単発から回数券に切り替える時期は、回数ではなく「2回目の言葉」で決めます

2回目の来院で、ベッドに腰かけた患者さんに聞きます。「前回のあと、どんな感じでしたか」。

ここで返ってくる言葉を、私はいちばん大事にしています。「楽でした」だけで終わる人もいれば、「2日目の夜から少し戻りました」と、自分の体の動きを話してくれる人もいます。実は、回数券を案内していいかどうかは、この返事でほとんど決まります。

回数券を出す時期を、初回の最後にするのか、3回目にするのか、もっと先にするのか。迷う先生は多いと思います。この記事では、切り替えの時期を日付や回数で決めず、患者さんの言葉と体の動きで決める方法を書きます。

単発から回数券に切り替える時期は、何で決めればいいですか

患者さんが「自分の体の動き方」を言葉にできたかどうかで決めます。

初回から何回目、と数字で決めると、必ずずれます。1回で大きく動く人もいれば、4回通ってやっと戻り方の型が見える人もいるからです。数字で決めた切り替えは、患者さんの納得より先に、こちらの都合が顔を出します。

私が見ているのは、次の3つです。

1. 前回の施術のあと、どう戻ったかを本人が自分の言葉で話せる
2. 戻りの速さが、初回より少し遅くなっている
3. 「次はいつ来ればいいですか」と、本人から聞いてくる

3つ揃わなくても構いません。1つ目だけでも出ていれば、案内の入口には立てています。逆に、どれも出ていない段階で回数券を出すと、買ってもらえても、続きません。その理由はあとで書きます。

初回の最後に回数券を出すのは、早すぎるのですか

早すぎることが多いです。ただし、禁止ではありません。

初回の最後に出して、うまくいく院もあります。その場合は、施術の前後で患者さんが変化を確かめていて、来院した体が「悪い方で安定していた」という説明まで終わっています。ここまで届いていれば、初回でも案内が納得に変わります。

届いていないまま、会計の場面で回数券を出すとどうなるか。患者さんは「体の話」から「お金の話」へ急に引き戻されます。構えます。そして「考えておきます」と言って帰ります。この断りの言葉の読み方は、見立ての順番の考え方とも重なります。体の見立てが先、案内が後です。

初回は、変化を本人に確かめてもらうこと。通う理由の種をひとつ渡すこと。ここまでで十分です。回数券は、その種が芽を出してから出す道具です。

2回目の来院では、何を確かめればいいですか

前回の施術のあとに、体がどう動いたかを聞き、その速さを一緒に見ます。

2回目は、回数券の案内をする日ではありません。確認する日です。聞くことは、実は2つだけです。

1. 前回のあと、いつまで楽だったか
2. どのあたりから、どんなふうに戻ったか

患者さんの答えを、メモに残します。数日持った人は、体が良い方へ動きやすい状態にいます。当日の夜から戻った人は、まだ悪い方の安定が強い状態です。どちらが良い悪いではありません。今の位置が分かった、ということが収穫です。

私の院で来院の間隔を決めるときも、この聞き取りがもとになっています。行動して、結果を見て、修正して、また行動する。この輪が回る速さで、通院の間隔を決めているのです。回数が先にあるのではありません。輪の速さが先にあります。

戻り方を聞いたあとに、どう案内につなげればいいですか

「戻るのは失敗ではありません」と先に伝え、そのうえで間隔の話に入ります。

来院したときの体は、悪い方で安定しています。不安定なのではなく、悪いところで固まっています。施術をすると良い方へ動きますが、最初は戻りやすい。戻るのは失敗ではなく、元の安定に引っぱられているだけです。

そして、ベストの状態を10としたときに、7割くらいまで上がると、体は自分で良い方へ行こうとします。だから、まず7割まで持っていく。週に1回なら、そんなに戻らずに進めます。

私はこの話を、表を見せながら伝えています。口で言うだけでなく、目で見えるようにする。すると、回数だけを言ったときには「こちらの都合」に聞こえていた週1回が、7割へ行くための手段に変わります。

この説明が終わった段階で、はじめて回数券の話をします。「このペースで通っていただくなら、まとめてのほうがご負担が軽くなります」。この一言なら、押し売りには聞こえません。間隔の見通しを渡したあとに、その間隔を支える形として出すからです。

回数券を案内してはいけない患者さんはいますか

いるというより、案内の順番を変えたほうがいい場面があります。

次のような場面です。

  • 前回の施術のあとの様子を聞いても、「特に」としか返ってこない
  • 表を見せても、今の位置に関心が向かない
  • 来院の目的が、その日の痛みを消すことだけに寄っている

こういうときに案内を急ぐと、患者さんの側で「効いているか」より「元を取れているか」の計算が始まります。少し戻った週に、疑いが出ます。やっぱり意味がなかったのかも、と。

案内を急がない代わりに、もう少し単発のまま通ってもらいます。そのあいだに、前回のあとの様子を毎回聞きます。聞かれることに慣れた患者さんは、次第に自分の体の動きを話し始めます。話し始めた日が、切り替えの日です。

単発のまま長く通ってもらうのは、いけないことですか

いけなくありません。ただし、単発のままでいい理由を、こちらがはっきり持っておく必要があります。

単発で通う患者さんには、毎回自分で来る決断をする自由があります。それは悪いことではありません。気になるのは、先生が決めきれずに、なんとなく単発のままになっている場合です。

患者さんの側から見ると、先生がペースを示してくれないので、通う間隔を自分で測るしかなくなります。痛みがひどくなってから来る。戻ってから来る。すると、いつまでも悪い方の安定から抜けられず、先生も「この人は変わらない」と感じ始めます。腕の問題に見えて、実は間隔の問題だった、ということが現場ではよくあります。

迷っているうちに、時間だけが過ぎていく。これがいちばんもったいないところです。切り替えを急ぐ必要はありません。けれど、決めずに流してしまうのも、患者さんの変わるチャンスを遠ざけます。

回数券に切り替えた後、通院が途切れるのはなぜですか

買った時点では、通う理由がまだ患者さん自身の言葉になっていないからです。

回数券は売れた。でも、期限が近づいても残りが減らない。この相談は、本当に多いです。

買った時点で、患者さんの中にある通う理由が「先生に勧められたから」だと、少しでも戻った週に揺らぎます。「やっぱり意味がなかったのかも」と疑いが出て、足が遠のきます。

ここで効くのが、先ほどの2回目の言葉です。前回のあと、自分の体がどう動いたか。それを自分の口で話せる人は、通う理由を人に説明できます。理由を自分の言葉で持っている人は、回数券を使い切る前にやめません。

切り替えの前に、患者さんの現在地を言葉にしてもらう。これが、回数券を買ったあとの通院を支えます。

値引きや特典で、切り替えを後押ししてもいいですか

後押しは構いませんが、決め手にしないほうがいいです。

「今日だけ」「今決めたら」と急がせると、患者さんは決める立場から、決めさせられる立場に回ります。決めさせられた人は続かず、自分で決めた人は続きます。

私は開業したばかりの頃、回数券を作って患者さんを縛ろうとして、揉めた経験があります。縛るほど、足は離れていきました。上手くやろうとしないで、経験を先に積む。いまは、そう考えるようになりました。

特典をつけるなら、こういう形がいいと思います。回数券を使うと、間隔を空けたときに戻りにくくなる。その分、先生の側も見立てを深める時間が持てる。患者さんの変化に対して、院が約束できることが増える。値引きではなく、約束の中身を増やすのです。

開業したてで症例が少ないとき、切り替えの判断は難しくないですか

症例の数より、目の前の1人の戻り方を丁寧に見ているかどうかのほうが大切です。

症例が少ないと、「この症状は何回で動くか」を言えなくて不安になります。けれど、回数を言い切る必要はありません。言い切れないことを言い切ろうとするから、声が小さくなります。

約束できるのは、見通しです。「今の調子がどれくらい持つか、次回、一緒に見てみましょう」。この一言は、症例が少なくても迷わず言えます。そして、次回の戻り方を聞けば、その人の型が少しずつ見えてきます。

その型が見えた日が、切り替えのタイミングです。経験は数ではなく、1人ずつの観察で貯まっていきます。

切り替えのタイミングを、今日から見極めるにはどうすればいいですか

次の3つだけ、始めてみてください。

1. 2回目の来院で、前回のあとの様子を聞く
2. 答えをメモして、戻りの速さを初回と比べる
3. 自分の体の動きを言葉にできた日に、間隔の話から入る

数日つけるだけで、案内していい患者さんと、まだ待ったほうがいい患者さんが分かれてきます。そのうえで、案内するときは回数より先に、位置と間隔を渡す。この順番だけ守れば、切り替えの失敗はかなり減ります。

技術は十分にある先生ほど、会計の場面だけ開業初日のまま止まっていることがあります。患者さんの言葉を聞く時間を、施術の一部として組み込んでみてください。切り替えの時期は、患者さんが教えてくれます。

よくある質問

単発から回数券に切り替えるのは、何回目の来院がいいですか?

回数では決めません。前回の施術のあとの様子を、患者さんが自分の言葉で話せたときが目安です。早い人は2回目、時間のかかる人は4回目以降になることもあります。

初回の最後に回数券を案内してはいけませんか?

禁止ではありません。ただし、施術の前後で変化を確かめてもらい、来院した体が悪い方で安定していたことを説明し終えていることが前提です。そこまで届いていない段階では、会計の場面で急にお金の話になり、構えられやすくなります。

患者さんが「考えておきます」と言ったら、どうすればいいですか?

その日は引いて構いません。次回、前回のあとの様子を聞いてから、もう一度だけ案内します。同じ内容を押すのは、1回か2回までにしておくと、関係が重くなりません。

回数券を買ってもらったのに、通わなくなる人にはどう対応しますか?

責めずに、前回のあとの様子を聞く連絡から入ります。通う理由が患者さん自身の言葉になっていない可能性が高いので、今の位置をもう一度一緒に確認してください。

値引きや期間限定で、切り替えを促してもいいですか?

おすすめしません。急がせると、患者さんは決める立場から、決めさせられる立場になります。続くのは自分で決めた人のほうなので、約束の中身を増やす形で特典をつけるほうが長く続きます。

症例が少なく、何回で動くか言い切れません。どう案内しますか?

回数は言い切らなくて大丈夫です。約束できるのは、次回までの見通しです。「今の調子がどれくらい持つか、一緒に見ましょう」と伝え、戻り方を見ながら間隔を調整してください。

1回で大きく変わった患者さんにも、間隔の話は必要ですか?

必要です。大きく変わった人ほど「もう大丈夫」と思いやすく、状態が安定する前に元へ戻りやすいからです。変化が大きいほど、説明を省かないようにしています。

単発のまま通い続ける患者さんは、そのままでもいいですか?

患者さん本人が納得していて、戻りの様子も落ち着いているなら、そのままで構いません。気をつけたいのは、痛みが強くなってから来る形が続いている場合です。間隔の見通しを一度は示してあげてください。

医療機関に通っている患者さんにも、同じ案内をしてよいですか?

使えます。ただし、急な痛みの悪化や、原因の分からない症状があるときは、先に医療機関での受診をすすめてください。そのうえで、通院と並行して来院のペースを相談する形にします。

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この記事は施術者向けに書いたものです。体の症状でお困りの方は、まず医療機関を受診してください。

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