「高い」と言われない料金の伝え方は、言い方の工夫ではありません。金額を口にする前の順番で決まります

会計の前に立って、金額を告げる。その直前に、自分の声が少しだけ小さくなる。語尾が「…になります」と下がって、患者さんの目を見ていた視線が、レジのほうへ逃げる。

そのあとの「高いですね」の一言は、まだ言われていなくても、もう頭の中で鳴っています。

この場面に心当たりがある先生に、この記事を書きます。結論から言います。「高い」と言われるかどうかは、料金の言い方では決まりません。金額を口にするまでに、患者さんの中に「何に払うのか」が出来上がっているかどうかで決まります。声の出し方を練習する前に、順番を見直してください。

私のところでセミナーを受けている、開業したばかりのある先生がいます。技術は十分にあるのに、値段の話になると声が小さくなる。話を聞いていくと、料金を告げた瞬間に、患者さんの顔を見ていないことが分かりました。怖いのは金額そのものではなく、その先に来る「それで本当に良くなるんですか」だったのです。

これは、その先生だけの話ではありません。私にも同じ時期がありました。

「高い」と言われる原因は、本当に金額にあるのですか

金額そのものではなく、払う理由がまだ患者さんの言葉になっていないことが原因です。

同じ金額を告げても、「高いですね」と返す人と、黙ってうなずく人がいます。金額が同じなのに反応が分かれるなら、差は金額の外にあります。

患者さんは、金額を単独で見ているわけではありません。「今日、自分の体に何が起きたのか」「この先どうなっていくのか」と、金額を並べて見比べています。左側が空っぽなら、どんな金額でも重く感じます。左側に自分の言葉で言える中身があれば、同じ金額が違って見えます。

だから、値段を下げる必要も、言い方を飾る必要もありません。先に左側を埋める。それだけです。

料金を言う前に、何を渡しておけばいいですか

渡しておくものは三つです。今日の状態、これからの見通し、来る間隔の理由。この三つが先で、金額は最後です。

一つ目は、今日の状態です。「今日は、ここがこう動くようになりました」と、体の変化を患者さんが自分の目で見られる形で渡します。可動域でも、姿勢でも構いません。患者さん自身が「あ、さっきと違う」と言えたら、それが一つ目の材料になります。

二つ目は、見通しです。ここで詰まる先生がとても多いのです。

私は以前、患者さんからこう聞かれて、言葉に詰まったことがあります。「何回通えば、良くなりますか」「本当に良くなるんですか」。自信がなかった頃は、答えられませんでした。背中に寒気が走りました。今、同じ質問をされても平気なのは、私の腕が急に上がったからではありません。答える材料を持っているからです。

患者さんの言葉は、当時も今も同じです。変わったのは、私が説明できるようになったことだけです。この四つの質問は、どれも腕を疑っているのではなく、「先が見えないのが怖い」と言っています。料金の前に見通しを渡すのは、この怖さに先に答えておくことです。

三つ目は、来る間隔の理由です。ここは次の章で詳しく書きます。

見通しは、回数を言い切らないと渡せないのですか

回数を当てる必要はありません。「まずここまで持っていきましょう」という目標を渡せば、見通しになります。

「10回で終わります」と言えば、それは約束になります。悪い方で固まっている体が何回で動くのかは、本当は誰にも言い切れません。言い切れないことを言い切ると、その瞬間から自分の首が絞まります。

私が院でしているのは、回数を当てることではありません。来院したときの体は、悪い方で「安定」している。施術すると良い方へ動く。ただし最初は戻りやすい。ベストの状態から見て、7割くらいまで上がると、体は自分で良い方へ行こうとする。まずはそこを目標にしましょう。そう伝えます。

これを口頭だけで済ませず、表にして見せながら話します。視覚で渡すと、患者さんは自分の今いる位置を測れます。ゴールが見えると、金額の見え方が変わります。

「悪い方で安定している」という言い方には、もう一つ働きがあります。戻ってしまったことが失敗ではなく、元の安定に引っぱられているだけだと説明できることです。戻る不安を先に消しておくと、次回の来院が「やり直し」ではなく「続き」になります。

間隔の理由は、どう話せば「こちらの都合」に聞こえませんか

回数だけを言うと、こちらの都合に聞こえます。「7割まで上げるため」という理由と一緒に言えば、間隔は目的のための手段になります。

「週に1回で来てください」とだけ言われたら、患者さんは「売上のためだな」と受け取ります。これは疑われているのではなく、自然な反応です。理由が一つも渡されていないのですから。

私が話すのは、こんな順番です。一週間は168時間あります。うちにいるのは、そのうちの1時間ほど。残りのほとんどは家の時間です。だから私の仕事は、一週間のうちに体が戻りすぎない間隔を一緒に見つけることです。週に1回だと、そんなに戻らずに進めます。

ここまで話してから、初めて料金を言います。患者さんの頭の中には、すでに「何のために」「どのくらいの間隔で」「どこまでを目標に」が揃っています。金額は、その最後に付く一行の情報になります。

もう一つ大事なことがあります。私が見せる表は、私のためのものではなく、患者さんが自分の現在地を測るためのものです。患者さんが自分で測れるようになると、通う理由は私が説明しなくても、本人の中から出てきます。

金額を口にするとき、声や言葉はどうすればいいですか

言い訳を足さず、短く、語尾を下げずに言い切ってください。

金額を告げる文には、余計なものがつきやすいのです。「少しお高いかもしれませんが」「無理にとは言いませんが」。先生の側が先に頭を下げている言葉です。これを聞いた患者さんは、「ああ、この人も高いと思っているんだ」と受け取ります。

私は、こう言います。「今日はこの内容で、料金はこちらです」。それだけです。前置きもお詫びも付けません。

声が小さくなる先生は、金額を告げる前に、すでに自分の中で「高いと思われるかもしれない」という答えを出してしまっています。その答えを出させているのは、金額ではなく、見通しを渡せていない自分への不安です。順番が整っていれば、不安は薄くなり、声は自然に出ます。

練習するなら、話し方より、料金の前に置く三つ(今日の状態、見通し、間隔の理由)を、30秒で言える形に作っておくことです。

「高いですね」と言われたら、どう返せばいいですか

値引きもしない、反論もしない。「どのあたりが気になりますか」と聞いて、中身を確かめてください。

「高いですね」は、断りの言葉ではありません。多くの場合、「まだ払う理由が自分の中で足りない」「本当に変わるのか確信が持てない」という合図です。

ここで値引きをすると、次の来院から「本来の価格は高いもの」という前提で話が進みます。反論をすると、患者さんは構えます。どちらもうまくいきません。

私は聞き返します。「どのあたりが気になりますか」。すると、金額の話ではなく、通い続けられるかどうかの不安だったり、前に別の院で変わらなかった経験だったりが出てきます。そこで初めて、見通しを渡し直せます。

それでも「やはり難しい」と言う人はいます。そのときは、本人が決めたことを尊重します。無理に押すと、関係そのものが壊れます。どうしても通えない事情があるなら、間隔を長めに組み直す案を一度だけ出します。それでも断られたら、そこで引きます。

安く出すと、先生自身の体に何が起きますか

安売りは、先生の体を削ります。値段を下げた分を、量と体力で払うことになるからです。

私が見てきた中で、価格が低いほど、自分の体に手をかけることに慣れていない方が多く集まる傾向があります。責めているのではありません。自分にいくらか手をかける余裕が、まだない状態の方です。そういう方は、セルフケアも後回しになりやすい。結果、変わりにくい。変わらないから、施術者が量でカバーしようとする。そうして、先生の体が先に壊れていきます。

実際に、1日に何人もみて、腰を壊した先生がいます。守りを最優先にして、安く、たくさん。それが体への借金になっていました。

「高い」と言われないための努力は、実は先生自身の体を守る努力でもあります。価格は、どんな人が来るかを決める装置です。値段を下げれば、自分の体を削る方向に、ゆっくり傾きます。

値上げではなく、最初から高めに設定するのは怖くないですか

怖さの正体は、金額への恐怖ではなく、説明できない自分への恐怖です。

最初から高めに設定する、と考えると、足がすくみます。けれど、私が怖かったのは金額ではありませんでした。「何回通えば良くなりますか」と聞かれて、答えられない自分でした。

答えられる自分になったとき、金額への怖さは、驚くほど小さくなりました。金額が下がったのではなく、金額を支えるものが増えたからです。

だから、いきなり高い金額を設定する必要はありません。まずは三つの材料(今日の状態、見通し、間隔の理由)を、毎回の会計の前に渡す。それを一か月続けてみてください。同じ金額なのに、患者さんの反応が変わることに気づくはずです。そこから先は、金額を決めるのは先生自身です。

関連して、見る順番が決まっていないと説明が詰まる話は、見立ての順番にも書きました。

現場で使える形に落とすと、会計の前に何をすればいいですか

会計の前に、三つを30秒で渡す。それだけで十分です。

具体的には、こうなります。

今日の状態を一つ見せる。「肩がここまで上がるようになりました」。

見通しを渡す。「今はまだ戻りやすい時期です。7割くらいまで上がると、体が自分で良い方へ行こうとします。まずはそこまで一緒に行きましょう」。

間隔の理由を伝える。「一週間のうち、うちにいるのは1時間ほど。戻りすぎない間隔が、週に1回です」。

そのあとに、料金を一行で言う。

患者さんに渡す言葉が決まっていると、先生の頭の中も整います。レジの前で手が止まる時間が、減っていきます。

よくある質問

料金表を見せるタイミングは、初回の問診の前と後のどちらがいいですか?

問診の前に、料金表そのものは見えるところに置いておきます。ただし金額の説明は、問診と見立てのあと、見通しを渡してからにします。料金表が先に目に入ると、患者さんは「いくらかかるか」の物差しで先生を見始めてしまいます。事前に見える状態にしておき、説明は後に回す形が現実的です。

「高い」と言われるのが怖くて、料金をなかなか上げられません。どうすればいいですか?

金額を変える前に、会計前の三つ(今日の状態、見通し、間隔の理由)を一か月続けてみてください。同じ金額でも反応が変わります。反応が変わってから、金額を見直しても遅くありません。怖さの正体は金額ではなく、説明できない不安であることが多いからです。

値引きを求められたら、どうすればいいですか?

値引きの前に、気になっている点を聞いてください。「どのあたりが気になりますか」と尋ねると、通い続けられるかどうかの不安だと分かることが多いのです。その場合は金額ではなく、間隔の組み直しで対応できます。値引きは一度すると、次からもそれが基準になります。

回数券や、まとめ払いの案内は、いつ出せばいいですか?

間隔と見通しが患者さんの中で決まったあとです。先に出すと押し売りに聞こえます。何を先に渡すかを決めておくだけで、受け取られ方が変わります。

他院より料金が高い場合、そのことをどう説明すればいいですか?

他院と比べる話をしないほうがうまくいきます。比べ始めると、土俵が金額だけになるからです。代わりに、うちで何をするのか、どこまでを目標にするのかを、はっきり言葉にします。選ぶ基準を金額から中身へ移してあげるのが、先生の仕事です。

保険診療から自費に変えたばかりで、金額を言うのがつらいです。コツはありますか?

つらいのは自然です。保険では金額が決まっていて、説明する必要がなかったからです。自費では、金額の理由を自分の言葉で言えることが必要になります。まずは今日の状態、見通し、間隔の理由の三つを、紙に書き出してみてください。口に出す前に、書いて整えるだけで、ずいぶん楽になります。

患者さんが「効果が分からない」と言う場合は、どうすればいいですか?

効果を言葉で説明する前に、変化を目で確認できる形にします。可動域でも、姿勢でも、写真でも構いません。「分からない」は、変化が本人に見えていないというだけで、変化が起きていないという意味ではありません。見える形にすると、患者さんは自分の言葉で話し始めます。

継続してもらうために、あえて安く設定したほうがいいのでしょうか?

おすすめしません。安く設定すると、量でカバーする必要が出て、先生の体が先に削られます。継続のカギは、安さではなく、通う理由が患者さん自身の中にあるかどうかです。理由が育てば、同じ金額でも通い続けてくれます。

料金の話をするとき、自分に自信がない場合はどうすればいいですか?

自信は、経験年数や症例数だけでは決まりません。説明できるかどうかで決まります。一つでいいので、今日の変化を見せる、見通しを一言で言う、間隔の理由を話す、を毎回続けてください。説明できる回数が増えるほど、声は自然に落ち着きます。

結局、料金の伝え方で最初に直すのはどこですか

「高い」と言われない料金の伝え方は、言い方の技ではなく、金額を口にする前の順番です。今日の状態、見通し、間隔の理由。この三つを先に渡して、金額は最後に一行。

声が小さくなるのは、あなたの腕が足りないからではありません。順番が決まっていないだけです。25,000人の患者さんに、のべ11万回の施術をしてきた私でも、自信がなかった頃は、同じ場所で言葉に詰まっていました。

現場で使える資料は、症状別の見立て辞典、患者さんへの説明の設計図、内臓疲労と体質のチェック表、口コミのお願い文など、全部で17本をまとめて渡しています。受け取りは公式LINEからどうぞ。整体師・鍼灸師だけが集まっているオープンチャットもあります。見立てや説明の詰まりを、気軽に出せる場所です。週に1回届くメルマガ「見立てだより」もあわせてどうぞ。

この記事は施術者の方に向けたものです。体の症状でお困りの方は、まず医療機関にご相談ください。

author avatar
dmt35sqkjuve