東洋医学における「気」と自律神経失調症の関係

こんにちは、福岡市早良区の常若整骨院院長冨高です。今日は東洋医学の根幹をなす「気」の概念と、現代病とも言われる「自律神経失調症」の関係について詳しくお伝えします。

私は10年以上、東洋医学と気功を取り入れた施術を行い、多くの自律神経失調症の方の回復をサポートしてきました。そこで実感したのは、東洋医学的な「気」の視点で見ると、自律神経失調症の本質と解決策が明確に見えてくるということです。

「気」とは何か?東洋医学の生命エネルギー

まず「気」とは何でしょうか?「元気」「病気」「気分」「気力」など、私たちの日常でも「気」を含む言葉はたくさんあります。これは「気」が私たちの生命活動にとって非常に重要だということの現れです。

東洋医学では、「気」は目に見えない生命エネルギーであり、体内を巡り、様々な生命活動を支える根源的な力だと考えられています。太陽が地球上のあらゆる生命を育むように、「気」は私たちの体内のあらゆる機能を支えているのです。

「気」の5つの重要な働き

「気」には主に以下の5つの働きがあります。

  1. 推動作用(すいどうさよう): 体内のあらゆる活動や動きを推進させる力。血液循環、消化、呼吸など、体の動きすべてを担います。
  2. 温煦作用(おんくさよう): 体を温め、適切な体温を維持する力。冷えは様々な不調の原因となりますが、十分な「気」があれば体は適度に温まります。
  3. 防御作用(ぼうぎょさよう): 外部からの邪気(病気や有害物質など)から体を守る力。現代で言う免疫力に近い概念です。
  4. 固摂作用(こせつさよう): 体の構造を維持し、血液や体液が漏れ出すのを防ぐ力。例えば、汗の過剰分泌や出血をコントロールします。
  5. 気化作用(きかさよう): 体内の水分や栄養素を変化させ、必要な物質に転換する力。消化吸収や代謝に関わります。

これらの働きが一つでも低下すると、体のバランスが崩れ、様々な症状として現れます。自律神経失調症の症状もまた、「気」の様々な機能の低下が関係しているのです。

自律神経と「気」の密接な関係

現代医学では、自律神経は交感神経と副交感神経から成り、呼吸、循環、消化、代謝など、体の無意識的な機能を調節していると説明されます。

これを東洋医学の視点で見ると、自律神経の働きは「気」の動きと密接に関連しています。特に以下の点で共通点が見られます。

1. 調節機能の類似性

自律神経は体内のあらゆる無意識的な活動を調節します。同様に「気」も体内のあらゆる活動を調和させる働きがあります。

例えば、交感神経が優位になると体は緊張状態になり、心拍数が上がり、血圧が上昇します。これは「気」が上方に昇り、外側に向かう状態(気の「昇」「散」)に相当します。

一方、副交感神経が優位になると体はリラックス状態になり、消化活動が活発になります。これは「気」が下方に降り、内側に向かう状態(気の「降」「収」)に相当するのです。

2. リズムの重要性

自律神経には昼夜のリズムがあり、昼間は交感神経が、夜間は副交感神経が優位になります。東洋医学でも陰陽のバランスとして同様の考え方があり、昼間は陽の気が、夜間は陰の気が優位になると考えられています。

このリズムが乱れると、自律神経のバランスも崩れ、様々な症状が現れます。これは「気」の流れが乱れる状態と言えるでしょう。

3. 環境や感情の影響

自律神経は外部環境や感情の影響を強く受けます。ストレスは交感神経を過剰に刺激し、自律神経のバランスを崩します。

東洋医学でも、「気」は外部環境や感情の影響を受けると考えられています。特に「七情」と呼ばれる喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七つの感情は、「気」の流れに大きな影響を与えるとされています。

「気」の病としての自律神経失調症

東洋医学の視点から見ると、自律神経失調症は主に以下の「気」の病態と関連しています。

1. 気虚(ききょ)- 気の不足

気虚とは、体内の気が全体的に不足している状態です。気虚になると、全身のエネルギーが低下し、次のような症状が現れます。

  • 疲れやすい、倦怠感が強い
  • 声が小さく、話すのも疲れる
  • 息切れ、動悸がする
  • 汗をかきやすい
  • 風邪をひきやすい

自律神経失調症の方によく見られる慢性疲労や免疫力の低下は、この気虚の状態と深く関連しています。

2. 気滞(きたい)- 気の滞り

気滞とは、気の流れが滞り、スムーズに循環していない状態です。気滞になると、以下のような症状が現れます。

  • 胸やみぞおちが張る、締め付けられる感じがする
  • イライラ、不安感、気分の落ち込み
  • ため息が多い
  • 消化不良、お腹の張り
  • 生理痛、PMS(月経前症候群)

自律神経失調症の方に多い精神的な不調や消化器系の問題は、この気滞の状態と関連しています。特にストレスによる「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼ばれる肝の気の滞りは、多くの心身症状の原因となります。

3. 気逆(きぎゃく)- 気の逆流

気逆とは、本来下に向かうべき気が上方に逆流している状態です。気逆になると、以下のような症状が現れます。

  • めまい、頭痛
  • 顔のほてり
  • 動悸、息切れ
  • 吐き気、嘔吐
  • 不安感、パニック発作

自律神経失調症で見られるパニック発作や過換気症候群などは、この気逆の状態と関連しています。

4. 気陥(きかん)- 気の下垂

気陥とは、本来上方に向かうべき気が下方に沈んでしまっている状態です。気陥になると、以下のような症状が現れます。

  • 脱力感、無気力
  • 声が出にくい
  • 内臓下垂(胃下垂など)
  • 痔、子宮脱、頻尿
  • 憂うつ、抑うつ

自律神経失調症で見られる無気力やうつ症状は、この気陥の状態と関連していることがあります。

五臓六腑における「気」と自律神経の関係

東洋医学では、体内の主要な機能を「五臓六腑」という概念で捉えます。五臓とは、肝・心・脾・肺・腎のことで、それぞれが特定の「気」を生成・管理していると考えられています。

自律神経失調症は、これらの臓器の「気」のバランスの乱れとも深く関連しています。

1. 肝(かん)と自律神経

肝は「疏泄(そせつ)」という、気の流れをスムーズにする機能を持ちます。ストレスを受けると、この肝の機能が低下し、気の流れが滞りやすくなります。

これは現代医学でいうところの自律神経のバランスの乱れに相当します。特に、イライラ、不安、不眠などの精神的な症状は、肝の気の乱れと深い関係があります。

2. 心(しん)と自律神経

心は「神志(しんし)」と呼ばれる精神活動を司り、血液循環にも関わります。心の気が乱れると、精神不安や動悸、不整脈などの症状が現れます。

これは交感神経の過剰な活動状態に相当し、パニック発作や不安障害などの症状と関連します。

3. 脾(ひ)と自律神経

脾は「運化(うんか)」という消化・吸収の機能を持ち、「後天の気」を生成します。脾の機能が低下すると、消化不良、下痢、食欲不振、倦怠感などの症状が現れます。

これは副交感神経の機能低下に相当し、消化器系の自律神経症状と関連します。特に、慢性的なストレスによる「思慮過度」(考えすぎ)は、脾の機能を低下させる大きな要因です。

4. 肺(はい)と自律神経

肺は「宣発粛降(せんぱつしゅくこう)」という呼吸と気の巡りを調節する機能を持ちます。肺の気が乱れると、呼吸の乱れ、皮膚の異常、免疫力の低下などの症状が現れます。

これは呼吸器系の自律神経機能と関連し、過換気症候群やアレルギー症状などと関係します。

5. 腎(じん)と自律神経

腎は「先天の気」を蓄え、生命の根源的なエネルギーを管理します。腎の気が不足すると、疲労感、冷え、性機能低下、恐怖感などの症状が現れます。

これは全身の自律神経機能の低下と関連し、慢性疲労症候群や副腎疲労などの状態に相当します。

「気」を整える施術と自律神経失調症の改善

当院では、東洋医学の「気」の概念に基づいた施術で、自律神経失調症の改善をサポートしています。

1. 鍼灸による経絡調整

体には「経絡(けいらく)」と呼ばれる気の通り道があり、その上に「経穴(けいけつ)」と呼ばれるツボがあります。鍼灸治療は、これらの経穴に刺激を与えることで、気の流れを調整します。

特に自律神経失調症に効果的な経穴には以下のようなものがあります。

  • 百会(ひゃくえ): 頭頂部にあるツボで、上方に逆流した気を鎮め、めまいや頭痛を改善します。
  • 内関(ないかん): 手首の内側にあるツボで、心の気を調整し、不安や動悸を和らげます。
  • 足三里(あしさんり): 膝の下外側にあるツボで、脾の気を補い、消化機能や全身の気を高めます。
  • 太谿(たいけい): 内くるぶしの後ろにあるツボで、腎の気を補い、疲労回復や冷えの改善に効果があります。

これらのツボを適切に刺激することで、乱れた気の流れを整え、自律神経のバランスを回復させることができます。

2. 気功によるエネルギー調整

気功は、呼吸法と意識的な動きを組み合わせて、気のエネルギーを調整する伝統的な健康法です。当院では、10年以上の修練を積んだ気功の技術を用いて、患者様のエネルギー状態を調整します。

具体的には、以下のような技法で気のバランスを整えます。

  • 気の診断: 手のひらのセンサーで、体のどこに気の滞りや不足があるかを感知します。
  • 気の補充: 不足している部位に気のエネルギーを送り込みます。
  • 気の浄化: 滞った気や濁った気を取り除き、エネルギーの流れをスムーズにします。
  • 気の均衡: 全身の気のバランスを整え、自律神経系の調和を促します。

気功施術を受けた多くの方が「体が温かくなった」「頭がスッキリした」「体が軽くなった」と感じられます。これは気の流れが改善された証拠であり、自律神経のバランスも整ってきている状態です。

3. 東洋医学的な整体

当院の整体は、単に骨格を整えるだけではなく、東洋医学の理論に基づいた「気」の流れを改善する手技を行います。

特に重視しているのが「背骨」の調整です。背骨には「督脈(とくみゃく)」という重要な経絡が通っており、ここを整えることで全身の陽気を活性化し、自律神経の機能を高めることができます。

また、内臓の位置や状態も調整することで、五臓六腑の機能を高め、全身の気血の流れを改善します。例えば、胃腸の位置を整えることで「脾」の機能が高まり、気の生成が促進されるのです。

日常生活で「気」を整え、自律神経のバランスを保つ方法

施術と並んで重要なのが、日常生活での「気」の養生です。以下に、自律神経失調症の方におすすめの養生法をご紹介します。

1. 呼吸法による気の調整

呼吸は「気」を取り込み、巡らせる直接的な方法です。特に「腹式呼吸」は、気を丹田(へその下3寸の位置)に集め、全身に巡らせるのに効果的です。

腹式呼吸の方法:

  1. 楽な姿勢で座り、片方の手をおへその下(丹田)に置きます
  2. 鼻から息を吸いながら、おなかを膨らませます
  3. 口から息を吐きながら、おなかをへこませます
  4. これを1日に数回、5〜10分間続けます

呼吸を整えると、自律神経のバランスも整い、気の流れが改善します。

2. 「気」を補う食事療法

東洋医学では「医食同源」といって、食事も治療の一部と考えます。気を補うためには、以下のような食材がおすすめです。

  • 気を補う食材: もち米、山芋、人参、大根、かぼちゃ、はちみつ、なつめ、松の実
  • 陽気を高める食材: ショウガ、ニンニク、ネギ、シナモン、八角、クローブ
  • 気の流れを改善する食材: 柑橘類、ミント、春菊、セロリ、バジル

逆に、気を消耗させる食べ物は控えめにしましょう。冷たい飲食物、生野菜のみの食事、精製糖、過度な刺激物などです。

3. 気の巡りを促す運動

適度な運動は気の巡りを促進します。特に以下のような運動がおすすめです。

  • 太極拳: ゆっくりとした動きで気の流れを整えます
  • 気功体操: 特定の動きと呼吸を組み合わせて、気のエネルギーを高めます
  • ウォーキング: 自然の中を歩くことで、清らかな気を取り込めます
  • ヨガ: 呼吸と姿勢を整え、気の流れをスムーズにします

4. 感情の調和と気のバランス

東洋医学では、感情が「気」に大きな影響を与えると考えられています。特に「七情」と呼ばれる以下の感情は、各臓の気と関連しています。

  • 怒り: 肝の気を乱します
  • 喜び(過度の): 心の気を散らします
  • 思い(考えすぎ): 脾の気を消耗させます
  • 憂い: 肺の気を沈ませます
  • 恐れ: 腎の気を下降させます

感情のバランスを保つことは、気のバランスを保ち、自律神経を安定させる上で非常に重要です。

「気」と自律神経失調症の関係から見えてくるもの

東洋医学の「気」の概念と現代医学の自律神経の概念を統合して見ると、両者は別々のものではなく、同じ現象を異なる視点から捉えたものだということがわかります。

「気」の流れが乱れると自律神経のバランスも崩れ、逆に自律神経のバランスが崩れると「気」の流れも乱れます。どちらのアプローチからも、心身のバランスを整えることは可能なのです。

東洋医学の「気」の視点で自律神経失調症を見ることの強みは、「全体性」にあります。西洋医学が症状ごとに別々の治療を行うのに対し、東洋医学は体全体のバランスを整える視点を持っています。これにより、単に症状を抑えるのではなく、根本的な体質改善が可能になるのです。

さいごに:あなたの「気」が整うお手伝いを

自律神経失調症でお悩みの方へ。あなたの体が示している様々な症状は、「気」の乱れのサインかもしれません。

当院では、東洋医学の「気」の概念に基づいた施術と生活指導で、あなたの自律神経のバランスを整えるお手伝いをします。鍼灸、気功、整体を組み合わせた施術と、一人ひとりに合ったアドバイスで、根本的な改善を目指します。

特に色々と試してみたけれど良くならなかった方こそ、東洋医学の「気」の視点からのアプローチを試してみてください。新しい視点で自分の体を見つめ直すことで、思いがけない改善の道が開けるかもしれません。

あなたの体が本来持っている「気」の力を取り戻し、健康で元気な毎日を送るお手伝いをさせてください。


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