過敏性腸症候群が繰り返す理由|完璧主義と「手放す力」の弱りを東洋医学で読む
20年以上、2万5千人を超える方の体を見てきて、気づいたことがある。
「お腹が弱い」と言う人の多くは、腸が悪いのではない。
腸が、ある働きを失っている。
「受け取ったものを手放す力」——これが弱ると、過敏性腸症候群(IBS)は繰り返す。薬で腸の動きをコントロールしても、その根にある体質に触れなければ、また戻ってくる。
電車に乗るたびにトイレが気になる。大事な日の前日は必ずお腹が下る。試験や面接の朝に腹痛が来て、集中できない。こういった経験を持つ方が、東洋医学の整体に来られることがある。
このページでは、過敏性腸症候群を東洋医学の視点から読み直し、なぜ繰り返すのか、どこから変えていくのかを整理する。
お腹が痛くなって病院を受診しても「異常なし」と言われるのはなぜですか?
過敏性腸症候群の診断は、「器質的な異常がない」ことが前提になっている。大腸カメラで内部を確認しても炎症や潰瘍はない。血液検査の数値も正常範囲内。CT画像でも特別な所見はない。それなのに、毎朝トイレに駆け込む。電車に乗ると途端に腹痛が来る。試験前日や大事なプレゼンの朝には必ずと言っていいほどお腹が下る。
「異常なし」という診断が、症状に苦しむ人をさらに困惑させる。「気のせいと言われているみたいだ」「精神的なものだから仕方ないのか」と思い込み、症状を受け入れてしまう方が多い。
なぜ「異常なし」と言われるのかというと、過敏性腸症候群の問題は腸そのものの形や組織ではなく、腸の「動き方」と「感じ方」にあるからだ。腸の粘膜に炎症が見えるわけでも、潰瘍ができているわけでもない。しかし腸管神経が過敏になっていて、通常では何でもない刺激でも強く反応する状態になっている。
この「動き方の乱れ」「感じ方の過敏さ」は、画像や数値には写らない。だから「器質的な異常なし」と判断される。診断の上では「過敏性腸症候群」という機能性消化器疾患として分類されるが、その原因が何かについては「自律神経の乱れ」「ストレス」「脳腸相関の異常」として説明されることが多い。
「ストレスを減らしてください」と言われても、現実的に難しいことが多い。仕事の環境や人間関係は急には変わらない。だから薬で症状を抑えながら付き合っていく、というのが多くの人の現状になっている。
東洋医学では、この「なぜ同じ状況で腸が過剰に反応する体になってしまったのか」という体質の問いから入る。腸の動き方より、腸がなぜそういう動き方をする体になったのかを問う。ここに、繰り返す過敏性腸症候群を読み解くヒントがある。
過敏性腸症候群とはどのような状態ですか?
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome、IBS)は、器質的な病変がなく、腹痛や腹部の不快感と排便習慣の変化が繰り返される状態だ。日本の成人では10〜15%に見られるとも言われており、決して珍しくない。学校や職場で「お腹が弱い人」と思われている方の中に、過敏性腸症候群が含まれていることは多い。
症状のパターンはいくつかに分かれる。
下痢型は、急な腹痛とともに水のような下痢が出る。「急に来る」という感覚が強く、外出先でトイレの場所を事前に確認しておかないと不安になる方が多い。朝の通勤電車や長距離の移動が怖い、という方はこのパターンが多い。
便秘型は、腹痛があるにもかかわらず便が出ない、または出ても少量で残便感が残る。お腹が張っているのに出し切れない状態が続く。
混合型は、下痢と便秘が交互に来る。「先週は毎日下痢だったのに、今週は全然出ない」という状態がこれに当たる。自律神経のバランスが大きく揺れるタイプに多い。
ガス型(膨満型)は、お腹が張って苦しい、ガスが異常に多くて仕事中に出てしまいそうで気になる、という状態が中心になる。
これらが「検査上の異常なし」という状態で繰り返される。
IBSの最新研究は何を示していますか?
2025年に兵庫医科大学などのグループが発表した研究では、ストレスを受けると交感神経の働きが過剰になり、大腸粘膜にエオタキシン-1という物質が放出されることが確認された。このエオタキシン-1が腸の炎症と痛みを誘発し、IBS患者さんの大腸組織でもその増加が認められている。
また「腸内細菌叢-腸-脳相関(microbiota-gut-brain axis)」という概念が注目されている。腸の神経系と脳は迷走神経などを通じて双方向に情報をやり取りしており、腸の状態が精神状態に影響し、精神状態が腸に影響する、という循環が起きていることが分かってきた。
これらの最新知見は、「ストレスが腸に影響する」というシンプルな説明を、より具体的な仕組みとして裏づけている。
潰瘍性大腸炎やクローン病との違いは何ですか?
過敏性腸症候群と似た症状が出る疾患に、潰瘍性大腸炎やクローン病がある。これらは炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれ、腸に実際の炎症や潰瘍が起きている状態だ。過敏性腸症候群(IBS)とは根本的に異なる。
過敏性腸症候群は、検査で炎症・潰瘍が見られない、血便は伴わない、発熱や体重減少を伴わないことが多い、症状が繰り返すが徐々に悪化していくわけではない、という特徴がある。
潰瘍性大腸炎やクローン病は、大腸カメラで炎症・潰瘍が確認できる、血便を伴うことが多い、発熱・体重減少・強い倦怠感が出ることがある、炎症が進行すると重症化する可能性がある、という違いがある。
血便・強い腹痛・発熱・体重減少がある場合は、必ず消化器内科を受診してほしい。自己判断で「過敏性腸症候群だろう」と考えるのは危険だ。検査で器質的な異常がないことを確認してから、体質改善に取り組むのが安全な順序だ。
また、過敏性腸症候群が長年続いた後に、潰瘍性大腸炎に移行するケースを複数見てきた。「根性でやりすぎて休めなかった」体質のまま何年も過ごすと、腸の粘膜が慢性的なストレスに晒され続け、炎症が起きやすい状態が作られていく可能性がある。早めに体質に向き合うことが大切な理由の一つはここにある。
なぜ頑張り屋さんや気つかい型の人ほど過敏性腸症候群になりやすいのですか?
2万5千人を超える方を施術してきて、過敏性腸症候群を持つ方には共通した気質があると感じている。
完璧主義で、手を抜けない。やると決めたことはやり切る。他の人ができなかったことでも、自分がやるしかないと思ってしまう。結果として、限界を超えても頑張り続ける。「仕事なんだから当たり前」という感覚があって、しんどさを自覚しにくい。
周りの気持ちに敏感すぎる。場の空気を読むことが自然にできる。相手が不快に思いそうなことは先回りして避ける。それが常態化すると、常に何かに対して緊張している状態が続く。「気をつかう人」と言われているが、自分のお腹が常に張っていることに気づいていないことが多い。
先のことを心配し始めると止まらない。「もし失敗したら」「もし間に合わなかったら」という思考が始まると、なかなか止められない。夜、布団の中で仕事のことを考え続ける。翌日のプレゼンの流れを何度もシミュレーションする。そのたびに腸が緊張する。
感情を言葉にするのが苦手。本当はしんどいと思っているのに、うまく言葉に出せない。誰かに頼るということに罪悪感を感じる。「これくらいで弱音を吐いてはいけない」という感覚が強い。結果として、体がSOSを出す場所が腸になる。
これらは性格の問題でも、精神的な弱さでもない。体質と生き方のパターンが、腸という臓器に影響を与えている状態だ。医師や研究者も「完璧主義・几帳面・ストレスを抱えやすい性格の人がIBSになりやすい」と指摘している。
東洋医学では過敏性腸症候群をどう読みますか?
東洋医学での見立ては「肝木乗脾土(かんもくじょうひど)」(肝のストレスが消化器を犯す)が一般的に言われるが、施術の現場で感じているのは少し違う。
中心は金(肺・大腸)の弱りにある、というのが私の見立てだ。
「大腸は伝導の官」——手放す臓器が弱るとはどういうことですか?
東洋医学では、大腸を「伝導の官(でんどうのかん)」と呼ぶ。古典では「変化・伝導はここから出る」と表現されている。
この「伝導」という働きの意味は明快だ。受け取ったものを送り出す。小腸で消化・吸収された残りを受け取り、水分を調整しながら便として排出する。これが大腸の役割だ。
「受け取ったものを手放す」という機能そのものが、大腸の仕事だと言っていい。
完璧主義の人は、何ごとも手放せない傾向がある。終わった仕事のことをいつまでも考える。過去の失敗を繰り返し反省する。他人からの評価を引きずる。「もっと良くできたはずだ」という感覚がいつも残る。「あのときこうしておけばよかった」という思いが抜けない。
この「手放せない」という心のパターンが、体の「手放す」機能を弱らせると、東洋医学では見る。物理的な便の話だけではない。感情・思考・経験を「手放す」という体の働きと、腸の機能は深く連動している、という見方だ。
肺と大腸は表裏の関係にあるとはどういうことですか?
東洋医学の臓腑論では、臓と腑が対になって機能している。肺と大腸は表裏の関係だ。肺が陰(裏)、大腸が陽(表)として、機能的に連動している。
肺の働きは2つある。気(エネルギー)を全身に配る「宣発(せんぱつ)」と、気を下に降ろす「粛降(しゅくこう)」だ。肺が弱ると、気を下に降ろす力が弱まり、腸の蠕動運動が乱れる。下に降ろす力がないと、腸の通過がうまくいかない。
また、肺は「魄(はく)」を蔵すとも言われる。魄は本能的な感覚・反射・直感に関わる精神活動だ。緊張すると体が硬くなる、驚くと腸が反応する、というのは魄の働きの一例だ。
魄(はく)の乱れとはどのような状態ですか?
「先のことが気になって仕方ない」「何かあるたびにビクッとする」「緊張場面で必ずお腹が痛くなる」という状態は、魄が落ち着いていない状態だと東洋医学では見る。
肺が弱ると魄が安定しない。魄が安定しないと、些細な変化に過剰反応する体になる。環境が変わった瞬間に腸が動き出す、誰かに注意されただけでお腹が痛くなる、という反応が強くなる。
これが「緊張するとお腹が痛くなる」という過敏性腸症候群の仕組みを、東洋医学が説明するときの核心にある。
完璧主義が「手放す力」を弱らせる仕組みはどうなっていますか?
完璧主義の人は、衛気(えき)を外に張りっぱなしにしていることが多い。
衛気とは、体の表面を守るエネルギーのことだ。外からの刺激(温度変化、ウイルス、ストレス)に対して体が反応するときに使う防衛のエネルギーでもある。常に周りを気にして、場の空気を読み続けている状態は、この衛気を四六時中外に張り巡らせていることに近い。
衛気は肺が作り出す。肺がいつも外に向けてエネルギーを送り続けると、内側が空になる。内側が空になると、腸を動かす力も弱まる。
「気をつかいすぎる人は腸が弱りやすい」という経験則は、この構造から来ている。単にストレスが腸に影響するというより、「外に向けっぱなしのエネルギーが、内側の臓器を動かす力を枯渇させていく」という流れで理解すると、なぜ優しくて気がつく人ほどお腹が弱いのかが腑に落ちてくる。
症状のタイプ別に見た体質パターンとはどのようなものですか?
過敏性腸症候群といっても、体の状態は人によって異なる。整体の現場でよく見るパターンを3つに整理する。
タイプ1:気つかいすぎて衛気が外に張りっぱなしになっているパターンとはどのような状態ですか?
このタイプは、仕事中や人と会っているときはお腹の症状が出にくく、一人になったとたんに腸が動き出す、という特徴がある。また、休日の朝は下痢しやすい、旅行初日にトイレに何度も行く、という経験を持つ方が多い。
気を張っているときは交感神経が優位になって腸の動きが抑制されていて、緩んだ瞬間に副交感神経が優位になり、腸が過剰に動き出す。「頑張っているときは大丈夫なのに、休むとお腹が痛くなる」というのはこのパターンの典型だ。
このタイプは、施術でまず外に向かっている力を内側に戻すことから始める。胸郭(肋骨まわり)と肩甲骨周りの緊張が強いことが多く、そこを丁寧に緩めると肺の動きが改善し、腸に届く気が安定してくる。施術後に「呼吸が深くなった」「お腹がゆるんだ感じがする」と言われることが多い。
仕事や人間関係で常に気をつかっていて、なかなかその状態を手放せない、という方に多いパターンだ。
タイプ2:溜め込みすぎて腸粘膜が傷みやすいパターンとはどのような状態ですか?
完璧主義の傾向が強く、「自分が最後までやるしかない」という感覚でずっと動き続けてきた方に多い。過敏性腸症候群の症状が何年も続いた後に、腸の炎症が確認されるという経緯をたどる方がいる。
東洋医学では「根性でやりすぎて休めなかった方」が深刻化しやすいと見ている。「手放せずに溜め込み続けた結果、粘膜そのものが傷んでいく」という流れだ。
このタイプの方は血便が出ることがある。血便が出た場合は必ず消化器内科を受診してほしい。大腸カメラで状態を把握したうえで施術に来ていただく流れを取っている。症状が深刻な段階では、整体単独ではなく医療と並行して進めることが重要だ。軽い段階のうちに、体質に向き合うことが大切だと感じている。
タイプ3:冷えと腎陽虚が合わさって朝の下痢が止まらないパターンとはどのような状態ですか?
冷えに弱く、お腹が冷えるとすぐ下痢になる、寒い季節は特にひどい、早朝4〜6時頃に腹痛で目が覚める(東洋医学で「五更泄瀉(ごこうせつしゃ)」と呼ばれる状態)、という特徴を持つ。
腎陽の働きが弱ると、下焦(下半身・腸)を温める力が落ちる。腸を温める力がないため、軽い刺激でもすぐに蠕動運動が乱れる。体全体の冷えを改善しないと、症状が落ち着きにくいパターンだ。
このタイプは、腹部を温める施術と腎を養う施術を組み合わせることが多い。自宅での温熱ケアも重要になる。冷たい飲食物の制限と、就寝前のお腹への温熱が、最初の変化を作ることが多い。
患者さんの声から見えてくることは何ですか?
施術に来られた方の声を紹介する。
糸島市在住の20代女性の方は、下痢がメインの訴えだった。急に来る腹痛で仕事中に席を外さなければならず、同僚への申し訳なさで頭がいっぱいになっていたという。施術を重ねた後、「急に来る下痢で仕事にも迷惑をかけていましたが、そんなこともなくなりました」と教えてくれた。O脚やむくみも気になっていたが、腸の状態が整っていくと全体的に変化が起きやすくなった、という経緯だった。
福岡市在住の30代女性の方は、疲れがとれない・おなかの不調・耳鳴り・イライラが重なって来院された。「施術を受け始めてから徐々に不調が減っていき、元気に過ごせる時間が増えました。イライラすることもかなり減りました」と話してくれた。お腹の不調と疲れとイライラが連動していた例だ。
海外在住の30代女性の方は、手のしびれ・下痢・強い不安感が重なり、膠原病を疑って病院を何か所も回ったが「問題なし」と言われ続けた。一回の施術後に「私は大丈夫だ」と思えた、という言葉が印象に残っている。体が「問題ない」と感じ始めると、不安と腸の過敏さが同時に落ち着いていく、という変化を体験された方だった。
共通しているのは、症状が体の中だけではなく、日常生活の中での「緊張の持ちかた」「手放せなさ」と深く結びついているということだ。腸の症状が楽になることで、心のゆとりが生まれ、日常の行動範囲が広がっていく、という変化が起きやすい。
整体ではどのようなアプローチをしますか?
常若整骨院での施術は、痛みを与えない方法で行う。揉む・押す・引っ張るという一般的な整体とは異なる。体に触れるか触れないかの繊細なアプローチで、気の流れと内臓の働きを整えていく。
過敏性腸症候群の方には、次のような観点から施術を組み立てる。
肺・胸郭の緊張を緩めることが出発点になることが多い。肩甲骨の内側、胸骨の周り、肋骨の間を丁寧に緩める。肺が深く動けるようになると腸への気の供給が安定してくる。深呼吸がしやすくなると、多くの方が「体が軽くなった」「お腹の張りが消えた」と感じる。
腸管の緊張を整えることも重要だ。触れないか、ごく軽く触れるアプローチで腸周りの気の流れを整える。施術中に「お腹がグルグルし始めた」「温かくなった感じがする」と言われる方が多い。腸の動きが整うと、翌日の排便が変わる方も多い。
全体のバランスを見ることも欠かせない。過敏性腸症候群は、肺・脾・腎の3つが関わっていることが多い。体全体のバランスを見ながら、弱っているところに気が回るよう施術する。一か所を強くするより、体全体の底上げが目標だ。
生活習慣・食事のアドバイスも一緒に行う。何を食べるか、いつ食べるか、どんな状況で食べるか。腸の調子は食事と深く関係する。乳製品や砂糖が症状を悪化させる方も多い。必要に応じて、食事の見直しも一緒に考える。小麦粉の影響が出やすい方には、1〜2週間試す方法を提案することもある。
施術の目安は週1〜2回、3か月を一つの区切りとして見ている。体質が変わるには時間がかかる。「一回で変わることもあるが、体質を変えるには積み重ねが必要だ」という現実を、最初にお伝えするようにしている。
自宅でできるセルフケアはありますか?
体質の変化は施術だけでは完結しない。日常の中でできることを続けることが、症状が落ち着くまでの時間を縮める。ただし、すべてを完璧にやろうとしなくてよい。まず一つだけ、できそうなものから始めてほしい。
呼吸を整えることで肺はどう変わりますか?
腸が過敏なとき、呼吸は浅くなっている。胸だけで息をしていて、お腹が動いていないことが多い。
ゆっくりとした腹式呼吸を、1日5分から始めてみてほしい。鼻から4秒かけて吸い、口から8秒かけて吐く。肺が深く動くようになると、胸郭の緊張が少しずつ緩んでくる。肺と大腸は表裏の関係なので、肺を緩めることが腸に直接影響する。
不安感や緊張が来たとき、まず呼吸に意識を向けることが、体へのメッセージになる。「呼吸が深くなってきた」という感覚が出てきたら、肺の動きが改善し始めているサインだ。呼吸を整えることは、肺を養う行為だと東洋医学では考えている。
お腹を温めるとどんな効果がありますか?
冷えは腸の大敵だ。腹部の冷えが腸管の緊張を高め、下痢や腹痛を引き起こしやすくする。
特に下痢型の方には、就寝前に腹部にカイロや湯たんぽを当てることを勧めている。10〜15分で構わない。内側から温めるイメージで、ゆっくり深呼吸しながら行うと効果が出やすい。
飲み物は常温か温かいものを意識してほしい。冷たいコーヒーや炭酸飲料は腸を刺激しやすい。朝一番に白湯を一杯飲む習慣は、腸を穏やかに動かす準備になる。夏場でも、空腹時の冷たい飲み物は避けることをお勧めしている。
腹部を温めると副交感神経が優位になりやすく、腸の動きが落ち着く方向に向かう。冷え性を自覚している方は、体全体の温度調節から始めることが重要だ。
「手放す練習」とはどのようにするものですか?
過敏性腸症候群の方の多くは「手放すのが苦手」という傾向がある。終わったことを引きずる、人の言葉を何日も心に留め続ける、「あのとき違う選択をすればよかった」という思いが繰り返す。
手放す練習として、まず「今日終わらなかったことをリストに書いて、明日のものにする」という小さな習慣を勧めている。頭の中に置き続けることをやめて、紙に出してしまう。「今日の自分には今日分の仕事しかできない」という感覚を体で覚えていくことが、腸を守る体質への変化に繋がる。
施術の現場でよく渡している言葉がある。「周りの人に今の状態を伝えること」「誰かに手伝ってもらうこと」「自分を最優先にする場面を一つ作ること」。この3つのうち、どれか一つだけでも日常に取り入れてみてほしい。「自分を最優先に」という言葉は、一人でいきなりやると負担になることがある。まず「伝える」「頼む」の2つから試してみることをお勧めしている。
食生活で心がけることは何ですか?
過敏性腸症候群の症状に影響しやすい食品がある。完全に断つ必要はないが、意識しておくことで症状が落ち着きやすくなる。
症状に影響しやすいものとして、乳製品(牛乳・チーズ・アイスクリーム・生クリーム)、精製された砂糖、小麦粉(グルテン含有)、冷たい飲み物、カフェイン過多(コーヒーを1日に何杯も飲む)、辛い食べ物・香辛料が挙げられる。
反対に、腸に優しいとされるものとして、根菜類(大根・にんじん・ゴボウ)、発酵食品(味噌・ぬか漬け・納豆)、温かいスープや汁物、白米・おかゆがある。
ただし、「ダメなものリスト」を完璧に守ろうとすること自体がストレスになることもある。まず「お腹が痛くなる前日に何を食べていたか」を3日だけ観察することから始めるのが、無理なく気づきを得られるやり方だ。気づきが出てきたら、一つだけ変えてみる。
症状が長引く前に知っておきたいことは何ですか?
過敏性腸症候群は、症状が10年・20年と続く方が珍しくない。薬で抑えながら付き合い続けるうちに、気づいたら腸の炎症が確認される段階になっていた、という方もいる。
「検査で異常なし」だからといって、放置していい状態ではない。腸に負荷がかかり続けているのは事実だ。
体質に早めに向き合うほど、変化は起きやすい。「お腹が弱いのは生まれつき」「体質だから仕方ない」という感覚で諦めてしまっている方が多いが、腸の過敏さは体質が変わると落ち着くことがある。
過敏性腸症候群の根にある「手放せない」「外に向けっぱなし」「頑張りすぎる」という体質は、整体で体を整えながら少しずつ変えていける。体が変わると、物事の受け取り方も少し変わる。腸が落ち着いてくると、心の余白も生まれる。
症状が気になっている方、薬では改善しない状態が続いている方は、一度、体全体から見直してみる機会としてほしい。
過敏性腸症候群についての基本情報は、厚生労働省のe-ヘルスネットでも確認できる。
また、日本消化器病学会では過敏性腸症候群の診療ガイドラインが公開されている。
過敏性腸症候群についてよくある質問
血便が出ることがあります。これも過敏性腸症候群の症状ですか?
血便は過敏性腸症候群の症状ではない。便に血が混じっていたり、トイレ後に出血がある場合は、必ず消化器内科を受診してほしい。潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸ポリープなど、別の病態が隠れている可能性がある。検査で問題がないと確認された後に、整体でのアプローチを検討していただく順序が安全だ。
薬を飲んでいますが整体に来ても大丈夫ですか?
問題ない。薬を飲みながら施術を受けている方も多い。薬をやめることを勧めることはしないし、担当医の指示に従って服薬を続けてほしい。整体は薬の代わりではなく、体が本来の機能を取り戻すサポートをする場だと理解してもらえると助かる。薬と整体を併用することで、症状の改善が重なってくる方もいる。
どのくらいで症状が楽になってきますか?
症状の経過や体質によって大きく異なる。初回の施術後から「お腹が落ち着いた感じがする」と言う方もいれば、3〜5回かけて少しずつ変化を感じる方もいる。体質の変化という意味では、3か月を一つの目安にしている。「症状がゼロになった」という状態より「発症する頻度が下がってきた」「下痢の程度が軽くなってきた」という変化が先に来ることが多い。
子どもも過敏性腸症候群になりますか?
なる。学校や試験前になると必ずお腹が痛くなる、という子どもは少なくない。子どもの場合は特に、腸が緊張に敏感に反応しやすい。施術の現場でも、小学生・中学生の方が保護者と一緒に来院されることがある。子どもの体質は変化しやすく、体へのアプローチが功を奏することが多い。発症のきっかけには、転校・進学・家族の変化など環境の変化が絡んでいることが多い。
お腹にガスが溜まって苦しいのも過敏性腸症候群ですか?
過敏性腸症候群の症状の一つに、腹部膨満感やガスの過剰が含まれる。ガス型(膨満型)と呼ばれるパターンだ。腸の動きが乱れることでガスの排出がうまくいかなくなる。発酵食品・炭酸飲料・豆類などが症状を増やすことがあるため、食生活の見直しも一緒に行うことが多い。腸内細菌のバランスが影響していることもある。
ストレスの原因がなくなれば自然に良くなりますか?
環境が変わったことで症状が落ち着く方は確かにいる。しかし体質としての腸の過敏性は、ストレス源がなくなっても残ることがある。「前の職場を辞めたのにまだお腹が弱い」という方に多く会ってきた。ストレス源が変わっても、体が「緊張状態を基準」に慣れてしまっている場合、その基準そのものを変える必要がある。体質への働きかけが必要になる段階だ。
食事で気をつけることは何ですか?
乳製品(牛乳・チーズ・アイス)、砂糖、小麦粉(グルテン)が症状に影響する方が多い。低FODMAP食(発酵性の糖質を減らす食事法)が有効なこともある。ただし、すべてを完璧に制限しようとすると逆にストレスになる。まず「お腹が痛くなる前日に何を食べていたか」を3日だけ観察することから始めるのが、無理なく気づきを得られるやり方だ。
下痢型と便秘型が交互に来るのはなぜですか?
腸の動きが「過剰」になったときが下痢で、「不足」になったときが便秘だ。自律神経のバランスが不安定な場合、交感神経と副交感神経の切り替えが乱れ、腸の動きが振れやすくなる。一方向に固定されているより、混合型の方が自律神経の乱れが大きいことが多い。体全体の安定を目標にした施術が、混合型には特に重要になる。下痢と便秘が交互に来るとき、腸の緊張と弛緩が激しく繰り返されている状態だと見ている。
心療内科や精神科でも診てもらえますか?
診てもらえる。過敏性腸症候群は機能性消化器疾患の一つとして、消化器内科だけでなく心療内科・精神科でも対応している。不安や抑うつが強い場合は、精神科での薬物療法が症状を楽にすることもある。整体と心療内科の併用で症状が落ち着いてきた方もいる。「どの科に行けばいいか分からない」という方は、まず消化器内科で検査を受けることをお勧めする。
過敏性腸症候群の症状は完全に消えますか?
「完全に消える」という表現より、「発症しにくい体質になっていく」という変化が現実的だ。体質が変わると、同じストレス状況にさらされても腸への影響が小さくなる。電車に乗る前の恐怖感が薄れる、大事な日の前日に下痢しなくなる、という変化が積み重なっていく。「症状がゼロの状態を目指す」より「症状に振り回されない生活を送る」を目標にした方が、長期的には安定しやすい。
まとめ:過敏性腸症候群を繰り返さないために押さえておきたいことは何ですか?
過敏性腸症候群が繰り返す背景には、「手放す力の弱り」がある。東洋医学では肺・大腸の弱りとして捉え、完璧主義・気つかい・先のことを心配しすぎる、という気質との関係で読む。
腸の過敏性は、ストレス源を取り除くだけでは変わらないことが多い。体質そのものに働きかける必要がある。
セルフケアは、「呼吸を整える」「お腹を温める」「手放す練習をする」「食生活を見直す」の4つが柱になる。すべてを完璧にやろうとしなくてよい。まず一つから始めてほしい。
血便・強い腹痛・発熱・体重減少がある場合は、まず消化器内科を受診する。器質的な問題がないことを確認してから、体質改善に取り組む。
繰り返しているお腹の不調が、体からのメッセージだとしたら、どんなメッセージだろうか。「もう少し手放していい」という合図なのかもしれない。
常若整骨院 福岡市早良区
20年・2万5千人を超える施術の経験をもとに、体全体から状態を見ていく。初めての方は、LINEまたはお電話でご相談いただきたい。











