リピート率が低い整体院は説明の「順番」を間違えている

初回の施術を終えて、着替えを待っている間に聞かれることがあります。

「先生、これって何回くらい通えば変わりますか」

手が止まりました。何と答えればいいか分からなかったからです。

今日は、この質問にどう答えるかではなく、その手前にある「説明の順番」についてお話しします。

なぜ同じ説明をしているのに、リピート率だけ違うのか

結論から言うと、差は説明の中身ではなく、説明の順番にあります。

原因も、見立ても、伝えている言葉もそう変わらないのに、リピート率がまったく違う院があります。私は最初、技術の差だと思っていました。でも技術セミナーで同じ手技を学んだ同期の先生たちを見てきて、それだけでは説明がつかないと分かってきました。

差は、何を先に話すかです。原因の説明から入るか、見通しの説明から入るか。この順番ひとつで、患者さんが次回の予約を取るかどうかが変わります。

患者さんは、原因より先に見通しを知りたい

結論から言うと、患者さんが最初に欲しいのは、原因の理屈ではなく先が見えるという安心です。

私が開業して間もない頃、自信がなくて説明がうまくできませんでした。「何回くらい通えば変わりますか」と聞かれるたびに、言葉に詰まって、寒気がしていたのを覚えています。今なら分かりますが、あのとき怖かったのは質問そのものではありません。答えられない自分が怖かったのです。

患者さんが投げてくる質問は、だいたい同じ形をしています。

いつまでこの反応が続きますか。前より不安になりました。本当に変わるんですか。何回通えば変わりますか。

言葉は違いますが、中身はひとつです。先が見えないから、教えてほしいということです。

ここで多くの施術者が、先に原因の説明を始めてしまいます。五行がどうとか、自律神経がどうとか、丁寧に話すほど、患者さんの頭の中では「で、結局いつまで通うの」という問いが置き去りになります。丁寧な説明が、かえって不安を長引かせることがあるのです。

説明を後回しにすると、患者さんの不安はどうなるか

結論から言うと、見通しを最後に回すと、原因の説明を聞いている間ずっと患者さんは不安を抱えたままになります。

原因の説明は、患者さんにとっては新しい情報です。新しい情報が増えるほど、頭の中で処理する量が増えます。そこに「いつまで続くか分からない」という不安が乗ったままだと、説明を聞けば聞くほど疲れてしまいます。

これは患者さんの理解力の問題ではありません。順番の設計の問題です。不安を抱えたまま長い説明を聞かされると、内容の良し悪しにかかわらず「この院は長引きそうだ」という印象だけが残ります。次回予約が減るのは、施術の効果ではなく、この印象が原因になっていることが少なくありません。

深さを見誤ると、説明の順番はさらに崩れる

結論から言うと、目の前の患者さんが浅い悩みなのか深い悩みなのかを先に見積もらないと、説明の分量そのものを間違えます。

来院したばかりで、今日だけ楽になればいいという患者さんに、根っこの生活習慣まで長々と説明すると、重く感じさせてしまいます。逆に、何院も回ってようやく覚悟を決めて来た患者さんに、あっさりした説明で終わらせると、「分かってもらえていない」という不信感が残ります。

浅い悩みには短く、深い悩みには時間をかける。この振り分けを先にしないまま、全員に同じ量の説明をしていると、浅い人には重すぎ、深い人には軽すぎるという、両方向でリピートを落とす結果になります。

見立ての中身をどう深めるかは、ここでは書ききれません。ただ、原因を話す前に「この人はどれくらい深く聞いてほしいと思っているか」を一度見積もる、という一手間だけでも、説明の量は大きく変わります。

見積もりの材料は、症状の重さではありません。その悩みにこれまでどれだけの労力をかけてきたかです。今日はじめて整体院に来た人と、何院も回ってようやく来た人とでは、必要な説明の量がまったく違います。初めて来た人に長い説明をすると重く感じさせてしまいますし、何院も回ってきた人に短い説明で済ませると、また分かってもらえなかったと感じさせてしまいます。この見積もりを飛ばして、誰にでも同じ長さの説明をしていると、両方の患者さんを同時に逃していることになります。

施術のあとの説明も、順番を間違えると忘れられる

結論から言うと、説明の順番を間違えやすいのは施術前だけではありません。施術のあとにも、同じ落とし穴があります。

長年リピートが続かない患者さんに悩んでいたころ、ある方に言われた一言があります。

「先生、私、今日なんでこれが良くなったんですかね」

このとき、私は答えに詰まりました。施術中は無我夢中で、良くなった理由を言葉にしていなかったからです。体は変わっていても、本人はなぜ変わったのか分からないまま帰っていました。

体は施術で変わります。ですが、次に来るかどうかは、言葉で決まります。良くなった理由を伝え忘れると、患者さんの中では「なんとなく良くなった」で終わってしまい、次に悪くなったときも「またあの院に行けば何とかなる」という確信につながりません。

施術の直後、帰り際の一言として、「今日は◯◯が原因で詰まっていたところを緩めたので、△△が軽くなっています」と、変化の理由を一言添えるだけで、患者さんの記憶に残り方が変わります。説明は施術の前だけでなく、施術のあとにも順番として組み込む必要があります。

正しい順番は、こうなる

結論から言うと、原因より先に見通しを、見通しより先に深さの見積もりを置きます。

私が今使っている順番は、次のようになっています。

まず、目の前の患者さんが浅い悩みか深い悩みかを見積もります。今日だけ楽になればいい人なのか、長く付き合ってきた悩みを抱えている人なのか。

次に、その見積もりに合わせて見通しを伝えます。浅い人には「数回で落ち着く方が多いです」、深い人には「時間はかかりますが、途中で必ず変化が出ます」というように、期間の目安を先に渡します。

そのあとに、原因の説明をします。見通しを先に受け取った患者さんは、原因の話を「自分がなぜこの見通しになるのか」の裏付けとして聞くことができます。

そのあとに、次に何をするか、次回どのタイミングで来るとよいかを渡します。

最後に、施術が終わって体が変わったタイミングで、なぜ変わったのかを一言添えます。ここを飛ばすと、せっかく体が変わっても、本人の記憶には残りません。

原因の説明を後ろに回すだけで構いません。手技を変える必要はありません。話す中身は同じでも、順番を入れ替えるだけで、患者さんが受け取る印象がまったく変わります。

順番を変えただけで、何が起きたか

結論から言うと、答えられなかった質問に答えられるようになっただけで、寒気は消えました。

「何回くらい通えば変わりますか」という質問は、開業したばかりの頃も、今も、まったく同じ言葉で飛んできます。質問が優しくなったわけではありません。変わったのは私の側です。見通しを先に渡せるようになったことで、同じ質問が、怖いものから、いつも通りのやり取りに変わりました。

技術が上がったから答えられるようになったのではありません。答える順番を、原因の後ろから、いちばん前に移しただけです。

リピートされない理由を技術のせいにしてしまうと、次に何を学べばいいか分からなくなります。リピートされない理由について以前書いた記事でも触れていますが、多くの場合、足りないのは技術ではなく、渡す順番です。

今日から何ができるか

まず、次に来る患者さんに、原因の説明より先に見通しを一言添えてみてください。

次に、説明を始める前に、この人は浅いか深いか、一度だけ自分に問いかけてみてください。

次に、原因の説明は、見通しを渡したあとに回してみてください。

最後に、施術の終わりに、なぜ変わったのかを一言だけ添えてみてください。

この4つだけで、次回予約の言葉の重さが変わってきます。

よくある質問

見通しが分からないまま伝えると、無責任になりませんか?

なりません。分からないことを分からないまま断定するのが無責任であって、「数回で変化が出る方が多いですが、あなたの場合は様子を見ながらお伝えします」と幅を持たせて伝えることは誠実な説明です。

浅いか深いかは、何を見て判断すればいいですか?

症状の重さではなく、その悩みにこれまでどれだけの労力をかけてきたかを見ます。今日はじめて相談した人と、何院も回ってきた人とでは、必要な説明の深さが違います。

原因の説明を先にしてはいけないのですか?

先にしてはいけないという意味ではありません。順番として、不安を抱えたまま長い説明を聞かせると疲れさせてしまうので、まず見通しで安心してもらってから原因に入る方が伝わりやすい、ということです。

見通しを外してしまったらどうすればいいですか?

外れたこと自体を隠さず、「思っていたよりも根が深いようです、ここからは少し時間をいただきます」と伝え直します。見通しは一度きりの宣言ではなく、都度更新していくものです。

何回も同じ説明を繰り返す患者さんには、どう対応すればいいですか?

同じ質問が繰り返されるのは、前回の説明で不安が解消しきれていないサインです。内容を変えるより先に、見通しの部分だけもう一度短く伝え直すと落ち着くことが多いです。

新人の施術者でも、この順番はすぐ使えますか?

使えます。経験がなくても、見通しを先に伝えるという順番だけは今日から真似できます。中身の精度は経験とともに上がっていきますが、順番を変えることに経験は必要ありません。

説明が長くなりがちな性格でも直せますか?

性格を直す必要はありません。話す量はそのままで、話す順番だけ入れ替えれば十分です。まず見通し、それから原因、という骨組みさえ守れば、多少長くても患者さんは受け取れます。

家族や身内を施術するときも、この順番は使えますか?

使えますが、身内は距離が近い分、見通しを曖昧にしがちです。身内にこそ、他の患者さんと同じように見通しをはっきり伝えることをおすすめします。

現場で使う資料も渡している

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この記事は施術者の方に向けて書いています。体の症状でお困りの方は、まず医療機関を受診してください。

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