整体師が教える側になって最初にやったこと|手技を教える前に決めた3つのこと

手技は増えた。それなのに、1人にかける時間は延びていく。予約表どおりに終わらず、夜はいつも疲れ切って帰る。私が教えた開業5年目の先生が、最初に話してくれた毎日です。

技術が足りないのではありません。持っている手を、どの順番で使うのかが決まっていない。その状態でした。

結論を先に言います。教える側になって最初にやることは、教材づくりでも集客でもありません。自分の手が、何を、どの順番で見ているのかを言葉にすることです。手技を渡す前に、見る順番を渡す。私はこの順番で、教える仕事を始めました。

この記事では、私が教える側に回ったときに最初に決めた3つのことと、教えた先生たちに最初に渡したものを、できるだけそのまま書きます。

体の症状で困っている方は、まず医療機関にご相談ください。この記事は施術者の方に向けたものです。

教える側になって、最初にやることは何ですか?

最初にやることは、教える内容を決めることではなく、自分の見立ての順番を一度、紙に書き出すことです。

私は25,000人の患者さんに、のべ11万回の施術をしてきました。それでも、いざ人に教えようとすると、自分が何をしているのかを説明できませんでした。手は動く。結果も出る。けれど「なぜ、今そこに触ったのですか」と聞かれると、言葉が出てこない。

これは、教える側になる前の先生にも、そのまま起こります。技術があることと、教えられることは別の力です。

だから最初の作業は、地味です。ベッドの横で自分が何を見て、何を聞いて、どこに触ったのかを、施術の順に書き出す。きれいな文章にしなくていい。箇条書きの走り書きで十分です。

書き出してみると、自分でも気づかなかった癖が見えてきます。必ず最初に見ている場所。いつの間にか飛ばしている確認。ここが、教える内容の芯になります。

なぜ、手技より先に「見る順番」を渡すのですか?

手技は、使う場面が決まっていないと現場で使われなくなるからです。

習った手技が、現場で使われないまま眠ってしまう。これは先生の努力不足ではありません。手技は点で、現場は線だからです。患者さんが入ってきてから帰るまでの流れの中で、どこで何を選ぶのか。その線がないと、点はいつまでも点のままです。

私が教えた先生たちを見ていると、最初に渡したものは3人とも手技ではありませんでした。

  • 開業3年目の先生には、元に戻る理由の説明と、戻らないためのセルフケアの伝え方
  • 開業2年目の先生には、同じ腰の痛みでも結果が分かれる原因のパターン
  • 開業5年目の先生には、見る、触る、聞く、の順番

3人とも、手技は増やしていません。渡したのは全部、見る順番と説明の仕方でした。

5年目の先生は、教える前は手技が増えるほど施術時間が延び、夜はいつも疲れ切って帰っていたそうです。見る順番が決まってからは、予約表どおりに終わり、夜も元気に帰れるようになりました。手を増やすのではなく、迷いを減らす。教える側の仕事は、ここにあります。

最初に決めた1つ目は、何でしたか?

1つ目は、受講する先生が「明日の現場で何を変えるのか」を1つだけ決めることでした。

教える側になると、全部伝えたくなります。20年かけて積み上げたものを、半日で渡したくなる。私も最初はそうでした。けれど、全部を渡そうとするほど、受け取る側は何も持ち帰れません。習った内容が多いと、先生は「全部やらなきゃ」と構えてしまい、結局、何もやらなくなります。

そこで、1回の講義で持ち帰るものを1つに絞りました。たとえば「初回の問診で、睡眠の時間だけは必ず聞く」。それだけです。小さすぎると思うかもしれません。けれど、翌日の現場で本当に使われるのは、この小ささです。

絞ると、教える側も楽になります。残りの内容は、次の回の材料になる。1つ渡して、現場で使ってもらって、戻ってきた感想から次を決める。この往復が、教える仕事の土台でした。

2つ目に決めたことは、何でしたか?

2つ目は、教える前に、自分が先にやってみて実感することでした。

私は昔、セルフケアを何もしていない施術者でした。強く押す整骨院で毎日たくさんの患者さんを押し続け、先輩には「壊れてからが勝負」と言われ、そのときは何も感じませんでした。体が壊れると分かって、その職場を離れました。

あとになって、自分でセルフケアを始めました。続けて、変わって、初めて言えるようになりました。患者さんにも、受講生にも、「私もやってみて、こうなりました」と。実感のない言葉は、相手の生活に1ミリも入っていきません。

教える側がやっていないことを、教えない。これは、私がいちばん大事にしている線です。

ただし、昔の自分を否定はしていません。最初の頃に無心で押し続けた時間が、いまの手をつくっています。若い先生に「押すな」とは言いません。あの時期にも意味があった、と言える人のほうが、教える側として信用されると思っています。

3つ目に決めたことは、何でしたか?

3つ目は、教える目的を「自分が稼ぐため」ではなく「全国の患者さんが困らないため」に置くことでした。

私が講師を始めた理由は、はっきりしています。自分1人で救えるのは、通える範囲の地域の方だけ。でも講師になれば、全国の先生の力になれて、救える人がもっと増える。これが動機です。

この目的が決まっていると、迷ったときの判断が楽になります。受講生が集まらない時期でも、内容を派手にする必要がない。目立つ言葉を足すより、受け取った先生の現場が変わったかどうかを見ればいい。

目的が収入に寄りすぎると、教える内容が「売れるもの」に引っ張られます。売れるものと、現場で役に立つものは、必ずしも同じではありません。私は、役に立つほうを選ぶと決めました。

教えた先生たちには、最初に何が起きましたか?

最初に起きたのは、技術の変化ではなく、迷いが減ったことでした。

開業3年目の先生は、その日は良くなるのにすぐ戻ってしまう、という悩みを持っていました。戻る理由を説明し、セルフケアの伝え方を整えると、戻ることがかなり減り、手応えが出てリピートが増えました。

開業2年目の先生は、同じ腰の痛みでも良くなる人とそうでない人が分からない、という状態でした。原因のパターンを渡すと、どのタイプの腰痛かを理解して結果が出るようになり、口コミが増えました。

3人に共通していたのは、手技を新しく覚えたのではないことです。すでに持っている手を、どの順番で使うか。それだけが変わりました。

教える側として、これほどうれしいことはありません。新しい道具を渡すより、持っている道具の置き場所を整える。その作業が、先生の毎日を静かに変えていきました。

教える側になって、最初にやってはいけないことは何ですか?

最初にやってはいけないのは、完成した教材を作り込んでから、人に見せることです。

資料を整えるのに半年かけて、いざ出したら現場とずれていた。これは避けたい失敗です。教材は、教えながら育てるものです。最初は走り書きの1枚で十分。受講生の反応を見て、直す。

もう1つは、受講生を責めないことです。課題をやってこなかったときに、やる気がないと決めつけない。やってこられなかった理由には、たいてい、課題が大きすぎる、使う場面が見えない、という教える側の問題が隠れています。

そして、完璧に話そうとしないこと。話が整っていなくても、現場の場面が1つあれば、先生たちはちゃんと持ち帰ってくれます。

教える側になると、自分の施術はどう変わりますか?

自分の施術が、前より迷わなくなります。人に説明するために順番を言葉にすると、自分の手の中の曖昧な部分が見えてくるからです。

教える前の私は、うまくいった日もうまくいかなかった日も、理由を深く考えていませんでした。教える立場になると、そうはいきません。なぜその順番なのか、なぜそこを先に見たのかを、聞かれて答える必要があります。答えられないところは、自分の見立ての穴です。

穴が見つかると、次の患者さんで確認するものが1つ増えます。それが施術の精度になって、また教える材料に戻ってくる。教える側に回ると、この循環が自然に回りはじめます。

もう1つ、変わったことがあります。患者さんへの説明が、短く、はっきりしてきたことです。受講生に伝わる言葉は、患者さんにも伝わります。教えることは、人のためだけではなく、自分の現場を整える作業でもありました。

今日から、手持ちでできる最初の一歩は何ですか?

今日できるのは、今日の最後の患者さんの施術を、順番に紙へ書き出すことです。

見たこと、聞いたこと、触った場所。5分で足ります。きれいに書く必要はありません。それを3日分ためて並べると、自分の見立ての癖が見えてきます。

そこから、1つだけ選んでください。「睡眠を必ず聞く」「最初に呼吸を見る」など、小さなもので構いません。それを、誰かに説明してみる。同僚でも、家族でもいい。説明の途中で詰まったところが、あなたが次に言葉にするべき場所です。

教える側になるのは、特別な人ではありません。自分の手の中を、少しずつ言葉にしてきた人です。

もう1つ、見る順番の考え方は、見立ての順番の記事にもまとめています。教える内容を並べるときの参考にしてください。

よくある質問

教える側になるのに、資格や実績は必要ですか?

資格は必須ではありません。実績よりも、自分の見立ての順番を言葉にできているかのほうが大切です。

最初の受講生は、どう集めればよいですか?

まずは身近な同業の先生1人に、無料で自分の見立てを説明してみるところからで十分です。人数を集めるのは、そのあとです。

教える内容は、何を基準に選べばよいですか?

自分が現場でいちばん多く使っている確認を選んでください。最も使うものが、最も説明に力が出ます。

自分の技術を教えたら、患者さんが減りませんか?

私の経験では、減りませんでした。教えるために自分の施術を言葉にすると、自分の施術がより安定します。

教えるのが苦手でも、続けられますか?

話の上手さより、現場の場面を1つ持っているかが大切です。うまく話せなくても、場面があれば先生は持ち帰ります。

受講生が課題をやってこないときは、どうすればよいですか?

責める前に、課題が大きすぎないかを見直してください。持ち帰るものを1つに絞ると、続けられる人が増えます。

教材は、どこまで作り込んでから始めるべきですか?

走り書きの1枚で始めて構いません。教えながら直していくほうが、現場に合ったものになります。

無料の勉強会から始めてもよいですか?

始めてよいと思います。ただし、1回で持ち帰るものを1つに絞ってください。無料でも、現場で使われなければ意味が薄くなります。

教える側として、いちばん気をつけることは何ですか?

効果を保証するような言い方をしないこと、そして自分がやっていないことを教えないことです。

教えた内容が現場で使われているかは、どう確認すればよいですか?

次の回の最初に、「前回の1つを使ってみてどうでしたか」と聞いてください。戻ってきた言葉が、次の材料になります。

現場で使える資料は、どこで受け取れますか?

施術者向けの資料は、症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、全部で17本をまとめてお渡ししています。公式LINEからお受け取りください。

整体師・鍼灸師だけが集まっているオープンチャットもあります。現場の迷いを、同じ立場の先生と話せる場所です。

見立ての考え方は、メルマガ見立てだよりでも毎週お届けしています。

この記事は施術者の方に向けたものです。体の症状で困っている方は、医療機関にご相談ください。

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