学的な診断を行う立場ではありません。薬の判断は必ず医師にご相談ください。
一方で、検査では大きな異常がなく、歯ぎしり・食いしばりのどちらであっても癖そのものが変わらない、という段階であれば、身体の緊張をゆるめ、自律神経が整いやすい身体づくりをサポートする整体的なアプローチが助けになることがあります。歯科での噛み合わせの調整やマウスピースと、全身の緊張をゆるめるケアは、対立するものではなく両輪として考えていただくのが安心です。
日本歯科医師会「歯ぎしり」でも、歯ぎしり・食いしばり・タッピングという分類が紹介されています。あわせて、顎や歯の緊張は自律神経の乱れ全体ともつながっているため、自律神経の不調について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
よくあるご質問
歯ぎしりと食いしばりは両方同時に起こりますか?
はい、同時に起こる方は珍しくありません。日中は食いしばり、睡眠中は歯ぎしりというように、時間帯によって出方が変わることもあります。
音がしないなら食いしばりの心配はしなくていいですか?
音がなくても、顎の関節や筋肉には負担がかかっています。むしろ音が出ないぶん自覚しにくく、気づいたときには疲労が蓄積していることも多いため注意が必要です。
歯ぎしりと食いしばり、どちらが歯への影響が大きいですか?
歯ぎしりは歯の表面がすり減りやすく、食いしばりは歯根や顎関節への負担が大きくなりやすい傾向があります。どちらも長期間続けば歯や顎に影響が出ます。
マウスピースをすればどちらも防げますか?
マウスピースは歯や顎への物理的な負担を減らす対処として有効ですが、噛みしめる癖そのものを止めるものではありません。緊張の発生源にあわせたケアを並行することをおすすめします。
子どもでも歯ぎしりや食いしばりは起こりますか?
起こります。成長期の噛み合わせの変化や、受験期などの緊張が関係することがあります。強い痛みや歯の欠けがある場合は小児歯科への相談を優先してください。
ストレスが減れば歯ぎしりも食いしばりも自然になくなりますか?
ストレスの軽減は助けになりますが、緊張が身体の癖として定着している場合は、ストレスが減っても癖だけが残ることがあります。身体の緊張をゆるめるケアも並行するとよいでしょう。
歯ぎしりの音がうるさいと家族に指摘されますが、これは病気ですか?
病気そのものというより、自律神経の緊張状態が体の癖として出ているものと捉えられます。ただし、頻度や強さが強い場合は歯科での相談も併せて検討してください。
起きている間の食いしばりに気づく方法はありますか?
デスクの近くに付箋を貼るなど、目に入るたびに「歯が離れているか」を確認する習慣が助けになります。気づいたときだけで構いません。
整体では歯ぎしりや食いしばりに直接施術しますか?
顎そのものに強い力を加えることはせず、首や肩、全身の緊張をゆるめることを通じて、顎にかかる負担が減りやすい状態を整えるという考え方でケアしています。
何回くらい通えば違いを感じられますか?
個人差が大きく、緊張が定着していた期間や生活の負担によっても変わります。数回で変化を感じる方もいれば、時間をかけて少しずつ変わっていく方もいます。
福岡市でも相談できますか?
福岡市早良区・西新駅から徒歩圏の常若整骨院でご相談いただけます。まずは歯ぎしりと食いしばり、どちらの傾向が強いかをお聞きするところから始めています。
まとめ
歯ぎしりと食いしばり、どちらか一方だけが自分に当てはまると思っていた方へ。この二つは名前こそ違いますが、根っこにある緊張は同じところから出ています。歯や顎だけを個別になんとかしようとするのではなく、その背景にある身体全体の緊張や自律神経の状態に目を向けることが、遠回りに見えて実は近道になります。一人で抱え込まず、まずは身体の緊張をゆるめることから始めてみませんか。常若整骨院では、カウンセリング・施術・セルフケアをあわせてサポートしています。
院長プロフィール
冨高誠治(とみたか せいじ)。柔道整復師・鍼灸師。施術歴20年、25,000人の患者さんを施術してきました。福岡市早良区・西新駅から徒歩圏の常若整骨院院長。東洋医学の見立てをもとに、自律神経の働きが整いやすい身体づくりをサポートしています。
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