リピートしない理由は、自信のなさじゃない。導きのなさです

初回の施術が終わって、患者さんがベッドから起き上がる。

服を整えながら、こう聞かれる。

「今度はいつ来たらいいですか」

このひと言で、手が止まる先生を何人も見てきました。頭の中では、見立ても、次に何をすればいいかも分かっている。なのに、口から出てくる言葉がまとまらない。「来てください」と強く言えば営業っぽく聞こえないか。かといって何も言わなければ、頼りない先生だと思われないか。その迷いが一瞬よぎった時点で、もう遅いんです。

「お加減を見て、また気になったらいらしてください」

そう答えた瞬間、患者さんの表情がふっと曇る。次の予約は入らない。カルテは一度きりで止まる。会計を終えて帰っていく背中を見送りながら、何がいけなかったのかを考える。手技は丁寧にやったはずなのに。

私自身、独立したばかりの頃は毎回ここで詰まっていました。技術には自信があるのに、次の一言が出てこない。セミナーに通って手技を増やしても、このひと言は変わりませんでした。新しい手技を覚えるたびに「今度こそ」と思うのに、現場に出ると結局同じところで固まる。これが何年も続きました。

「技術を上げてもリピートが変わらない」のはなぜか

結論から言います。リピートしない理由は、技術の良し悪しではありません。

先日、オープンチャットで配信した症例について、ある先生がこう言葉にしてくれました。

「どちらも曖昧だったからです。リピートに繋がらなかった根っこは、この自信と導きの無さでした」

この言葉を読んで、はっとしました。多くの先生が「自信がない」までは言葉にします。でもこの先生は、そこに「導き」という言葉を重ねました。自信と導き。似ているようで、まったく別のものです。

自信がないと、現場で何が起きるのか

自信がないと、説明が曖昧になります。これが起きていることの正体です。

患者さんから「次はいつ来たらいいですか」と聞かれたとき、自信がない先生は、答えを患者さんに投げ返します。「どうでしょうか、お加減次第で」。一見、患者さんの意思を尊重しているように聞こえます。でも実際は、こちらが決めることから逃げているだけです。

私も昔、同じことをしていました。自分の見立てに確信が持てないから、断定できない。断定できないから、患者さんに判断を預ける。患者さんは「この先生、分かっていないのかもしれない」と感じて、離れていきます。

技術がなかったわけではありません。むしろ、手技は人並み以上に持っていました。足りなかったのは、見立てた結果を言い切る確信でした。

技術のセミナーに何度通っても、ここは変わりませんでした。セミナーの会場では、先生が用意した型どおりの体に触れます。反応も素直で、手応えもすぐに出ます。ところが自分の院に戻ると、患者さんの体はセミナーの型どおりには反応しません。迷いが生まれるのは、まさにこの瞬間です。セミナーには、現場で起きる迷いそのものを経験する場がないんです。筋骨格だけを診ていると、だいたい触れば軽くなるので、この迷いにすら気づかないまま何年も過ぎてしまうこともあります。

「自信」と「導き」は、何が違うのか

自信は内側の状態です。導きは外側への行動です。この違いを分けて考えないと、いつまでも手が止まります。

自信がついても、それを言葉と行動に変えて患者さんに渡さなければ、患者さんには何も届きません。逆に、自信が十分でなくても、次にやることだけはっきり渡せれば、患者さんは安心してついてきます。

多くの先生は、自信がつくのを待ってから導こうとします。順番が逆です。先に導く形を決めてしまうと、あとから自信が追いついてきます。

私が見てきた中でも、開業してまだ数年という先生ほど、ここでつまずいています。技術のセミナーには真面目に通っている。それでも現場に出ると、患者さんの一言で固まってしまう。足りないのは手技の数ではなく、渡す言葉の型でした。

導くとは、具体的に何をすることか

導くとは、次に何をするかをこちらが先に決めて、言葉にして渡すことです。

「お加減を見て」ではなく、「次は一週間後にいらしてください。その間はこの二つだけ気をつけてもらえますか」。ここまで言い切ることが導きです。

曖昧な言葉が出てしまうのは、見立てが曖昧だからではなく、見立てた結果を患者さんの前で言葉にする練習が足りていないだけ、ということが多くあります。見立ては合っていても、それを渡す形がなければ、患者さんの中では「分かっていない先生」のままです。

もう一つ大事なことがあります。導きは、こちらの都合を押しつけることとは違います。週に一度来てほしい理由、二つだけ生活を変えてほしい理由、そのどちらも、患者さんの体がどう変わっていくかという見通しとセットで渡します。見通しのない指示は、ただの営業に聞こえます。見通しのある指示は、導きになります。

資格や立場によって、導き方は変わるのか

変わります。ただし、誠実であることは変わりません。

同じ配信に対して、別の先生からこんな補足をいただきました。立場上、国家資格を持つ施術家のように踏み込んだ説明ができない、という方です。その先生は、答えられないことは答えず、必要があれば医師や有資格者への受診をすすめる、という形で患者さんと向き合っていました。

これも、立派な導きです。導きとは「全部をこちらが決めて押し通す」ことではありません。自分の立場で言えること、言えないことをはっきりさせたうえで、患者さんが次に進む先を示すことです。できないことを曖昧にごまかすより、できる範囲をはっきり伝えるほうが、患者さんの信頼は積み上がります。

資格や経験によって、導ける範囲は違って当然です。大事なのは、その範囲の中で言い切る覚悟を持つことです。

どこから直せばいいのか

技術を増やす前に、次回の言葉を一つだけ決めてください。これが最初にやることです。

初回の施術が終わったとき、何を、どの順番で、どんな言葉で伝えるか。これを決めていない先生が驚くほど多くいます。決めていないから、患者さんの質問に対してその場で考える。その場で考えるから、言葉が揺れる。言葉が揺れるから、患者さんは不安になる。

逆に、初回の終わりに言う言葉を一言一句決めておけば、自信がなくても迷わず言い切れます。言い切る回数を重ねるうちに、あとから自信がついてきます。

私の院では、初回の最後に必ず同じ順番で三つのことを伝えます。今日変わったこと、次回までにやってほしいこと、次に来るタイミング。この順番を崩しません。決めてあるから、迷う隙がないんです。

具体的には、こう話します。「今日、施術の前と後で、お体の反応がこう変わりました」とまず結果を言う。次に「今週は、これとこれだけ気をつけてみてください」と、できることを二つまでに絞って渡す。最後に「次は一週間後に、また同じところを確認させてください」と、日にちまで決めて伝える。三つとも、患者さんに選ばせません。こちらが決めて、言い切ります。

自信がない時期ほど、この三つを台本のように覚えて、同じ言葉で話すことをおすすめします。言葉が揺れないと、患者さんはこちらの迷いに気づきません。迷いに気づかれなければ、信頼は崩れません。回数を重ねるうちに、この台本が自分の言葉になっていきます。そこまで来て初めて、本物の自信と呼べるものに変わります。

リピートは、技術の延長線上にあるのか

リピートは技術の延長線上にはありません。見立てた結果を、言葉にして渡す力の延長線上にあります。

手技をどれだけ増やしても、患者さんが帰り際に受け取るのは、こちらの手の動きではなく、こちらが口にした言葉です。自信がないなら、自信がつくまで待つのではなく、先に導く言葉を決めてしまう。これが、私自身の遠回りから言える一番の近道です。

私は十年以上、症状を追いかけることに時間を使いました。新しい手技を覚えるたびに、今度こそリピートが増えると思っていました。実際に変わったのは、手技を増やすのをやめて、初回の最後に渡す言葉を固定してからです。手技の数は増えていないのに、同じ患者さんが二回目、三回目と続けて来てくださるようになりました。変わったのは手ではなく、口から出てくる言葉のほうでした。

もし今、自分にリピートが続かない理由を技術の不足だと思っているなら、一度だけ疑ってみてください。足りないのは手技ではなく、初回の最後に渡す一言かもしれません。

リピートされない理由については、見立ての順番そのものに原因があるケースも多くあります。あわせてこちらの記事も参考にしてください。

よくある質問

自信がないまま患者さんに言い切ってもいいのですか?

いいと思います。言い切った言葉が外れたときに、どう修正するかを決めておけば問題ありません。言い切らないまま様子を見るほうが、患者さんには伝わりません。

導きの言葉は、どのタイミングで伝えればいいですか?

初回の施術の最後、患者さんがベッドから起き上がって身支度をしている間が一番伝わりやすいタイミングです。会計の直前では事務的に聞こえてしまいます。

次回の間隔は、何を基準に決めればいいですか?

症状の深さと、患者さんがこれまでにかけてきた労力を基準にします。すぐに間隔を空けすぎると、変化が定着する前に元に戻ってしまいます。

患者さんに「様子を見ましょう」と言ってしまうのはなぜですか?

見立てた結果に確信が持てないときに、その場しのぎで出てしまう言葉です。確信がなくても、次にやることだけは先に決めておくと、この言葉を使わずに済みます。

技術のセミナーに通っても現場が変わらないのはなぜですか?

セミナーで増えるのは手技の数であって、渡す言葉の型ではないからです。現場で変わらない先生の多くは、言葉の型を練習する機会がないまま手技だけを増やしています。

導きを押しつけがましく感じさせない方法はありますか?

こちらの都合ではなく、患者さんの体がどう変わっていくかという見通しとセットで伝えることです。見通しのない指示は押しつけに聞こえ、見通しのある指示は導きに聞こえます。

患者さんに嫌われるのが怖くて言い切れません。どうすればいいですか?

嫌われることを恐れているときほど、言葉が曖昧になり、かえって信頼を失います。小さな一言から言い切る練習を積み重ねていくことをおすすめします。

リピートしない患者さんは、見極めて断ったほうがいいですか?

断る前に、導きの言葉を一度変えてみることをおすすめします。見極めで減らすより、渡す言葉を変えることで続く患者さんが増えるケースのほうが多くあります。

この記事は、整体師・鍼灸師・柔道整復師など施術をされている方に向けて書きました。

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最後に一つだけ。患者さんの体に、急な痛みの悪化や麻痺、急激な体重減少など、気になるサインがあるときは、自己判断で抱え込まず、必ず医療機関の受診をすすめてください。

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