初回体験だけで終わる患者さんに共通する予約の取り方
施術を終えて、患者さんが立ち上がる瞬間があります。
歩いてもらう。重心を確認してもらう。「さっきより軽いです」という声を聞く。
ここまでは、うまくいっています。私の教材でも、初回の流れはここで終わります。カウンセリング、可動域検査、1分の施術、説明、もう1分の施術、歩行の確認、セルフケアの話。ここまでが初回の型です。
でも、実はこの型には続きがありません。次にいつ来てもらうか、というところが型として書かれていないのです。
これに気づいたとき、正直ひやりとしました。体験だけで終わる患者さんの多くが、まさにこの「型の外」で離れていたからです。
体験で終わる理由は、ここにある
体験で終わる理由は、技術でも金額でもありません。予約の取り方です。
正確に言うと、予約を「取る」という発想そのものが抜けているのです。体感を渡すところまでは全力でやるのに、次回をどう決めるかは、その場のなりゆきに任せてしまう。私も長く、そうでした。
体感が強かった日ほど、予約が曖昧になる
結論から言うと、変化が大きく出た施術ほど、次回の話が濁りやすくなります。
体感が弱かった日は、こちらも不安なので「また様子を見せてください」と自然に踏み込めます。ところが、可動域がはっきり上がり、患者さんが「すごい、軽い」と喜んでいる日ほど、こちらの気が緩みます。これだけ変わったのだから、また来たくなるはずだ。そう思い込んでしまうのです。
私自身、開業したばかりの頃はこの思い込みで何人も逃しました。体感の強さと、次回予約が決まる確率は、実は関係がありません。関係があるのは、体感の強さと、こちらの油断の強さです。
ベッドから起き上がって「軽い」と声が出た瞬間、施術者の頭の中は達成感でいっぱいになります。今日はうまくいった。その満足感のまま受付に進むと、次回の話は「また何かあれば」という、輪郭のない一言で終わってしまいます。患者さんの側も、体が軽くなった余韻の中では、次の予約という現実的な話を自分から切り出しにくいものです。結局、双方が「今日は良かった」で終わり、次に来る約束だけが宙に浮いたまま会計が終わります。
初回の流れに、次回を決めるステップがそもそも無い
これは私自身の教材を見返して気づいたことです。
カウンセリング、可動域検査、1分の施術、説明、もう1分の施術、立って歩いて体感を確認、セルフケアの話。ここまでは何度も見立て塾で教えてきました。教材としても、ここで終わっています。
初回の目的は、その場で結果を出し切ることではありません。患者さんがどれだけ自分の体に向き合う準備があるかを見る回です。だから体感とやる気の確認までが初回の型で、そこから先は「本人次第」という前提が、無意識のうちに型に組み込まれていました。
でも、体に向き合う準備があるかを見る回だからこそ、次にどう向き合ってもらうかを、こちらから具体的に渡す必要があります。準備を見るところで終わって、渡す言葉を持たずに会計に進んでしまうと、患者さんは「良かった、でもこの先どうすればいいか分からない」という状態のまま帰ることになります。
「また辛くなったら来てください」で終わると、何が起きるか
結論を言うと、患者さんの頭の中で、来院の判断が「痛み」に戻ってしまいます。
「また辛くなったら」という言葉は、優しさのつもりで出てきます。急かしたくない、押し売りだと思われたくない。その気持ちは分かります。
ただ、この言葉は次回来る条件を「悪化」に設定してしまいます。今日は良くなった。でも次に来る理由は、また痛くなること。そう聞こえてしまうのです。
体は良い方に向かって動き出しているのに、来院の合図だけが「悪化」のままだと、患者さんは良くなるほど来院から遠ざかります。良くなったことが、そのまま来なくていい理由になってしまうのです。
来院時の状態は、悪い方で「安定」している
ここで私が現場で使っている考え方があります。
来院したときの体は、悪いところで「安定」しています。不安定なのではなく、悪いところで固まっているのです。施術をすると良い方へ動きますが、最初のうちはまた元の位置に戻ろうとする力の方が強く働きます。
この戻ろうとする力に、良い方の力が勝ってくるのが、だいたい七割まで上がったあたりです。七割を超えると、体が自分から良い方へ向かおうとし始めます。ここまでは、施術と生活の両方で押し上げる必要があります。
私はこれを表にして見せながら説明しています。回数だけを口頭で伝えると、こちらの都合を押しつけているように聞こえます。ですが、今どのあたりにいて、あとどれくらいで自分の力で戻り始めるかを、目で見える形で渡すと、患者さんの受け取り方がまったく変わります。
体験だけで終わる患者さんの多くは、この「まだ戻ろうとする力の方が強い時期」に、次の来院なしで帰ってしまった方たちです。
予約は営業ではなく、見立ての続きになる
結論を言うと、次の来院日を決めることは、施術の一部です。営業行為ではありません。
私は長い間、次回予約を勧めることに抵抗がありました。押しつけているような、患者さんの自由を奪っているような気がしたからです。この感覚を持つ施術者は少なくないと思います。
ですが、七割まで押し上げる必要があると分かっているのに、それを伝えずに帰すのは、見立てを患者さんに渡し切っていないのと同じです。検査をして、原因が分かって、戻り方の目安が分かっているのに、その情報を渡さないまま終わるのは、優しさではなく、渡し忘れです。
次の来院日を具体的に決めることは、今日の見立ての結論を、患者さんの生活に落とし込む最後の一手です。ここを省くと、せっかくの見立てが、患者さんの手元には届かないまま終わります。
何を、いつ渡せば予約になるか
私が実際にやっている順番は、次のとおりです。
一つ目。歩いてもらい、体感を確認してもらった直後に、「今日はここまで戻りました」と、変化の位置をはっきり言葉にします。
二つ目。「今のところは、まだ元の状態に戻ろうとする力の方が強い時期です」と、悪い方で安定していた状態から抜け出す途中であることを伝えます。
三つ目。七割まで戻ると、体が自分から良い方に向かい始めることを、数字や表を使って伝えます。ここで初めて、次に来る理由が「悪化」ではなく「戻り切る手前」になります。
四つ目。「そのためには、このくらいの間隔で、あと何回か必要です」と伝え、その場で次回の日時を決めます。会計のときに「また今度」で終わらせず、その場でカレンダーを見ながら決めるところまでを、施術の一部として扱います。
この四つを、体感の説明の延長線上でやると、押し売りには聞こえません。むしろ、ここまで見てくれているのかという安心に変わります。
2回目の最初に、必ず聞いている
もうひとつ、大事にしていることがあります。
2回目に来てもらえたとき、施術に入る前に必ず聞くことです。「前回お伝えしたことは、どんな感じでやっていただけましたか」。
これを聞く理由は、変わらなかったときに、見立てを外したのか、それとも伝えたことが届いていなかっただけなのかを、先に分けるためです。この二つを分けずに「効かなかった」と判断してしまうと、本当は合っていた見立てまで疑うことになります。
予約についても同じです。次回の話をしたのに来なかった患者さんがいたとき、伝え方が悪かったのか、それとも他の事情があったのかを、感覚だけで決めつけないようにしています。
25,000人の患者さんを、のべ11万回施術してきて、体験だけで終わる患者さんに共通しているのは、症状の重さでも、施術の相性でもありませんでした。次に来る理由を、その場で具体的に受け取れなかったことです。
見立ての順番が整っている先生ほど、この四つの手順を迷わず出せます。順番が決まっていないと、体感の説明に力を使い切ってしまい、予約の話まで手が回らなくなります。
よくある質問
次回の予約を勧めると、営業っぽくなりませんか?
見立ての結論として伝えれば、営業には聞こえません。感覚や都合で回数を勧めるのではなく、今どのあたりまで戻っていて、あとどれくらいで自分の力で戻り始めるかを説明の延長で伝えると、押しつけには受け取られません。
七割まで戻るという目安は、どうやって伝えればいいですか?
言葉だけより、表や図にして見せる方が伝わります。今どの位置にいるかを目で確認できる形にすると、口頭で回数を言うより納得してもらいやすくなります。
その場で次回の日時を決めるのが苦手です。どうすればいいですか?
会計の流れの中に組み込んでしまうのがおすすめです。体感の確認、戻り方の説明の直後、会計をする前のタイミングでカレンダーを見せながら決めると、自然な流れになります。
体感が薄かった初回でも、同じように予約を取っていいですか?
はい。むしろ体感が薄い日こそ、次にどこを狙うかを具体的に伝える必要があります。体感の強さと、予約の必要性は別の話です。
患者さんが「様子を見てから決めたい」と言ったら、どうすればいいですか?
無理に押さず、その場で決められない理由を一言聞いてみてください。金額なのか、時間なのか、まだ迷っているだけなのか。理由が分かれば、次に渡す言葉も変わります。
何回も予約の話をすると、しつこいと思われませんか?
毎回同じ説明を繰り返す必要はありません。最初にきちんと見通しを渡せていれば、以降は「前回お伝えした通り、あと少しです」という一言で十分です。
予約を取れても、当日キャンセルが多いのですが、どうすればいいですか?
キャンセルの多さは、予約時点での納得の深さと関係していることが多いです。日時だけ決めて理由の説明が薄いと、当日の優先順位で簡単に後回しにされてしまいます。次の予約を決めるときに、戻り切る手前の時期であることまでセットで伝えると、優先順位が下がりにくくなります。
新人の施術者でも、この順番はすぐ使えますか?
使えます。技術の深さより先に、この四つの手順を型として覚えることをおすすめします。経験が浅くても、順番さえ守れば、患者さんへの伝わり方は大きく変わります。
受付が別にいる院では、この話は誰が担当すればいいですか?
戻り方の説明と目安を伝える部分は、施術者が担当してください。見立ての結論だからです。実際に日時を確定させる作業だけを、受付に引き継ぐ形であれば問題ありません。分業してよいのは、日時を決める事務作業だけです。
まとめ
体験だけで終わる理由は、技術でも金額でもありません。次に来る理由を、その場で具体的に受け取ってもらえなかっただけです。
体感を確認してもらったら、今の位置を伝え、戻り切る手前であることを伝え、七割までの目安を渡し、その場で次回を決める。この四つを施術の一部として扱うだけで、体験だけで終わる患者さんは減っていきます。
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症状ごとの見立てを週に一度届けている見立てだよりもあります。
この記事は施術者向けに書いています。体の症状で困っている方は、まず医療機関を受診してください。施術は、医療にかわるものではありません。









