整体の技術を講座にするなら|向いている技術と向いていない技術の分かれ目

ベッドの横で、手が止まる。

先生の手は、さっきまで確かに患者さんの体をとらえていました。肩の力が抜け、呼吸が深くなったのが手に伝わっている。ところが施術のあと、患者さんにこう聞かれます。「先生、今日なんで良くなったんですかね?」

その瞬間、頭の中が真っ白になる。感覚では分かっているのに、言葉が出てこない。

結論を先に言います。講座にできる技術と、できない技術の分かれ目は、腕の良し悪しではありません。その技術を、順番のある言葉にできるかどうかです。この記事では、金額の話には触れず、どんな技術が講座に向いていて、どんな技術が向いていないのかを、現場の目線で整理します。

体の症状で困っている方は、まず医療機関にご相談ください。この記事は施術者の方に向けたものです。

講座に向いている技術と向いていない技術は、何で決まるのですか?

決まるのは、教える相手が同じ結果を再現できるかどうかです。名人芸かどうかではありません。

講座にするというのは、自分の手の中にあるものを、他の人の手に移すことです。移せるものは講座になります。移せないものは、どれだけ優れていても講座になりません。

ここで、よくある勘違いがあります。「自分の一番得意な技術を教えればいい」という考えです。得意な技術ほど、感覚で、無意識に、手が勝手に動いてやっていることが多いのです。本人にとっては当たり前すぎて、順番が見えません。

私は20年やってきて、25,000人の患者さんに、のべ11万回の施術をしてきました。その中で、自分が一番得意だと思っていたことほど、人に説明するのに苦労しました。感覚の領域は、言葉にする作業が必要です。

だから、講座に向いているかどうかは、得意かどうかではなく、次の4つで見ます。

順番に言えるか。外したときに戻れる場所があるか。相手の体や経験に左右されにくいか。患者さんに説明できる言葉があるか。

この4つを、以下で1つずつ見ていきます。

講座に向いているのは、順番で説明できる技術ですか?

はい。見る、触る、聞くといった、順番のある技術は講座に向いています。

私が先生方にお渡しして結果が出たのは、新しい手技ではありませんでした。見る順番と、説明の仕方です。

たとえば、開業5年目のある先生は、手技が増えるほど施術時間が長くなり、夜はいつも疲れ切っていました。渡したのは手技ではなく、見立てです。その後、施術時間の中で結果が出るようになり、予約表どおりに進められて、夜も元気に帰れるようになったと聞きました。

開業3年目の先生には、元に戻る理由の説明と、戻らないためのセルフケアの伝え方をお渡ししました。その日は良いのにすぐ戻る、という悩みがかなり減り、リピートが増えたそうです。

開業2年目の先生には、原因のパターンをお渡ししました。同じ腰痛でも、良くなる人とそうでない人の違いが分かるようになり、結果が出て、口コミが増えました。

3人とも、手技は1つも増えていません。渡したのは全部、順番です。順番は、言葉にできます。言葉にできるものは、他の人の手に移せます。これが講座に向いている技術の第一の条件です。

向いていないのは、感覚頼みの名人芸ですか?

そうです。順番がなく、その人の感覚だけで成り立っている技術は、そのままでは講座に向きません。

「なんとなくここだと思って触ると、反応が出る」。こういう技術は、本人にとっては正確です。けれど、受講生は「なんとなく」の部分を真似できません。真似できないまま持ち帰ると、現場で再現できず、「やっぱり自分には無理だ」という結論になります。

ここで大事なのは、感覚そのものが悪いわけではないということです。感覚は、現場の宝です。ただ、感覚のまま渡すと、相手の手の中で動かなくなります。

感覚を講座にしたいなら、感覚が働く前の部分を言葉にします。何を見て、何を聞いて、どこで手が止まるのか。感覚の入口と出口を言葉にすると、真ん中は感覚のままでも、教える形になります。

外したときに戻れる技術でないと、講座にならないのですか?

なりにくいです。外したときにどこで外したのかが分かる技術は、講座になります。

講座の受講生は、持ち帰った技術を自分の患者さんで試します。そして、必ず外します。外したときに、先生がいない場所で、自分で立て直せるかどうかが、講座の価値を決めます。

私も、セミナーやDVDにお金を使い続けた時期がありました。新しい手技を覚え、現場で試し、また今回もダメだった、これが永遠に続くのではないか、と思っていました。外れた原因が分からないと、次の手技を買うしかなくなります。

講座にする技術は、外したときの戻り先を一緒に渡せるかどうかで見ます。「ここまでは確認した、次はここを見る」と言える技術は、外しても迷子になりません。手技の数ではなく、戻る場所があること。これが第二の条件です。

自分の体質や才能に頼った技術は、教えられますか?

そのままでは難しいです。相手の体や経験が違っても動く形にできるかを見ます。

施術者の中には、手が大きい、握力がある、勘が鋭い、といった自分の資質で成立している技術があります。それは強みです。ただ、そのまま講座にすると、資質のない人には再現できません。

見分け方は簡単です。同じやり方を、経験年数の違う先生が試して、同じ方向の結果が出るかどうか。出るなら講座向きです。出ないなら、まだ資質に頼っている部分が残っています。

そういうときは、資質を使わずに同じ結果にたどり着く道を探します。強い力でやっていたことを、見る順番で置き換えられないか。手の感覚でやっていたことを、確認する質問で置き換えられないか。自分の資質を一度分解してみると、教えられる形が見つかります。

患者さんに説明できる言葉がない技術は、講座になりますか?

なりにくいです。患者さんに説明できる言葉が付いている技術は、講座の中で一番伸びます。

先に紹介した「先生、今日なんで良くなったんですかね?」という場面を思い出してください。この問いに答えられる技術は、講座の受講生も現場で使えます。答えられない技術は、受講生が現場で患者さんの前で固まってしまいます。

患者さんは、良くなったから離れるのではありません。次に来る理由を知らないから離れます。体は施術で変わりますが、通い続けるかどうかは言葉で決まります。

だから、講座にする技術には、必ず患者さんに言える一言を付けます。「今日はここが変わったので、次はここを見ます」。この一言が言える技術は、受講生の患者さんのリピートまで運びます。

詳しくは、リピートされない理由の記事にまとめています。

講座に向いているかどうかは、症例で確かめられますか?

はい。同じことを違う人に渡して、同じように変わるかを見ると分かります。

講座にできる技術には、再現性の裏づけが要ります。症状がまったく違う5人に、同じことを渡して、5人とも変わった。こういう例が並ぶと、それは偶然ではなく、見立てになります。1例なら偶然に見えますが、2例あると見立てになります。

自分の技術が講座に向いているか分からないときは、カルテや記憶から、同じ考え方で関わった患者さんを並べてみてください。症状はバラバラでも、同じ考え方で関わって変わった人が3人、4人と見つかるなら、それが講座の芯になります。

3人も並ばないなら、まだ講座の段階ではありません。それは失敗ではなく、もう少し自分の現場で試して、外して、直す時間が必要だということです。

自分の技術が講座向きかどうか、今日どう確かめればよいですか?

次の4つを、紙に書き出してみてください。書けるものが講座の芯になります。

1つ目は、順番です。その技術を使うとき、何を見て、何を聞いて、どこを触るか。順番を3つ以内で書けるかを確かめます。

2つ目は、外したときの戻り先です。うまくいかなかったとき、最初に確認することは何か。

3つ目は、他の人でも動くかどうかです。自分の資質を外しても、同じことが言えるか。

4つ目は、患者さんに言える一言です。施術のあとに、患者さんに何と伝えるか。

4つとも書けた技術は、講座にできます。1つでも書けなければ、そこが言葉にする作業の場所です。書けない技術を捨てる必要はありません。書ける部分から先に、講座の形にしていけばいいのです。

講座にできる技術は、結局何で決まるのですか?

最初の問いに戻ります。講座にできる技術と、できない技術の分かれ目は、順番のある言葉にできるかどうかです。

順番に言える。外したときに戻れる。相手の体質や才能に頼らない。患者さんに一言で伝えられる。この4つがそろう技術は、他の人の手に移せます。

感覚頼みの名人芸が悪いわけではありません。ただ、そのままでは渡せないだけです。感覚の入口と出口を言葉にすることから、始めてみてください。

まず、この3つから。自分の施術の順番を紙に書く。外したときの戻り先を1つ決める。患者さんに言う一言を考える。選ぶのは先生ご自身です。無理のない範囲で、試してみてください。

よくある質問

感覚的な技術しかなくても、講座にできますか?

できます。感覚の前後にある「何を見て、何を聞いて、どこで止まるか」を言葉にすると、教えられる形になります。感覚そのものを無理に分解する必要はありません。

手技が少ない先生は、講座に向いていませんか?

向いていないわけではありません。講座の価値は、手技の数ではなく、順番と説明の言葉にあります。手技を増やさずに結果が出た先生の例は、現場に多くあります。

講座にする技術は、何から選べばよいですか?

最初に、紙に書き出せる順番がある技術から選んでください。見る、触る、聞くといった流れで説明できるものは、講座の入口になりやすいです。

資質に頼っている技術は、あきらめるべきですか?

あきらめる必要はありません。力の強さを見る順番に、手の感覚を確認の質問に置き換えられないかを探すと、教えられる形が見つかることがあります。

症例が少ないと、講座は作れませんか?

少なくても、始められます。ただ、同じ考え方で関わって変わった患者さんが3人ほど並ぶと、講座の芯として強くなります。カルテや記憶から探してみてください。

外したときの戻り先は、どう作ればよいですか?

うまくいかなかったとき、最初に何を確認するかを1つ決めてください。そこから次に見る場所を順番に並べると、戻り先になります。

患者さんに言える一言は、どう作ればよいですか?

施術のあとに、今日どこが変わったのか、次に何を見るのかを1文で言う形です。それがあると、患者さんが通う理由を自分で説明できるようになります。

講座に向いていない技術は、使わないほうがよいですか?

使ってかまいません。講座には向かなくても、自分の現場では大切な技術です。講座に向かない部分と向く部分を分けて考えるとよいです。

教えることで、自分の施術が落ちることはありませんか?

順番を言葉にする作業は、自分の施術の見直しにもなります。むしろ、自分の手の中で曖昧だった部分が見えるようになることが多いです。

現場で使える資料は、どこで受け取れますか?

施術者向けの資料は、症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、全部で17本をまとめてお渡ししています。公式LINEからお受け取りください。

整体師・鍼灸師だけが集まっているオープンチャットもあります。現場の迷いを、同じ立場の先生と話せる場所です。

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この記事は施術者の方に向けたものです。体の症状で困っている方は、医療機関にご相談ください。

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