整体のリピート率は、症状によって最初から決まっている

肩こり・腰痛のリピート率が低いのは、施術のせいではありません。その症状自体が、リピートしにくい性質を持っているからです。

私は柔道整復師・鍼灸師として20年、25,000人の患者さんに、のべ11万回の施術をしてきました。その中で何度も同じことを思い知らされています。同じ院で、同じ先生が施術しても、症状によってリピート率がまったく違う。これは腕の差ではなく、症状の性質の差です。

リピート率は、施術者の腕ではなく症状の性質で決まる

まず結論から言うと、リピート率が低い症状群と高い症状群は最初から分かれています。腕を磨けば埋まる差ではありません。

肩こり・腰痛は、来た日に軽くなって、本人が「もう大丈夫」と思った瞬間に来なくなります。楽になった実感が早く、しかも一時的な緊張が原因であることが多いので、1、2回で満足されやすい。これは施術が下手だからではなく、症状の性質そのものです。

一方、アトピー・自律神経症状・メンタル系の不調は、そもそも数ヶ月単位で変化していく症状です。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ変わっていく。だから通う期間が長くなり、結果としてリピート率が上がります。

「うちはリピートが弱い」と悩んでいる先生ほど、扱っている症状の分布を見直したほうがいいです。肩こり・腰痛だけを主戦場にしている限り、リピート率はどこまでいっても頭打ちになります。

接客を工夫しても、次回予約の声かけを変えても、症状の性質そのものが変わるわけではありません。私自身、開業したばかりの頃は肩こり・腰痛を中心に診ていましたが、どれだけ丁寧に接しても、リピート率は一定の水準から上に伸びませんでした。あとになって分かったのは、接客の問題ではなく、扱っていた症状の側に理由があったということです。

なぜ肩こり・腰痛は一回で満足されてしまうのか

理由は、痛みが分かりやすく、消えたことも分かりやすいからです。

肩こり・腰痛は本人にとって「痛い場所がある」「そこが軽くなった」というシンプルな体験です。原因と結果が近い位置にあるので、1回の施術で体感が出やすく、体感が出た瞬間に満足度が天井に達します。満足した人は、次回の予約を入れる理由がありません。これは悪いことではなく、症状の構造上そうなるということです。

対してアトピーや自律神経の不調は、原因が症状の出ている場所にありません。私はこれまで、副鼻腔炎やアトピーの相談を数多く受けてきましたが、皮膚や鼻の粘膜そのものを診ても、原因にはたどり着けませんでした。原因は、その人の生活習慣や考え方の癖、抱えている緊張の中にあります。原因と結果が離れているぶん、変化にも時間がかかり、その時間の分だけ通院が続きます。

つまりリピート率は、施術の腕ではなく「原因と症状の距離」で決まっているということです。

経過を見ると、症状ごとの通院期間の差がはっきり出る

私がカルテを棚卸ししていて改めて感じたのは、症状ごとに回復までの期間がまったく違うということです。

顔面痙攣で来られた方は、睡眠時間を5時間から8時間に延ばし、入浴と食事を整えてもらっただけで、3日間で症状の強さが10段階中10から3、4程度まで落ちました。これは原因と症状の距離が近かったケースです。緊張状態が続いていた期間は長くても、基本の生活を戻すだけで反応が早く出た。

一方、アトピーで来られたある50代の女性は、親の介護を一人で抱え込み、好きなものも我慢し続けていました。兄弟に「もう無理」と打ち明けられたことをきっかけに皮膚が回復し始め、きれいな肌が出てくるまでに2ヶ月かかっています。もう一人、感謝されることを自分の価値の拠りどころにしていた方は、娘さんと昔の話をして涙を流したところから変わり始め、熟睡できるようになるまで3ヶ月を要しました。

同じ「良くなる」でも、かかる時間がまるで違います。この違いを知らずに肩こり・腰痛の感覚でアトピーやメンタル系を診ると、2、3回で変化が出ないことに施術者の側が焦ってしまいます。焦りは言葉に出て、患者さんに伝わり、離脱につながります。

リピート率を上げたいなら、扱う症状の層を変えるしかない

リピート率を上げる近道は、接客を工夫することでも、次回予約の取り方を変えることでもありません。扱う症状の層そのものを変えることです。

筋骨格系だけを続けている限り、腕を上げても修羅場が来ません。誰に施術しても数回で満足して帰っていくので、外して、困って、考えて直すという経験が積み上がらないからです。アトピーや自律神経、メンタル系のように、原因が体の奥にある症状を診るようになって初めて、通院が長くなり、その分だけ見立ての精度を試される場面が増えます。

これは値上げの話とも根が同じです。値段を上げられないのは、確信が持てないからで、確信が持てないのは、難しい症状を診た経験が少ないからです。リピート率も同じ構造で、浅い症状しか扱っていなければ、いくら接客を磨いてもリピート率という数字には表れません。

保険診療をずっと続け、筋骨格系しか診てこなかった先生ほど、この壁にぶつかりやすいと感じています。保険の範囲だけで診ていると、どうしても症状の重さも期間も限られてしまい、深い症状に出会う機会そのものが少なくなります。自費で、生活の背景まで踏み込んで聞く診方に切り替えた先生ほど、扱う症状の幅が自然に広がり、リピート率も後からついてきています。

アトピー・メンタル系は「良くなるまで通う」構造を最初に伝える

長く通院が続く症状ほど、初回のうちにその構造を伝えておくことが大事です。伝えないまま数回過ぎると、患者さんは「効いていないのでは」と不安になり、こちらも説明の機会を失います。

私は初回のカウンセリングで、まず可動域検査をして今の体の状態を確認したあと、少しだけ施術をして体感してもらうようにしています。そのうえで「この症状は、生活の積み重ねで出てきたものなので、変わるのにも時間がかかります」と、最初に見通しを伝えます。これを言うか言わないかで、2回目以降の患者さんの構え方がまったく違います。

見通しを伝えることは、長く通わせるための誘導ではありません。むしろ逆で、原因と結果の距離が遠い症状ほど、正直に時間がかかると言ったほうが信頼が保たれます。短く終わると言ってしまうと、変化が出ないときに信頼を失うのは施術者の側です。

リピートされない理由と、リピート率が低い症状は分けて考える

ここで一つ整理しておきたいのは、リピートされない理由と、リピート率が構造的に低い症状は、別の問題だということです。

説明が伝わっていない、次回予約の取り方が曖昧、といった理由でリピートを逃しているケースについては、以前の記事で詳しく書きました。整体でリピートされない理由を読んでいただくと、症状の性質とは別の、防げるリピート離脱の原因が分かります。

一方で今回書いているのは、防ぎようのない構造の話です。肩こり・腰痛は性質上リピートしにくく、アトピー・メンタル系は性質上リピートしやすい。この構造を理解したうえで、扱う症状の比率を意識的に変えていくことが、リピート率という数字を底上げする唯一の方法です。

見立ての順番が分かると、深い症状を診る土台ができる

深い症状を診るには、手技を増やすことよりも、見る順番を持つことが先です。

技術が足りないから深い症状を診られないのではありません。持っている技術を、いつ、どの順番で出すかが決まっていないから、複雑な症状の前で迷うのです。順番さえ持っていれば、アトピーや自律神経、メンタル系のように原因が離れた場所にある症状でも、迷わず入り口を選べるようになります。施術の見立ての順番について、以前まとめていますので、あわせて読んでみてください。

よくある質問

肩こり・腰痛ばかりの患者さんが多いのは悪いことですか?

悪いことではありません。ただ、リピート率を上げたいなら、その症状群だけに頼っていては数字は伸びません。原因と症状の距離が近い症状は、性質上そこで終わりやすいからです。

アトピーやメンタル系を診る自信がありません。どこから始めればいいですか?

いきなり難しい症状だけを狙う必要はありません。今来ている患者さんの中で、生活習慣や考え方の癖まで聞き取れる方から少しずつ広げていくことです。問診の深さが、そのまま見立ての深さになります。

初回で見通しを伝えると、長く通わせようとしていると思われませんか?

正直に伝えたほうが、むしろ信頼は保たれます。短く終わると期待させて変化が出ないほうが、あとで信頼を失います。時間がかかる理由まで説明できれば、患者さんは安心して通えます。

何回通っても変化が出ない場合、どう判断すればいいですか?

まず、こちらの見立てが外れているのか、伝えたセルフケアが実行されていないのかを分けて考えます。2回目の最初に「初回のあと、お伝えしたことはどんな感じでしていただけましたか」と聞くだけで、多くの場合はどちらかがはっきりします。

症状の層を変えると、今までの患者さんが離れてしまいませんか?

急に切り替える必要はありません。今の患者さんを大事にしながら、問診でこれまで聞いていなかった生活背景まで踏み込んで聞くところから始めれば、扱う症状の幅は自然に広がっていきます。

リピート率が低いままだと、経営的にはどうなりますか?

新規集客だけに頼り続けることになり、集客が止まった瞬間に売上も止まります。深い症状を診られるようになると、通院期間が伸びる分、経営の土台が安定します。

顔面痙攣が3日で改善したという話は、誰にでも当てはまりますか?

いいえ。あの方は緊張状態の原因がはっきりしていて、睡眠・入浴・食事という基本を戻すだけで反応する体だったからです。全員が同じ期間で変わるわけではなく、原因と症状の距離によって差が出ます。

危険なサインが出ている患者さんにも、この考え方は当てはまりますか?

いいえ。急な麻痺や激しい痛み、急な体重減少などが見られる場合は、まず医療機関の受診をすすめてください。リピート率の話は、そうした緊急性がないことを前提にしています。

現場で使える資料は、まとめて渡している

私は今、症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、現場で実際に使っている資料を全部で17本まとめて渡しています。手技を増やすより先に、見る順番と説明の型を持ちたい方は、公式LINEから受け取ってください。

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この記事は施術者向けに書いたものです。体の症状で困っている方は、まず医療機関の受診をおすすめします。