整体の自費移行がうまくいかないのは、案内文のせいじゃない

保険診療から自費に切り替えたのに、思っていたようにいかない。

そう相談してくる先生の多くは、案内文の書き方や、伝えるタイミングを変えようとします。もっと丁寧に説明すれば、もっと納得してもらえる言葉を選べば、うまくいくはずだと。

私はそこではないと思っています。

自費移行がうまくいかないのは、伝え方の問題ではなく、自費に見合うだけの見立てが、まだ自分の中にできていないことのほうが大きいです。ここを飛ばして言葉だけ整えても、結果はほとんど変わりません。

自費移行がうまくいかないとは、具体的に何が起きているのか

結論から言うと、新規が減る、常連さんが離れる、単価は上がったのに売上が伸びない、のどれかです。

私のところに相談に来る先生の話を聞くと、パターンはだいたい同じです。保険の頃は毎日そこそこの人数が来ていたのに、自費に切り替えた途端に予約が空くようになった。案内は丁寧にしたつもりだし、金額もそこまで無理な設定ではない。それでも患者さんの反応が薄い。

このとき多くの先生が、値段の付け方や説明の仕方に原因を探しにいきます。ですが実際に話を深く聞いていくと、原因はもっと手前にあることがほとんどです。自費でしか診られない難しい症状を、まだ十分に診てきていない。ここが揃っていないまま看板だけ変えると、患者さんの反応は正直に薄くなります。

なぜ保険と同じやり方のまま自費に変えると、患者さんが離れるのか

結論は、診ている中身が変わっていないのに、値段だけ変わったと患者さんに伝わってしまうからです。

保険診療は、症状が出ている場所を追いかけて、そこに手技を当てる診方が中心になりやすい構造です。腰が痛ければ腰、肩が張っていれば肩。それ自体は間違いではありませんが、自費で選ばれる施術は、患者さんが保険では届かなかった部分に価値を感じたときに初めて成立します。

看板だけ自費に変えて、やっていることが以前と同じ場所の処置のままだと、患者さんの側は敏感にそれを感じ取ります。値段が上がったのに、受け取れるものが変わっていない。これでは離れて当然です。

自費移行というのは、値段を変える作業ではなく、診方そのものを変える作業だと私は考えています。

案内文や説明の仕方を工夫しても、なぜ結果が変わらないのか

結論は、伝え方はあくまで中身を運ぶ器であって、中身そのものではないからです。

「自費に切り替える案内文を、どう書けば患者さんが離れずに済みますか」という相談は本当によく来ます。文章術の話として聞かれることが多いのですが、私はいつも同じことを答えています。文面より先に、自分の見立てに確信があるかを確認してください、と。

確信がないまま「たぶん自費のほうがしっかり診られると思います」としか言えない状態で案内を出しても、それを受け取る患者さんには伝わってしまいます。逆に、難しい症状を何度も外し、困り、それでも通ってくれた患者さんと向き合って直してきた先生の言葉には、文章のうまさを超えた説得力が乗ります。

案内文を直す前に直すべきなのは、自分の中の確信のほうです。ここを飛ばして言い回しだけ変えても、離脱の数字はほとんど動きません。

自費で選ばれる先生と、選ばれない先生の違いは何か

結論は、技術の種類ではなく、難しい症状にどれだけ向き合ってきたかの回数です。

腕は、セミナーやDVDを見ただけでは上がりません。自分の患者さんで外して、困って、それでも次も来てくれて、必死で考えて直す。この回数でしか積み上がらないと、私は考えています。

筋骨格の症状だけを追いかけていると、この修羅場がなかなか来ません。触ればある程度軽くなることが多く、追い詰められる場面が少ないからです。内臓の疲れやメンタルの落ち込みまで含めて診るようになると、外すことも増えますが、そのぶん本当の意味での確信も積み上がっていきます。

自費で選ばれる先生というのは、この確信を土台に、金額を超えた言葉を持てている先生です。技術の幅を広げるより先に、今持っている技術のどこにまだ向き合いきれていない部分があるかを、正直に見つめるところから始まります。

保険時代の診方を引きずっていると、何が起きるか

結論は、器用貧乏のまま、自分の言葉に力が乗らない状態が続きます。

私は見立て塾を通して全国の先生の相談を受けていますが、うまくいかない先生に共通していることの一つが、ずっと保険の枠組みで診てきて、値段を上げられなかった時期が長いことです。これは私自身にも身に覚えがあります。保険で回していた時期、私も同じ場所で止まっていました。

腰痛や肩こりのような筋骨格系の症状だけを診ていると、ある程度まではやれるのに、深いところまでは踏み込まない診方が身についてしまいます。器用にこなせるので、自分では気づきにくいのですが、患者さんの前で難しい症状を語る言葉に力が乗りません。新しい診方に切り替える場面でも、なかなか適応できません。

開業して数年になるある先生から相談を受けたことがあります。保険中心の院で長く修行したあと独立し、施術一本では厳しいと感じて副業も始めていました。話を聞くと、値段は決して安くないのに、新規は紹介以外ほとんど来ない状態が続いていました。私が伝えたのは、経営の工夫を先に足すのではなく、まずは施術そのもので食べていける状態を目指してほしいということでした。副業や物販は、施術者としての価値をさらに高めるための上乗せであって、土台の代わりにはなりません。

保険時代の診方のまま自費に移行しようとすると、この土台の部分が薄いまま看板だけが変わります。患者さんはそこを見抜きます。

自費に見合う見立ては、どうやって身につくのか

結論は、順番を決めることです。手技の数を増やすことではありません。

技術が悪いから自費で結果が出ないのではありません。持っている技術を、どの順番で、いつ出すかが決まっていないことが、いちばんつらい状態を作ります。手技はあとからいくらでも増やせますが、順番は現場で外しながらでないと身につきません。

自費移行に迷っている先生ほど、新しい手技を学びに行こうとします。私はそのたびに、いったん立ち止まってほしいと伝えています。今すでに持っている技術を、どういう順番で使えば見立てが立つのかを整理するほうが、新しい手技を覚えるより先に効きます。

順番が決まると、施術中の迷いが減ります。迷いが減ると、患者さんに伝える言葉から余計な曖昧さが消えます。これが、自費で選ばれる言葉の正体です。

移行を急ぐべきではないのはどんなときか

結論は、自分の中に迷いが残っているときです。

繁忙期だからとか、同業の先生が自費に切り替えているからという理由で移行を決めると、たいてい途中で迷いが顔や言葉に出ます。患者さんは、言葉より先にあり方や行動を観ています。ここでの迷いは、思っている以上に伝わります。

私は、うまくいく流れのときは思い切って動き、まだ整っていないと感じるときは無理に動かさない、という考え方を大事にしています。自費移行も同じです。難しい症状への確信が積み上がり、自分の中で迷いなく「これでいい」と言える状態になってから動いたほうが、結果的に早く進みます。

外側の事情に急かされて移行を決めると、患者さんの前でその迷いを隠しきれず、離脱がかえって増えることがあります。

自費移行で新規が減っても、続けるべき理由は何か

結論は、新規の数より、来てくれる患者さんの質が変わるからです。

自費に移行した直後は、新規の問い合わせが一時的に減ることがよくあります。ここで焦って値段を戻したり、割引を出したりする先生がいますが、私はおすすめしません。価格という物差しをぶれさせると、残ってくれた患者さんに対しても筋が通らなくなります。

自費に切り替えたあとに来てくれる患者さんは、金額を見て一度立ち止まり、それでも来ようと決めた人です。この時点で、安さだけを比較して来る患者さんとは向き合い方が違います。こういう患者さんほど、施術中に伝えた生活の見直しやセルフケアを、きちんと持ち帰って試してくれます。

新規の数字だけを見て焦ると、この入れ替わりの途中で判断を誤ります。減った数字ではなく、残ってくれた患者さんの反応の変化を見てください。

自費移行後、リピートが増えない場合は何を見直すか

結論は、値段ではなく、一回の施術の中身です。

自費に切り替えたのに、思ったほどリピートが増えない、という相談もよく受けます。話を聞くと、施術時間は長くなっているのに、その中でやっていることが以前とあまり変わっていない先生が多いです。時間をかけているのに中身が薄いと、患者さんにはそれが伝わってしまいます。

自費移行のタイミングは、カウンセリングでどこまで聞き出すか、施術の中で何を見立て、次までに何をやってもらうかを、あらためて見直す機会でもあります。時間を長く取ることより、その時間で何を見立てられるかのほうが、金額に見合う中身を作ります。

値段を動かすことと、施術の中身を整えることは、別の作業です。両方を同時に進める必要があります。

よくある質問

自費移行をすると、どれくらいの割合の患者さんが離れますか?

これは院ごとの患者さんの層や地域によって差が大きく、私自身も一律の数字ではお答えできません。離れる人数を気にしすぎるより、残ってくれた患者さんとどう向き合うかのほうが大事だと考えています。

保険と自費を併用したまま様子を見るのは悪い方法ですか?

一時的な移行期間として併用すること自体は悪くありません。ただし長く続けると、自分の中でも患者さんの中でも、どちらの診方をしているのかがぼやけてきます。期限を決めておくことをおすすめします。

自費移行の案内は、どのタイミングで伝えればいいですか?

次回の予約の前、余裕を持って伝えるのが基本です。ただし本文で触れた通り、伝えるタイミングより、自分の見立てへの確信が整っているかのほうが結果を左右します。

常連さんだけ保険のまま残してもいいですか?

一時的な配慮としてはあり得ますが、長く続けると価格と診方の基準そのものがぼやけます。誰に、どんな基準で残すかを、あらかじめ自分の中で決めておいたほうがいいです。

自費移行に反対する患者さんにはどう向き合えばいいですか?

まず、反対する気持ちをそのまま受け止めます。そのうえで、金額そのものを謝って元に戻す必要はありません。決めたことには、理由を持って向き合うことが大切です。

自費移行を機に、施術内容自体を見直すべきですか?

はい、見直したほうがいいです。値段だけ変えて中身は今まで通り、というわけにはいきません。金額が上がったぶん、カウンセリングの深さや、次までに何をやってもらうかが、これまで以上に問われます。

スタッフがいる院では、自費移行の説明は誰がするべきですか?

最終的な方針は院長が決め、伝える言葉もそこから出たものであるべきです。スタッフに丸投げすると、確信の乗らない言葉になり、患者さんにも伝わってしまいます。

自費移行したのに売上があまり変わりません。次に何を見直せばいいですか?

金額よりも先に、カウンセリングでどこまで聞き出せているか、施術の中で何を見立てられているかを確認します。値段を動かすことと、見立てを整えることは別の作業です。

自費移行を考えていますが、まだ難しい症状に自信がありません。それでも進めていいですか?

進めること自体は否定しません。ただ、自信のなさを感じているなら、それは今の自分に正直な感覚です。移行を急ぐより、難しい症状に向き合う機会を意識して増やすほうが、遠回りに見えて近道になります。

ここまで読んでくださった方は、移行の手順そのものより、目の前の見立てをどう整えるかで悩んでいる先生だと思います。

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値上げで患者さんが離れることについては、以前整体の値上げで患者さんが離れるのは、失敗じゃないという記事にもまとめています。あわせて読んでみてください。

この記事は施術者向けに書いたものです。体の症状で困っている方は、まず医療機関を受診してください。

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