リラクの現場で症状を聞かれて答えられない|誠実に伝える範囲と、次回につなげる言葉

施術が終わって、お客様が起き上がります。靴下をはきながら、ふっと聞かれます。

「この右手のしびれ、何だと思います?」

先生の手が止まります。診断はできない立場です。でも、黙ってしまうのも、はぐらかすのも、違う気がする。笑ってごまかしたあと、帰り道で「あの答え方でよかったのかな」と、ずっと引きずる。

こういう夜に、リラクゼーションの現場で働く先生が検索窓に打つのは、「リラク 症状 聞かれる」「お客様 症状 答えられない」のような言葉だと思います。

結論を先に言います。症状を聞かれて答えられないのは、先生の力不足ではありません。立場の違いから生まれる、ごく自然な迷いです。そして、答えない誠実さと、渡せる範囲の言葉を分けて持っておけば、その迷いは次回につながる信頼に変わります。

この記事は、リラクゼーションや癒しの現場で施術をしている先生、症状の相談を受けて立場に迷っている先生に向けて書いています。私は柔道整復師と鍼灸師の両方の資格を持っています。20年の施術のなかで、25,000人の患者さんと、のべ11万回の施術に向き合ってきました。その現場での見聞と、セミナーの先生方から寄せられた声をもとに書きます。

体の症状で困っている方は、まず医療機関にご相談ください。この記事は施術者の方に向けたものです。

症状を聞かれたとき、答えられないのは先生の力不足ですか?

力不足ではありません。立場上、答えられる範囲が決まっているだけです。

リラクゼーションの施術は、体の不調を診断したり、症状の原因を断定したりする場ではありません。お客様もそれは薄々分かっています。それでも聞かれるのは、先生の手が一番体に近いところにいて、「この人なら何か分かるかもしれない」と思われているからです。

聞かれることは、信頼されている証拠です。ただ、その信頼に対して、診断で応えようとすると、背負えないものを背負うことになります。

セミナーで教えているある先生は、リラクの整体で働いていて、こんなふうに話してくれました。リラクの立場だと、答え方を背負えないものまで背負うことになる。だから、お客様のことを真剣に考えるなら、医療機関の受診を勧めることも、あらゆる面で誠実な対応だと思って行動している。そして、それは次回につながる行動でもあると思う、と。

私はこの言葉がとても的確だと思いました。答えられないことを恥じる必要はありません。立場を踏まえて誠実に動くことが、そのまま先生の仕事の質になります。

症状を聞かれたとき、先生の頭の中では何が起きていますか?

答えなければという焦りと、間違ったことは言えないという怖さが、同時に走っています。

ベッドの横で手が止まるとき、頭の中ではだいたい三つのことが同時に動いています。

一つ目は、「ここで何か言わないと、頼りない人だと思われる」という焦り。
二つ目は、「間違ったことを言って、受診が遅れたらどうしよう」という怖さ。
三つ目は、「でも、せっかく聞いてくれたのに、冷たく突き放したくない」という優しさ。

この三つがぶつかると、人は無難な言葉に逃げます。「疲れが溜まっているのかもしれませんね」「ストレスですかね」。どれも間違いではないのですが、お客様の不安には届きません。そして先生自身にも、「ごまかした」という後味が残ります。

ここで大切なのは、焦りを消すことではありません。三つの気持ちを、そのまま言葉の順番に並べ替えることです。優しさを先に、怖さを真ん中に、焦りは最後に手放す。次の項目から、その順番を具体的に見ていきます。

答えない誠実さとは、具体的にどういう対応ですか?

分からないことを分からないと言い、断定しないことです。

答えない誠実さは、冷たい対応とは違います。むしろ逆です。

たとえば、こんな言い方があります。
「しびれの原因は、私の立場では特定できません。でも、気になっていることはきちんと受け止めました。」

この一言には、三つのことが入っています。できないことの線引き、気になっているという気持ちの受け止め、そして逃げていないという姿勢です。

やってはいけないのは、次の三つです。

一つ目は、原因を言い当てること。「それは坐骨神経が圧迫されているんですよ」のように断定すると、診断行為に近づきます。間違っていた場合の責任も取れません。

二つ目は、大丈夫だと請け合うこと。「たぶん大丈夫ですよ」は、優しさのつもりでも、受診の機会を遠ざけます。

三つ目は、話を流すこと。聞かなかったことにするのが、一番お客様の信頼を削ります。

答えないことと、聞かないことは違います。聞いて、受け止めて、断定しない。この三つがそろえば、答えなくても誠実です。

「医療機関に行ってください」は、冷たい突き放しになりませんか?

言い方と順番を整えれば、突き放しにはなりません。むしろ、一番誠実な対応の一つです。

受診を勧めると、お客様が離れてしまうのではないか。そう怖がる先生は多いです。でも、私が見てきた限り、受診をきちんと勧められる先生のほうが、長く信頼されます。

理由は単純で、お客様は「この人は自分の体を本気で考えてくれている」と感じるからです。売上のために引き止めるのではなく、体のために送り出す。その姿勢は、必ず伝わります。

突き放しに聞こえるのは、受診を勧めるだけで終わるときです。次のように、前後を添えます。

前に添える言葉:「気になっていることは、ちゃんと聞きました。」
真ん中の言葉:「ここは私の立場では見られない部分なので、一度、医療機関で確かめてもらうほうが安心です。」
後に添える言葉:「確かめて安心できたら、また体の力の抜き方のお手伝いをさせてください。」

この三つをつなげると、受診の勧めは、突き放しではなく、橋渡しになります。後ろの言葉で、次回につながる道を残しておくのが要点です。

受診を勧めるべき危険なサインには、どんなものがありますか?

急に始まった麻痺、これまで経験のない激しい痛み、急な体重減少などは、施術より先に受診をすすめてください。

リラクの現場では、診断はしませんが、「これは施術の範囲を超えている」と気づく目は持っておく必要があります。次のようなときは、迷わず受診を先にすすめます。

急に手足に力が入らなくなった、片側だけ動かしにくい、言葉が出にくいといった、突然の変化。
これまで感じたことのない激しい痛み。
理由の分からない急な体重減少。
夜も眠れないほど続く痛み、発熱を伴う不調。
血便や、胸の締めつけを伴う症状。

こうしたサインは、時間が大事なことがあります。先生が「様子を見ましょう」と言った一言で、受診が遅れてしまう。それが最も避けたいことです。

この項目は、記事の中でも一番大切な線引きです。迷ったときは、受診をすすめる側に倒してください。すすめすぎて困ることはほとんどありません。すすめなさすぎて困ることは、あります。

診断はできなくても、お客様に渡せる言葉は何ですか?

体の状態を事実として伝えることと、生活の中で気をつけられる軽い提案は、渡して構いません。

「何も言えない」わけではありません。診断と、事実の観察は別のものです。

渡せる言葉の例を挙げます。
「右の肩まわりが、左より硬くなっています。」(触って分かった事実)
「今日は呼吸が浅めでした。終わりのころには深くなりましたよ。」(変化の観察)
「長く座る日が続いていませんか?」(生活への問い)
「寝る前に、首の後ろを温めてみてください。」(無理のない提案)

どれも、病名も原因も断定していません。それでも、お客様にとっては「自分の体を見てくれている」と伝わります。

逆に、病名や原因の断定、薬や検査についての助言は、渡してはいけない側です。線を引く目安は、「触って分かる事実か」「立場を超えた判断か」の二択です。事実なら渡せる。判断なら渡せない。この二択だけ覚えておけば、現場で迷う時間が減ります。

症状の質問をうまくかわすだけでも、リピートにはつながりますか?

かわすだけでは、つながりません。受け止めて、橋を渡して、次回の理由を残すことが大切です。

「あ、それは専門外なので」と軽くかわすと、お客様は小さな寂しさを感じます。次に来る理由が、そこで一つ消えます。

一方で、受け止めて、受診の橋渡しをして、「確かめて安心できたらまたいらしてください」と添えたお客様は、戻ってきやすいです。受診の結果を、次の来院で自分から話してくれることもあります。

リピートが続かない理由については、別の記事でも書いています。リピートされない理由を先に読んでいただくと、今回の話がつながります。リピートは、技術の上手さだけで決まるのではなく、お客様が「この人にまた話したい」と思えるかどうかで決まる部分が大きいのです。

症状を聞かれる場面は、実は一番「信頼を深められる場面」です。避けるのではなく、使います。

症状を聞かれる前に、できる準備はありますか?

初回の問診の段階で、「できること」と「できないこと」を最初に伝えておくと、あとが楽になります。

聞かれて慌てるのは、あらかじめ決めていないからです。先に枠を伝えておけば、お客様も先生も楽になります。

初回に添える一言の例です。
「私は診断をする立場ではないので、病気かどうかの判断はできません。ただ、体の硬さや疲れ方を見て、楽になるお手伝いをします。気になる症状があれば、話してください。必要なときは、受診のおすすめもします。」

この一言を最初に伝えておくと、あとから症状を聞かれたときも、「最初にお伝えしたとおり」と自然に返せます。先生が新しい線引きをその場で作らなくて済みます。

もう一つの準備は、自分の中のチェック項目を持っておくことです。前の項目で挙げた危険なサインを、メモにして控え室に貼っておく。それだけでも、いざというとき手が動きます。

症状の相談が多い日、先生自身が疲れてしまうのはなぜですか?

お客様の不安を一緒に引き取ってしまい、自分の体力以上のものを背負っているからです。

以前、災害のあとにお客様が増えた現場で、お客様が非常に疲れていて、仕事のあとの自分の疲労もいつもより大きいと話してくださった先生がいました。聞く仕事は、手を動かす以上に、気持ちを使います。

背負いすぎないために大事なのは、引き取る範囲を決めておくことです。聞くところまでは引き受ける。判断するところは、専門の人に渡す。ここで線を引いておくと、先生自身が削れません。

施術者が先に整っていることが、お客様に届く力の土台です。自分の疲れを後回しにして、相談を全部抱えていると、いつか手が重くなります。予約と予約のあいだに、深呼吸を一回。それだけでも違います。

同業の先生に、まず試してほしいことは何ですか?

次に症状を聞かれたとき、一つだけ試してください。「聞きました」「私の立場では見られません」「確かめたらまた来てください」の三点セットです。

全部を一度に変えようとしなくて大丈夫です。次の一回で、三つの言葉を、順番に言ってみる。それだけです。

一つ目の「聞きました」は、受け止めです。
二つ目の「私の立場では見られません」は、線引きです。
三つ目の「確かめたらまた来てください」は、橋渡しです。

言ったあとのお客様の表情を、見てください。ほっとした顔になることが多いと思います。それが、誠実さが届いたサインです。

技術が悪いのではありません。見る順番が決まっていないだけです。聞かれたときの順番を決めておけば、迷いは小さくなり、次回につながる信頼が残ります。

よくある質問

リラクの施術で、症状について一切答えてはいけないのですか?

一切答えてはいけないわけではありません。病名や原因の断定、薬や検査についての助言は控え、触って分かった事実や生活への軽い提案は伝えて構いません。線引きは、事実の観察か、立場を超えた判断かです。

お客様に「先生はどう思いますか」と詰め寄られたら、どうすればよいですか?

「気になっているお気持ちは、よく分かります。ただ、私の立場で断定はできないので、確かめられる場所で見てもらうのが一番安心です」と、気持ちを受け止めてから線を引いてください。強く聞かれても、断定しないことが誠実さです。

受診をすすめたら、お客様が来なくなりませんか?

来なくなる場合もゼロではありません。ただ、体のために送り出す姿勢は伝わるので、長い目で見ると、信頼が残って戻ってきてくださる方のほうが多いと感じます。「確かめたらまたいらしてください」と添えておくことが大切です。

初回に「診断はできません」と伝えると、頼りなく思われませんか?

最初に枠を伝えるほうが、かえって安心されることが多いです。できることを具体的に伝えれば、頼りなさではなく、誠実さとして届きます。

危険なサインかどうか、判断に迷うときはどうしますか?

迷ったときは、受診をすすめる側に倒してください。すすめすぎて困ることはほとんどありません。急な麻痺、激しい痛み、急な体重減少などがあれば、施術より先に受診をすすめます。

受診を勧めたあと、施術を続けてもよいですか?

お客様の状態と、医療機関での確認の有無によります。強い痛みや急な変化があるときは、確認が済むまで無理に続けず、様子を見てもらうほうが安心です。迷うときは、確認が済んでからの再開をお願いしてください。

資格のない立場でも、体の話をしてよいのですか?

触って分かった事実や、生活のなかで気をつけられる軽い提案は、お話しして構いません。病名の断定や、医療行為に当たる助言は控えます。立場を踏まえた線引きを持っていれば、体の話そのものはできます。

お客様の相談が重くて、先生自身が疲れてしまいます。

聞くところまでは引き受けて、判断は専門の人に渡す、と引き取る範囲を決めてください。自分が先に整っていることが、お客様に届く力の土台になります。予約のあいだに深呼吸を一回入れるだけでも違います。

症状の質問に毎回迷わないために、何を決めておけばよいですか?

三つです。初回に伝える枠の一言、受診をすすめる危険なサインのメモ、そして聞かれたときの三点セット(聞きました、私の立場では見られません、確かめたらまた来てください)。この三つがあれば、現場で慌てる時間が減ります。

現場で使える資料は、どこで受け取れますか?

施術者向けの資料は、症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、全部で17本をまとめてお渡ししています。公式LINEからお受け取りください。

整体師・鍼灸師だけが集まっているオープンチャットもあります。現場の迷いを、同じ立場の先生と話せる場所です。

見立ての考え方は、メルマガ見立てだよりでも毎週お届けしています。

この記事は施術者の方に向けたものです。体の症状で困っている方は、医療機関にご相談ください。

author avatar
dmt35sqkjuve