整体師のオンライン講座は作れる?|手技は映らなくても、見立ての順番は画面越しに届きます

「先生、私、今日なんでこれが良くなったんですかね?」

施術が終わってベッドに座った患者さんに、そう聞かれたことがあります。手はまだ温かいのに、口が止まる。自分では分かっているつもりなのに、説明の言葉が出てきません。

あの沈黙の中に、オンライン講座を作れるかどうかの答えがほとんど入っています。画面越しで手技は映りません。それでも、あの場面で先生の頭の中に起きていたことは、画面越しに渡せます。

結論を先に言います。施術家でもオンライン講座は作れます。ただし、作るのは手技の講座ではありません。見る順番と、外したときの直し方の講座です。この記事では、私が画面越しに教えてきた経験から、何が届いて何が届かないのかを、そのまま書きます。

体の症状で困っている方は、まず医療機関にご相談ください。この記事は施術者の方に向けたものです。

施術家でもオンライン講座は作れますか?

作れます。ただし、手技そのものではなく、見立ての順番を中身にするなら、です。

私は柔道整復師、鍼灸師、自律神経整体の施術者として、25,000人の患者さんに、のべ11万回の施術をしてきました。全国で技術セミナーの講師もしてきました。いまはオンラインでも先生方に教えています。

最初は、私も疑っていました。手は画面に映らない。圧の深さも、触れたときの組織の感じも、カメラ越しでは伝わりません。そんなものを教えられるのかと。

やってみて分かったのは、画面越しでも届くものが、はっきりあるということです。

届くのは、次のようなものです。問診で何を聞くか、その順番。聞いた話から何を捨てて何を残すか。施術後に患者さんへ何と説明するか。次の来院までに何を確かめてもらうか。つまり、手を動かす前と後の、頭と口の仕事です。

届かないのは、指先の感覚です。ここは正直に言います。オンラインだけで手の感覚まで渡そうとすると、嘘になります。

だから、作れるかどうかの分かれ目は、先生の腕前ではありません。何を講座の中身にするかを、正しく選べるかどうかです。

オンラインで教えられるもの、教えられないものは何ですか?

教えられるのは頭と言葉の部分、教えられないのは指先の感覚の部分です。

整理すると、こうなります。

画面越しで教えられるもの。
問診の順番。患者さんの話の引き算のしかた。見立ての筋道。患者さんへの説明の言葉。セルフケアの伝え方。来院間隔の話し方。外したときに戻る場所。

画面越しでは教えにくいもの。
圧の加減。組織の硬さの読み取り。手を置く角度や、微妙な力の抜き方。

教えにくいものは、無理にオンラインへ載せず、対面の機会に回します。あるいは、講座の外に出します。全部をオンラインで完結させようとすると、受講する先生にも、教える先生にも、無理が出ます。

私が教えた先生の中に、開業5年目の方がいました。手技は増えているのに結果が出ず、施術時間が長くなって、夜はいつも疲れ切っていた方です。この方に渡したのは、新しい手技ではありません。見立てです。その結果、予約表どおりに施術を終えて、夜も元気に帰れるようになりました。

これはオンラインで渡せた部分です。手技は何ひとつ足していません。

画面越しで、本当に伝わるのでしょうか?

伝わります。私が実際に見た場面があります。

オンラインのセミナーを受けたある先生が、面談でこう話してくれました。この順番で聞いているんだ、というのがとても分かりやすかった。それを、いま診ている患者さんにそのまま当てはめてみた。繰り返し出てくる言葉をまとめて、心と感情と体と構造をつなげて見ていく。やっと、それが分かった、と。

この先生は、手技を新しく習ったわけではありません。画面越しに、私の頭の中の順番を見ただけです。それが、次の日の自分の院での見方を変えました。

もうひとつ、別の先生の場面です。Zoomの操作に不慣れで、面談の接続に手間取り、始まるまでに時間がかかりました。それでも、話し始めたら、聞くことは全部聞けました。機械が苦手でも、中身は届くのです。

ここで大事なのは、講座の形ではなく、中身の置き場所です。手の感覚に頼らない中身なら、画面越しでも、時間をおいても、届き方はあまり変わりません。

講座にするとき、いちばん最初にやることは何ですか?

最初にやることは、自分が外した症例を書き出すことです。

講座の中身は、成功例ではなく、失敗から作ります。どの患者さんで外したか。どこで見る順番を間違えたか。そのあと何を変えたか。外した経験のほうが、詰まっている先生に渡せる価値が大きいからです。

私にも、うまくいかなかった症例があります。正論は言えたのに、その方の生活を1ミリも動かせなかった。伝え方が足りなかった。そこで初めて、問題は腕ではなく言葉だと気づきました。こういう記録が、そのまま講座の1回分になります。

書き出すときは、完璧にまとめようとしないでください。次の3つだけで十分です。

どんな患者さんだったか(特定されない程度に)。
自分は何を見て、何をしたか。
どこで外れたと分かったか。

これを10例、並べてみてください。同じところで外している自分が見えてきます。それが、あなたの講座の芯です。

症例は何例そろえば、講座になりますか?

2例そろえば、偶然ではなく見立てになります。

1例だけなら、たまたまに見えます。入口の症状が違うのに、同じことを渡して変わった方が2人いる。そうなったときに初めて、人に説明できる形になります。

私自身、自分の記録を見返して気づいたことがあります。症状は違うのに、決め手が同じだった例がいくつもありました。腰痛でも不眠でも、決め手になったのは、その方が自分で口にした一言でした。そこに気づいてから、教える内容が一本の筋になりました。

ここで焦って、20例も30例も集めなくて構いません。大切なのは数ではなく、並べたときに共通点が見えるかどうかです。

講座の形は、動画とライブのどちらがよいですか?

最初はライブのほうが向いています。受講する先生の詰まりが、その場で見えるからです。

録画した動画は、あとからいつでも見られて便利です。ただ、最初に動画から作ると、誰がどこで詰まるのかが分からないまま、思い込みで作ることになります。

ライブなら、質問が出ます。質問は、先生方がどこで引っかかるかの地図です。何回かライブをやって、同じ質問が繰り返し出たところが、動画にして残すべき部分です。

順番としては、次の流れがおすすめです。少人数のライブで教える。質問を記録する。同じ質問が出た部分を、短い動画やテキストにする。ここで初めて、いつでも見られる形に整える。

最初から立派な教材を作らなくて構いません。

オンラインでは、何を気をつければいいですか?

気をつけるのは、受講する先生が手を動かさないまま終わらないようにすることです。

画面越しで聞いて分かった気になるのは、いちばん危ない状態です。聞いただけでは、現場は変わりません。身銭を切って、自分の患者さんで外して直した人だけが、パターンとして身につけます。

だから講座には、必ず宿題を入れます。重い宿題ではなく、次の来院でひとつだけ確かめてもらう形が続きます。

たとえば、こんな具合です。次の問診で、いつもの質問をひとつ減らしてみる。施術後の説明を、一文だけ変えてみる。その結果、患者さんの顔がどう変わったかを記録して、次回の講座で持ってきてもらう。

小さな宿題でも、現場に持ち込んだ人は変わります。持ち込まなかった人は、聞いた話が頭に残るだけです。

もうひとつ、注意点があります。講座のために、受講生さんの患者さんの情報を出してもらうときは、特定されない形にすることを最初に決めておいてください。ここは信頼の土台です。

失敗が多い先生が、教えてもよいのですか?

教えてよいです。外した経験を話せる人のほうが、教える側に向いています。

ずっと勝ち続けてきた人には、詰まっている先生の気持ちが分かりません。外して、困って、直した経験のある人にしか、渡せないものがあります。

私の好きな言葉は、一勝九敗です。九回外した経験は、講座の中身として、成功した一回より役に立ちます。

反対に、避けたほうがよいことがあります。不安を埋めるために講座を始めること。それから、他の先生や業界を批判して注目を集めること。前者は自分の不安を受講する先生に渡してしまいますし、後者は信頼を失います。

教える理由は、自分の中にひとつあれば足ります。私の場合は、目の前の地域の方しか診られないことに気づいたからでした。全国の先生の力になれれば、私が診られない土地の方も楽になっていきます。それが、教える側に回った理由です。

オンライン講座を作る前に、整えておくことはありますか?

整えておくのは、自分の見立てを言葉にする習慣です。機材や配信の準備は、そのあとで足ります。

多くの先生が、まず機材を揃えようとします。マイクを選び、画面共有の方法を調べ、背景を整える。でも、それは後回しで大丈夫です。スマートフォンひとつでも、中身が届けば講座は成り立ちます。

先に整えるのは、次の3つです。

日々の施術で、自分の判断の理由を言葉にしておくこと。
症例を2例以上並べて、共通点を見つけておくこと。
教えた相手が現場で結果を出したかを、確かめる姿勢を持つこと。

3つめがいちばん大切です。自分の手で出る結果と、人の手で出る結果は別のものだからです。講座を出して終わりにせず、受講した先生の現場がどう変わったかを見て、中身を直し続けてください。

見る順番の考え方は、見立ての順番の記事に詳しく書いています。講座の芯を作るときの参考になります。

オンラインで教えるのは、どんな人に向いていますか?

向いているのは、現場で外した経験を言葉にできる先生です。技術の高さや肩書きは、決め手ではありません。

向いている先生の特徴を並べます。

自分の失敗を、順を追って話せる。
うまくいった理由を、手技以外の言葉で説明できる。
教える相手の現場が変わることに、興味がある。
自分が教えた中身が間違っていたら、直せる。

反対に、向いていないとまでは言いませんが、準備が必要なのは、自分の見立てをまだ言葉にしたことがない先生です。この場合は、いきなり講座を作るより、まず発信で言葉にしてみるのが近道です。ブログやSNSで症例の見立てを書く習慣が、そのまま講座の下書きになります。

よくある質問

施術家が、いきなりオンライン講座を作っても大丈夫ですか?

大丈夫です。ただし、最初から大きく作らず、少人数のライブから始めることをおすすめします。受講した先生の質問が、講座の改善点を教えてくれます。

手技が画面越しに映らなくて、教えにくくありませんか?

手技の感覚は教えにくいです。そのため、オンラインでは問診の順番、見立ての筋道、説明の言葉など、頭と言葉の部分を中心にします。指先の感覚が必要な部分は、対面の機会に回すのがよいでしょう。

症例が少ないのですが、講座を作れますか?

2例そろえば、共通点が見えてきます。数よりも、並べたときに同じ筋が見えるかどうかが大事です。今ある記録を見返すところから始めてください。

動画講座とライブ講座、どちらから始めるべきですか?

ライブからがおすすめです。質問が出ることで、受講する先生がどこで詰まるかが分かります。同じ質問が繰り返し出た部分を、あとから動画にすると無駄が出ません。

機材が苦手でも、オンラインで教えられますか?

教えられます。スマートフォンひとつでも、中身が届けば講座は成り立ちます。受講する先生の側に機械が苦手な方がいても、話し始めたら中身は届きます。機材は後回しで構いません。

患者さんの情報を、講座で使ってもいいですか?

特定される情報は出さないでください。名前や地域、院名は出さず、経過や見立てだけを一般化して使います。これは受講する先生にも同じ約束をしてもらうと、信頼の土台になります。

失敗した症例ばかり話すと、信用を失いませんか?

むしろ逆です。外した経験を話せる人のほうが、詰まっている先生に信頼されます。成功例だけが並ぶ講座は、現場で詰まっている人には遠く感じられます。

受講した先生が、現場で結果を出せないときはどうしたらよいですか?

講座の中身を見直すサインです。受講した先生の患者さんでどこが外れたかを聞き、自分の教え方のどこが足りなかったかを探してください。自分の手で出る結果と、人の手で出る結果は別のものだからです。

講座を作る前に、まず発信を始めたほうがよいですか?

自分の見立てをまだ言葉にしていない場合は、先に発信で言葉にするのが近道です。症例のパターンを3、4行で書く習慣が、そのまま講座の下書きになります。

先生同士で見立てを確かめ合える場所はありますか?

私は、現場で使う資料をまとめて渡しています。症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、全部で17本あります。講座を作る前の、自分の手持ちを棚卸しする材料としても使えます。

整体師・鍼灸師だけが集まっているオープンチャットもあります。現場で詰まったことを、そこで気軽に相談できます。資料の受け取りは公式LINEからどうぞ。

週に1回、見立ての考え方を届けるメルマガ見立てだよりも用意しています。

この記事は施術者の方に向けたものです。体の症状でお困りの方は、まず医療機関にご相談ください。

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