エネルギー系の施術で疲れないのは、強いからじゃない。疲れに気づけていないだけかもしれません

一日の最後の患者さんを見送って、ベッドのシーツを替える。
そのとき、自分の肩が上がっていることに気づく。呼吸が浅い。さっきまで受けていた方の肩の形を、自分の体がなぞっているようにも感じる。

でも、疲れたかと聞かれると、よく分からない。「自分が鈍感なだけかもしれない」と思う。

エネルギー系の施術をしている先生から、こういう声を聞くことがあります。疲れないのではなく、疲れているかどうかが分からない。この状態は、実はけっこう多いのです。

結論を先に言います。エネルギー系の施術で疲れない先生は、強いのでも、特別に鈍いのでもありません。疲れが自分に届く道筋を、まだ言葉にできていないだけのことが多いです。そして、消耗している場所を言葉にできた時点で、回復はもう始まっています。

この記事では、疲れに気づけない理由と、消耗の場所を見つける問診を自分に向ける方法を書きます。

なぜエネルギー系の施術をしていると、疲れに気づきにくいのですか?

結論から言うと、疲れの出方が「だるさ」ではなく「呼吸の浅さ」「力の入る場所」「帰ってからの無気力」といった形で、後からずれて出るからです。

筋骨格を押す施術なら、指や腰が痛くなります。疲れが自分の体の同じ場所に出るので、分かりやすい。ところが、相手の状態を受け取る形の施術では、疲れが施術中に出るとは限りません。

次のような形で、時間差で出ることがあります。

  • 施術と施術の間に、気づくと息を止めている
  • 受けた方と同じ側の肩や首に力が入っている
  • 仕事は終わったのに、帰宅後に何もしたくなくなる
  • 休みの日の朝も、体が重い

どれも「疲れた」という言葉とは結びつきにくいサインです。そのため、本人は「自分は大丈夫」と思ったまま、じわじわと削れていきます。

私自身、人を受ける仕事の構造を、いくつかの場面で見てきました。疲れ切った方を続けて受けると、施術者の体が相手の形に引っ張られます。呼吸が浅くなる。力の入る場所が似てくる。これは技術の問題ではなく、人を受ける仕事そのものの構造です。

だから「疲れない」と感じることと、「疲れていない」ことは、別の話です。

「疲れていない」と「気づけていない」は、どう見分ければいいですか?

結論から言うと、体に聞くより先に、一日の終わりの「行動」を見てください。気づけていない人は、疲れが感覚ではなく行動に出ます。

見分けるための目安を挙げます。当てはまる数が多いほど、気づけていない可能性が高くなります。

  • 予約表の空きを見るのが、なんとなく億劫になった
  • 施術が終わったあと、人と話したくない時間が増えた
  • 週に一度は、理由のない寝つきの悪さがある
  • 患者さんの話を聞き流している自分に、ふと気づく
  • 自分の体の不調には「そのうち」と後回しにしている

感覚で判断しようとすると「別に疲れてない」と答えてしまう人でも、行動を並べると見えてきます。

ここで大事なのは、これを欠点探しにしないことです。気づけていないのは、真面目に人を受けてきた証でもあります。責める材料ではなく、道筋を知るための材料として見てください。

消耗している場所を見つけるには、何を自分に聞けばいいですか?

結論から言うと、患者さんに向けている問診を、そのまま自分に向けてください。聞くのは三つだけです。

私が現場で大事にしている言葉があります。自分がどこで消耗しているかに気づけると、回復は始まる、というものです。分からないまま休んでも戻りません。何に、誰に、どの時間に消耗しているかが分かった時点で、変化は始まっています。

自分に向ける三つの質問は、次のとおりです。

1. 一番疲れるのは、どこですか(体のどこか、一日のどの時間か)
2. 誰といるとき、何をしているときですか
3. それは、自分で選んでいますか

三つ目が、いちばん効きます。たとえば「断れない予約枠」「本当は受けたくない症状」「一人の患者さんの長い話」。これらは、自分で選んでいるようで、実は選べていないことが多いのです。

書き出す必要はありません。施術が終わったあとに、三つを頭の中で通すだけで十分です。ただ、一週間続けると、同じ答えが繰り返し出てくる日が来ます。その繰り返しが、あなたの消耗の場所です。

疲れに気づけない先生は、何が起きてから気づくのですか?

結論から言うと、多くの場合、体が先に大きく崩れてから気づきます。軽いうちに気づけると、立て直しははるかに早くなります。

気づくきっかけで多いのは、次のようなものです。

  • 同じ手順の施術なのに、結果が出にくくなってきた
  • 患者さんから「先生、お疲れですか」と言われた
  • 休みの日に体を動かす気力が出なくなった
  • 自分の肌や睡眠、胃腸に、はっきり変化が出てきた

最後の項目は、見落とされがちです。患者さんの不調は細かく見ているのに、自分の体に出ている同じ種類のサインには目を向けない。これは、先生の優しさが自分に向いていない状態です。

もう一つ、これは他の先生にも当てはまる話です。同じように人を受けてきた先生の中に、疲れ切ってしまってもう続けられない、という方がいます。一方で、疲れを感じにくいまま続けている方もいます。どちらが強いかという話ではありません。続けている方の中にも、気づけていない消耗があるかもしれない、という話です。

患者さんを受けるときに、自分を削らない工夫はありますか?

結論から言うと、あります。難しいことではなく、施術と施術の間に「自分に戻る」時間を、短くても必ず挟むことです。

被災地で人を受けている施術者の方から、仕事のあとの疲労がいつもより強い、という声をもらったことがあります。そのとき私が渡したセルフケアは三つでした。どれも、先生が今日から使えるものです。

湯船に入る

シャワーでは、気持ちが切り替わりません。湯に体を沈めて、はじめて「受ける側」から「自分」に戻ります。毎日でなくても構いません。施術の量が多かった日だけでも入ってみてください。

寝る前に、ニュースを見ない

日中ずっと人の不安を受けている先生は、夜にまで外の不安を入れる余裕がありません。寝る前の時間は、抜く時間にします。

施術と施術の間に、10秒だけ足の裏に意識を戻す

目を閉じなくてもできます。ベッドを整えながら、足の裏の感覚に意識を向けるだけです。これだけで、前の方の状態を次の方に持ち越しにくくなります。

そして、もう一つ。この層の先生は、自分のためだと動けないことが多いです。自分のケアを後回しにします。ですから、私はこう伝えました。「あなたが倒れたら、お客様の行き先がなくなります」。相手のためだと考えると、休めます。休むことを、仕事の一部にしてしまってください。

自分で自分を整えられない先生は、患者さんに伝わりますか?

結論から言うと、伝わりにくくなります。そして逆に、自分の体で試して変わった経験は、いちばん強い一次情報になります。

患者さんには、自分の生活を整えるセルフケアをすすめているのに、自分は夜更かしを続けている。食事も後回し。そういう先生は少なくありません。

けれども、患者さんは意外と見ています。説得力は、言葉の上手さではなく、先生自身がやっているかどうかで決まります。

逆に、自分の体で起きた変化は、そのまま話せる材料になります。「私も以前、こうだったんですよ。これをやったら、こう変わりました」。この一言があるだけで、患者さんの受け取り方が変わります。写真や数字で記録を残しておけば、さらに強くなります。

エネルギー系の施術をしている先生ほど、自分の体の変化を、一つの検証材料として持っておくことをおすすめします。疲れの出方、戻り方、気づくまでの時間。どれも先生にしか書けない一次情報です。

疲れに気づけるようになると、施術はどう変わりますか?

結論から言うと、施術の「量」ではなく「受け方」が変わります。技術が変わるのではなく、自分の使い方が変わります。

ある症例で、変化の順番が印象的でした。本人が最初に挙げたのが、症状の減少ではなく、気づけるようになったことでした。緊張していることに気づける。肩に力が入っていることに気づける。そのあとに症状が減り、症状が出ても戻るのが早くなる。

回復とは、出ない体になることではなく、戻れる体になることです。これは患者さんにも、先生自身にも当てはまります。

気づけるようになった先生は、次のように変わっていきます。

  • 疲れを感じた時点で、予約の入れ方や休み方を調整できる
  • 受けすぎる症状と、受けても削れない症状の違いが分かる
  • 患者さんの疲れに引っ張られる前に、戻る習慣ができる
  • 結果として、一日の終わりに残る力が増える

これは気合や根性の話ではなく、見る順番の話です。技術が足りないのではありません。自分の消耗を見る順番が、まだ決まっていなかっただけです。

今日から何をすればいいですか?

結論から言うと、今日の最後の患者さんが帰ったあとに、三つの質問を頭の中で通すだけで十分です。

1. 今日、一番疲れたのは、どこでしたか
2. 誰といるとき、何をしているときでしたか
3. それは、自分で選んでいましたか

この三つを一週間続けてみてください。答えが同じ場所に集まってきたら、そこが先生の消耗の場所です。そのうえで、湯船、寝る前のニュース、足の裏の10秒、のどれか一つから足してみてください。

見立ての順番についての考え方は、こちらの記事にまとめています。自分の体も患者さんの体も、同じ順番で見ていくことで、迷いが減っていきます。

よくある質問

エネルギー系の施術をしていると、必ず疲れますか?

必ずとは言えません。ただし、人を受ける仕事である以上、疲れが全く出ない方は少数だと考えています。疲れが出ないのではなく、出方が分かりにくい場合があります。行動や睡眠、呼吸の浅さなど、体の周辺のサインを見てください。

疲れを感じない自分は、鈍感なのでしょうか?

鈍感だと決めつける必要はありません。感覚が小さいだけで、行動には出ていることがあります。予約表を見る気持ちや、休みの日の動き方に、差が出ていないか確かめてください。

疲れを感じたら、施術の量を減らすべきですか?

すぐに減らす必要はありません。まず、消耗している場所が量なのか、特定の症状なのか、特定の時間帯なのかを見分けてください。場所が分かれば、減らすのは全体ではなく、その部分だけで済むことが多いです。

施術と施術の間に、ほとんど時間が取れません。それでもできますか?

できます。足の裏に意識を戻すだけなら10秒で済みます。ベッドを整えるついでに行えば、時間を足す必要はありません。

湯船に入る時間が取れない日は、どうすればいいですか?

その日は、寝る前のニュースを見ないことだけでも十分です。三つ全部をやろうとせず、続けられるものを一つ選んでください。

自分の不調を患者さんに話してもいいのですか?

話してかまいません。むしろ、自分が試して変わった経験は、説得力のある材料になります。ただし、症状を保証する言い方や、特定の方法を断定する言い方は避けてください。

疲れが取れない状態が長く続いています。どうすればいいですか?

休んでも戻らない疲れ、急な体重の変化、激しい痛み、眠れない日が長く続く場合は、ご自身も医療機関に相談してください。患者さんに受診をすすめるのと同じ基準を、自分にも当ててください。

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この記事は施術者の方に向けて書いています。体の症状で困っている方は、まず医療機関への受診をおすすめします。

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