高額セミナーで結果を出す人と出さない人の違い
ベッドの横で、手が止まる。
さっき受けてきたセミナーで、新しい内臓の手技を習った。この患者さんに使うべきか。いつもの手順のまま進めるべきか。肩にはまだ力が入っていて、迷っている数秒が、そのまま患者さんの呼吸に伝わっていく。
私はこの数秒を、自分の施術台の横で何度も経験してきました。習ったばかりの手技は、持っているのに、いつ出せばいいのか分からない。その迷いが、施術の質を落とします。手を止めたまま次の言葉が出てこないと、患者さんにもその空気が伝わり、会計のときの表情が少し硬くなります。
高額なセミナーに行った先生から、同じ相談をたくさん受けます。良い内容だった、講師の話も納得できた。それなのに、半年後の予約表も客単価も、行く前とほとんど変わっていない。
今日はこの、同じセミナーを受けても結果が分かれる理由についてお話しします。
高額セミナーに行った直後、何が変わるのか
結論から言うと、行った直後に変わるのは知識の量だけです。現場の結果は、まだ何も変わっていません。
セミナーの会場では、誰でも新しい手技を再現できます。講師が模範を見せ、参加者同士で練習し、できた気になって帰ります。ここまでは、お金を払えば誰にでも起こります。
変わるかどうかが決まるのは、会場を出たあとです。月曜の朝、いつもの患者さんの体に、その手技を実際に当てたときから、本当の勝負が始まります。
なぜ同じセミナーを受けても、結果が分かれるのか
結論は、セミナーの中身ではなく、受けたあとに何をしたかで分かれます。
同じ講師、同じテキスト、同じ2日間を過ごしても、半年後の景色がまったく違う先生が出てきます。私はこれを20年近く、自分自身の受講歴と、相談を受けてきた同業の先生方の両方で見てきました。差は才能でも資金力でもありません。会場を出たあと、自分の患者さんでその手技を使ったかどうかです。
結果を出す人は、セミナーのあとに何をしているのか
結論は、身銭を切った分だけ、自分の患者さんで実際に試しています。
結果を出していく先生に共通しているのは、習った手技を持ち帰ってすぐ、自分の患者さんに当ててみることです。もちろん上手くいきません。狙った変化が出ない。患者さんの反応が薄い。そこで初めて、自分の頭で考え始めます。この患者さんには、どこで、どの順番で使えばよかったのか。
外して、困って、考えて、次の患者さんでもう一度試す。この繰り返しだけが、セミナー資料の文字を、自分の手の記憶に変えていきます。身銭を切って自分のパターンを築いてきた先生に、借り物のままの人はいません。
結果が変わらない人には、何が共通しているのか
結論は、新しい手技を増やしたまま、現場で試す場面を作っていないことです。
変わらない先生の多くは、資料を読み返す、動画を見返す、次のセミナーの日程を探す、というところで止まっています。情報を抜くだけでは、腕にはなりません。これから先、情報を抜くだけの先生は、どんどん厳しくなっていきます。
もう一つ、よく見かける共通点があります。ずっと保険の範囲でやり続けている、あるいは筋骨格の症状しか診ていない、という状態です。悪いことではありません。ただ、そこだけに留まると、次の段落でお話しする理由で、新しく習った手技を試す場面そのものが、現場に来なくなります。
こういう先生は、器用貧乏になりがちです。いくつものセミナーに行っているので、ある程度までは、どの症状にも対応できます。でも、どれも深いところまでは行っていません。だから自信がずっとつかず、患者さんへの説明に力が入りません。私自身、手技を増やし続けた時期に、同じことを感じていました。技術の話のはずが、気づくと言葉の力の話になっています。
腕は、どこで上がるのか
結論は、修羅場をどれだけ潜り抜けたかで決まります。セミナーの会場では、腕は上がりません。
保険の範囲の、軽い筋骨格の症状だけを診ていると、触れば軽くなる方が多く、こちらが追い詰められる場面が来ません。追い詰められないということは、必死で考える機会もないということです。セミナーで新しい手技を習っても、それを本当に試される相手に出会わないまま、次の手技を探しに行ってしまいます。
逆に、どこへ行っても良くならなかった方を担当すると、持っている手技の順番を本気で組み直さないといけません。この組み直しの回数だけ、腕は上がっていきます。値段を上げられないのは、この組み直しの経験が足りていない結果であって、原因ではありません。値上げの言い方だけを変えても、たいてい元に戻ります。難しい症状を診られるようになるほうが先です。
新しい手技を、どこで使えばいいのか分からないのはなぜか
結論は、技術そのものが悪いのではなく、見る順番が決まっていないからです。
高額セミナーに行くと、たいてい新しい手技そのものに夢中になります。でも現場でつらいのは、手技の出来栄えではありません。この患者さんの、どの段階で、この手技を出せばいいのか、その順番が分からないことです。
順番さえ決まっていれば、新しい手技は今まで持っている技術の続きとして、自然に収まります。順番がないまま増やすと、手技は増えるほど迷いも増え、施術時間が伸び、夜に疲れだけが残ります。
冒頭の、ベッドの横で手が止まったあの数秒も、同じ構造です。手技そのものは正しく習えています。足りなかったのは、いつ出すかという順番の答えだけでした。順番が決まったあとは、同じ場面に立っても、迷う時間はほとんどなくなります。
高額セミナーを選ぶ基準は、どこに置けばいいのか
結論は、金額や評判ではなく、いま自分が担当している症状の幅に合っているかどうかです。
目の前の患者さんに、まだ渡せていない症状があるなら、その症状に直結する内容を選びます。逆に、普段診ていない症状の手技を先に増やしても、試す場面が現場に来ないため、知識のまま眠ってしまいます。
次に、セミナーを受ける前に、一つだけ決めておくことをお勧めします。この内容を、どの患者さんに、いつ試すか。会場を出た月曜の朝に、すぐ当てられる相手を一人決めておくだけで、資料のまま終わる確率がぐっと下がります。
もう一つ、効果的なのは、同じセミナーを受けた同業の先生と、現場で試した結果を小さく共有し合うことです。一人で抱え込んで、うまくいかないまま何ヶ月も黙っているより、早めに「これがうまくいかなかった」と話してしまうほうが、答えに近づくのが早くなります。
セミナーに通い続けても変わらないとき、何を疑えばいいのか
結論は、技術の量を疑う前に、現場で試す場面があったかどうかを疑います。
セミナーに通い続けているのに結果が変わらないとき、多くの先生は「もっと別のセミナーが必要なのでは」と考えます。実際には逆のことが多いです。すでに十分な手技を持っていて、使う順番と、試す場面が足りていないだけです。
私自身、独立したばかりの頃、決して少なくない金額をセミナーと技術DVDに使い続けた時期があります。それでもリピートは変わらず、また今回もだめだった、これが続くのではないかと、夜に不安になることが何度もありました。変わり始めたのは、新しい手技を探すのをやめて、すでに持っている技術をどの順番で使うか、自分の患者さんで一つずつ組み直したときからでした。
高額セミナーそのものに罪はありません。渡された技術を、現場の順番に組み込めるかどうかが分かれ道です。セミナーに行くたびに結果が積み上がる先生と、行くたびに資料だけが増えていく先生の差は、会場の中ではなく、会場を出たあとの一手で生まれています。
まずこの3つから。習った手技を使う相手を一人決める。外れた理由を次の施術までに考える。新しい手技を探す前に、今持っている手技の順番を見直す。
既に書いたとおり、無料の場で情報だけを抜いて終わるのと、身銭を切って現場で試すのとでは、半年後の景色がまったく違います。無料の勉強会との向き合い方については、こちらの記事でも詳しくお話ししています。
よくある質問
高額セミナーに行けば、腕は上がりますか?
セミナーの会場だけでは上がりません。会場を出たあと、自分の患者さんでその内容を試した回数だけ上がります。
セミナーの金額が高いほど、効果はありますか?
金額と、現場での結果の間に、直接の関係はありません。金額よりも、いま担当している症状の幅に合っているかどうかで選ぶほうが、使える確率が上がります。
セミナーに行っても、何から試せばいいか分からないときはどうすればいいですか?
会場を出た直後に、どの患者さんに、いつ試すかを一つだけ決めてください。決めずに持ち帰ると、資料のまま眠ってしまいます。
新しい手技を試して失敗したら、どうすればいいですか?
失敗した理由を、次の施術までに考えてください。この繰り返しが、資料の文字を自分の手の記憶に変えていきます。
保険の範囲の患者さんが多い場合、セミナーの内容は活かせますか?
活かせますが、軽い症状だけだと試す場面が来にくくなります。難しい症状の方を少しずつ担当できるよう、受け入れる症状の幅を広げることも合わせて考えてみてください。
何度もセミナーに通っているのに、単価が上げられません。原因はセミナーの選び方ですか?
原因は、セミナーの選び方より、現場で試して組み直した回数が足りていないことが多いです。値段を上げる言い方を変えるより先に、難しい症状を診られる手が先に育ちます。
手技を増やしすぎて、施術中に迷うようになりました。どうすればいいですか?
迷いの正体は、手技の数ではなく、使う順番が決まっていないことです。新しい手技を止めて、今持っている手技だけで順番を組み直してみてください。
セミナーで習った内容を、同業の先生に相談してもいいですか?
はい。一人で抱え込まず、早めに小さく相談するほうが、答えに近づきやすくなります。遠慮せず相談してみてください。
セミナーで結果が出る先生と出ない先生は、最初から決まっているのですか?
決まっていません。結果を出していく先生も、最初はうまく使えず迷っています。差がつくのは、そこで諦めずに現場で試し続けたかどうかです。今、迷っている先生のほうが、むしろ本気で向き合っている証拠だと、私は思っています。
この記事は、整体師・鍼灸師・柔道整復師など施術者・施術家の方に向けて書いています。体の症状でお困りの方は、まず医療機関を受診してください。
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