整体でリピートされない理由は、腕にない
「先生、私、今日なんでこれが良くなったんですかね」
ある患者さんに、そう聞かれたことがあります。
その場では答えられませんでした。
良くなった実感はあった。でも、なぜ良くなったかを、自分の言葉で説明できなかった。
私は独立して2年目、リピートがまったく取れない時期がありました。
予約表の空きを見るたびに、どうしようと思っていました。
寝る前に、寒気がくる日が続きました。
同じところで詰まっている先生は、少なくないはずです。
今日は、その詰まりがどこにあるかという話です。
なぜ「良くなった」のに、患者さんは戻ってこないのか
結論から言います。
患者さんは、良くなったから離れるのではありません。
次に来る理由を知らないから、離れます。
体は施術で変わります。
でも、通院は言葉で決まります。
冒頭の患者さんの言葉が、そのまま答えです。
その場で変化が出ても、なぜ変わったかを渡せていなければ、患者さんの中に理由が残りません。
理由が残らないものに、人はもう一度お金を払いません。
腕がないから来ないのではない。
説明が届いていないから来ない。
まずここを分けて考えると、見える景色が変わります。
リピートされない本当の原因はどこにあるのか
原因は、見る順番が決まっていないことにあります。
手技を持っていても、いつ出すかが決まっていないと、施術のたびに手探りになります。
手探りの施術は、その場では効きます。
でも「なぜ効いたか」を、あとから言葉にできません。
私も長く、この状態でした。
セミナーで学んだ手技を、次から次へと足していました。
持っている引き出しは増えても、迷いは減りませんでした。
見る順番が決まっている先生は、施術のあいだも、患者さんに説明しながら進められます。
「ここが硬いのは、こういう理由です」
「だから、こう変わります」
順番があるから、先に言えます。
先に言えるから、あとで「なんで良くなったか」と聞かれずに済みます。
手技を増やすほど、リピートが遠のくのはなぜか
深いところまで診られないと、自信がつかないからです。
自信がつかないと、言葉に力がなくなります。
これは他人事ではなく、私自身の10年です。
保険の範囲でやり続け、筋骨格の症状しか診なかった時期があります。
ある程度まではやれる。でも、その先には行けない。
器用貧乏という言葉が、いちばん近いと思います。
深いところまで診られない先生の言葉は、患者さんにも伝わります。
「たぶん良くなると思います」としか言えないとき、それを聞いている患者さんは、次を予約しません。
確信のない言葉に、お金を出す人はいないからです。
値段を上げられないのも、リピートが取れないのも、結果です。
原因は、難しい症状をどれだけ診てきたかにあります。
腕は、どこで上がるのか
腕は、修羅場をどれだけ潜り抜けたかで決まります。
セミナーとDVDでは、腕は上がりません。
自分の患者さんで外して、困って、それでも次に来てもらえて、必死に考えて直す。
その回数だけ、腕は上がります。
筋骨格の症状だけを診ていると、修羅場は来ません。
触ればある程度は軽くなり、追い詰められることが少ないからです。
難しい症状を断らずに引き受ける先生ほど、外して直す経験を積みます。
経験を積んだ分だけ、言葉に力がつきます。
セミナー難民だった時期が、私にもあります。
カイロ、オステオパシー、筋膜リリース、気功。
学べば学ぶほど、施術中の迷いが増えました。
学ぶことと、腕が上がることは、別のことでした。
安い値段でリピートを取ろうとすると、何が起きるか
値段を下げてリピートを取ろうとすると、質の低い患者さんばかりが集まります。
自分を安売りする先生ほど、そう見えます。
値段が低いと、自分の体を雑に扱う人が来やすくなります。
雑に扱う人は、セルフケアもあまりしません。
セルフケアをしない人は、施術のたびに元に戻ります。
元に戻る人ほど、リピート自体は増えているように見えて、実際は同じ場所を回っているだけです。
値段で自分を大事にする人は、判断していることが多くあります。
自分を大事にする患者さんは、セルフケアもしっかり続けます。
続けてくれる患者さんとの関わりは、施術者側の消耗も少なくなります。
安い値段で回すリピートと、セルフケアが続くリピートは、見た目は同じでも中身が違います。
独立2年目、私はリピートが取れなかった
事実だけ書きます。
いくらやってもリピートしない。
セミナーとDVDに、お金を使い続けていた。
「また今回もダメだった」
「これが永遠に続くのではないか」
予約表の空き状況を見て、どうしようと思う。
寒気がくるのは、寝る前。
やる気がなかったわけではありません。
むしろ、がんばっていました。
がんばっているのに手応えがない。
分かるためなら、いくらでもがんばれる。
今、目の前にいる先生方の多くが、この状態だと思います。
何が変わったきっかけだったか
きっかけは、ある兄弟でした。
同じ家に育った兄弟です。
兄はサッカー部で、毎日ジュースを飲み、甘いものが大好きで、毎月のようにケガをしていました。
弟は陸上部で、麦茶ばかり飲み、甘いものが苦手で、ケガはほとんどせず、たまにしてもすぐに元に戻りました。
同じ親、同じ食卓、近い遺伝子。
違うのは、本人が選んでいる飲み物と甘いものだけ。
それなのに、結果はここまで分かれる。
兄弟でもこんなに違うのかと、驚きました。
日常生活を変えたら、施術の効果も変わるのではないか。
そう思って、自分自身のセルフケアをやってみました。
やってみて、実感しました。
実感したことで、問診のときに自分の考えを言えるようになりました。
技術を増やしたのではありません。
自分でやってみて、言えるようになったことが転機でした。
そこから、3ヶ月かかりました。
リピートが増えた先生は、何を変えたのか
私が見てきた先生の中に、はっきり変わった例が2人います。
1人目は開業3年目の先生でした。
悩みは「その日は良いが、すぐ元に戻る」でした。
渡したのは、元に戻る理由の説明と、戻らないためのセルフケアです。
元に戻ることが減り、以前より手応えが出て、リピートが増えました。
2人目は開業2年目の先生でした。
悩みは「腰痛でも、良くなる人とならない人の違いが分からない」でした。
渡したのは、原因のパターンです。
どんなパターンの腰痛かが理解できるようになり、結果を出せるようになりました。口コミが増え、売上も上がりました。
2人に共通しているのは、手技を増やしていないことです。
渡したのは、理由と順番だけでした。
2回目の問診で、何を聞けばいいか
「初回のあと、お伝えしたことはどんな感じでしていただけましたか」
この一言を、2回目の最初に必ず聞きます。
変わらないとき、多くの先生は見立てを疑います。
私も昔はそうでした。
でも、変わらない原因は、見立てが外れたことだけではありません。
伝えたことが実行されていない場合も、同じように変わりません。
実行されなかった仮説を、外れたと判定することはできません。
行動して、結果が出て、修正して、また行動する。
この輪が回っているかどうかを、まず確認します。
通院の間隔も、この輪の速さで決めています。
見立てを疑う前に、届いているかを疑う。
順番を変えるだけで、次の一手がまったく変わります。
セルフケアを実行してもらうには、何が要るか
こちらが言うのではなく、本人に宣言してもらうことです。
「やってください」とこちらが言うと、それは施術者との約束になります。
本人が「やります」と口に出した瞬間、それは自分との約束に変わります。
破る相手が自分になるので、逃げ場がなくなります。
セルフケアを3つ渡して、全部やらせるより、どれをやるか本人に選ばせる方が実行されます。
選ばせること自体が、決める練習になります。
決める練習を重ねた患者さんは、次第に自分で自分の体を診られるようになっていきます。
依存させない関わり方が、なぜリピートを生むのか
早く来なくていいようにする関わり方が、いちばん信頼を生むからです。
一見すると、逆に思えるかもしれません。
リピートを取る技術と、依存させない関わり方は、正反対に見えます。
でも実際には、早く卒業できた患者さんほど、周りに紹介してくれます。
自分で自分の体の舵取りができるようになった患者さんは、その変化を人に話したくなります。
引き止めて通わせるより、卒業させて紹介してもらう方が、長く続く院になります。
目先のリピートより、その先の紹介を見ています。
私はこれまで、25,000人の患者さんを施術してきました。
その中で繰り返し見てきたのは、引き止めた患者さんより、卒業させた患者さんの方が院を支えてくれるという事実です。
自律神経の見立てと可動域検査については、書籍とDVDにもまとめています。全国の施術者向けセミナーでも、同じ内容をお伝えしてきました。
よくある質問
リピート率を上げるには何から始めればいいですか
まず、施術の最後に「なぜ良くなったか」を一言で伝えることから始めてください。
理由が残れば、次に来る動機になります。
セルフケアを渡しても、患者さんがやってくれません。どうすればいいですか
こちらが指示するのではなく、本人にやることを選ばせて、宣言してもらってください。
自分で選んだものは、実行されやすくなります。
技術を増やせばリピートは増えますか
増えるとは限りません。
手技の数より、見る順番が決まっているかどうかの方が、リピートには直結します。
保険診療から自費に移行すると、リピートは減りますか
値段そのものより、値段に見合う説明ができているかが分かれ目です。
確信のある言葉で伝えられれば、自費でも通い続けてもらえます。
2回目の来院が少ない場合、何を疑えばいいですか
見立てが外れたと決めつける前に、伝えたことが実行されたかを聞いてください。
届いていないだけのことが、よくあります。
依存させない関わり方は、具体的にどうすればいいですか
セルフケアを複数渡し、どれをやるかを本人に決めてもらってください。
決める経験を積んだ患者さんから、自分で舵取りができるようになっていきます。
患者さんに「なぜ良くなったか」をどう伝えればいいですか
専門用語のままではなく、日常の言葉に置き換えて伝えてください。
難しい言葉より、短くて分かる一言の方が記憶に残ります。
見る順番はどうやって身につければいいですか
セミナーで学ぶだけでは身につきません。
自分の患者さんで外して、困って、直す。その繰り返しの中でしか身につきません。
リピートを追いかけすぎると、逆効果になりますか
はい。引き止めようとする空気は、患者さんに伝わります。
早く卒業してもらう意識の方が、結果的に長く選ばれる院になります。
ここまで読んでくださった先生は、すでに自分の中の詰まりに気づいていると思います。
私自身、この順番に気づくまでに何年もかかりました。
だから、同じところで止まっている先生には、できるだけ早く抜けてほしいと思っています。
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この記事は、施術者向けに書いたものです。
体の症状で強い不安がある方、急な麻痺や激しい痛みなどがある方は、まず医療機関を受診してください。











