フォーカルジストニア対策は「人事を尽くして天命を待つ」
常若整骨院には、楽器演奏が趣味の方、演奏家の方もご来院頂いています。
そういった方には、演奏する際の姿勢から来る首や背中の痛みが多いのですが、さらに深刻な症状に「指が意志とは関係なく勝手に動いてしまう」フォーカルジストニアというものがあります。
演奏している最中に勝手に指が動いてしまうため、押さえるべき弦が抑えられない、出したい音が出せないといったお悩みを抱えてしまいます。
こういった状態を打開するには、どうすればいいのでしょうか。
また、何が原因でこのような症状が起こってくるのでしょうか。
実例:Aさん(50代男性)
フォーカルジストニアに悩まされているAさん。
普段は会社員として働いており、趣味が高じてバイオリンの演奏会などにも参加されているそう。
ですが、3年前から演奏している最中に右手の薬指や小指が勝手に動いてしまうようになってきたそうです。
お体をみせて頂くと、右半身がかなり硬く、とくに右肩の動きが不自然にロックされています。まるで反発し、動いてやらないぞという意志があるかのようです。
右半身に症状が集中する場合、東洋医学的な見方では周囲の男性からのストレス(本人が男性なら自分自身を責める気持ち)、仕事や社会的な場所でのストレスが大きいと考えます。
お話を伺ってみると、お仕事が人をコントロールするような業務内容で、ストレスを強く感じているそうです。
そこで、首や肩をはじめ仕事から来る心身の疲労が抜けやすくなるよう調整を行い、家に帰ってから仕事について考えるのをやめて頭を休めるようお願いしました。
すると、これまでガチガチだった肩の動きがやわらかくなり、手の動きもなめらかになりました。
演奏中、勝手に肩・腕・手に入っていた力が抜け、連動して勝手に動いてしまっていた指が、思うように動くようになったそうです。
「指の動きもですが、とにかく首が楽です!」
とおっしゃって下さっています。
ストレスからみるフォーカルジストニア
東洋医学では、身体に現れる症状と心の状態はつながっていると考えます。
フォーカルジストニアの方は、首や肩の筋肉がガチガチに硬く、関節の可動域が狭かったり反発を感じるほどのロック状態にあることがほとんど。
これを心の状態に置き換えると、
■首は自我を表す場所。我が強く、思い通りにしないと気が済まない
■人や状況に身をゆだねるのが怖い
■肩は重荷を背負う場所。責任感が強く、過剰に背負い込んでいる
このような状態が考えられます。
仕事、家庭、人間関係、演奏など、生活の色々な面において
「私が全部やらなければ」
「すべて思い通りに動かさなければ」
「人に任せることなどできない」
「目を離したら悪い方に行ってしまうに違いない」
という想いが強すぎると、首や肩が不自然なまでにガチガチになり、動きがロックされます。
すると肘、手首、指と連動してロック状態になり、不自然な動きになってしまいます。
また、頭が不自然な思い込みにとらわれていると、身体が「それは不自然だよ、そのやり方では立ち行かないよ」とサインを出します。
もし「すべてを思い通りに」と強く感じていれば、身体は「全てを思い通りにしようとする不自然さ」を教えるため、思い通りに動かなくなってしまうこともあります。
Aさんの場合、お仕事での責任が大変に大きく、緊張と「自分が背負わなければ」という意識から首・肩・腕・手指がガチガチになっていました。
お仕事をする上で責任感は大事なことですが、全てを思い通りにすることは出来ませんから、過剰にコントロールしようとするとストレスは大きくなります。
自分のやるべきことはやり、状況や人に任せるべき部分は任せる。締めるべきところは締め、緩めるべきところは緩める。「人事を尽くして天命を待つ」姿勢が、フォーカルジストニアの改善に役立ってくれるかもしれません。
勝手に動く指は、心身からのサイン
楽器の演奏中、勝手に指が動いてしまうフォーカルジストニア。
この症状に悩まされている方は、完璧主義・人を信じられない・「私が全部やらなければ」というストレスに陥っていることが多いと言えます。
こういったストレスから首・肩・肘・手指がガチガチにロックされてしまい、神経伝達がうまくいかず、突然意図しない動きをしてしまうのです。
身体は心をうつす鏡であり、頭が気付かないことを教えてくれる先生でもあります。
もし、あなたが「全てを思い通りにしなければ」と思い過ぎているなら、身体は「思い通りにいかないことがあるのが健全な状態」と教えるために思わぬ動きをしているかもしれません。
硬くなった心と頭をゆるめて、健やかな身体を取り戻してみませんか?