顔のアトピーを根本から治す方法|東洋医学×食養生×気功で体質から改善する
顔のアトピーと東洋医学 – 20年の臨床から見えてきたこと
顔のアトピーで悩む方を診させていただいて、もう20年になります。最初の頃は正直、西洋医学的なアプローチばかり考えていたんですが、東洋医学の視点を取り入れるようになってから、患者さんの表情が明らかに変わってきたんです。
なぜ顔にアトピーが出るのか – 東洋医学の考え方
東洋医学では、顔は「諸陽の会」と呼ばれる場所です。つまり、体の陽気が集まる部位なんですね。陽気というのは、簡単に言えば体を温め、活動させるエネルギーのことです。
でも現代人は、このエネルギーの流れが乱れやすい。特にストレス社会ですからね。私も昔は「ストレスが原因です」なんて軽く言っていましたが(苦笑)、実際には3つの大きな要因が絡み合っています。
まず「肺の問題」。肺は皮膚を管理する臓器とされていて、肺の気が弱くなると皮膚のバリア機能が低下します。次に「脾胃の不調」。消化器系の働きが悪いと、体内に湿熱(しつねつ)という邪気が溜まりやすくなる。そして「肝の鬱滞」。ストレスで肝の気の流れが滞ると、熱が上に昇って顔に炎症を起こすんです。
気血水の視点から見た顔アトピー
東洋医学の基本概念に「気血水」があります。気はエネルギー、血は栄養、水は体液のことです。顔のアトピーの方を診ていると、この3つのバランスが崩れているケースがほとんどです。
気の滞りがあると、顔が赤くなりやすい。血の不足があると、肌がカサカサして治りにくい。水の代謝が悪いと、ジュクジュクした湿疹になりやすいんです。
面白いことに、同じ「顔のアトピー」でも、症状の出方で体質がある程度分かるんですよ。頬が赤い方は「血熱」タイプが多いし、目の周りがカサカサする方は「血虚」の傾向がある。額にブツブツが出る方は「湿熱」が関係していることが多いですね。
五臓六腑と顔の関係性
顔の部位によって、関連する臓腑が違うというのも東洋医学の興味深いところです。
額は小腸と心に関係します。ここにアトピーが出る方は、睡眠不足や精神的なストレスを抱えていることが多い。実際、夜更かしを3日続けただけで額が荒れる患者さんもいらっしゃいました。
頬は肺と大腸の反射区域です。便秘気味の方や、呼吸が浅い方によく症状が現れます。マスク生活が長く続いた影響で、ここ2年ほど頬のトラブルを訴える方が増えた印象があります(コロナ禍の影響でしょうね)。
口の周りは脾胃、つまり消化器系と関連が深い。食べ過ぎや不規則な食事を続けている方に多く見られます。鼻は肺の窓と言われていて、鼻周辺のアトピーは呼吸器系の弱さを示していることがあります。
体質別アプローチの実際
20年間で診させていただいた中で、顔のアトピーの方は大きく4つのタイプに分けられると感じています。
血熱タイプの方は、とにかく赤みが強い。触ると熱を持っていて、イライラしやすく、便秘がちです。こういう方には、まず熱を冷ます食材をお勧めします。キュウリ、トマト、梨、緑茶など。ただし、冷やしすぎは禁物。1日に冷たいものは2回まで、と具体的にお伝えしています。
血虚タイプは、肌が乾燥してカサカサ。疲れやすく、めまいや動悸もある方が多い。この場合は血を補う食材が大切です。ほうれん草、人参、黒ゴマ、ナツメなど。毎日黒ゴマを大さじ1杯摂るだけでも、1ヶ月後には肌の質感が変わってきます。
湿熱タイプは、ジュクジュクした湿疹が特徴。体が重だるく、舌苔が厚いことが多い。このタイプの方には、まず余分な湿気を取る食材をお勧めします。ハトムギ、小豆、冬瓜など。パンや麺類は控えめにして、お米中心の食事にしていただくと改善が早いですね。
気滞タイプは、ストレスで症状が悪化しやすい。生理前に悪化する女性も多く、イライラや抑うつ気分を伴います。気の流れを良くする食材として、柑橘類、シソ、ジャスミンティーなどをお勧めしています。
季節と顔アトピーの関係
東洋医学では、季節ごとに影響を受けやすい臓腑が変わると考えます。これが顔のアトピーにも大きく関係しているんです。
春は肝の季節。新陳代謝が活発になる一方で、ストレスの影響を受けやすい。3月から5月にかけて顔のアトピーが悪化する方は、肝の気の滞りが原因のことが多いです。
夏は心の季節。暑さで心火が上昇しやすく、顔の赤みが強くなりがち。エアコンの効いた室内と暑い屋外の温度差も、皮膚にとっては大きなストレスです。
秋は肺の季節。乾燥で肺の働きが低下し、皮膚も乾燥しやすくなります。この時期は保湿だけでなく、内側からの潤いが重要です。
冬は腎の季節。腎は成長・発育・生殖を司る臓器で、ここが弱ると免疫力も低下します。寒さで血行が悪くなり、顔の血色も悪くなりがちです。
食養生の具体的なアドバイス
「何を食べればいいですか?」これは患者さんから必ず聞かれる質問です。でも実は、何を食べるかよりも、どう食べるかの方が重要だったりするんです。
まず基本は「腹八分目」。これは胃腸の負担を減らすためです。満腹になるまで食べると、消化にエネルギーを大量に使ってしまい、皮膚の修復に回すエネルギーが不足します。
次に「よく噛む」こと。1口30回は噛んでほしいですね。消化が良くなるだけでなく、唾液の分泌も促進されます。唾液には免疫物質が含まれているので、全身の免疫力アップにつながります。
食事の時間も大切です。朝は7時から9時、昼は11時から13時、夜は17時から19時。これは各臓腑の活動時間に合わせたタイミングです。特に夜遅い食事は脾胃に負担をかけるので、できるだけ避けてもらっています。
具体的な食材についても触れておきましょう。
肌に良い食材トップ5
- ハトムギ – 湿疹やイボに効果的
- 黒きくらげ – 肌に潤いを与える
- 蓮の実 – 心を落ち着かせ、肌荒れを改善
- 山芋 – 消化機能を高め、肌の土台を作る
- 白ゴマ – 肌の乾燥を防ぐ
逆に控えめにした方がいい食材もあります。
避けたい食材トップ5
- 香辛料 – 体に熱がこもりやすくなる
- アルコール – 湿熱を生じやすい
- 揚げ物 – 体内に熱と油分が蓄積
- 甘いもの – 湿邪を生みやすい
- 生もの – 脾胃を冷やし、消化機能を低下させる
ただし、これらも絶対的な禁止ではありません。体質や季節によって調整が必要です。血虚タイプの方には少量のお酒が血行促進に役立つこともありますし、夏の暑い時期には適度に生ものを取ることで体の熱を冷ますこともできます。
生活習慣と気の流れ
食事と並んで重要なのが生活リズムです。特に睡眠は「血を養う」最も重要な時間。23時から1時は胆経、1時から3時は肝経の活動時間で、この時間に深く眠れていないと血の生成がうまくいきません。
「夜更かしすると肌が荒れる」のは、科学的にも東洋医学的にも理にかなっているんです。成長ホルモンの分泌もこの時間帯がピークですしね。
運動についても触れておきましょう。激しい運動は気を消耗させるので、アトピーの方にはお勧めしません。むしろ、ゆっくりした動きで気の流れを整える運動が効果的です。
散歩は最高の気功だと私は思っています。朝の散歩なら陽気を取り入れることができるし、夕方の散歩なら1日の疲れをリセットできる。週に4回、1回30分程度から始めてみてください。
ストレス管理と心の養生
「病は気から」という言葉がありますが、これは東洋医学の核心を突いています。気の滞りが万病の元なんです。
顔のアトピーで来院される方の多くが、何らかの精神的ストレスを抱えています。仕事の人間関係、家族の問題、将来への不安…。症状を診るだけでなく、その人の心の状態も把握することが治療には欠かせません。
ストレス解消法として、私がよくお勧めするのは「腹式呼吸」です。鼻から4秒で吸って、8秒かけて口から吐く。これを5回繰り返すだけで、副交感神経が優位になり、気の流れが整います。
患者さんの中には「呼吸法なんて効くんですか?」と半信半疑の方もいらっしゃいます(まあ、気持ちは分かりますが)。でも3週間続けてもらうと、「夜よく眠れるようになった」「イライラが減った」という声をよく聞きます。肌の状態も、確実に改善してくるんです。
東洋医学的スキンケア
外からのケアについても、東洋医学的な考え方があります。
まず「温度」。冷たい水で洗顔すると毛穴が締まって汚れが取れにくくなります。でも熱すぎるお湯は皮脂を取りすぎて乾燥の原因に。人肌よりやや温かい程度、38度くらいがベストです。
洗顔料も、合成界面活性剤が強いものは避けた方がいいでしょう。肌のバリア機能を損なってしまいます。私は患者さんに、米ぬか洗顔や石鹸素地のシンプルな固形石鹸をお勧めしています。
保湿については、オイル系よりも水分系がお勧めです。特にヒアルロン酸やセラミドが配合されたものは、東洋医学的に言う「陰液」を補う作用があります。
ただし、保湿剤も塗りすぎは禁物。皮膚の自己治癒力を妨げてしまう可能性があります。薄く、優しく、必要最小限に。これが基本です。
症例から学んだこと
20年間で印象深い症例がいくつかあります。
30代の女性で、頬の赤みが半年以上続いていた方がいらっしゃいました。皮膚科で処方された薬を使っても一向に改善しない。よくお話を聞くと、転職したばかりで新しい環境に馴染めず、毎日ストレスを感じているとのこと。
この方には、まず気の流れを整えることから始めました。柑橘系の香りを嗅いでもらい、軽い運動を勧め、食事では気の巡りを良くする食材を中心に摂ってもらいました。3ヶ月後には赤みが明らかに軽減し、6ヶ月後にはほぼ正常な肌色に戻りました。
もう一人は20代の男性。額と鼻周りにブツブツした湿疹がありました。IT関係の仕事で夜型生活、コンビニ弁当が主食という典型的な現代人の生活パターン。
この方には、まず生活リズムの改善から始めてもらいました。夜は23時までに寝る、朝は6時に起きる、食事は手作りを基本とする。最初は「そんな生活、無理です」と言われましたが(そりゃそうですよね)、段階的に変えていくことで徐々に習慣化できました。
2ヶ月目から肌の変化が現れ始め、4ヶ月後には湿疹がほぼ消失。今では「肌がきれいになっただけでなく、体調全体が良くなった」と喜んでいらっしゃいます。
現代医学との協力
誤解しないでいただきたいのは、東洋医学は現代医学と対立するものではないということです。むしろ、両方を組み合わせることで、より良い結果が得られることが多いんです。
炎症が強い急性期には、まず現代医学的な治療で症状を抑える。そして炎症が落ち着いた段階で、東洋医学的なアプローチで体質改善を図る。この連携が最も効果的だと感じています。
気功と皮膚の関係
最後に、気功と皮膚の関係についても触れておきたいと思います。
気功は「気を練る功夫」という意味で、体内の気の流れを整える運動法です。アトピーの改善にも非常に効果的なんです。
特に効果的なのは「立禅」という功法。足を肩幅に開いて立ち、両手を胸の前で抱えるような姿勢を保つ運動です。最初は3分からで構いません。毎日続けることで、気血の流れが整い、免疫機能が向上します。
ある患者さんは、毎朝立禅を15分続けることで、10年間悩んでいた顔のアトピーが半年で大幅に改善しました。「何をやってもダメだったのに、こんなシンプルなことで良くなるなんて」と驚いていらっしゃいました。
まとめにかえて
顔のアトピーは、確かに治りにくい疾患です。でも諦める必要はありません。東洋医学の視点で体全体を見直し、生活習慣を整えることで、必ず改善の道筋が見えてきます。
大切なのは、症状だけを見るのではなく、その人の体質、生活環境、精神状態を総合的に把握することです。そして、無理のない範囲で少しずつ改善していく。継続こそが最大の治療法だと、20年間の経験から確信しています。
西洋医学の薬で症状を抑えながら、東洋医学的なアプローチで根本的な体質改善を図る。食事、睡眠、運動、ストレス管理を総合的に見直す。そして何より、治るという信念を持ち続ける。
あなたも、自分の体質と向き合い、生活を見直すことから始めてみませんか?