自律神経整体は独学と講座どちらが早いか。早さを決めるのは学ぶ形ではなく、外して直した回数です

ベッドの横で、手が止まる。

患者さんは「自律神経が乱れていると言われました」と言って、うつ伏せになっています。机の上には本が開いたまま。DVDも何本か見ました。頭の中に手順はあります。けれど、首に触れたその手に、次に何をすればいいのかが返ってきません。

これは、自律神経を学び始めた施術者の方から、よく聞く場面です。私にも覚えがあります。独立2年目、セミナーとDVDにお金と時間を使い続けて、それでも予約表の空きを見るたびに寒気がしていました。

この記事は、自律神経整体を身につけたい先生が、独学と講座のどちらを選べば早いかで迷っているときのために書きました。結論から言うと、どちらが早いかは学ぶ形では決まりません。決まるのは「自分の患者さんで外して、直した回数」です。そのうえで、独学が詰まりやすい場所と、講座が貸してくれるものを分けて書きます。

自律神経整体は、独学と講座のどちらが早いのですか

どちらも単独では遅く、早くなるのは「型を借りて、自分の患者さんで外して直す」人です。

独学だけの場合、手応えが合っているのか外れているのかを、誰も言ってくれません。講座だけの場合、情報は受け取れても、現場で外して直す経験がありません。早い人は、この2つをつないでいます。

私は書籍『気・エネルギーを整える!自律神経療法の教科書』(BAB JAPAN)を書き、DVD『自律神経整体!』全2巻の指導と監修をしてきました。同業の施術者に技術を教える側にも長く立っています。その立場から見ても、本とDVDだけで身につけた人と、講座に通っただけの人は、同じところで止まります。止まる場所は違うのに、止まる理由は同じです。「自分の患者さんで外した経験が足りない」ということです。

独学で詰まるのは、どんな場面ですか

手応えの正誤を教えてくれる人がいないところで、いちばん詰まります。

独学は、時間の自由があって、費用も抑えられます。そこは強みです。ただ、自律神経の領域は、ほかの症状より独学が迷子になりやすい理由があります。

自律神経失調症という言葉は、原因の名前ではありません。いくつかの乱れが重なった結果につけられた名前です。腰痛なら、原因を1つ指せることが多いのですが、この症状名は1つに絞れません。だから、症状名から入って学ぼうとすると、何を見ればいいのかが定まらないのです。

私自身、この領域を症状名のまま語るのは今でも得意ではありません。具体的な症状、たとえばめまい、動悸、不眠、胃の不調から入って、その説明の途中で自律神経に触れる形でなら、語れます。独学の先生がまず外すのは、ここです。症状名から入って、順番が決まらないまま手を動かしてしまうのです。

もう1つあります。本に手技が書いていないことです。私の本にも、読者の方から「施術のやり方については殆ど記載していないので、期待外れでした」という声をいただきました。本は、見立ての考え方と検査の見方が中心です。手を動かす順番を、紙の上だけで渡すことには限界があります。本だけで学ぶ先生が、ここで手を止めるのは自然なことです。

講座は、独学にない何を貸してくれるのですか

見る順番と、外したときに「どこで外したか」を言葉にしてくれる相手を貸してくれます。

講座の価値は、情報量ではありません。情報なら、本とDVDで十分に手に入ります。講座が貸してくれるのは、次の2つです。

1. 何から見るかという、順番
2. うまくいかなかったときに、一緒に外した場所を探してくれる人

ある読者の方が、本のレビューにこう書いてくださっています。「学校で習う解剖や生理学を勉強しても、実際の患者さんを目の前にするとどうしていいのか分からなかったりします」。これは、知識が足りないという話ではありません。知識を並べる順番が決まっていないという話です。

技術が悪いのではありません。見る順番が決まっていないだけです。順番が決まると、同じ手でも、次に何を確かめるかが決まります。この順番の考え方は、見立ての順番の記事にも書きました。

講座に通えば、それだけで早くなるのですか

なりません。講座は入口で、身につくのは自分の患者さんで外して直した人だけです。

ここは、はっきり書いておきます。講座に通って、情報を持ち帰っても、現場が変わらない先生は多いです。理由は単純で、セミナーには修羅場がないからです。

腕は、どれだけ難しい場面を潜り抜けたかで決まります。自分の患者さんで外して、困って、直す。この通り道を通らずに腕が上がることは、ありません。講座は、その通り道に立つための地図です。地図を持っているだけでは、歩いたことにはなりません。

私の師匠のセミナーでは、「呼吸法を1日5時間やりなさい」と言われました。受講生は約50人。そのほとんどはやりませんでした。毎日続けた5人ほどが、今も難しい症状を診る先生になっています。講座で受け取ったものを、持ち帰って続けたかどうか。分かれ目は、そこでした。

独学の先生が、今日から講座なしでできることはありますか

あります。自分の患者さんの経過を1行ずつ残して、外した場所を後から見返せる形にすることです。

独学でも、早くなる人はいます。共通しているのは、手応えを記録に変えていることです。

1. 施術の前後で、可動域を1か所だけ見る(首の回旋でも、肩の挙上でも、1つに決める)
2. 「何を見て、何をして、どう変わったか」を、カルテの端に1行で書く
3. 戻ってきたときに、前回の1行と見比べる

これだけで、「なんとなく良さそうだった」が「ここで外した」に変わります。外した場所が言葉になると、次の患者さんの前で、確かめる場所が決まります。

私自身、独立2年目に手技を増やし続けても変わらなかったのは、外した場所を言葉にしていなかったからです。DVDをもう1本見るより、昨日の患者さんの1行を見返すほうが、ずっと早く進みました。

自律神経の学びで、最初に外しやすい場所はどこですか

症状名から入って、原因を1つに決めようとするところです。

自律神経の乱れは、原因を1つ指せない領域です。だから「自律神経が乱れていますね」と結論を出した瞬間に、見立てが止まります。

私が現場で大事にしているのは、乱れが起きる道筋を1つずつ見ることです。たとえば、本心を捻じ曲げて過ごしていると、自律神経は乱れやすくなります。休むと決めた日に仕事を入れてしまうなど、自分との約束を破り続けることも同じです。やりたいことが出てきても「面倒だ」と動かさずにいると、心が「出しても叶えてくれない」と欲求を出すのをやめて、自律神経が落ちていきます。

こうした生き方の側の入口を持っていると、症状名から入るより、問診の聞くべき場所が決まります。この見方は、本やDVDだけでは伝わりにくく、実際に患者さんの話を聞きながら外して、確かめて、身につけていくものです。

講座を選ぶとき、何を見ればいいですか

教える人が現場に立ち続けているか、外した症例の話をしてくれるか、の2点を見てください。

講座を選ぶとき、技術の内容や名前に目が行きがちです。私なら、次の3つを見ます。

1. 成功した症例だけでなく、外した症例を話してくれる人か
2. 受講した後に、自分の患者さんの経過を見てもらえる場があるか
3. 手技を増やす内容か、見る順番を渡す内容か

手技が増えるだけの講座は、学んだ直後は満足します。けれど、現場に戻ると、施術時間が延びて、夜に疲れて帰る日が増えることもあります。渡されるべきなのは、手技ではなく見立てです。

独学と講座を組み合わせるなら、どんな順番がいいですか

本とDVDで全体像をつかみ、自分の患者さんで外し、外した場所を講座や相談の場で言葉にする順番です。

この順番にすると、講座での質問の質が変わります。何も持たずに行くと、受け取るだけで終わります。自分の患者さんの経過を1行ずつ持って行けば、「ここで外しました」と話せます。同じ講座でも、持ち帰れるものが変わります。

1. 本とDVDで、見立ての全体像を知る
2. 可動域を1か所だけ決めて、自分の患者さんで毎回見る
3. 外した症例を、1行のメモにする
4. メモを持って、講座や相談の場で聞く
5. 聞いたことを、次の患者さんで試す

この5つを回すのに、特別な才能は要りません。回している間は、独学でも講座でも、早く進みます。

自分の学び方が合っているか、現場で確かめる方法はありますか

次の3つに、はっきり「はい」と言えるかどうかが目安です。

1. 患者さんが帰ったあと、今日外した場所を1つ言える
2. 次に確かめる検査を、施術の前に決めている
3. 手技を増やしたくなったとき、先に「何を見落としたか」を考える癖がある

1つでも詰まるなら、学ぶ形を変える前に、記録の取り方を変えてみてください。学ぶ形は、そのあとで選んで間に合います。

よくある質問

自律神経整体は独学だけで身につきますか?

身につく人もいますが、時間がかかります。手応えの正誤を教えてくれる人がいないので、外した場所が自分で見えるようになるまでが長くなります。経過を1行ずつ記録して、後から見返せる形にすると、独学でも進みが変わります。

本とDVDだけで施術を始めてもいいですか?

始められますが、本には手技が詳しく書かれていないことが多いです。まず可動域を1か所だけ決めて、安全な範囲で確かめることから入ってください。症状が強い方や、急な麻痺、激しい痛みなど危険なサインがある方は、医療機関の受診をすすめてください。

講座に通えば、すぐ結果が出ますか?

すぐには出ません。講座は見る順番を貸してくれる場所です。持ち帰ったものを自分の患者さんで試して、外して、直す。この回数が、結果を決めます。

独学と講座は、どちらから始めるのがいいですか?

本とDVDで全体像を知ってから、講座に行くほうが、質問の質が上がります。何も知らずに行くより、自分の外した症例を持って行くほうが、受け取れるものが多くなります。

自律神経の症状は、何から見ればいいですか?

症状名ではなく、具体的な症状から入ってください。めまい、動悸、不眠、胃の不調など、目の前の症状を入口にして、その説明の途中で自律神経の乱れに触れる形のほうが、見立てが止まりません。

手技をたくさん知っているのに、自律神経の患者さんが変わらないのはなぜですか?

手技の量が足りないのではなく、見る順番が決まっていない可能性が高いです。手技を増やす前に、どこで外したかを言葉にしてみてください。

高額な講座は、受けたほうが早いですか?

値段と早さは別です。外した症例を話してくれるか、受講後に自分の経過を見てもらえる場があるか、という中身で判断してください。

講座を受けても手応えがなかったとき、どうすればいいですか?

講座の内容が合わなかったと決める前に、持ち帰ったものを自分の患者さんで何回試したかを数えてみてください。試した回数が少ないなら、まだ判断する段階ではないことが多いです。

自律神経の施術で、受診をすすめるべきサインはありますか?

急な麻痺、激しい痛み、急な体重減少、強い胸の症状などがあるときは、施術より先に医療機関の受診をすすめてください。迷うときは、受診をすすめるほうが誠実な対応です。

見立てを磨く資料や場所は、どこで受け取れますか

公式LINE、オープンチャット、メルマガの3つで受け取れます。

私は、症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、現場で使う資料を全部で17本まとめてお渡ししています。公式LINEから受け取れます。

整体師・鍼灸師だけが集まっているオープンチャットもあります。外した症例を持ち寄って、同じ立場の先生と話せる場所です。

また、メルマガ見立てだよりでは、現場で見立てを磨くための考え方を、週に1回お届けしています。

この記事は、施術者の方に向けて書いています。ご自身の体の症状でお困りの方は、医療機関にご相談ください。

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