強迫性障害とデジタル疲労|東洋医学で整える“心のバランス”

ご自身の心と身体に向き合い、真剣に不調を改善したいと願うあなたへ。

長年、多くの方々の心身の悩みに寄り添ってきた私ですが、近年特に「強迫性障害」にまつわるご相談が増えていると実感しています。そして、その背景には現代社会の象徴とも言える「デジタル」の存在が深く関わっていると見ています。

強迫性障害と東洋医学の深い関係

強迫性障害は、特定の思考や行動が頭から離れず、日常生活に支障をきたす状態を指します。例えば、何度も手洗いを繰り返したり、鍵を閉めたか何度も確認したり、といった具合です。この状態は、西洋医学的には脳内の神経伝達物質の不均衡などが原因と考えられ、投薬治療や認知行動療法が主に行われます。

しかし、東洋医学の視点から見ると、強迫性障害は単なる脳の問題に留まりません。私たちの身体は、気(生命エネルギー)血(血液や栄養)、水(体液)のバランスによって成り立っています。これらの巡りが滞ったり、偏ったりすることで、心身の不調が現れると考えるのです。

特に、強迫性障害の方を診ると、多くの場合、気の滞りや肝の機能低下が見られます。肝は、感情の調整や気の巡りを司る大切な臓腑です。肝の働きが滞ると、イライラしやすくなったり、不安感が募ったり、そして特定の思考にとらわれやすくなるといった症状が現れやすくなります。これはまさしく、強迫性障害の症状と重なる部分が多いと思いませんか?

また、脾(消化器系全体)の弱りも関連していることがあります。脾は思考や集中力と深く関わっており、脾の機能が低下すると、過度な心配性になったり、同じことをぐるぐる考え続けたりする傾向が見られます。東洋医学では、心と体は分かちがたく結びついているという「心身一如」の考え方を大切にしています。ですから、強迫性障害も心と体のバランスの乱れとして捉え、全体的な調整を目指すわけです。

デジタルデトックスが心身に与える影響

さて、現代社会において、この「気・血・水」のバランスを大きく乱す要因の一つがデジタルデバイスの過剰な使用です。スマートフォン、パソコン、タブレット…。私たちは情報社会の恩恵を享受していますが、その一方で、無意識のうちに心身に大きな負担をかけています。

まず、デジタルデバイスから発せられるブルーライトは、睡眠の質を低下させます。東洋医学では、睡眠は心身を休ませ、気を養う非常に重要な時間だと考えます。睡眠不足は気の消耗に直結し、結果として気の巡りを悪くし、肝の働きにも影響を与えかねません。

次に、SNSやニュースサイトからの過剰な情報は、私たちの脳を常に刺激し続けます。脳が休まる暇がなく、興奮状態が続くことで、心は常に張り詰めた状態になります。これは、東洋医学でいう「心火旺盛(しんかおうせい)」のような状態に近いかもしれません。心火が強すぎると、精神的な不安定さや不眠、イライラなどを引き起こしやすくなります。

さらに、デジタルデバイスの利用は、私たちの姿勢を悪くし、身体の巡りを妨げます。下を向いてスマホを操作することで、首や肩に負担がかかり、気の流れが滞りやすくなります。これは、私が日々の臨床で非常に多く目にする光景です。思わず「まただ…」と心の中でつぶやいてしまうほどです。

気功の視点から見るデジタルデトックスの重要性

私が長年取り組んできた気功は、まさにこの気・血・水のバランスを整えるための優れた養生法です。気功の動きは、ゆったりとしていて、呼吸と意識を合わせたものです。これは、現代人が忘れがちな「今ここ」に意識を集中させる訓練にもなります。

デジタルデトックスは、何もデジタルデバイスを一切使わないということではありません。大切なのは、デジタルとの付き合い方を見直し、意識的に距離を置く時間を作ることです。例えば、一日のうちでデジタルデバイスに触れない時間を1時間設けるだけでも、心身への影響は計り知れません。週末に半日でもデジタルから離れて、自然の中で過ごす時間を設けるのも良いでしょう。

気功の視点から言えば、デジタルデトックスは「静」の養生であり、気功の練習は「動」の養生です。この二つを組み合わせることで、心身のバランスはより効率的に整えられます。デジタルから離れて、自分の呼吸に意識を向け、ゆっくりと体を動かす。これは、気の巡りを改善し、滞った気を解放し、心に平穏をもたらすための素晴らしい一歩となるはずです。

あなたにできる具体的な第一歩

では、具体的に何から始めれば良いのでしょうか。

  1. 就寝前2時間はデジタルデバイスから離れる: 睡眠の質を確保するためには必須です。
  2. 朝起きてすぐにスマホをチェックする習慣をやめる: 目覚めてすぐに情報過多になるのを避け、心にゆとりをもたらします。
  3. 週に数回、デジタルデバイスを一切見ない時間を設定する: 短時間でも構いません。最初は15分からでも良いでしょう。
  4. 食事中はデジタルデバイスを遠ざける: 食事に集中することで消化を助け、心身のリラックスに繋がります。

これらの小さな習慣が、あなたの心と体に大きな変化をもたらします。強迫性障害に悩む方々にとって、デジタルデトックスは、心身のバランスを取り戻すための一助となり得るはずです。

ご自身の心身の声に耳を傾け、東洋医学の智慧と気功の力を借りて、より穏やかで健やかな日々を送るための第一歩を踏み出してみませんか?