新規集客をやめてリピート対策に予算を回すべき理由

会計のとき、その先生は毎回同じ言葉を聞いていました。

「また肩が痛くなったら来ますね。」

そう言って、次の予約を入れずに帰っていく後ろ姿。新規の予約は月に何件も入ってきます。広告も出しています。でも売上はいつまでも安定しません。

私はこの相談を、実際に何人もの先生から受けてきました。新規は途切れていない。広告も出している。それなのに、月末になると去年と同じ数字が並んでいる。そういう先生ほど、来月の新規をどう増やすかばかりを考えています。今日はその話をします。

新規の予算を増やすほど、なぜ売上は安定しないのか

結論から言います。新規集客に使う予算を増やすほど、リピートしない症状の患者さんばかりが増えて、経営はかえって不安定になります。

ある先生から、こんな相談をいただきました。新規で一番多い主訴は肩こり。でも肩こりの患者さんは、リピートがあまり良くないというのです。

私はこう答えました。

「結局、リピート率のいい方が絶対にいいんです。誰でもできるようなところは、みんなレッドオーシャンになっています。できるだけブルーオーシャンに、早く移動していった方がいい。」

肩こりを否定しているわけではありません。誰でも診られる症状は、それだけ競合が多く、来院の間隔も長く続きにくいという構造があるという話です。

新規集客の広告費を増やせば、この構造をもっと大量に生み出すだけです。入口を広げるほど、出口も広がっている状態を、私たちは「集客がうまくいっている」と勘違いしてしまいます。

予約表の枠は毎日埋まっているのに、月末の売上を見ると去年とほとんど変わらない。そういう先生に共通しているのは、新規の数字だけを追いかけて、その新規が二回目に来たかどうかを数えていないことです。新規が十人来て、二回目に来たのが二人だとしたら、実際に育っているのは二人分の関係だけです。残りの八人分の広告費は、来月また同じだけ使わないと数字が保てません。これは経営ではなく、毎月ゼロから積み直す消耗戦です。

一方で、二回目に来たのが七人、八人だとしたらどうでしょうか。次の月の新規は半分に減らしても、売上は前の月と変わりません。広告費を減らしても予約が埋まるようになるのは、値引きでも裏技でもなく、この積み上がり方の違いだけが理由です。

なぜ同じ症状でも、当たる先生と当たらない先生がいるのか

これは技術の差ではありません。どの症状を主訴として引き受けるか、その選び方の差です。

同じ肩こりでも、その奥にある自律神経の乱れや内臓の疲れまで診られる先生は、患者さんに次に来る理由を渡せます。表面の痛みだけを追う先生は、痛みが引いた時点でその患者さんとの関係が終わります。

私自身、開業して間もないころは、症状の名前だけを見て手を動かしていました。肩なら肩、腰なら腰。そのときは目の前の一回はうまくいっても、次につながりませんでした。

技術が悪かったのではありません。見る順番が決まっていなかっただけです。手技を増やしても、この迷いは消えません。持っている技術を、いつ、どの順番で出すかが決まっていないことが、いちばんつらいところなのです。

順番は、あとからでも身につけられます。まずここに気づけるかどうかが分かれ目になります。

これは症状の選び方にも同じことが言えます。筋骨格だけを診ていると、ある程度のところで頭打ちになります。触れば軽くなるので、その場では感謝されますが、次に何を渡せばいいのかが見えてこないからです。私自身、内臓や自律神経まで診るようになってから、同業と競合しない領域が増えました。肩や腰の張りを整えるところで終わらせず、その奥にある内臓の疲れや自律神経の乱れまで診られると、患者さんは一度きりの関係ではなく、長く付き合っていける相手として先生を選ぶようになります。

新しい手技をもう一つ買い足すより先に、今持っている技術を、どの順番で、どの症状に使っているかを一度紙に書き出してみてください。頭の中だけで考えていると、いつも「もっと技術が要る」という結論に戻ってしまいます。

予算を新規からリピートへ移すとは、具体的に何をすることか

広告を減らせという単純な話ではありません。同じ予算と時間を、初回の説明と見通しの提示に使う、という話です。

私にも苦しかった時期があります。独立して二年目、一年ほど続いた時期でした。いくら手を尽くしてもリピートにつながらず、セミナーとDVDにお金を使い続けていました。「また今回もダメだった」「これが永遠に続くのではないか」。予約表の空き状況を見て、どうしよう、と思う。寒気がくるのは、決まって寝る前でした。

外に投資すればするほど、手応えは遠のいていきました。新しい手技を買うことは、新規を追いかけることとよく似ています。どちらも「足りないのは外側だ」という思い込みの上に立っているからです。

転機になったのは、ある兄弟の症例でした。同じ家で育ったのに、片方は毎月ケガをして、片方はまったくしませんでした。違いは、日ごろ飲んでいるものだけでした。専門知識がなくても分かるほど、はっきりした違いでした。

自分でも同じことを試してみて、実感してから、問診で自分の言葉が言えるようになりました。技術を増やしたのではありません。自分でやってみたことで、初めて患者さんに見通しを渡せるようになったのです。手応えが変わるまでに、三か月かかりました。

予算を新規からリピートへ回すとは、この「見通しを渡す力」に投資することです。初回に何回で楽になる方向が見えるかを伝えられる先生と、伝えられない先生とでは、同じ広告費をかけても戻ってくる患者さんの数がまったく違います。

具体的には、施術時間の使い方を見直すところから始めます。回転率を上げようとして施術時間そのものを削る先生を見かけますが、それだけでは根本の解決になりません。初回は長めに時間を取って、症状の場所ではなく見通しを伝えることに使う。二回目以降は短くしても構いませんが、そこでも「前回お伝えしたことを、どんな感じでやっていただけましたか」の一言を削らないことです。この一言があるかどうかで、患者さんが自分の生活を振り返る機会が生まれるかどうかが決まります。

予算という言葉を使うと、広告費や設備投資を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、いちばん効果が大きいのは、この「初回にかける時間」と「二回目に聞く一言」への投資です。ここにはお金はかかりません。かかるのは、新しい手技を覚える時間の代わりに、伝え方を練習する時間だけです。

見立ての順番を整えたい方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。見立ての順番

どこで外したかを確認するには、何を見ればいいのか

新規が来ているのにリピートしないとき、まず確認するのは広告の出し方ではありません。初回で何を伝えたか、二回目以降に何を伝えているか、そこを振り返ることです。

外したのか、そもそも届いていないのか。ここを分けずに手技だけを見直すと、いつまでも同じ場所で止まります。私は二回目の面談で必ず「初回のあと、お伝えしたことはどんな感じでしていただけましたか」と聞くようにしています。実行されていなければ、それは技術が外れたのではなく、まだ届いていないだけです。

リピートにつながらない根っこは、技術そのものではなく、この確認の有無にあることがほとんどです。詳しくはリピートされない理由もご覧ください。

もう一つ確認してほしいのは、カルテです。今月の新規のうち、二回目に来た人と来なかった人を症状ごとに分けてみてください。特定の症状だけが一回で終わっているなら、それは技術ではなく、その症状に対する説明の順番がまだできあがっていないというサインです。逆に、二回目以降がよく続いている症状があるなら、そこがすでに先生の得意分野です。新規集客の予算は、その得意分野の症状名で検索されるように使う方が、手当たり次第に広告を出すよりずっと効率がいいはずです。

なお、急な痛みの悪化や、しびれ、原因のはっきりしない体重の減少など、危険なサインが見えるときは、施術だけで抱え込まず、必ず医療機関の受診を勧めてください。見立ての自信は、診るべきでないものを診ないと決める力とセットです。

新規を止める必要はありません。ただ、新規を増やす手を止めずに、同じ熱量を今来ている患者さんの二回目、三回目に向けてみてください。予約表の空きを見て寒気がしていたころの私に、今なら伝えられます。足りなかったのは、もっと多くの新規ではなく、一人ひとりに渡す見通しの方でした。

よくある質問

新規集客をやめて、まったく広告を出さなくていいのでしょうか?

やめるのは広告そのものではなく、新規を増やせば増やすほど良いという考え方です。今来ている患者さんへの説明を整えてから、必要な分だけ広告に戻す順番をおすすめします。

リピートしにくい症状の新規は断るべきでしょうか?

断る必要はありません。引き受けたうえで、どこまで診るかの範囲を自分の中ではっきりさせておくと、疲弊せずに済みます。

リピート率のいい症状にシフトするには、何から始めればいいですか?

まず今のカルテを見返して、二回目以降も続いた症状と、一回で終わった症状を分けることから始めます。数を数えるだけで、自分の得意な症状の輪郭が見えてきます。

初回の説明で、具体的に何を伝えればいいのでしょうか?

症状の場所ではなく、どこまでの期間で、どんな変化が見えていくかの見通しです。断定はできませんが、方向だけは示せます。

セミナーや新しい手技への投資は無駄なのでしょうか?

無駄ではありません。ただ、リピートが取れない原因を手技の不足だと決めつけて投資を続けると、私のように何年も回り道をすることになります。

施術時間を短くすることは、リピート対策になりますか?

回転率は上がりますが、それだけでは根本の解決にはなりません。短い時間の中でも、見通しを渡す言葉を削らないことが先です。

肩こりや腰痛の患者さんを診るのをやめるべきでしょうか?

やめる必要はありません。ただ、その症状だけに新規の入口を頼っていると、経営が症状の流行に左右されやすくなります。

予算を移した効果は、どのくらいで見えてきますか?

私の場合は三か月でした。すぐに数字は動きませんが、判断した基準を変えずに続けることが結果につながります。

新規とリピート、どちらの数字を先に記録すればいいですか?

両方を並べて記録してください。新規の人数だけを見ていると、二回目に来ているかどうかが見えなくなります。月の新規人数と再来率をセットで残すことが、判断のもとになります。

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この記事は施術者・施術家の方に向けて書いています。体の症状でお困りの方は、まず医療機関にご相談ください。

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